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原根健太の徹底解説!スタンダード・アナライズ
第12回:新たなスタンダードと『エルドレインの森』が生み出すメタゲーム
皆さんご無沙汰しております!原根健太です。
久方ぶりのスタンダード・アナライズ更新です!前回が『ニューカペナの街角』リリースにあわせてのものでしたから、実に1年以上が経過してしまいました。
その間は日本公式YouTubeチャンネルの方でマジラボをお届けするなどしていました。僕の担当はパイオニアでしたが、森山真秀さんの方でスタンダードを紹介していましたね。こちらの企画が終了したことで、スタンダード・アナライズを再始動する運びとなりました。今後ともよろしくお願いします!
スタンダードローテーションの変化
さて、更新をお休みしている間、直近のスタンダードには様々な変化が生じてました。
新セットの発売、新たな禁止カードの発表など色々ありましたが、中でも特筆すべきはスタンダードローテーション期間の変更だと思います。
【お知らせ】スタンダード・フォーマットに対する取り組みのひとつとして、以降セット・ローテーションの期間を「2年」から「3年」へと変更いたします。これに伴い、今年に限り『エルドレインの森』発売時のローテーションはありません。詳細は記事をご確認ください。 https://t.co/rzDLSrFNut #mtgjp
— マジック:ザ・ギャザリング (@mtgjp) 2023年5月7日
スタンダードは長きに渡り「直近約2年分のカードセットが使用可能」なフォーマットでした。しかし、この2023年9月より「直近約3年」に変更となりました。従来通りであればスタンダード落ちする予定だった4セット(『イニストラード:真夜中の狩り』『イニストラード:真紅の契り』『神河:輝ける世界』『ニューカペナの街角』)は今後1年間も使用可能です。
これにより、これまでスタンダードで猛威を奮ってきたパワーカードは引き続き姿を見かけることになります。3年間の選りすぐりのカードが使えるため、デッキパワーはこれまでより高くなる傾向にあると言えます。伴い、デッキに採用するカードの基準も高くなると予想されます。
さらに、マナベースもこれまで通りのものが使用可能です。多色デッキの構築も自由自在ですね。特に《力線の束縛》を使った版図デッキは各種3色サイクリング土地が非常に重要な役割を担っていたので、今後も強力なエンジンとして運用されることでしょう。
『エルドレインの森』リリース
そしてつい先日となる9月8日、『エルドレインの森』のリリースがありました。エルドレイン次元への訪問は前回の『エルドレインの王権』から数えると約4年ぶりとなります。
「祝祭」や「役割」など新たな能力も登場する一方、「当事者(出来事を持つカード)」や「食物」といった見慣れた能力も再登場しています。以前に登場したこれらのカードは当時のスタンダード環境にも大きな影響を与えており、新能力と共に活躍が期待されています。
さらなる注目株としてミシュラランドも登場しています。ローテーション期間の延長により現在のスタンダードには豊富なマナベースが用意されていますが、ここに新たな選択肢が加わりました。これまでに登場したミシュラランドはそのほとんどが重宝されており、これらのカードの活躍も間違いない事でしょう。
新たなスタンダードはまだ始まったばかりですが、既に環境の指針となる大会が開かれています。今回は、これらのカードが環境にどのような影響を与えたのか、直近の大会で好成績を残したデッキを紹介しつつ、新環境を追っていきたいと思います。
参考にした大会
今回の記事を書くにあたり参考にした大会2種(3イベント)を紹介します。
蒼紅杯(ブルースカイクリムゾンヴァイオレンスゆるふわエルドレインの森カップ)
Meleeのイベントページはこちら。
蒼紅ちか(@aobeni_chika)さんという方が主催されている、MTGアリーナを用いた非公式のオンラインイベントです。実況解説に公式配信でもお馴染みのブルナー実久さんや元MPLプレイヤーの茂里憲之さんを招き、予選スイスドローから決勝シングルエリミネーションをお届けする、非常に力の入ったイベントになっています。新セットリリースに合わせて大会を開催いただけることが多く、コミュニティの盛り上げに力を注いでくれています。
Magic Online Standard Challenge
こちらはMagic Online上で開催されている毎週末のトーナメントです。通称「MOチャレンジ」。こちらもリリース直後の最速イベントとして有益な情報を収集することができます。このイベントは毎週行われているので、今後も欠かさずチェックしましょう。
既存デッキのアップデート
最初に紹介したいのが、『エルドレインの森』リリース前から活躍していたデッキのアップデートです。
版図ランプ
4 《森》 1 《沼》 1 《島》 1 《山》 2 《ミレックス》 3 《平地》 4 《ジェトミアの庭》 4 《スパーラの本部》 4 《ジアトラの試練場》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 -土地(25)- 4 《装飾庭園を踏み歩くもの》 4 《偉大なる統一者、アトラクサ》 3 《怒りの大天使》 -クリーチャー(11)- |
4 《ゼンディカーへの侵攻》 4 《群れの渡り》 4 《力線の束縛》 3 《豆の木をのぼれ》 4 《太陽降下》 4 《骨化》 1 《アイレンクラッグ》 -呪文(24)- |
2 《軽蔑的な一撃》 2 《否認》 1 《羅利骨灰》 1 《豆の木をのぼれ》 1 《運命的不在》 2 《沈黙を破る者、スラーン》 1 《人狐のボディガード》 1 《ティラナックス・レックス》 1 《金属の徒党の種子鮫》 3 《黄昏の享楽》 -サイドボード(15)- |
2 《平地》 4 《森》 1 《島》 1 《山》 3 《沼》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 4 《ジェトミアの庭》 1 《ラフィーンの塔》 3 《スパーラの本部》 4 《ジアトラの試練場》 1 《ミレックス》 -土地(25)- 4 《装飾庭園を踏み歩くもの》 4 《怒りの大天使》 3 《偉大なる統一者、アトラクサ》 2 《金属の徒党の種子鮫》 2 《木苺の使い魔》 -クリーチャー(15)- |
4 《急使の手提げ鞄》 4 《力線の束縛》 1 《底への引き込み》 2 《群れの渡り》 3 《太陽降下》 2 《ゼンディカーへの侵攻》 2 《鏡に願いを》 2 《執念の徳目》 -呪文(20)- |
2 《否認》 1 《強情なベイロス》 2 《軽蔑的な一撃》 1 《黄昏の享楽》 2 《危難の道》 3 《骨化》 1 《無形の処刑者、ケイヤ》 1 《温厚な襞背》 2 《一巻の終わり》 -サイドボード(15)- |
各種マナブーストから《偉大なる統一者、アトラクサ》などの高コストカードに繋げるランプデッキです。3色サイクリング土地を多用することでアトラクサを筆頭とした強力カードをプレイするための色マナを担保しつつ、《力線の束縛》を僅か1マナでプレイできます。
このデッキの新戦力は《豆の木をのぼれ》と《執念の徳目》です。《豆の木をのぼれ》は元々高コストのカードが多く含まれるこのデッキではドロー機会が多く、1マナでプレイすることを想定している《力線の束縛》もマナ総量自体は6マナですからドロー可能と相性が良いです。
《執念の徳目》は7マナのカードですが、2マナの除去としてもプレイできます。ランプはマナが溜まった後半に強いデッキですから、最序盤に対戦相手の攻勢を凌ぎつつ、ライフを得られる能力はデッキと噛み合っています。終盤にはそのままフィニッシャーになってくれたりと無駄がありません。
白系ミッドレンジ(エスパー・ミッドレンジ/エスパー・レジェンズ/オルゾフ・ミッドレンジ)
2 《アダーカー荒原》 1 《地底の大河》 3 《英雄の公有地》 2 《金属海の沿岸》 1 《天上都市、大田原》 1 《島》 1 《皇国の地、永岩城》 3 《ラフィーンの塔》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 2 《コイロスの洞窟》 3 《砕かれた聖域》 4 《闇滑りの岸》 2 《眠らずの城塞》 -土地(26)- 4 《敬虔な新米、デニック》 2 《しつこい負け犬》 3 《黙示録、シェオルドレッド》 4 《策謀の予見者、ラフィーン》 3 《フェアリーの黒幕》 -クリーチャー(16)- |
3 《切り崩し》 3 《放浪皇》 4 《婚礼の発表》 3 《かき消し》 2 《漆月魁渡》 3 《喉首狙い》 -呪文(18)- |
1 《切り崩し》 2 《眼識の収集》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《邪悪を打ち砕く》 1 《否認》 1 《告別》 2 《未認可霊柩車》 2 《強迫》 1 《シェオルドレッド》 1 《ぎらつく氾濫》 -サイドボード(15)- |
1 《平地》 3 《皇国の地、永岩城》 3 《天上都市、大田原》 2 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 4 《コイロスの洞窟》 4 《英雄の公有地》 4 《闇滑りの岸》 2 《金属海の沿岸》 4 《眠らずの城塞》 -土地(27)- 3 《輝かしい聖戦士、エーデリン》 4 《敬虔な新米、デニック》 4 《スレイベンの守護者、サリア》 4 《策謀の予見者、ラフィーン》 2 《復活したアーテイ》 4 《離反ダニ、スクレルヴ》 4 《黙示録、シェオルドレッド》 3 《侵攻の伝令、ローナ》 2 《フェアリーの黒幕》 -クリーチャー(30)- |
3 《喉首狙い》
-呪文(3)- |
3 《軽蔑的な一撃》 2 《放浪皇》 4 《切り崩し》 1 《復活したアーテイ》 2 《第三の道のロラン》 1 《執念の徳目》 2 《下水王、駆け抜け侯》 -サイドボード(15)- |
《策謀の予見者、ラフィーン》を中心にしたエスパーカラーのデッキ。《婚礼の発表》や《放浪皇》などの非クリーチャー呪文を使ったミッドレンジタイプのものと、《離反ダニ、スクレルヴ》や《スレイベンの守護者、サリア》を使ったクリーチャー中心のレジェンズタイプの2種類があります。
どちらのデッキにも《眠らずの城塞》が採用されています。このように、今回登場したミシュラランドを使用できる敵対色カラーのデッキは友好色カラーのデッキと比べて強みが生まれました。
6 《平地》 1 《皇国の地、永岩城》 4 《沼》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 4 《コイロスの洞窟》 4 《眠らずの城塞》 4 《砕かれた聖域》 2 《ミレックス》 -土地(26)- 4 《ガムドロップの毒殺者》 2 《輝かしい聖戦士、エーデリン》 3 《下水王、駆け抜け侯》 2 《しつこい負け犬》 4 《ファイレクシアの宣教師》 -クリーチャー(15)- |
4 《婚礼の発表》 4 《忠義の徳目》 2 《放浪皇》 3 《全軍突撃》 1 《不笑のソリン》 2 《忘却の儀式》 2 《切り崩し》 1 《喉首狙い》 -呪文(19)- |
2 《一巻の終わり》 1 《第三の道のロラン》 2 《強迫》 1 《切り崩し》 2 《窃取》 1 《忘却の儀式》 1 《不笑のソリン》 2 《アガサの魂の大釜》 1 《魅せられた花婿、エドガー》 1 《ギックスの残虐》 1 《覆い隠し》 -サイドボード(15)- |
使用する色をオルゾフの2色に絞ったタイプのミッドレンジも結果を残しています。3色のカラーリングと比較すると使用できるカードの幅は狭まりますが、タップイン土地の使用枚数が少なくなるため、円滑な動きが可能となります。
《忘却の儀式》は相手のあらゆるパーマネントに複数回干渉可能な優秀除去で、特に白系のミッドレンジミラーでは《婚礼の発表》を巡る盤面の取り合いで絶大な威力発揮します。
白系ミッドレンジの多くのリストで使われている《忠義の徳目》《婚礼の発表》の2枚はクリーチャー・トークンを並べながら全体強化していくわかりやすいコンセプトとなっており、順番に出していくだけで非常に強固な盤面を作り出すことができます。
白単アグロ
白いデッキということで、白単アグロもあわせてご紹介します。
18 《平地》 2 《皇国の地、永岩城》 3 《ミシュラの鋳造所》 -土地(23)- 4 《スレイベンの守護者、サリア》 2 《剛胆な敵対者》 4 《輝かしい聖戦士、エーデリン》 4 《有望な信徒》 4 《救出専門家》 4 《徴兵士官》 2 《離反ダニ、スクレルヴ》 4 《銅纏いの先兵》 1 《イーオスの遍歴の騎士》 4 《呪文書売り》 -クリーチャー(33)- |
4 《骨化》
-呪文(4)- |
4 《婚礼の発表》 4 《選定された平和の番人》 3 《邪悪を打ち砕く》 4 《軍備放棄》 -サイドボード(15)- |
『エルドレインの森』からは、過去に白単アグロの代名詞だった《光輝王の野心家》を彷彿とさせるクリーチャーである《呪文書売り》が追加されています。マナこそ掛かってしまいますが、「魔術師・役割・トークン」は役割・トークンの中でも非常に強力なものです。優秀な2マナクリーチャーの獲得は白単アグロにとっての命題だったので、大きな助けとなることでしょう。
依然として《スレイベンの守護者、サリア》は強力なクリーチャーであり、このマウント能力は他デッキにないものです。《離反ダニ、スクレルヴ》と組み合わせてのハメ技も健在で、環境次第でポジションを上げてくる可能性はあります。
『エルドレインの森』のカードを主体とした新デッキ
ここまでは既存デッキのアップデートを紹介しましたが、『エルドレインの森』のカードを中心とした新デッキも登場しています。
ゴルガリ・ミッドレンジ
1 《耐え抜くもの、母聖樹》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 4 《死天狗茸の林間地》 4 《眠らずの小屋》 4 《ラノワールの荒原》 5 《沼》 5 《森》 2 《ミシュラの鋳造所》 -土地(26)- 2 《しつこい負け犬》 4 《苔森の戦慄騎士》 3 《グリッサ・サンスレイヤー》 3 《黙示録、シェオルドレッド》 2 《墓地の侵入者》 3 《開花の亀》 2 《下水王、駆け抜け侯》 -クリーチャー(19)- |
2 《切り崩し》 1 《強迫》 4 《喉首狙い》 2 《ヴェールのリリアナ》 3 《執念の徳目》 1 《羅利骨灰》 2 《麒麟の教え》 -呪文(15)- |
2 《切り崩し》 3 《強迫》 2 《多元宇宙の突破》 1 《ヴェールのリリアナ》 1 《羅利骨灰》 1 《ファイレクシアの闘技場》 2 《向上した精霊信者、ニッサ》 1 《窃取》 2 《一巻の終わり》 -サイドボード(15)- |
新セットのカードをふんだんに使いながら、早くも環境で人気を博しているミッドレンジデッキです。
最序盤から展開していくクリーチャーには新顔が揃い踏みで、高品質なクリーチャーでビートダウンを行います。《グリッサ・サンスレイヤー》は『ファイレクシア:完全なる統一』のカードで、これまではフィットするデッキがなくそのポテンシャルを生かす場面がありませんでしたが、今回で活躍の場を得ることができています。
そしてこのデッキでひと際目立つ存在なのが《開花の亀》です。土地に関する効果を3つ有しているのですが、いずれもミシュラランドと高相性です。起動コスト軽減効果により複数枚の起動も容易となっており、見た目以上のビートダウン性能を発揮します。
ディミーア・フェアリー
4 《闇滑りの岸》 4 《難破船の湿地》 4 《地底の大河》 2 《ミレックス》 1 《天上都市、大田原》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 5 《沼》 4 《島》 -土地(25)- 4 《眠り呪いのフェアリー》 4 《フェアリーの黒幕》 4 《光素を漁る者》 2 《夢見る決闘者、オビラ》 2 《黙示録、シェオルドレッド》 1 《復活したアーテイ》 1 《慈愛の王、タリオン》 -クリーチャー(18)- |
4 《呪文どもり》 2 《フェアリーの剣技》 2 《考慮》 2 《切り崩し》 3 《喉首狙い》 2 《速足の学び》 1 《消えゆく希望》 1 《漆月魁渡》 -呪文(17)- |
3 《軽蔑的な一撃》 2 《切り崩し》 1 《強迫》 1 《否認》 2 《記憶の氾濫》 2 《寄生性掌握》 4 《墓地の侵入者》 -サイドボード(15)- |
4 《地底の大河》 4 《闇滑りの岸》 4 《難破船の湿地》 1 《天上都市、大田原》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 2 《ミレックス》 4 《島》 3 《沼》 -土地(23)- 2 《黙示録、シェオルドレッド》 2 《ヨーグモスの法務官、ギックス》 4 《フェアリーの黒幕》 2 《光素を漁る者》 4 《眠り呪いのフェアリー》 4 《フェアリーの夢泥棒》 -クリーチャー(18)- |
2 《漆月魁渡》 1 《かき消し》 1 《切り崩し》 2 《喉首狙い》 1 《シェオルドレッドの勅令》 4 《呪文どもり》 4 《自我の流出》 3 《フェアリーの剣技》 1 《執念の徳目》 -呪文(19)- |
2 《ヴェールのリリアナ》 2 《墓地の侵入者》 2 《眼識の収集》 2 《軽蔑的な一撃》 1 《ギックスの命令》 1 《剃刀鞭の人体改造機》 1 《否認》 2 《ぎらつく氾濫》 1 《一巻の終わり》 1 《執念の徳目》 -サイドボード(15)- |
こちらは『エルドレインの森』にて多数追加されたフェアリークリーチャーをフィーチャーしたクロックパーミッションデッキになります。《眠り呪いのフェアリー》を筆頭に、クロックパーミッション戦略に適したカードの登場を受けデッキとして成立しました。
これまでにも優秀なフェアリーは存在しましたが、デッキとして成立するほど数は揃っておらず、またフェアリーのクリーチャータイプでまとめる意味もありませんでした。
「フェアリーであること」の意味を見出すカードが多数登場し、アーキタイプとして成立するに至りました。これらのカードはフェアリーデッキ以外でプレイする事は難しく、完全にこのデッキ独自の強みとなっています。
マナ要求系の打ち消し呪文や手札破壊などピーキーなカードが多く採用されていますが、《漆月魁渡》や《ヨーグモスの法務官、ギックス》といった強力なアドバンテージソースがこの戦略をバックアップします。軽いクリーチャー陣と組み合わせ、手数で対戦相手を圧倒します。
優勝デッキ
ここまでに紹介してきたデッキが活躍したイベントにおいて、栄えある優勝を飾ったデッキを3つ紹介します。優勝という結果からポテンシャルは折り紙付きで、いずれも素晴らしい着眼点で『エルドレインの森』のカードを使いこなしています。
ナヤ・トークン
2 《銅線の地溝》 1 《カープルーザンの森》 2 《草茂る農地》 1 《剃刀境の茂み》 1 《低木林地》 1 《落石の谷間》 4 《日没の道》 3 《眠らずの露営》 4 《戦場の鍛冶場》 1 《山》 1 《ジェトミアの庭》 -土地(21)- 4 《探索するドルイド》 1 《ヴォルダーレンの興奮探し》 3 《僧院の速槍》 4 《復興の領事、ピア・ナラー》 -クリーチャー(12)- |
4 《無謀なる衝動》 2 《塔の点火》 4 《レンの決意》 1 《ミシュラの研究机》 4 《婚礼の発表》 4 《忠義の徳目》 3 《邪悪を打ち砕く》 1 《希望の標、チャンドラ》 1 《夜を照らす》 1 《放浪皇》 1 《ゴバカーンへの侵攻》 1 《ナヒリの戦争術》 -呪文(27)- |
1 《塔の点火》 1 《削剥》 1 《兄弟仲の終焉》 2 《加護をもたらす戦乙女》 1 《希望の標、チャンドラ》 3 《痛烈な一撃》 1 《静寂の呪い》 1 《ゴバカーンへの侵攻》 1 《第三の道のロラン》 2 《アガサの魂の大釜》 1 《焦熱の交渉人、ヤヤ》 -サイドボード(15)- |
先に紹介した白系ミッドレンジの1種で、《忠義の徳目》《婚礼の発表》をベースに、もう一つの主役である《復興の領事、ピア・ナラー》ギミックを取り込んでいます。
《復興の領事、ピア・ナラー》は追放領域からカードを唱えることで飛行機械トークンを生み出すカードです。これと高相性である《無謀なる衝動》《レンの決意》を用いることでアドバンテージを得ながら盤面を構築していきます。
『エルドレインの森』から追加された《探索するドルイド》も追放領域にカードを送り込む能力を持っており、シナジーします。さらに面白いのは、このデッキに採用されている緑のカードは《探索するドルイド》のみであるため、他のどのカードを唱えても《探索するドルイド》は成長していきます。出来事能力も本体も完全にデッキにフィットしている訳です。美しい!
アドバンテージを拡大し続けた先のゴールとして、巨大に成長した《探索するドルイド》を《ヴォルダーレンの興奮探し》で投げ飛ばしたり、《希望の標、チャンドラ》と《夜を照らす》のコンボを内蔵していたりと、プレイしていて非常に楽しそうなデッキです。大会のスコアも10勝0敗の負けなしと圧巻の成績でした。
5色《アラーラへの侵攻》
1 《沼》 1 《森》 1 《山》 1 《島》 1 《平地》 1 《憑依された峰》 1 《難破船の湿地》 1 《嵐削りの海岸》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 3 《ジェトミアの庭》 3 《ラフィーンの塔》 3 《スパーラの本部》 1 《ザンダーの居室》 3 《ジアトラの試練場》 4 《ラノワールの荒原》 1 《ミレックス》 -土地(27)- 4 《墓所の冒涜者》 3 《ファイレクシアの肉体喰らい》 1 《偉大なる統一者、アトラクサ》 2 《原初の征服者、エターリ》 4 《Bramble Familiar》 -クリーチャー(14)- |
1 《喉首狙い》 4 《群れの渡り》 4 《力線の束縛》 2 《免れ得ぬ破滅、ルーカ》 4 《アラーラへの侵攻》 4 《執念の徳目》 -呪文(19)- |
1 《寄生性掌握》 4 《鏡殻のカニ》 1 《ファイレクシアの肉体喰らい》 1 《歴史の彼方》 1 《偉大なる統一者、アトラクサ》 2 《機械の母、エリシュ・ノーン》 1 《沈黙を破る者、スラーン》 1 《免れ得ぬ破滅、ルーカ》 2 《コグラとイダーロ》 1 《豆の木をのぼれ》 -サイドボード(15)- |
非常に禍々しい見た目をしており、一見すると前述の版図ランプと勘違いしてしまいそうになります。まずはデッキの軸を紹介しましょう。
このデッキの主役は《アラーラへの侵攻》と《木苺の使い魔》です。《アラーラへの侵攻》を唱えると、その効果でマナ総量が4以下である土地以外のカードを2枚になるまで捲り、その内1枚をプレイできます。このデッキにはマナ総量が4マナ以下のカードは《木苺の使い魔》と《喉首狙い》1枚しか入っていないため、《木苺の使い魔》が必ず1枚は捲れることになります。そしてこの時、なんと《木苺の使い魔》は「出来事」としてプレイすることが可能なのです!
《アラーラへの侵攻》でカードを捲る時は本体のマナ・コストを参照しますが、いざ唱える時には出来事と本体どちらでも唱えても良いというルールを利用したコンボがこのデッキの正体になっています。
本来4マナ以下のカードをほとんど採用しないデッキ構造は難しいです。4ターンの間対戦相手にほとんど干渉せず好き放題されてしまいますからね。
しかしながらこのデッキ、裏技を用いることでこの問題を解消しています。版図により最小1マナで唱えられる《力線の束縛》、出来事により2マナで唱えられる《執念の徳目》、試作により3マナで唱えられる《ファイレクシアの肉体喰らい》など、ありとあらゆる能力を用いて本来のマナ総量を無視して序盤のアクションを用意することに成功。3年間に拡大されたスタンダードのシステムを余すことなく使い倒していると言えます。
また《墓所の冒涜者》も《アラーラへの侵攻》と相性の良いカードです。あらかじめ《群れの渡り》を墓地に捨てておけば《アラーラへの侵攻》の7つのカウンターを一気に取り除くことが可能になっています。そのまま《大渦の目覚め》として唱えることで《墓所の冒涜者》をコピーし、さらに能力を使用することができます。
デッキの随所にシナジーが見られる非常に美しいデッキで、このデッキも大会では9勝0敗のハイパフォーマンスを発揮し優勝しています。
赤単アグロ
18 《山》 2 《反逆のるつぼ、霜剣山》 3 《ミシュラの鋳造所》 -土地(23)- 4 《僧院の速槍》 4 《血に飢えた敵対者》 3 《フェニックスの雛》 1 《シヴの壊滅者》 3 《怪しげな統治者、スクイー》 2 《ロノムの発掘家、フェルドン》 3 《魅力的な悪漢》 2 《擬態する歓楽者、ゴドリック》 -クリーチャー(22)- |
4 《稲妻の一撃》 4 《火遊び》 4 《熊野と渇苛斬の対峙》 2 《ナヒリの戦争術》 1 《かき立てる炎》 -呪文(15)- |
1 《祭典壊し》 2 《轟く雷獣》 2 《焦熱の交渉人、ヤヤ》 1 《シヴの壊滅者》 1 《兄弟仲の終焉》 1 《抹消する稲妻》 2 《レジスタンスの火、コス》 3 《石術の連射》 1 《ナヒリの戦争術》 1 《歪んだ忠義》 -サイドボード(15)- |
ここまであまり赤いデッキを紹介できていませんでしたが、優勝を遂げた3つ目のデッキは赤単アグロです。このデッキも10勝0敗の圧倒的な成績を残しています。
『エルドレインの森』からは《魅力的な悪漢》と《擬態する歓楽者、ゴドリック》が使われています。共に優秀な速攻クリーチャーであり、赤単アグロの性質にマッチしています。注目していたプレイヤーも多いと思いますので、期待通りの働きをしてくれていることでしょう。《魅力的な悪漢》の「ひねくれ者・役割・トークン」を生み出す能力は自身と合わせて「祝祭」能力の達成に貢献しますので、新カード両者の間でシナジーがあるのも注目すべきポイントですね。
《魅力的な悪漢》には更に特筆すべき点があり、基本は2マナ2/2の速攻クリーチャーとして運用することになると思いますが、宝物を生み出す選択肢もあり、これはサイドボードに多く積まれた4マナのカードを運用するのに役立ってくれます。3ターン目にこれらのカードをプレイできれば大きなプレッシャーになります。メインデッキとサイドボードで役割を変化させることができる、非常に器用なカードですね。
また今回のリストには採用されていませんが、《エンバレスの古参兵》や《巨怪の怒り》を採用した前のめりなタイプのリストもあり、今後そういったバリエーションのリストが活躍する可能性があることも含め、赤単アグロの中でもまだまだ構築の練り甲斐がありそうです。
早くも回り出すメタゲーム
今回紹介した3つのイベントは下記の順番で実施されました。
9/9(土) 12:00 蒼紅杯
9/9(土) 22:00 Standard Challenge [9/9]
9/11(月) 06:00 Standard Challenge [9/10]
蒼紅杯ではゴルガリ・ミッドレンジやナヤ・トークンといったミッドレンジデッキの活躍が目立ちました。
蒼紅杯上位入賞デッキ | |
---|---|
優勝 | ナヤ・トークン |
準優勝 | ゴルガリ・ミッドレンジ |
トップ4 | エスパー・ミッドレンジ |
トップ4 | ゴルガリ・ミッドレンジ |
トップ8 | ディミーア・フェアリー |
トップ8 | ゴルガリ・コントロール |
トップ8 | 版図ランプ |
トップ8 | オルゾフ・ミッドレンジ |
その夜に開催されたStandard Challenge[9/9]では版図ランプや5色《アラーラへの侵攻》が躍動。
Standard Challenge[9/9]上位入賞デッキ | |
---|---|
優勝 | 5色《アラーラへの侵攻》 |
準優勝 | エスパー・レジェンズ |
トップ4 | ディミーア・フェアリー |
トップ4 | 版図ランプ |
トップ8 | 版図ランプ |
トップ8 | 版図ランプ |
トップ8 | ゴルガリ・ミッドレンジ |
トップ8 | ゴルガリ・ミッドレンジ |
さらにその翌日のStandard Challenge[9/10]ではアグロやクロックパーミッションが結果を残しています。
Standard Challenge[9/10]上位入賞デッキ | |
---|---|
優勝 | 赤単アグロ |
準優勝 | 5色《アラーラへの侵攻》 |
トップ4 | エスパー・レジェンズ |
トップ4 | アゾリウス兵士 |
トップ8 | アゾリウス兵士 |
トップ8 | ディミーア・フェアリー |
トップ8 | 白単アグロ |
トップ8 | ゴルガリ・ミッドレンジ |
カードパワーの集合体であり、雑多に強く安定感のあるミッドレンジデッキが最初の大会で活躍
→それに対し構造的に有利なランプ系のデッキが活躍
→それに対し構造的に強いクロックパーミッション系のデッキが活躍
→ランプに戦えて、クロックパーミッション系に強いアグロが活躍
……といった具合に、環境がスタートして間もない時期にもかかわらず、数時間刻みで既にメタゲームが動き出しています。イベントが行われて数時間もすれば入賞デッキリストが手に入る時代ですから、それに伴ってメタゲームの変遷スピードも高速化しつつあります。大会ごとに真新しいデッキが活躍し、斬新なアイデアを披露してくれるさまはまさに環境初期といった感じで、結果を追っているだけでも非常に楽しいです。
そして今週末には、スタンダードのイベントとしてジャパンオープン2023も開催されます。
【#MTGアリーナ eスポーツ】⁰"マジック:ザ・ギャザリング ジャパンオープン 2023"⁰⁰9月17日(日) 12:00よりTOP64による決勝ラウンドの模様を配信決定!⁰
— MTGアリーナ日本公式 (@MTGArenaJP) 2023年9月11日
最新スタンダード環境を楽しもう
実況
ブルナー実久
石川朋彦
解説
原根健太
行弘賢⁰⁰#MTGJapanOpen2023 pic.twitter.com/DwiqFLTIAH
今回の結果を踏まえ、どんなデッキが活躍するのかとても楽しみです。2日目のトップ64からは配信があり、僕はこちらに解説として出演させていただきますので、そちらの方も楽しみにしてもらいつつ、参加される方は優勝目指して頑張ってください!今回の記事もお役に立つことを願っています。
それではまた次回。
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2024.11.15お知らせ
MTGアリーナニュース(2024年11月11日)|お知らせ
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BACK NUMBER 連載終了
- Beyond the Basics -上級者への道-
- Latest Developments -デベロップ最先端-
- ReConstructed -デッキ再構築-
- Daily Deck -今日のデッキ-
- Savor the Flavor
- 射場本正巳の「ブロールのススメ」
- 津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
- 浅原晃の「プレミアイベント三大チェックポイント!」
- ガフ提督の「ためになる」今日の1枚
- 射場本正巳の「統率者(2017年版)のススメ」
- かねこの!プロツアー食べ歩き!
- ロン・フォスターの統率者日記
- 射場本正巳の「統率者(2016年版)のススメ」
- マアヤのマジックほのぼの日記
- 金子と塚本の「勝てる!マジック」
- 射場本正巳の「統率者(2015年版)のススメ」
- 週刊連載インタビュー「あなたにとってマジックとは?」
- なかしゅー世界一周
- 中村修平の「デイリー・デッキ」
- 射場本正巳の「統率者(2014年版)のススメ」
- 中村修平の「ドラフトの定石!」
- 浅原晃の「プロツアー観戦ガイド」
- 鍛冶友浩の「プロツアー観戦ガイド」
- ウィザーズプレイネットワーク通信
- Formal Magic Quiz
- 週刊デッキ構築劇場
- 木曜マジック・バラエティ
- 鍛冶友浩の「デジタル・マジック通信」
- 鍛冶友浩の「今週のリプレイ!」
- 渡辺雄也の「リミテッドのススメ」
- 「明日から使える!」渡辺リミテッド・コンボ術
- 高橋優太の「このフォーマットを極めろ!」
- 高橋優太の「このデッキを使え!」
- 黒田正城の「エターナルへの招待」
- 三田村リミテッド研究室
- 新セットめった切り!
- シングルカードストラテジー
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- その他記事