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週刊デッキ構築劇場
第85回:清水直樹のデッキ構築劇場・王様のゲーム
読み物
週刊デッキ構築劇場
2012.11.05
第85回:清水直樹のデッキ構築劇場・王様のゲーム
演者紹介:清水 直樹
言わずとしれた、デッキ構築劇場看板役者。主な戦績は、プロツアー・アヴァシンの帰還 トップ8、プロツアー・オースティン09トップ8、グランプリ・京都07トップ8、日本選手権06トップ8など。
「シミックの王子」の二つ名で呼ばれるように、シミックギルド(青緑)を愛し、青緑を含むデッキを構築した数で言えば、日本ではトップ、世界でも屈指のデッキビルダー。個性的なデッキ名をはじめとした数々のパフォーマンスには多くのファンがおり、青緑を使うプレイヤー数の増加に多大な貢献を果たした。
また、交友関係も広く、清水を中心としたコミュニティの爆発的な広がりを『爆発的青緑(パンシミック)』と表現することもある。
代表作は、スクリブ&フォース・セル・ABSOLUTE ZERO・ユグドラシル・イオナズン他多数。
みなさんこんにちは!
プロツアー「ラヴニカへの回帰」も終わり、いよいよ来月にはグランプリ・名古屋!
久々のスタンダードのグランプリということで、そろそろスタンダードのデッキを皆さんも練り上げているころではないでしょうか。
さて、『ラヴニカへの回帰』が入ったことでスタンダードは今一体どんな環境になっているのでしょうか? まずはこういったところからおさらいして今回のデッキを考えていきたいと思います!
いつもどおり、Magic Online(MO)のデイリー・イベントの結果などを見ていると、非常に乱暴ではあるのですが、この環境のキーとなっているのはこの1枚と言えそうです。
イニストラード・ブロック構築の流れを汲むならば《ウルフィーの銀心》かな、と思っていたのですが、同じ5マナ域で様々なカードとシナジーを形成することから(特に《修復の天使》とのコンボなんかは目玉が飛び出る強さですよね!)、《スラーグ牙》に現在は軍配があがっているようです。
特に、黒赤緑のパワーカードを詰め込んだデッキが、現在かなりMOでも流行しているようです。
早速一つ、MOのデイリー・イベントで4連勝したデッキを紹介してみましょう。
1 《森》 1 《山》 1 《沼》 4 《血の墓所》 4 《草むした墓》 4 《竜髑髏の山頂》 4 《根縛りの岩山》 4 《森林の墓地》 2 《ケッシグの狼の地》 -土地(25)- 4 《高原の狩りの達人》 3 《オリヴィア・ヴォルダーレン》 4 《スラーグ牙》 -クリーチャー(11)- |
3 《ラクドスの魔鍵》 4 《火柱》 4 《遥か見》 3 《戦慄掘り》 2 《血統の切断》 2 《ラクドスの復活》 3 《忌むべき者のかがり火》 2 《原初の狩人、ガラク》 1 《見えざる者、ヴラスカ》 -呪文(24)- |
3 《死儀礼のシャーマン》 2 《ゴルガリの魔除け》 1 《戦慄掘り》 2 《地下世界の人脈》 2 《飢えへの貢ぎ物》 3 《殺戮遊戯》 1 《血統の切断》 1 《見えざる者、ヴラスカ》 -サイドボード(15)- |
いやはや、どこを見てもパワーカードだらけですね。神話レアの採用率の高さがスゴい。
ただ環境の初期というのは皆手探り状態なので、こういったパワーデッキが勝ちやすい環境ではあります。ちょうど去年で言えば《原始のタイタン》+《ケッシグの狼の地》が最初猛威をふるっていたことがそれにあたります。
しかし時間が経って行くにつれて思わぬカードの組み合わせが強かったり、ということが徐々に見つかっていってデッキが洗練されていきます。
気付いたときには、その後発のデッキがメタゲームの中心になってしまうのです。去年で言えば《秘密を掘り下げる者》がそれです。
是非とも皆さんには、《秘密を掘り下げる者》のようなカードをいち早く発見して、自分自身のデッキが気付いたらTier1デッキになっていた、という快感を経験してもらいたいものです。
さて、ちょっと話が逸れてしまいましたが、話題は《スラーグ牙》に戻ります。
このカードの何が強いというと、その圧倒的な除去耐性にあると思います。加えて、5マナでパワー5とマナレシオも充分です。
場に出るだけで5点のライフ、死んでも3/3ビースト・トークンでは、除去を撃つのも憚られます。
本当は5マナのカードが出てしまう頃には勝負を決してしまいたいところではあるのですが、5点のライフゲインがそれを許してくれません。
そんなわけで、ビートダウンデッキたちはこの巨大な牙城にかなり苦戦してしまっている印象があります。
この壁を突破するにはどうすればよいのでしょうか?
方法はいくつかあります。
1.カウンターする
《本質の散乱》がその最も代表的なところではないでしょうか。
《マナ漏出》無き今打ち消し呪文はあまり警戒されなくなっているのですが、その分《聖トラフトの霊》を軸にしたクロックパーミッションは対《スラーグ牙》ビートダウンとして活躍しています。
2.ライフの勝負をしない
5点のライフを得られてしまうという行為自体を無力化することを目的にしています。
じゃあライフで勝てなければどうやって勝つの?ということですが、そこで登場するのがプレインズウォーカーです。
プレインズウォーカーの一番下の能力は、たかだか5点、あるいは10点のライフなど全てひっくり返してしまうようなパワーを持っていますから、これを狙っていく青緑白のコントロールデッキも活躍しています。
特に《月の賢者タミヨウ》は《スラーグ牙》に対して有効で、[+1]能力を使うことで3/3ビースト・トークンを出されることなく対処することができます。その「奥義」はまさしく「ゲームに勝つ」と同義ですから、まさに対《スラーグ牙》を体現したカードと言ってよいでしょう。
3.飛行クリーチャーで対抗
今のところあまりこの戦術を成功させているデッキレシピを見たことはないのですが、例えば《未練ある魂》のスピリット・トークンは飛行を持っているので《スラーグ牙》にブロックされることなく攻め続けることができます。
攻撃に転じられても、《スラーグ牙》はトランプルを持っていないため容易に攻撃をしのぐことができるでしょう。あるいは、《地下牢の霊》で無効化してしまう作戦も有効だと思います。
この場合、相手の《修復の天使》にだけは気を付けてください。
4.サイズで乗り越える
本当に無理やりですが、5/3のサイズをものともせず、5点程度のライフなど+6/+6で、あるいいは(+4/+4)×2で突破してしまえばよいのです!
いかにもな戦術ですが、これもシンプルながらなかなか有効です。
特に《狩られる者の逆襲》と《荘厳な大天使》のコンボというのは強烈で、最近このコンボを搭載した緑白のビートダウンが結果を残し始めています。緑白でありながら《スラーグ牙》や《修復の天使》を使っていない型もあり、かなり注目です。
今回のデッキ構築劇場ではこの「サイズで乗り越える」を別のアプローチで採用していきたいと思います。
そして私は再びこのカードを手に取ります。
1マナ10/10!
つい最近ではラッシュ・高橋君が「東京グールツリー」のタイトルでデッキを紹介してくれましたね。
何度か構築劇場で登場してきたこのカードですが、今度こそ、今度こそ一線級のデッキに仕上がってくれそうな予感がします。
『ミラディンの傷跡』時代では結構苦しい思いをしていたのですが、いよいよ周りのカードたちが充実してきています!
まずはレシピをご覧あれ。
5 《森》 3 《沼》 1 《島》 4 《草むした墓》 4 《内陸の湾港》 3 《森林の墓地》 2 《進化する未開地》 1 《ならず者の道》 -土地(23)- 4 《死儀礼のシャーマン》 4 《東屋のエルフ》 4 《ロッテスのトロール》 3 《ウルヴェンワルドの足跡追い》 4 《裂け木の恐怖》 3 《甲冑のスカーブ》 2 《ゴルガリの死者の王、ジャラド》 4 《グール樹》 -クリーチャー(28)- |
4 《忌まわしい回収》 3 《追跡者の本能》 2 《根囲い》 -呪文(9)- |
3 《墓所這い》 1 《真髄の針》 3 《突然の衰微》 2 《記憶の旅》 4 《骨までの齧りつき》 2 《血統の切断》 -サイドボード(15)- |
《新緑の地下墓地》などが使えるためモダンでの活躍が記憶に新しいですが、スタンダードであっても墓地を肥やすことを目的としているので活躍が期待できます。
環境には《ゲラルフの伝書使》や《堀葬の儀式》→《静穏の天使》というデッキもありますので、こうしたデッキたちをナチュラルに対策できてしまうのも大きなポイントです。
残り数点のライフを地味に削っていくという活躍もできますし、本当に小回りの効く良いカードです。
マナを使わずに手札からカードを捨てることができるので、展開を邪魔することなく《裂け木の恐怖》まで繋げることができます。
トランプル持ち、再生持ちと自身の戦闘力もバッチリです。
《グール樹》の弱点はチャンプブロックに弱いということなのですが、王様が解決して下さいました。
もし10/10の攻撃が通らなくなってしまっても王様がいれば安心! 10点グールシュート!!
自身が墓地から手札に戻ってこれるということもあって、まさしくこのデッキのためのカード。
土地を生け贄にすることになってしまいますが、《死儀礼のシャーマン》がいたりして、困ることはむしろ少ないです。
《根囲い》《忌まわしい回収》で土地を確保することもできますしね!
《ケッシグの狼の地》で無理やりトランプルを付けていたのがこれまでの《グール樹》ですが、そんな面倒なことは必要なくなりました。
問答無用で10点殴りに行くよー! そのまま《ゴルガリの死者の王、ジャラド》で合計20点も狙えるよ!
本当は2枚くらい採用したいところですが、色拘束の厳しさから今は1枚に抑えています。しかし24枚目の土地として採用するプランは要検討です。
《追跡者の本能》《根囲い》と比べると1枚掘れるカードが増えただけ、に見えるのですがこの1枚が地味に大きく、更に土地かクリーチャーを手札に加えるということでハズレが少ないこともあって、使ってみると本当に強さを実感できるカードです。
《追跡者の本能》って大好きなカードなんですけど、結構よくハズレるんですよね。
新規参入した元祖発掘・ゴルガリギルドの皆さんのお陰でかなりデッキ全体のカードパワーも底上げされてきた印象です。
『ラヴニカへの回帰』以外にも、こんな目新しいカードを採用してみました。
再生ができる《ロッテスのトロール》との相性が良く、なかなかクリーチャーを対策しづらいこのデッキでは活躍してくれます。
本来は除去呪文を何枚か搭載しておきたいところなのですが、どうしてもデッキの中にクリーチャーでない呪文を混ぜてしまうと《グール樹》が1マナ10/10ではなくなってしまうので、クリーチャーでありながら除去を担当できるというのは貴重な存在です。
《ロッテスのトロール》に限らず、当然暴力的なサイズに成長する《裂け木の恐怖》や《ゴルガリの死者の王、ジャラド》で弱い者イジメをしてもよいでしょう。《スラーグ牙》の本体、ビースト・トークンもろとも粉砕できれば勝利は目前です!
緑白や青白人間など、《はらわた撃ち》無き今、直接的な除去に窮しているクリーチャーデッキが増えてきているので、《ウルヴェンワルドの足跡追い》は結構他のデッキでもオススメです。
このデッキを作った当初は《墓所這い》を採用していたのですが、このカードはサイドボード落ちということになっています。
《ロッテスのトロール》《グール樹》《甲冑のスカーブ》《ゴルガリの死者の王、ジャラド》とかなりゾンビが入っているので能力は活かせるのですが、ブロックできないのがかなり致命的な弱点で、対コントロール以外ではほぼ活躍ができませんでした。
《至高の評決》などからリカバリーするのには良いカードなので、サイドボードへ。《ウルヴェンワルドの足跡追い》と交代で使うと良い感じです。
さて、サイドボード後のゲームについてはもう如何にこの1枚を対策するかというのに尽きるでしょう。
このデッキで意気揚々とMOの構築イベントに参加したとき、1戦目を圧勝して調子に乗っていたのですが、このカードをプレイされて目玉が飛び出る思いをしました。
まさか《トーモッドの墓所》が永続で使えるようになってしまうなんて・・・! 俺の《裂け木の恐怖》がぜんめつめつめつ・・・
当初は《強迫》で叩き落とすことも考えたのですが、この手のデッキはサイドボードのインアウトがかなり少ない枚数に限られてしまうため難しいところです。あまり多くのカードを入れ替えすぎるとデッキとしての体をなさなくなってしまうのです。ちょうど「東京グールツリー」の回でラッシュ・高橋君が指摘してくれていることでもありますね。
それに、出てきてしまったときに詰んでしまうというのでは心もとなく、やはり出てきてしまっても「割れる」ようにすることは必要です。
幸い、『ラヴニカへの回帰』には《突然の衰微》という非常に便利なカードがありますのでこれを採用しない手はないでしょう。
相手が白いデッキであれば無条件に《根囲い》あたりを削ってサイドインしてください。
どっちみちそれでも出されちゃうと本当に目の前が真っ暗になるくらいキツいんですけどね。
ここは一発「俺は《安らかなる眠り》を張られない! ダダッダー!」という往年のネタで乗り越えてみるのもありかもしれません。
一方で、ビートダウンデッキに対して圧勝することが可能な《骨までの齧りつき》は4枚投入しています。
白いデッキ以外であれば《安らかなる眠り》のような破滅的なサイドカードはありませんから、こちらも相手のデッキを対策する余裕があります。
とはいえ、火力呪文を持ち合わせていない相手に対しては4枚サイドインするのは少しやりすぎでしょう。3枚程度が適切な枚数です。
もし赤単や赤黒高速ビートダウンなんかに当たってしまったときは4枚目をサイドインするといいと思います。
うまくいったときには、自分のライフが40くらいありつつ10/10クラスのクリーチャーが一方的に殴り続けるという快感を味わうことができますよ!
《血統の切断》はフラッシュバックが7マナと重いのですが、案外《死儀礼のシャーマン》や《東屋のエルフ》などのおかげでフラッシュバックできます。うっかり《天使への願い》が奇跡して詰んだ、ということがないように用意しています。
デッキ名は「東京グールツリー」を踏襲してみました。「ネオ」をつけたときに真っ先に連想したのが去年のグランプリ・広島で活躍していた「Neo Sky」というチームだったんですが、ちょうど「Neo Sky」をはさむことで元ネタの「スカイツリー」にもちょっとリンクしてたりします。
それはともかく、「Neo Sky」のような新しいチームが今度のグランプリ・名古屋でもまた活躍することを期待しています。もちろんナベ(渡辺雄也)のような超トッププレイヤーもグランプリには出場するわけですが、新しいプレイヤーがグランプリの勝利をきっかけにブレイクするというのはとても楽しみなものです。
もちろん自分も負けないようにがんばりますけど!
それでは皆さん、名古屋に向けて!
Decks, be Amibtious!!
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