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戦略記事

市川ユウキの「ミシックチャンピオンシップ参戦記」

プロツアー『ラヴニカのギルド』 前編

市川 ユウキ

 こんにちは! チーム『武蔵』の市川です。

 今回もプロツアーに向けての調整記/大会レポートを綴っていこうと思います。

 今回は11月9~11日に行われましたプロツアー『ラヴニカのギルド』に向けての調整記をお送りします。よろしくお願いします。

0.近況

 昨シーズンは1年間通して奮わず、通年のプロツアー権利がないシルバーレベルに落ちてしまいました。

propoints.jpg

 しかし、今シーズンからサイクル制度(1シーズンを4サイクルに区切り、直近4サイクルでのプロポイントに準拠してプロレベルを決める制度:参考)に変わったこともあり、最短で数か月後にゴールドレベル復帰もあり得ます。

 要所となるのはプロツアー権利を有している1stサイクルと、2ndサイクル。

 1stサイクルで私が現在有しているプロポイントは27点、今シーズンのゴールドレベル達成プロポイントは37点ですから、次のプロツアー『ラヴニカのギルド』で11勝5敗、プロポイント10点を取得するとゴールドレベルを達成することになります。

 また、プロポイント10点を1stサイクルで獲得できなかったとしても、2ndサイクル時に消滅するRIXサイクルで取得しているプロポイント5点以上を得ておくと、2ndサイクルでのゴールド達成条件が今回よりハードルが下がるということにもなります。

 逆に、2ndサイクルでもゴールドレベル達成ならず、となると、ある程度プロポイントを獲得しているDOMサイクルのポイントが消滅したり、そもそも3rdサイクルのプロツアー権利を現状で持っていないことから、ハードルが高くなることが予想されます。

 つまるところ、この2サイクルがプロプレイヤー生活を続けていくために、本当の正念場。

 差し当たって、最短復帰コースの1stプロツアーで11勝5敗でゴールドレベル復帰!を目標にプロツアーへ準備していくことになりました。

1.チームシリーズ/調整環境

 シーズン最初のプロツアーということで、恒例のチームシリーズのチームの発表です。

 今年もご多分に漏れず、メンバー変わらずチーム『武蔵』でスタートすることになりました。

Musashi2018.jpg

 プロレベルがシルバーに落ちたことにより、プロツアー全てに出られる保証がない状態でのスタートということもあり、チームメンバーには申し訳なく感じています。が、すべてのプロツアーに出てプロポイントを獲得することが最もチームに貢献することだと考えていますので、それに向けて全速前進!

 まずは調整環境の見直しです。

 ここまでずっと私がシルバーレベルに落ちたことを記していますが、実は武蔵全体で昨年は不調でした。

 世界選手権に毎年のように出ている渡辺さん、八十岡さんが出られていなったり、いつもゴールドレベルに余裕で到達、シーズン最後のプロツアーの成績次第ではプラチナレベルも目指せるほどにプロポイントを保有している山本さんがギリギリゴールドレベルだったりと、実に昨年フィーバーした行弘さんを除く5人の平均プロポイント取得数が大幅に減少していることがわかります。

 具体的な数字を出すと、チームシリーズで1位に輝いた2016-2017シーズンはプロツアー3回で141点、昨シーズンの2017-2018シーズンはプロツアー4回で133点と、プロツアーごとの平均プロポイント取得数がチーム単位で14点程度減っています。

 この惨憺たる結果を前に「今シーズンも昨シーズンと同じように頑張りましょう!」となったらまさに狂気の沙汰、抜本的に調整環境を変更することに。

 武蔵の結成から奮わなかったプロツアーを検証していってみると、

トップメタであるデッキを仮想敵としてしか捉えず、試行不足

 プロツアー『破滅の刻』の「ラムナプ・レッド」、プロツアー『ドミナリア』の「赤黒機体」など

 逆にチームとして成功した時は、

Magic Online(MO)で目に付いたデッキをブラッシュアップしている展開

 プロツアー『アモンケット』での「ティムール霊気池」、プロツアー『イクサランの相克』での「ホロウワン」など

 ざっくりとこんな感じで、単純に人手が足りず試行回数が足りない。逆にさまざまな気付きを増やして当たりデッキを掘り当てたいといった印象で、これは単純に調整メンバーを増加させることが最も現実的な解決方法だと考えました。

 ただ、調整チーム武蔵の基本方針はみんなで集まってのリアル調整。平日から求められることもあり時間的制約や、場所柄集まれないなどの人は候補に挙がりませんし、また渡辺雄也や八十岡翔太とテストプレイして「AはBに有利・不利」などの考慮をしていくことになりますから、ある程度の実力がないと適正なデータにならないと、これまで調整チーム武蔵は少数精鋭を貫いてきました。

 ただ、時間に融通が効き、プレイヤーとしての実力も武蔵メンバーと比べて遜色ない。なんて言っているとそんなプレイヤーが日本にほいほい出てくる訳もなく、チームの調整方法を変えていくのが現実的です。

 ともすれば調整環境をリアルベースでなく、MOベースにすること。

 私や覚前さん、山本さんは元々MOの比重の方がリアルより高く、MOでのリーグスコアをスクリーンショットして感想とともにグループチャットに投げていました。

 ただ、それでは視認性が悪く後から見直す気になりませんでしたし、テンプレートなどもなく、そのデータをまとめてもいなかったので、本当にただ投げていただけでした。

 人数を増やす、MOベースで調整するとなればこれまでよりもデータの重要性や精度は重要になってきます。

 そのため、まずは各自MOでの成績などを常時打ち込んでいく共有のスプレッドシートを作成することに。

harane.jpg

 個人で前からスプレッドシートに入力していた私の意見を軸に、その辺に詳しそうで今回も調整チーム武蔵の一員である原根さんにひな形を作ってもらうことに。

 どのような項目を入力しているか、どういうデータが出るようにしているかなどの詳細は公にはしませんが、最初に2人で話し合って重要視した点が1つ。

  • みんなにきちんと入力してもらうシートを作る。

 当たり前のことかもしれませんが、今回のデータ取りは「すべての調整メンバー」に「すべてのマッチデータ」を入力してもらうことがデータの精度という意味でとても重要になってきます。

 そのため、必要最低限のクリック回数で、誰でも簡単に入力でき、そのデータが有用、かつ、議論への発展性があるように検討を重ねました。

 また、MOだけでは当然補完し得ないことも存在します。

 例えば、「AとBデッキのサイドボード後のマッチを30回やりたい!」なんてことはMOだとなかなかやりづらいですし、やはりリアルで同じ時間を共有することによって発展していくデッキも存在します。

 そのため、リアル調整も週末だけ継続。平日MO上でデータを取り、自分の調整しているデッキで気になったこと、調整メンバーのシートを見て気になったことなどの宿題を持った状態で週末のリアル調整に集まるのが理想です。

 ということで今シーズンからは新しい調整メンバーが3人加入しました。

urase.jpg

 まずはシルバーレベルの浦瀬亮佑さん。プロツアー『カラデシュ』では一緒の調整チームで調整したこともあり、人となりもわかっていますし、プロツアー『戦乱のゼンディカー』で瀧村和幸さんが優勝した「アブザン・アグロ」のマナベースを考案したプレイヤーでもあります。

瀧村 和幸 - 「アブザン・アグロ」
プロツアー『戦乱のゼンディカー』 優勝 / スタンダード (2015年10月16~18日)[MO]
2 《
2 《平地
2 《梢の眺望
1 《燻る湿地
1 《窪み渓谷
4 《吹きさらしの荒野
4 《樹木茂る山麓
4 《溢れかえる岸辺
2 《ラノワールの荒原
4 《乱脈な気孔
-土地(26)-

4 《始まりの木の管理人
4 《棲み家の防御者
3 《搭載歩行機械
4 《先頭に立つもの、アナフェンザ
4 《包囲サイ
2 《風番いのロック
-クリーチャー(21)-
4 《ドロモカの命令
4 《アブザンの魔除け
1 《残忍な切断
4 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン
-呪文(13)-
1 《風番いのロック
2 《黄金牙、タシグル
2 《強迫
3 《絹包み
3 《精神背信
2 《究極の価格
1 《自傷疵
1 《真面目な訪問者、ソリン
-サイドボード(15)-


ishimura.jpg

 お次は石村信太朗さん。渡辺さんや八十岡さんなどは十年来の友人と言うこともあり旧知の仲ですし、なんと言っても彼の魅力はその独創性です。

石村 信太朗
プロツアー・パリ2011 8位 / スタンダード (2011年2月10~13日)[MO]
4 《平地
3 《
1 《乾燥台地
1 《沸騰する小湖
4 《氷河の城砦
4 《金属海の沿岸
4 《天界の列柱
4 《地盤の際
-土地(25)-

4 《闘争の学び手
4 《石鍛冶の神秘家
3 《ミラディンの十字軍
-クリーチャー(11)-
4 《失脚
4 《定業
3 《呪文貫き
4 《マナ漏出
2 《未達への旅
2 《肉体と精神の剣
1 《饗宴と飢餓の剣
4 《精神を刻む者、ジェイス
-呪文(24)-
4 《戦隊の鷹
2 《海門の神官
1 《コーの奉納者
2 《悪斬の天使
3 《漸増爆弾
1 《天界の粛清
1 《瞬間凍結
1 《屈折の罠
-サイドボード(15)-

石村 信太朗 - 「赤緑ランプ」
グランプリ・東京2016 12位 / スタンダード (2016年5月6~8日)[MO]
11 《
2 《
1 《荒地
4 《見捨てられた神々の神殿
4 《進化する未開地
-土地(22)-

2 《死天狗茸の栽培者
2 《面晶体の這行器
4 《不屈の追跡者
4 《龍王アタルカ
2 《絶え間ない飢餓、ウラモグ
-クリーチャー(14)-
4 《ニッサの誓い
4 《ウルヴェンワルド横断
4 《残された廃墟
4 《爆発的植生
4 《面晶体の記録庫
4 《炎呼び、チャンドラ
-呪文(24)-
3 《現実を砕くもの
2 《世界を壊すもの
1 《虚空の選別者
3 《焙り焼き
3 《歪める嘆き
3 《コジレックの帰還
-サイドボード(15)-
 

 (プロツアー・パリ2011のリストとは異なりますが)その当時定番の青のカウンターであった《マナ漏出》を入れていない「青白カウ・ブレード」、《残された廃墟》を運用して2→4→7マナのジャンプを目指す「赤緑ランプ」など、彼のリストは常人ではなかなか到達し得ない発想力があります。

utsunomiya.jpg

 3人目ははシーズン最後のグランプリ・香港2018で準優勝し、見事にシルバーレベルを射止めた若手、宇都宮巧さんです。

 宇都宮さんの特徴はその若さから来る無尽蔵の体力でしょう。

 プレインズウォーカー・ポイント(PWP)という、イベントに出ることによって得られるポイントはなんと日本で一番(2017年度)。平日の店舗大会から、アジアグランプリ、深夜のMOまで、試行回数の多さは国内トップ。

 また、トップメタのデッキをブラッシュアップする術に長けている印象で、既存のメンバーに足りていなかった部分を補完してくれることにも期待が持てます。

takao.jpg

 また、今回のプロツアー権利を有していませんが(※)、なぜか調整に参加することになったお馴染みの高尾さんを含めて、調整チーム武蔵は装い新たに11人で練習を開始しました。

※高尾さんはグランプリ・香港2018でトップ8に入賞しているので、プロツアー『ラヴニカの献身』の参加権利はあります。

 

2.環境把握

ゴルガリ・ミッドレンジ

 まずは環境初期、トップメタとして名乗りを上げたのはゴルガリ・ミッドレンジでした。

Tixis - 「ゴルガリ・ミッドレンジ」
Magic Online Standard PTQ #11648222 優勝 / スタンダード (2018年10月13日)[MO]
8 《
7 《
4 《草むした墓
4 《森林の墓地
-土地(23)-

4 《ラノワールのエルフ
4 《マーフォークの枝渡り
3 《探求者の従者
2 《野茂み歩き
4 《翡翠光のレインジャー
1 《管区の案内人
3 《貪欲なチュパカブラ
2 《ゴルガリの拾売人
4 《破滅を囁くもの
1 《千の目、アイゾーニ
-クリーチャー(28)-
2 《暗殺者の戦利品
2 《採取+最終
2 《ゴルガリの女王、ヴラスカ
3 《秘宝探究者、ヴラスカ
-呪文(9)-
1 《野茂み歩き
1 《千の目、アイゾーニ
3 《強迫
3 《渇望の時
1 《アルゲールの断血
2 《ヴラスカの侮辱
2 《最古再誕
1 《採取+最終
1 《ビビアン・リード
-サイドボード(15)-
 

 《ボーマットの急使》や《巻きつき蛇》などの優秀な2マナ以下のクリーチャーがローテーションで軒並み退場した関係で、低マナのクリーチャーの質は緑に軍配が上がるようです。

 《ラノワールのエルフ》などのマナ・クリーチャー、《マーフォークの枝渡り》などの探検クリーチャーで高マナ域までの準備とし、《秘宝探究者、ヴラスカ》や《破滅を囁くもの》などの重量級へ繋ぎます。

 探検クリーチャーを豊富に採用しているので、《野茂み歩き》はさながらライフゲインする《タルモゴイフ》のようです。

 また、探検と相性の良い《ゴルガリの拾売人》などの加入など、《貪欲なチュパカブラ》などの既存のクリーチャー含めて中マナ域も優秀。

 またこれまた新加入カードの《採取+最終》も極めて優秀。

 クリーチャーベースのデッキですので《採取》のモードも使いやすく、場をグダグダと持たせることに長けるこのデッキでは《最終》モードはビートダウンを駆逐するフィニッシュカードとなります。

 このように、序盤、中盤、終盤隙のない、ミッドレンジの王たるゴルガリ・ミッドレンジが隆盛。

 こちらのMOPTQでは、トップ8のうちなんと6つの席を同デッキが埋める結果に。

 
イゼット・スペル
IgnacioParot - 「イゼット・スペル」
Magic Online Standard PTQ #11648222 28位 / スタンダード (2018年10月13日)[MO]
7 《
6 《
4 《蒸気孔
4 《硫黄の滝
1 《イゼットのギルド門
-土地(22)-

4 《ゴブリンの電術師
4 《弧光のフェニックス
4 《弾けるドレイク
-クリーチャー(12)-
4 《選択
4 《ショック
4 《航路の作成
4 《急進思想
3 《溶岩コイル
2 《標の稲妻
1 《薬術師の眼識
4 《発見+発散
-呪文(26)-
2 《パルン、ニヴ=ミゼット
2 《火想者の研究
1 《苦悩火
1 《溶岩コイル
3 《焦熱の連続砲撃
2 《火による戦い
2 《イオン化
1 《薬術師の眼識
1 《イゼット副長、ラル
-サイドボード(15)-
 

 パッと見、ガッカリ神話レアだと考えていた《弧光のフェニックス》をフィーチャーしたスペルデッキ。

 とんでもないパワーになるのに、なぜかキャントリップが付いている《弾けるドレイク》もプレイヤーを一発で屠る殺傷能力を秘めています。

 帰って来たモダン級クリーチャー《ゴブリンの電術師》が戦場に残ってしまったが最後、大量に入っている2マナのドロー呪文が1マナになってしまいますから、それらを3回プレイして、良い動きの時は3ターン目に《弧光のフェニックス》が2体くらい戦場に戻ってきます。

 またサイドボードに潜んでいる《パルン、ニヴ=ミゼット》は対コントロール、同型、青単アグロなどにおいて非常に強力なカードです。戦場に出て、ターンが返ってきたらほぼゲームエンドと言えます。

 「イゼット・スペル」は土地の総数自体は22枚程度と少ないですが、ドローソースが豊富にデッキに入っているため、土地を伸ばそうと思えば十分に伸ばせますし、またそれらのサイドインしたカードへのアクセスもしやすいのが長所です。

 《弧光のフェニックス》を絡めたブン回りもあり、《弾けるドレイク》や《パルン、ニヴ=ミゼット》を用いた長期的なゲームも得意とする「イゼット・スペル」はこれ以降増加していき、メタゲームの上位を占めることになります。

ジェスカイ・コントロール
Lirek Kulik - 「ジェスカイ・コントロール」
グランプリ・ニュージャージー2018 7位 / スタンダード (2018年10月27~28日)[MO]
4 《
3 《
4 《蒸気孔
4 《硫黄の滝
4 《氷河の城砦
4 《聖なる鋳造所
4 《断崖の避難所
-土地(27)-

4 《弾けるドレイク
-クリーチャー(4)-
2 《本質の散乱
2 《裁きの一撃
2 《稲妻の一撃
2 《アズカンタの探索
4 《轟音のクラリオン
4 《イオン化
4 《薬術師の眼識
1 《浄化の輝き
2 《発展+発破
2 《中略
4 《ドミナリアの英雄、テフェリー
-呪文(29)-
2 《黎明をもたらす者ライラ
1 《パルン、ニヴ=ミゼット
1 《原初の潮流、ネザール
3 《溶岩コイル
3 《否認
2 《軽蔑的な一撃
2 《裁きの一撃
1 《残骸の漂着
-サイドボード(15)-
 

 《ドミナリアの英雄、テフェリー》は今回のスタンダードでも間違いなく最も優れたプレインズウォーカーですが、『ラヴニカのギルド』ではアゾリウスはお休み。

 そのため、《ドミナリアの英雄、テフェリー》をプレイするのであれば必然的に3色になります。

 《湿った墓》などの通称ギルドランドと《孤立した礼拝堂》などの通称コアランドは相性が良く、1ターン目に《湿った墓》をプレイすることが出来れば《孤立した礼拝堂》や《水没した地下墓地》、《氷河の城砦》は全てアンタップインでプレイすることができるようになります。

 ただ、それは基本土地では成し得ません。1ターン目に《進化する未開地》から《平地》を持って来た場合、2ターン目の《水没した地下墓地》はタップインしてしまいますからね。

 ギルドランドは快適なアンタップインライフを考えるとなるべく採用したい土地なのです。

 つまり青白カラーと絡みつつ、2種類のギルドランドを使用するとなると、今環境では《蒸気孔》と《聖なる鋳造所》の2種類を使えるジェスカイカラー(青白赤)になるのが自然と言えます。

 このリストにも「イゼット・スペル」と同様に《弾けるドレイク》が採用されています。

 《轟音のクラリオン》との相性は抜群で、タフネス4で相手の場を広げさせた後に全体3点のモードでも盤面に残り、その後絆魂モードでライフゲインもしてくれるスーパースター。

 その他、新たな4マナ2枚ドロー枠である《薬術師の眼識》、逆《スフィンクスの啓示》こと《発展+発破》。《発破》の方に注目されがちですが《発展》も5ターン目にダブル《轟音のクラリオン》ができたり、《ドミナリアの英雄、テフェリー》に飛んできた《否認》などの打ち消し呪文をコピーして跳ね返したりと、小回りが利くところもポイントです。

 プロツアーより前、環境初期にスタンダードのグランプリがアメリカとヨーロッパで同時開催されました。

 MOPTQなどの結果を踏まえて、前評判では「ゴルガリ・ミッドレンジ」が環境を席捲するのではと予想されていましたが、予想に反してトップ8で最も多かったのは「ジェスカイ・コントロール」でした。アメリカのニュージャージーで行われたグランプリではその流行に乗って、優勝したのも「ジェスカイ・コントロール」でした。

赤単アグロ
Etienne Busson - 「赤単アグロ」
グランプリ・リール2018 優勝 / スタンダード (2018年10月27~28日)[MO]
22 《
-土地(22)-

4 《狂信的扇動者
4 《ギトゥの溶岩走り
4 《遁走する蒸気族
4 《ヴィーアシーノの紅蓮術師
4 《ゴブリンの鎖回し
2 《再燃するフェニックス
-クリーチャー(22)-
4 《ショック
4 《稲妻の一撃
4 《魔術師の稲妻
4 《実験の狂乱
-呪文(16)-
4 《宝物の地図
3 《溶岩コイル
3 《焦熱の連続砲撃
3 《火による戦い
2 《苦悩火
-サイドボード(15)-
 

 一方、「ジェスカイ・コントロール」の流行を跳ね除けて、フランスでは「赤単アグロ」が優勝を飾りました。

 環境最初期にMOで流行した《危険因子》型ではなく、《実験の狂乱》を採用したタイプです。

 《実験の狂乱》は、ほとんどが1マナから2マナのカードで構成されている「赤単アグロ」では、貼ってターンが返ってきたらライブラリートップから4枚程度のカードをプレイしたり、凄まじい爆発力を秘めています。

 新カードである《遁走する蒸気族》は《実験の狂乱》と相性が良いカードで、《遁走する蒸気族》からマナを出し、《実験の狂乱》からカードが連鎖していき、また《遁走する蒸気族》にカウンターが貯まっていき……と相互に補完し合っています。

 そのターンにマナを使い切っていても、次の自ターンのアップキープにインスタント呪文なら唱えられますので、《稲妻の一撃》などの火力呪文を豊富に有しているこのデッキではそういう展開も多いでしょう。

 低マナに寄り、インスタント呪文も多いこのリストは、まさに《実験の狂乱》にオールインしている構成と言えます。

 サイドボード後は《狂信的扇動者》や《ヴィーアシーノの紅蓮術師》などの対策されやすい低マナのクリーチャーをサイドアウトし、《宝物の地図》や《火による戦い》などを投入してロングゲームに持ち込むプランが取られています。

 《宝物の地図》は《実験の狂乱》と相性が良く、ライブラリートップがこのターン2枚目の土地になってしまったときなどは占術で下に送って新たなライブラリートップを見ることができますし、《宝物の入り江》に変身した場合は、生み出される宝物・トークンをマナとして運用して《実験の狂乱》からカードをプレイする助けとなります。

 その他にも「青黒諜報」「白単アグロ」「青単アグロ」など多種多様なデッキが存在していましたが、大まかにこの4つがメタ上位のデッキといった認識で、各自MOでの「走り込み」に明け暮れることになります。

 

3.調整

ゴルガリ・ミッドレンジ 感触……×

主に調整していたプレイヤー:原根

 こういうミッドレンジ・デッキは、環境にさまざまなデッキがあればあるほど厳しい立ち位置になります。

 カードの細かい選択を環境にアジャストしてこそ高い勝率が得られますからね。

 同型を見据えると《僧帽地帯のドルイド》などのマナ・クリーチャーを大量に入れて、早急に《殺戮の暴君》をプレイする形が有利ですが、そうすると「イゼット・スペル」や、「ジェスカイ・コントロール」の全体除去への耐性が下がってしまいます。

 その他、《破滅を囁くもの》は対「イゼット・スペル」や、「青単アグロ」では対戦相手の攻勢をシャットアウトするクリーチャーとなりますが、同型では《貪欲なチュパカブラ》や《ビビアン・リード》、《秘宝探究者、ヴラスカ》など千通りの手段でアドバンテージを取られながら除去されてしまいます。

 あちらを立てればこちらが立たず。最適な構築は非常に難しく(というか運)、かつ対戦相手はある程度対策をして来るであろう最悪のメタゲーム。

 
イゼット・スペル 感触……△

主に調整していたプレイヤー:渡辺、宇都宮

 「イゼット・スペル」はチーム内でも人気のアーキタイプで、環境初期はチーム内で最大の試行回数を誇りました。

 勝率も高かったのですが、問題はプロツアー前の2週間。

 《弧光のフェニックス》を軸にしたトリッキーな動きだったり、サイドボード後の《火想者の研究》や《パルン、ニヴ=ミゼット》に相手がしっかり対処して来たりと、対戦相手も対応に手慣れて来た印象で、勝率も下降傾向にありました。

 また、どうしても《弧光のフェニックス》の墓地への落ち方が勝敗に起因することが多く、「イゼット・スペル」に対する負け方には、「ドローソースN枚打つも《弧光のフェニックス》全く見えずに負け」みたいな文言が並びます。

 ただ、こういう特徴的なデッキの動きには愛好者はいるもので、我がチームにも2人。

 特に渡辺さんは気に入っていたようで、環境初期から「俺はプロツアーで『イゼット・スペル』使うよ」とチーム内で公言していました。

 
ジェスカイ・コントロール 感触……×

主に調整していたプレイヤー:市川

 一方グランプリでは勝ち組だったジェスカイ・コントロールはというと……感触は非常に微妙。いやむしろ悪い。

 やはりギルドランドが出揃っていない今環境では、3色のデッキはハイリスク。

 青18、赤16、白12がジェスカイの基本のマナベースですが、白12がネック。

 2ターン目の《封じ込め》は怪しいですし、4ターン目の《残骸の漂着》なんて打てたら神に拝むレベルです。

 マナベースもさることながら、マナフラッドもマナスクリューも頻発するので《選択》や《活力回復》などのキャントリップ呪文を大量に入れた構築なども試してみましたが、3色なのに別に2色デッキと比べてデッキパワー高くない事に気付いてギブアップ。

 
赤単アグロ 感触……△

主に調整していたプレイヤー:石村

 グランプリを優勝し、一躍メタゲームに食い込んできて「赤単アグロ」はどうでしょう。

 感触は実に普通。ただちょっと悪め、「イゼット・スペル」が中の中とすると、「赤単アグロ」は中の下です。

 グランプリ優勝後はチーム内でもブームになりましたがやはり低マナの弱さが目に付きます。というか耐えられません。

 勝率も悪く、《実験の狂乱》に依存するこのデッキは、少なくともこの形では使用できないなという感想。

 石村さんはさまざまなデッキを回していた(「赤緑狂乱」「黒単コントロール」「赤黒バーン」etc.)のですが、調整終盤は「赤単アグロ」に集中。

 それによりリーグの成績も好調、というわけではなく成績は低迷の一途。2勝3敗以下ばかりで「ライザ(石村さんの愛称です)大丈夫?」とみんなに言われるも「もう知り合いに赤単アグロのカードを借りるお願いをしてしまったので心中します。」と驚きの返答。

 
青単アグロ 感触……△

主に調整していたプレイヤー:八十岡、行弘

 グランプリをひっそり準優勝していた青単アグロ。

 感触は悪くなく、メタ上の「ゴルガリ・ミッドレンジ」と「ジェスカイ・コントロール」には無類の強さを誇りました。

 ただ、「イゼット・スペル」との相性は最悪です。

 《弧光のフェニックス》に各種カウンターは弱く、《大嵐のジン》の返しに《弾けるドレイク》が出てきたら急ブレーキ。こちらは《弾けるドレイク》に触れませんが、相手は《溶岩コイル》で容易に《大嵐のジン》を対処。

 先手2ターン目《ゴブリンの電術師》に干渉する手段はなく、出てきた場合相手のブン周りをただ見届けるしかありません。

 私も「青単アグロ」はある程度回したのですが、「イゼット・スペル」には全敗。負け方も実にさまざまで、どの急戦、長期戦、すべてのレンジで負ける始末。

 もちろん「赤単アグロ」などの自分より速いデッキにも相性が悪く、有利不利マッチの差が激しいデッキです。

「座った瞬間勝ち負けが決まる」デッキで、「青単アグロ」の名手である八十岡さん、行弘さんは「最終手段(できれば使いたくない)」を口癖に「青単アグロ」を回していました。

 
白系アグロ 感触……○

主に調整していたプレイヤー:覚前、高尾、八十岡

 グランプリ時点ではパッとしなかった「白系アグロ」ですが、チーム内での評価、勝率ともに最高でした。

 アグロスキーの高尾さんはずっと「白系アグロ」を調整していて様々なパターンを試していました。

 特に《ボロスの挑戦者》や《サンホームの重鎮》などの「教導」クリーチャーを軸にビートダウンする形が最も勝率が高く、チームデッキの筆頭に。

 《アダントの先兵》と《ベナリア史》は「ジェスカイ・コントロール」、「イゼット・スペル」と環境のトップメタに強く、特に《アダントの先兵》は2ターン目にプレイすることができれば、それらへの勝率は非常に高くなります。

 また《ベナリア史》と《英雄的援軍》の組み合わせはそれらと2マナのクリーチャー、ただのカード3枚で相手をノックアウトするパワーも持っていて、デッキの底力も感じます。

 「ゴルガリ・ミッドレンジ」にはメインはやや不利、「赤単アグロ」にはメインサイドともに不利ですが、「ゴルガリ・ミッドレンジ」にはサイドボード後の《暴君への敵対者、アジャニ》、《実験の狂乱》で五分以上に立ちまわれますし、「赤単アグロ」はチーム内で弱いと結論付けているので少なくとも大きい調整チームは持ち込んで来ない→メタゲーム上そこまでのパーセンテージにならないだろうと判断しました。

 八十岡さんも土曜朝に「白系アグロ」を(唐突に)組みだし、《包囲攻撃の司令官》と《敬慕されるロクソドン》、《議事会の裁き》の召集シナジーをベースとした「白赤ミッドレンジ」を作成。

 これもまた感触が良く、土曜の夜のタイミングではチーム内は「『白系アグロ』を詰めていけば勝てるだろう」という見解で一致していました。

 

4.MOCSマンスリー

Bayesta_93 - 「白赤アグロ」
Standard MOCS #11681651 8勝0敗 / スタンダード (2018年11月3日)[MO]
14 《平地
1 《
4 《聖なる鋳造所
4 《断崖の避難所
-土地(23)-

4 《不屈の護衛
4 《空渡りの野心家
3 《癒し手の鷹
4 《アダントの先兵
4 《善意の騎士
4 《ベナリアの軍司令
-クリーチャー(23)-
3 《軍団の上陸
4 《ベナリア史
4 《英雄的援軍
3 《議事会の裁き
-呪文(14)-
3 《トカートリの儀仗兵
3 《不可解な終焉
2 《抗戦
2 《実験の狂乱
1 《残骸の漂着
1 《反応+反正
2 《苦悩火
1 《暴君への敵対者、アジャニ
-サイドボード(15)-
 

 ……と考えていたのは私たちだけではないようでした。

 プロツアー前の最後の大規模大会といえるMOCSマンスリー、そこで「白系アグロ」は堂々の8勝0敗の全勝をマーク。

 トップ32にも4人と「イゼット・スペル」に次ぐ入賞率で、使用者数を考えると完全にMOCSマンスリーの勝ち組は「白系アグロ」でした。

 MOCSで勝っていたのは《ベナリアの軍司令》を採用した白単に赤をタッチした形で、私たちが調整していた白赤均等のアグロとは少し違う形ではありましたが、これは白系のアグロへのガードが上がりますし、ミラーマッチも大量に発生することになります。

 メインデッキでは《ベナリアの軍司令》への対応手段が乏しい現在の形では「白系アグロ」に有利を付けるのは難しく、完全にロックしていたデッキが暗礁に乗った形です。

 プロツアー出発の数日前にチームデッキが《座礁》してしまった武蔵御一行。

 まだデッキが決まっていない自分含むチームメンバーは錯綜します。

 そんな中で、とあることに気付いた筆者。

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「そういえば、あのデッキ勝率高いのに彼以外ほとんど触っていないな……。」
 

 ここで前編は終了!

 後編はプロツアーで実際に使用したデッキなどを交えながら、プロツアーレポートをお届けします!

 お楽しみに~。

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