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原根健太の徹底解説!スタンダード・アナライズ
第11回:2つの大型イベントから読み解く『ニューカペナの街角』環境
皆さんこんにちは。スタンダード連載担当の原根(@jspd_)です。
今回は『ニューカペナの街角』リリース後のスタンダード環境についてお話していきたいと思います。前もってお話ししておきますと、現在のスタンダードはかなり面白い環境になっていますので、この記事を読んで興味を持つことができましたら、ぜひプレイしてみてください。多種多様なデッキが活躍できている環境ですので、必ずや気に入るデッキが見つかるはずです。
『ニューカペナの街角』
まずは新セットである『ニューカペナの街角』について触れていきましょう。各セットには特色がありますが、今回は5つのファミリーに基づく3色セットです。
『イコリア:巨獣の住処』で登場したトライオーム・サイクルに続く3色サイクリング土地の登場です。現在のスタンダードシーンは小道サイクル(《岩山被りの小道》など)とスローランド・サイクル(《嵐削りの海岸》など)によりすでに強力なマナベースを築いていましたが、今回の追加により一層強化されました。マナベースの強化は見た目以上の影響力があり、3色分のパワーカードをふんだんに使うことができるため、デッキパワーの底上げに繋がります。《策謀の予見者、ラフィーン》のような色拘束の強いカードも非常に使いやすくなっています。
今セットには《策謀の予見者、ラフィーン》を筆頭に色拘束の強いパワーカードが数多く収録されており、3色土地の追加は大きな助けになっています。(カラーホイール上で見た)弧3色のデッキはパワーカードを使いやすく、優遇された状況にあると言えるでしょう。環境の中心となるデッキも弧3色デッキが筆頭になりつつあります。
実際にどんなデッキが存在するのか直近の大会結果を元に見ていきましょう。
ニューカペナ・チャンピオンシップ
新セット発売に付随するセットチャンピオンシップですが、今回はリリースから3週間後と比較的短期間での開催となったため、環境が煮詰まり切っておらず、参加者それぞれがさまざまなアプローチを試みていました。最近のセットチャンピオンシップは大会前に情報が出尽くしていることがほとんどで、使用デッキのシェアが固まってしまうことが多く、やはりトーナメントは発売後早期のタイミングが最も面白いと感じます。
大会開始前の事前評においては「エスパー・ミッドレンジ」「ジャンド・ミッドレンジ」「ナヤ・ルーン」の3つのデッキが高いシェアを占めるだろうと予想されており、実際のメタゲームもほとんどそれに沿う形となりました。
「エスパー・ミッドレンジ」
1 《平地》 4 《ラフィーンの塔》 3 《さびれた浜》 3 《連門の小道》 2 《砕かれた聖域》 4 《陽光昇りの小道》 2 《難破船の湿地》 4 《清水の小道》 2 《目玉の暴君の住処》 1 《皇国の地、永岩城》 -土地(26)- 4 《光輝王の野心家》 4 《しつこい負け犬》 4 《策謀の予見者、ラフィーン》 -クリーチャー(12)- |
1 《呪文貫き》 4 《消失の詩句》 3 《冥府の掌握》 4 《婚礼の発表》 1 《エメリアの呼び声》 2 《食肉鉤虐殺事件》 1 《漆月魁渡》 4 《放浪皇》 1 《不笑のソリン》 1 《蜘蛛の女王、ロルス》 -呪文(22)- |
3 《エメリアのアルコン》 1 《忘れられた大天使、リーサ》 3 《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》 3 《否認》 2 《軽蔑的な一撃》 1 《食肉鉤虐殺事件》 1 《勢団の銀行破り》 1 《蜘蛛の女王、ロルス》 -サイドボード(15)- |
今回追加された《ラフィーンの塔》を基に、エスパーカラーの優良カードをふんだんに採用したミッドレンジデッキです。
《しつこい負け犬》は序盤のダメージソースから後半の継戦能力までも担う優良な低マナ域クリーチャーで、黒いクリーチャーデッキにはほとんど採用されています。今後のスタンダードシーンにおいてもプレイされ続けることでしょう。
《策謀の予見者、ラフィーン》は「エスパー・ミッドレンジ」を代表する存在で、攻守両面で素晴らしい働きをします。高いタフネスと護法能力は除去耐性として素晴らしいものです。さらに、《消失の詩句》が頻繁にプレイされる現在のメタゲームにおいては多色のパーマネントであるということも1つの強みとして挙げられます。
そのため、ラフィーンを対処するために多くのデッキは《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》を採用しており、非常に限定的な除去呪文であるにも関わらず、メインデッキから採用したり、この呪文のために黒をタッチしたり、ラフィーンはまさに環境を定義する1枚となっています。
「ジャンド・ミッドレンジ」
1 《沼》 1 《山》 4 《ジアトラの試練場》 2 《憑依された峰》 4 《荒廃踏みの小道》 2 《死天狗茸の林間地》 4 《闇孔の小道》 1 《落石の谷間》 3 《岩山被りの小道》 1 《目玉の暴君の住処》 1 《バグベアの居住地》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 -土地(26)- 4 《税血の収穫者》 1 《しつこい負け犬》 1 《嘘の神、ヴァルキー》 4 《茨橋の追跡者》 -クリーチャー(10)- |
4 《電圧のうねり》 1 《強迫》 2 《冥府の掌握》 4 《鏡割りの寓話》 3 《土建組一家の魔除け》 2 《豪火を放て》 2 《食肉鉤虐殺事件》 4 《エシカの戦車》 1 《蜘蛛の女王、ロルス》 1 《レンと七番》 -呪文(24)- |
1 《領界喰らい、サルーフ》 3 《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》 1 《強迫》 1 《罠を探す》 1 《土建組一家の魔除け》 1 《豪火を放て》 1 《食肉鉤虐殺事件》 2 《勢団の銀行破り》 2 《未認可霊柩車》 1 《蜘蛛の女王、ロルス》 1 《レンと七番》 -サイドボード(15)- |
「ジャンド・ミッドレンジ」も「エスパー・ミッドレンジ」同様、今回追加された3色土地である《ジアトラの試練場》を用いた強力なマナベースを背景に、3色のパワーカードをふんだんに用いることで対戦相手を圧倒するタイプのデッキです。赤と緑を用いることで《鏡割りの寓話》と《エシカの戦車》といった当該色のパワーカードをプレイできるのが特徴です。
「ジャンド・ミッドレンジ」は《エシカの戦車》を非常に上手く扱うことができ、《キキジキの鏡像》により生み出されたコピー・トークンは戦車を介すことで戦場に留めることができますし、《敵対するもの、オブ・ニクシリス》の犠牲能力により生み出されたトークンは伝説のカードタイプを持たないためこれもコピー可能と、「エスパー・ミッドレンジ」とは角度の異なるシナジーや強みを有しています。
「ナヤ・ルーン」
1 《森》 1 《平地》 4 《枝重なる小道》 4 《岩山被りの小道》 4 《日没の道》 4 《針縁の小道》 2 《ハイドラの巣》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 1 《皇国の地、永岩城》 -土地(22)- 4 《気前のいい訪問者》 4 《樹海の自然主義者》 4 《無常の神》 4 《ルーン鍛えの勇者》 -クリーチャー(16)- |
4 《精霊との融和》 2 《監禁の円環》 4 《強力のルーン》 2 《速度のルーン》 2 《持続のルーン》 4 《鏡割りの寓話》 4 《スカルドの決戦》 -呪文(22)- |
1 《平地》 2 《粗暴な聖戦士》 2 《スカイクレイブの亡霊》 2 《鎮まらぬ大地、ヤシャーン》 4 《ポータブル・ホール》 2 《タミヨウの保管》 2 《勇敢な姿勢》 -サイドボード(15)- |
「ナヤ・ルーン」は前セットである『神河:輝ける世界』で《気前のいい訪問者》のような中軸が出揃って以降活躍を続けているアーキタイプです。型にハマった時の爆発力は環境随一で、上記2デッキにはない1マナからのブン回りがあるのが魅力です。対戦相手よりワンテンポ早く動き出せるというのは、その分だけイニシアチブを掴みやすくなります。
このデッキも3色土地である《ジェトミアの庭》の登場を受け、マナベース強化の恩恵を受けることができるように見えますが、前述の通り1マナからの動きが強みとなっているため、土地のタップインを許容しづらく、今大会「ナヤ・ルーン」で最上位の成績を残したリストには《ジェトミアの庭》は採用されていません。結果、新セットで追加されたカードは1枚も採用されておらず、明確な強化を受けた他デッキと比べ力不足が懸念される状態です。
以上が事前に評価の高かったデッキとなります。そして、実際の大会結果が以下の通りです。
- 優勝 「ジェスカイ日向」
- 準優勝 「エスパー・ミッドレンジ」
- 3位 「ナヤ・ミッドレンジ」
- 4位 「グリクシス・吸血鬼」
- 5位 「ドラゴン・コンボ」
- 6位 「ジャンド・ミッドレンジ」
- 7位 「エスパー・ミッドレンジ」
- 8位 「ジャンド・ミッドレンジ」
優勝は「ジェスカイ日向」をプレイしたヤン・メルケル選手でした。
「ジェスカイ日向」
1 《島》 1 《山》 4 《嵐削りの海岸》 4 《河川滑りの小道》 2 《さびれた浜》 3 《連門の小道》 3 《日没の道》 3 《針縁の小道》 1 《ストーム・ジャイアントの聖堂》 -土地(22)- 4 《暁冠の日向》 4 《黄金架のドラゴン》 -クリーチャー(8)- |
3 《炎恵みの稲妻》 1 《棘平原の危険》 1 《電圧のうねり》 4 《表現の反復》 4 《ジュワー島の撹乱》 2 《かき消し》 2 《否認》 1 《ドラゴンの火》 4 《鏡割りの寓話》 4 《マグマ・オパス》 3 《渦巻く霧の行進》 1 《髑髏砕きの一撃》 -呪文(30)- |
1 《怪しげな密航者》 1 《船砕きの怪物》 1 《炎恵みの稲妻》 1 《呪文貫き》 1 《電圧のうねり》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《ドラゴンの火》 2 《勇敢な姿勢》 1 《地震波》 1 《多元宇宙の警告》 1 《記憶の氾濫》 1 《勢団の銀行破り》 -サイドボード(15)- |
「ジェスカイ日向」は《暁冠の日向》と《マグマ・オパス》のコンボデッキで、《暁冠の日向》がいる状況では《マグマ・オパス》を最小2マナでプレイすることが可能になります。その他《黄金架のドラゴン》も用いることで8マナと重い《マグマ・オパス》のプレイを手助けするなど、大技を内包したコンボ・コントロールデッキです。
「ジェスカイ日向」は今大会使用者が3名しかいなかったデッキで、マークの薄いデッキでした。結果的には優勝の成績ではあるものの、使用者3名のスイスラウンドの成績は4勝3敗・4勝3敗・2勝1敗といまひとつ奮っていません。「ナヤ・ルーン」同様『ニューカペナの街角』からの新規戦力が0枚のデッキであり、その点で注目度は低かったと言えます。
他方、同じくコンボ・コントロールとして使用者全体でハイスコアを叩き出し、大会の台風の目となったのが「ジェスカイ・ストーム」です。
「ジェスカイ・ストーム」
5 《山》 3 《島》 4 《嵐削りの海岸》 4 《河川滑りの小道》 1 《ストーム・ジャイアントの聖堂》 2 《天上都市、大田原》 1 《反逆のるつぼ、霜剣山》 -土地(20)- 4 《黄金架のドラゴン》 3 《溺神の信奉者、リーア》 -クリーチャー(7)- |
4 《棘平原の危険》 3 《電圧のうねり》 2 《消えゆく希望》 4 《表現の反復》 3 《感電の反復》 3 《ジュワー島の撹乱》 2 《自身の誇示》 1 《渦巻く霧の行進》 1 《セジーリの防護》 4 《鏡割りの寓話》 4 《大勝ち》 2 《予想外の授かり物》 -呪文(33)- |
1 《全知の調停者》 1 《船砕きの怪物》 1 《消えゆく希望》 1 《呪文貫き》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《ドラゴンの火》 1 《燃えがら地獄》 1 《否認》 1 《才能の試験》 2 《多元宇宙の警告》 1 《家の焼き払い》 1 《渦巻く霧の行進》 -サイドボード(15)- |
「ジェスカイ・ストーム」は《黄金架のドラゴン》を軸としたコンボデッキです。同カードが戦場に存在する状況では《予想外の授かり物》や《大勝ち》は無料で唱えられる呪文となり、《棘平原の危険》をドラゴンに対してプレイすれば1マナを消費して2マナを生み出すなどマナが増えていきます。これらの呪文を《溺神の信奉者、リーア》で再利用し、同一ターン中に次々と呪文を唱え、大量の「ストーム」を得た《自身の誇示》で《黄金架のドラゴン》を強化、一撃で対戦相手を倒し切るコンボです。
同デッキは今回のメタゲームの上位2種である「エスパー・ミッドレンジ」および「ナヤ・ルーン」に対しての優位を示しており、この時点での環境の最適解だったと言えます。
「グリクシス吸血鬼」
今大会注目の存在となったデッキは他にもあります。「グリクシス吸血鬼」です。
1 《沼》 1 《山》 4 《ザンダーの居室》 2 《憑依された峰》 4 《荒廃踏みの小道》 1 《難破船の湿地》 3 《清水の小道》 3 《嵐削りの海岸》 4 《河川滑りの小道》 2 《目玉の暴君の住処》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 -土地(26)- 4 《税血の収穫者》 2 《血に飢えた敵対者》 2 《しつこい負け犬》 4 《死体鑑定士》 2 《欲深き者、エヴリン》 -クリーチャー(14)- |
4 《電圧のうねり》 1 《強迫》 1 《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》 1 《呪文貫き》 2 《冥府の掌握》 4 《鏡割りの寓話》 1 《魂転移》 2 《食肉鉤虐殺事件》 3 《漆月魁渡》 1 《不笑のソリン》 -呪文(20)- |
1 《欲深き者、エヴリン》 1 《マインド・フレイヤー》 3 《無効》 3 《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》 1 《強迫》 1 《削剥》 1 《軽蔑的な一撃》 1 《否認》 1 《真っ白》 1 《魂転移》 1 《食肉鉤虐殺事件》 -サイドボード(15)- |
先に紹介した「エスパー・ミッドレンジ」や「ジャンド・ミッドレンジ」同様、こちらも《ザンダーの居室》を基盤に屈強なマナベースから3色のパワーカードを押し付けていくデッキです。
《欲深き者、エヴリン》は現スタンダードにおける非常にタフなクリーチャーで、これまでに紹介したデッキが用いる《消失の詩句》や《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》といった環境主流の除去呪文のほとんど受け付けず、一度機能し出せば速やかに戦況を有利に運ぶことができます。
吸血鬼にはアドバンテージ獲得能力に優れたものが多く存在し、ミッドレンジが目指すゲーム指針に非常に適しています。そしてこれらのクリーチャーたちは戦場に出た時の能力を有しているため、《鏡割りの寓話》との相性が良く、デッキ全体が非常に美しくシナジーしています。個人的に今大会で最も感心したデッキでした。
今大会で活躍したデッキはまだまだあります。以下のデッキはいずれも使用者が1人だけでしたがトップ8入賞を果たしており、オリジナルデッキで成果を残せるのは本当に凄いことです。そしてなんと、そのどちらもが日本のプレイヤーでした。お二方ともこの後開催予定の世界選手権への出場を決めていますので、引き続きの活躍を期待したいですね。
「ナヤ・ミッドレンジ」
1 《山》 1 《森》 1 《平地》 3 《ジェトミアの庭》 1 《落石の谷間》 4 《岩山被りの小道》 3 《針縁の小道》 3 《草茂る農地》 4 《枝重なる小道》 1 《バグベアの居住地》 -土地(22)- 4 《祝祭の出迎え》 4 《光輝王の野心家》 2 《スカイクレイブの亡霊》 1 《軍団の天使》 2 《作業場の戦長》 1 《聖域の番人》 -クリーチャー(14)- |
4 《電圧のうねり》 1 《勇敢な姿勢》 4 《鏡割りの寓話》 4 《婚礼の発表》 4 《エメリアの呼び声》 4 《エシカの戦車》 3 《放浪皇》 -呪文(24)- |
4 《エメリアのアルコン》 2 《粗暴な聖戦士》 1 《スカイクレイブの亡霊》 3 《軍団の天使》 2 《タミヨウの保管》 1 《ポータブル・ホール》 2 《壊れた翼》 -サイドボード(15)- |
先に紹介してきたエスパー・ジャンド・グリクシスの3種ミッドレンジ同様、《ジェトミアの庭》を基盤にしたパワーカード集合型のミッドレンジ・デッキのナヤ版です。
白いデッキの鉄板である《光輝王の野心家》に加え《祝祭の出迎え》を最序盤の展開要員として獲得しており、これらから《婚礼の発表》《鏡割りの寓話》、《放浪皇》《軍団の天使》といった具合に各マナ域のパワーカードを叩き付けていきます。
高マナ域には《作業場の戦長》《聖域の番人》を採用しており、非常に『ニューカペナの街角』色の濃い、新セットらしいデッキです。
「ジャンド・ミッドレンジ」(八十岡式)
1 《森》 4 《ジアトラの試練場》 3 《落石の谷間》 2 《岩山被りの小道》 4 《闇孔の小道》 2 《憑依された峰》 4 《荒廃踏みの小道》 3 《バグベアの居住地》 1 《耐え抜くもの、母聖樹》 -土地(24)- 4 《闇市場の巨頭》 2 《祝祭の出迎え》 2 《しつこい負け犬》 2 《嘘の神、ヴァルキー》 3 《ジェトミアの情婦、ジニー・フェイ》 1 《結ばれた者、ハラナとアレイナ》 1 《作業場の戦長》 2 《焼却するもの、ジアトラ》 -クリーチャー(17)- |
3 《電圧のうねり》 1 《強迫》 1 《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》 1 《冥府の掌握》 4 《鏡割りの寓話》 2 《土建組一家の魔除け》 2 《食肉鉤虐殺事件》 1 《髑髏砕きの一撃》 4 《エシカの戦車》 -呪文(19)- |
3 《作業場の戦長》 3 《強迫》 3 《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》 2 《古き神々への拘束》 2 《豪火を放て》 2 《未認可霊柩車》 -サイドボード(15)- |
「ジャンド・ミッドレンジ」はすでに紹介済みですが、日本が誇る殿堂プレイヤー・八十岡翔太氏のデッキは性質が大きく異なり、特記すべき対象です。
通常の「ジャンド・ミッドレンジ」は低マナ域に《税血の収穫者》を用いるのが一般的で、これも非常に強力なカードなのですが、この八十岡式では採用されておらず、代わりに《闇市場の巨頭》が採用されています。このカードの存在により《エシカの戦車》や《焼却するもの、ジアトラ》といった高マナ域カードのプレイターンが早まる他、デッキのもう1つの特徴である《ジェトミアの情婦、ジニー・フェイ》と強力にコンボし、瞬く間に盤面を無数のクリーチャーが支配します。《焼却するもの、ジアトラ》により生み出される宝物も全てクリーチャー・トークンへの変換が可能で、新セットのギミックをこれでもかというほどに使い倒していますね。
メタゲームでシェアの高かったデッキがそれぞれトップ8進出を果たし、7種ものデッキがトップ8を争う多様性に満ちた環境でしたが、唯一「ナヤ・ルーン」のみ、その輪から外れています。「ナヤ・ルーン」は一貫性を有するデッキゆえ高い爆発力を持つのですが、指針が明確だからこそメタりやすいという問題点もあり、ほとんどのデッキが回答を持ち合わせていました。環境で採用率の高い《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》や《エメリアのアルコン》といったヘイトカードが直撃してしまう点がネックになっています。
「日本選手権2022 -Tabletop Returns-」
テーブルトップマジックが帰ってきました! これより前に開催された公式の大型テーブルトップイベントはプレイヤーズツアーもあったマジックフェスト・名古屋2020が最後ですから、約2年4か月ぶりの開催です。このイベントには僕も参加しましたが、イベントの雰囲気や実際のカードの感触が非常に懐かしく、楽しむことができました。またこうした日々が少しずつ戻ってくることに期待したいですね。
さて、実際のイベント結果は以下の通りです。
- 優勝 「オルゾフ・ミッドレンジ」
- 準優勝 「イゼット・コントロール」
- 3位 「エスパー・フィッシュ」
- 4位 「ジャンド・ミッドレンジ」
- 5位 「グリクシス・コントロール」
- 6位 「イゼット・コントロール」
- 7位 「グリクシス吸血鬼」
- 8位 「エスパー・フィッシュ」
優勝は亀崎 頌選手のオルゾフ・ミッドレンジでした。おめでとうございます。優勝者インタビューに「2年前にマジックを始めました。最初に見た試合がプレイヤーズツアー・名古屋2020の決勝です。」とあり衝撃を受けました。日本選手権はよく新しいプレイヤーが台頭するキッカケになると聞きますし、自分も5年前のこの大会での優勝を皮切りに波に乗ることができたと思うので、今後の活躍に期待しています。
「ニューカペナ・チャンピオンシップ」の直後のイベントであったことから、先の大会の影響を強く受けそうなものですが、実際には独創的なデッキが多数入賞しています。テーブルトップの大会はオンラインイベントと異なり「デッキリスト非公開制」で開催されることがほとんどですから、オリジナル要素が強みになりやすい利点があります。こういった点もテーブルトップイベントの醍醐味になりますね。
「オルゾフ・ミッドレンジ」
5 《平地》 3 《沼》 1 《ラフィーンの塔》 4 《砕かれた聖域》 4 《陽光昇りの小道》 1 《フロスト・ドラゴンの洞窟》 3 《目玉の暴君の住処》 2 《皇国の地、永岩城》 1 《見捨てられたぬかるみ、竹沼》 -土地(24)- 4 《光輝王の野心家》 4 《シルバークイルの口封じ》 3 《傑士の神、レーデイン》 2 《ヘンリカ・ダムナティ》 -クリーチャー(13)- |
3 《消失の詩句》 2 《冥府の掌握》 4 《婚礼の発表》 2 《永岩城の修繕》 3 《放浪皇》 1 《ハグラの噛み殺し》 1 《エメリアの呼び声》 3 《食肉鉤虐殺事件》 2 《華やいだエルズペス》 2 《蜘蛛の女王、ロルス》 -呪文(23)- |
3 《エメリアのアルコン》 2 《墓地の侵入者》 3 《強迫》 2 《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》 2 《断割》 1 《侮辱》 1 《真っ白》 1 《激しい恐怖》 -サイドボード(15)- |
《シルバークイルの口封じ》や《傑士の神、レーデイン》といったアタッカー要素を兼ねたヘイトパーマネントで対戦相手を責め立てるミッドレンジ・デッキです。『ニューカペナの街角』リリース以前の『神河:輝ける世界』環境で流行していたタイプのデッキでここ最近は見掛けることが少なくなってきていました。《シルバークイルの口封じ》はデッキリスト非公開のイベントでは宣言が非常に難しく、経験則や状況判断が逐次求められます。同デッキを長くプレイすることでのやり込みが感じられますね。
《華やいだエルズペス》はエスパー・ミッドレンジでは採用を見送られることも多いカードですが、同じ5マナ域のプレインズウォーカーである《蜘蛛の女王、ロルス》と比べ攻撃性能の高さが魅力となります。中盤から終盤にかけての押し込みを図る上で非常に優れたカードです。
「エスパー・フィッシュ」
1 《平地》 1 《島》 1 《沼》 4 《ラフィーンの塔》 2 《さびれた浜》 3 《連門の小道》 3 《砕かれた聖域》 2 《陽光昇りの小道》 2 《難破船の湿地》 3 《清水の小道》 2 《目玉の暴君の住処》 1 《皇国の地、永岩城》 -土地(25)- 4 《光輝王の野心家》 3 《しつこい負け犬》 4 《策謀の予見者、ラフィーン》 1 《忘れられた大天使、リーサ》 -クリーチャー(12)- |
2 《消えゆく希望》 2 《呪文貫き》 4 《消失の詩句》 2 《冥府の掌握》 3 《婚礼の発表》 2 《風変わりなペット》 1 《エメリアの呼び声》 2 《食肉鉤虐殺事件》 1 《漆月魁渡》 3 《放浪皇》 1 《蜘蛛の女王、ロルス》 -呪文(23)- |
2 《エメリアのアルコン》 3 《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《否認》 1 《勇敢な姿勢》 2 《真っ白》 1 《告別》 2 《勢団の銀行破り》 -サイドボード(15)- |
1 《平地》 1 《島》 1 《沼》 4 《ラフィーンの塔》 2 《さびれた浜》 4 《連門の小道》 4 《陽光昇りの小道》 2 《難破船の湿地》 4 《清水の小道》 1 《フロスト・ドラゴンの洞窟》 1 《目玉の暴君の住処》 -土地(25)- 4 《光輝王の野心家》 4 《幽体の敵対者》 2 《しつこい負け犬》 4 《策謀の予見者、ラフィーン》 2 《常夜会一家の介入者》 -クリーチャー(16)- |
1 《呪文貫き》 2 《かき消し》 2 《消失の詩句》 1 《冥府の掌握》 4 《風変わりなペット》 4 《婚礼の発表》 1 《エメリアの呼び声》 4 《放浪皇》 -呪文(19)- |
4 《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》 1 《無効》 1 《強迫》 3 《軽蔑的な一撃》 1 《パワー・ワード・キル》 2 《告別》 2 《未認可霊柩車》 1 《勢団の銀行破り》 -サイドボード(15)- |
デッキ名の由来は《風変わりなペット》から。通常の「エスパー・ミッドレンジ」よりもインスタント・タイミングでのアクションを増やし、対戦相手の行動を妨害しながらライフを削り切るプランを見据えています。パッと見は普通の「エスパー・ミッドレンジ」と見分けが付かないことから、対戦相手の意表を突くことが可能で、デッキリスト非公開制イベントの恩恵を最も受けやすいタイプのデッキだと言えます。
またこのデッキが特に真価を発揮しやすいのがサイドボード後の戦いで、環境に存在する各デッキに対して有効なインスタント・カードを駆使することで、デッキの最適化が可能です。対戦相手が動いてくるならば対処カードでいなし、警戒して動いてこないのであればインスタント・タイミングのクリーチャーを展開してライフを奪う。クロック・パーミッション戦略ですが、現在のスタンダードカードプールにおいて強力な部類のカードを選択できているのが強みで、非常に手堅いデッキだと言えます。
イゼット系コントロール
5 《島》 5 《山》 4 《嵐削りの海岸》 4 《河川滑りの小道》 2 《ストーム・ジャイアントの聖堂》 1 《天上都市、大田原》 2 《廃墟の地》 -土地(23)- 4 《黄金架のドラゴン》 3 《船砕きの怪物》 -クリーチャー(7)- |
2 《消えゆく希望》 1 《炎恵みの稲妻》 1 《棘平原の危険》 4 《ドラゴンの火》 4 《表現の反復》 3 《ジュワー島の撹乱》 2 《否認》 4 《鏡割りの寓話》 2 《セレスタス》 2 《大勝ち》 2 《記憶の氾濫》 1 《家の焼き払い》 1 《髑髏砕きの一撃》 1 《勢団の銀行破り》 -呪文(30)- |
1 《船砕きの怪物》 2 《炎恵みの稲妻》 2 《軽蔑的な一撃》 2 《かき消し》 1 《否認》 2 《プリズマリの命令》 1 《白熱する議論》 1 《地震波》 1 《多元宇宙の警告》 1 《家の焼き払い》 1 《勢団の銀行破り》 -サイドボード(15)- |
1 《島》 1 《山》 1 《ザンダーの居室》 4 《嵐削りの海岸》 4 《河川滑りの小道》 4 《清水の小道》 4 《荒廃踏みの小道》 1 《ストーム・ジャイアントの聖堂》 1 《天上都市、大田原》 -土地(21)- 1 《過充電縫合体》 4 《黄金架のドラゴン》 1 《沈黙の蜘蛛、琴瀬》 1 《溺神の信奉者、リーア》 2 《船砕きの怪物》 -クリーチャー(9)- |
2 《消えゆく希望》 2 《棘平原の危険》 1 《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》 4 《表現の反復》 4 《ジュワー島の撹乱》 3 《ドラゴンの火》 2 《否認》 1 《冥府の掌握》 1 《かき消し》 4 《鏡割りの寓話》 1 《ハグラの噛み殺し》 1 《記憶の氾濫》 1 《家の焼き払い》 3 《勢団の銀行破り》 -呪文(30)- |
1 《面汚しの乙女、エインジー》 2 《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》 2 《電圧のうねり》 1 《消えゆく希望》 2 《軽蔑的な一撃》 1 《冥府の掌握》 1 《パワー・ワード・キル》 1 《才能の試験》 2 《真っ白》 2 《プリズマリの命令》 -サイドボード(15)- |
3 《島》 2 《山》 4 《嵐削りの海岸》 4 《河川滑りの小道》 2 《ストーム・ジャイアントの聖堂》 2 《バグベアの居住地》 1 《天上都市、大田原》 1 《反逆のるつぼ、霜剣山》 1 《廃墟の地》 -土地(20)- 1 《さまよう心》 2 《ガラゼス・プリズマリ》 4 《黄金架のドラゴン》 -クリーチャー(7)- |
3 《電圧のうねり》 2 《消えゆく希望》 1 《炎恵みの稲妻》 1 《呪文貫き》 4 《ドラゴンの火》 4 《表現の反復》 4 《ジュワー島の撹乱》 3 《否認》 1 《軽蔑的な一撃》 4 《鏡割りの寓話》 3 《髑髏砕きの一撃》 3 《勢団の銀行破り》 -呪文(33)- |
2 《マインド・フレイヤー》 2 《船砕きの怪物》 2 《無効》 2 《消えゆく希望》 1 《炎恵みの稲妻》 2 《軽蔑的な一撃》 1 《才能の試験》 2 《発明的反復》 1 《未認可霊柩車》 -サイドボード(15)- |
デッキリストはさまざまですが、すべて共通して《黄金架のドラゴン》を主体としたコントロールデッキです。《アールンドの天啓》という最高級の決定打を失ってしまったイゼット系コントロールデッキですが、《黄金架のドラゴン》のカードパワーや《表現の反復》のアドバンテージ能力は健在で、ここに《船砕きの怪物》という追加のフィニッシャーを添えることでデッキをまとめています。
《鏡割りの寓話》はコントロールデッキにとっても一級品で、こと《黄金架のドラゴン》との相性は最高です。ゴブリン・トークンが生み出す宝物・トークンと高相性ですし、そのトークンや《キキジキの鏡像》も相手にとっては放置しがたい存在であることから、除去呪文の対象になりやすく、結果として《黄金架のドラゴン》の定着率が上がります。
また、イゼット系コントロールの亜種としてもう1つ紹介しておきたいのが、「ティムール・コントロール」です。
1 《島》 1 《山》 2 《嵐削りの海岸》 4 《河川滑りの小道》 3 《夢根の滝》 4 《樹皮路の小道》 4 《落石の谷間》 4 《岩山被りの小道》 1 《ストーム・ジャイアントの聖堂》 1 《天上都市、大田原》 -土地(25)- 2 《茨橋の追跡者》 2 《ガラゼス・プリズマリ》 3 《黄金架のドラゴン》 4 《産業のタイタン》 -クリーチャー(11)- |
2 《消えゆく希望》 1 《棘平原の危険》 1 《電圧のうねり》 4 《表現の反復》 3 《ドラゴンの火》 3 《ジュワー島の撹乱》 1 《かき消し》 1 《否認》 4 《鏡割りの寓話》 1 《記憶の氾濫》 1 《家の焼き払い》 2 《勢団の銀行破り》 -呪文(24)- |
1 《茨橋の追跡者》 2 《船砕きの怪物》 1 《電圧のうねり》 3 《軽蔑的な一撃》 2 《揺らぐ信仰の呪い》 1 《バーニング・ハンズ》 1 《才能の試験》 1 《引き裂く炎》 1 《霜と火の戦い》 2 《未認可霊柩車》 -サイドボード(15)- |
「イゼット・コントロール」にトリプルシンボルの《産業のタイタン》をタッチするという強烈過ぎるコンセプトに誰しもが度肝を抜かれたはずです。私も最初は目を丸くしたものですが、実際にプレイしてみると宝物・トークンを生み出すカード各種やドロー呪文の運用によって色マナがネックになることはほとんどなく、新しい構築手法に感銘を受けました。
「ニューカペナ・チャンピオンシップ」においてMPLメンバーである茂里 憲之選手らの調整グループが持ち込んだデッキであり、当時の使用者は彼ら6名のみでしたが、この日本選手権においては「エスパー・ミッドレンジ」「グリクシス吸血鬼」「ジャンド・ミッドレンジ」に次ぐ4番手にシェアを拡大しており、環境デッキの仲間入りを果たしています。
「ニューカペナ・チャンピオンシップ」では好成績だった「ジェスカイ・ストーム」ですが、今大会では目立った活躍ができませんでした。青いデッキが軒並み《軽蔑的な一撃》の採用数を増やしておりガードが上がっている他、そもそもメインデッキから打ち消しを駆使するイゼット系コントロールがシェアを拡大するなどポジションが悪くなっており、スタンダードにおけるメタゲームの変化が随所に感じられます。
直近で開催された2つの大会にフォーカスして環境を解説させていただきましたが、ご覧いただいたように非常に多様性に満ちた環境であり、さまざまなデッキが活躍しています。唯一、白単・赤単・緑単のような単色のアグロの活躍が見られないのが残念ですが、やはり《不詳の安息地》の禁止が痛手になっています。唯一可能性のありそうな「白単アグロ」が《食肉鉤虐殺事件》や《レイ・オヴ・エンフィーブルメント》の流行により抑え込まれているのも噛み合が悪いですね……。
とは言え、環境に存在する各デッキはそのデッキにしかない強みをいくつも持ち合わせており、どのデッキもプレイしていて楽しいものばかりです。今回の記事で皆様の気に入ったデッキが見つかることを願っております。次セットである『団結のドミナリア』リリースまで3か月あり、このスタンダードもまだまだ続きますから、最後まで存分に遊び尽くしましょう。
それではまた次回。
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