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週刊デッキ構築劇場
第81回:高橋純也のデッキ構築劇場・実験的スタンダードデッキ構築1
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週刊デッキ構築劇場
2012.10.08
第81回:高橋純也のデッキ構築劇場・実験的スタンダードデッキ構築1
演者紹介:高橋 純也
2005年のグランプリ・松山にて、《狩猟の神》を重用した鮮烈なドラフトコンセプト「赤緑ラッシュ」を披露して一躍名を轟かせる。
その『ほとばしる奔能(ラッシング・ラッシュ)』はリミテッドにとどまらず、グランプリ・京都2007で見るものを驚かせた「発掘」(スタンダード)、プロツアー・バレンシア2007で小池貴之をトップ8に導いた「アグロドメイン」(エクステンデッド)など、環境を問わず状況を分析し、既存のコンセプトの潜在能力を最大限に引き出す構築手腕を見せている。
近年では、雑誌への寄稿などライティングでも存在感を発揮している、才覚あふれるプレイヤー・ライター。
新エキスパンションである『ラヴニカへの回帰』が発売され、スタンダード環境はローテーションの時期を迎えた。ミラディンの傷跡ブロックと基本セット2012が使用不可になる代わり、続投となるイニストラードブロックと基本セット2013に『ラヴニカへの回帰』を加えたフォーマットへと一新されたのだ。
かつての『ラヴニカ:ギルドの都』と同様に、ギルドというそれぞれの特色を持った2色の組み合わせをフィーチャーしたエキスパンションである『ラヴニカへの回帰』には、各ギルドの象徴的なキーワード能力や、色拘束ゆえに使いづらくとも強力な多色カードがふんだんに収録されている。
どこか懐かしい雰囲気を残しつつも今風にリデザインされたラヴニカ世界は刺激的で、かつては苗木トークンしか生み出していなかったような記憶があるセレズニアが、今ではワームやケンタウルス、鳥らのトークンをぽこぽこと「居住」していることを思うとワクワクが止まらない。
今回は『ラヴニカへの回帰』発売記念ということで、『ラヴニカへの回帰』のカードを主軸にしたデッキを構築してみようと思う。
まずは各ギルドのキーワード能力に注目してラインナップに目を通してみたものの、いまいち僕の琴線に触れるアイデアは思いつかなかった。墓地利用や「居住」はありきたりで、「超過」や「留置」はカード単体として強力な能力であるため軸にするには偏り方が弱い気がしたのだ。《ゴルガリの死者の王、ジャラド》は非常に魅力的で、連載1回目で紹介した「発掘」の焼き直しでも作り直してみようかと思ったが、それはそれで安易な気もしたので今回は却下してみた。
そこで、キーワード能力とは別の部分で『ラヴニカへの回帰』を使ってみようとしたところ、二枚のカードが思い当たった。
それがこの二枚である。
どちらも自分のコントロールする「防衛」クリーチャーの数だけ効果を増す能力を持っている。前者はマナの数が、後者はライブラリーを削る枚数が増えていくのだ。「防衛」持ちがあればあるだけ良いと言い換えてもいいだろう。だが、デッキとして構築する上では、いくら効果が増すとはいえ、それだけでは仕事をしないカードを入れることには抵抗がある。「防衛」持ちの選別。まずはここからデッキ構築を始めてみることにした。
とりあえずこの11枚こそがアンダースタンダード"防衛"代表こと『ぬりかべイレブン』である。
プレイアブルなカードを抽出したつもりだったが、想像していた以上に良質の「防衛」が揃っていたためになんだかんだで11枚ほどの候補が浮かび上がってきた次第だ。だが、MTGとは非情なスポーツなのは周知の事実だろう。彼ら11種類の「防衛」にそれぞれ4枚ずつ、計44枚のスロットを与えたい気持ちは山々なのだが、基本的にMTGの構築デッキは60枚で構成される以上、土地やその他呪文に費やす枠を除くと44枚ものスペースを提供することはかなわない。
代表に選ばれるまでは容易かもしれないが、レギュラー、そしてキャプテンとなるには更なる苛烈な争いが「防衛」たちを待っている。
その後、いくつかの試験を行われた。防御力や相性、はたまた攻撃力まで評価される過酷な試験の末にわずかな「防衛」が生き残った。それでは、レギュラーへと選抜された「"超"防衛」を改めて紹介しよう。
《門衛》と《斧折りの守護者》。この2枚は「防衛」デッキならではのカードだ。前者は勝利手段を、後者は展開力を、と中盤を支えるダイナモとして働く。《斧折りの守護者》から《ルーデヴィックの実験材料》へのホットラインに期待がかかる。
次に《濃霧の層》《解放の樹》《荘園のガーゴイル》は、まともな戦闘では突破されることのない文字通りの鉄壁である。《濃霧の層》は柔よく剛を制し、《解放の樹》は愚直に受け止め、《荘園のガーゴイル》は逆に討ち取ろうという気概すら見せるつわものだ。
サイドを駆け上がる《荘園のガーゴイル》と、バックラインを統率する《濃霧の層》、そして得点されてもなかったことにできる無敵のゴールキーパーである《解放の樹》は文句なしのレギュラー入りでいいだろう。
残った僅かな枠を勝ち取ったのは、《ルーデヴィックの実験材料》と《門を這う蔦》だった。どちらも防御力は乏しく、「防衛」持ちの中では「あいつら《クラーケンの幼子》以下らしいぜ」と噂され、立場のない時代が続いた。だがこの度は、『ラヴニカへの回帰』参入に伴う多色化傾向、《斧折りの守護者》の膨大なマナの活用先と機会に恵まれ、それぞれが脚光を浴びることと相成った。
4 《門を這う蔦》 4 《門衛》 4 《濃霧の層》 4 《ルーデヴィックの実験材料》 4 《斧折りの守護者》 4 《解放の樹》 4 《荘園のガーゴイル》 32 未定 |
ここからは28枚の「防衛」をサポートするカードを探しにいく。
まず前提となることは、このデッキは防御的なものである、という一点だ。つまり、残る呪文スロットも相応のカードが採用されるべきで、「防衛」では対応できない攻撃への対応策や、遅いゲーム展開でこそ輝くカードが求められる。
そこでいくつかの案が浮かび上がってきた。
1. プレインズウォーカーの採用
普段はプレインズウォーカーを守るために壁を採用するため、なんだか不思議な気分ではあるが、強固な防御陣があるならばこれらを採用しない理由も少ないだろう。《記憶の熟達者、ジェイス》は《門衛》のライブラリー破壊を助け、《見えざる者、ヴラスカ》は攻撃できない「防衛」の弱点でもあるプレインズウォーカー対策になる一枚だ。ターンが経過すればするほど効果が増すことも採用を後押ししている。
2. フィニッシャーの採用
これは重く巨大なクリーチャーという意味だ。《黄金夜の刃、ギセラ》や《静穏の天使》がそれにあたるだろう。どちらもゲームを決める力を持ちつつも防御的な能力も有している攻防一体の万能カードである。ただ、この戦略はコントロールの採用する《至高の評決》や《終末》がガンとなってしまう。フィニッシャーごとデッキの基盤をリセットされてしまうからだ。そのため採用は慎重にする必要があるだろう。
3. 奇跡呪文の採用
ドローする機会が増えるほどにデッキにある奇跡呪文にたどり着く確率は高まる。このドローの機会を増やすために、他のデッキではインスタントでのドロー呪文を採用したりするところを、この「防衛」デッキでは、愚直にゲームを遅らせることで通常ドローの回数を稼ごうというのだ。
できればターンの経過と共に効果が増すものが良く、《忌むべき者のかがり火》や《天使への願い》などはばっちりデッキにはまるだろう。
こうして浮かんだ数案を検討してみたところ、2. はともかくとして1. と3. はよく思えた。1. を採用した場合は、奇跡呪文として《時間の熟達》までもが候補に挙がるだろう。
そうして挙がった候補をまとめてみたのが以下である。
- 《見えざる者、ヴラスカ》
- 《記憶の熟達者、ジェイス》
- 《情け知らずのガラク》
- 《月の賢者タミヨウ》
- 《忌むべき者のかがり火》
- 《時間の熟達》
例にもらさず、これらを全て4枚ずつ採用する枠はないが、そもそもこれらを4枚採用する理由もないので、スロットの分け合いは比較的平和に収まるだろう。
残る枠は32枚分あり、そのうちの23~25枚程度は土地に費やされることを思うと、これらの呪文は合計で7~9枚あたりが妥当だろうか。足りない場合は数枚の「防衛」に席を譲ってもらうことにしよう。
24 土地 -土地(24)- 4 《門を這う蔦》 4 《門衛》 4 《濃霧の層》 4 《ルーデヴィックの実験材料》 4 《斧折りの守護者》 4 《解放の樹》 4 《荘園のガーゴイル》 -クリーチャー(28)- 3 《記憶の熟達者、ジェイス》 1 《見えざる者、ヴラスカ》 1 《情け知らずのガラク》 1 《月の賢者タミヨウ》 2 《忌むべき者のかがり火》 -呪文(8)- |
案の定、枠がバーストしてしまった。これ以上マナベースを削ることはできないため、禁断の「防衛」削減に取り掛かる。
そうなると減らす対象はどこだろうと探ってみると、《門衛》《ルーデヴィックの実験材料》《門を這う蔦》の3枚が怪しいことがわかった。《門衛》は起動コストが大きいこと、《ルーデヴィックの実験材料》と《門を這う蔦》は防御力不足が理由だ。
この3枚の取捨選択を悩んでみたところ、最終的に以下のようなバランスに落ち着いた。
24 土地 -土地(24)- 4 《門を這う蔦》 4 《門衛》 4 《濃霧の層》 4 《斧折りの守護者》 4 《解放の樹》 4 《荘園のガーゴイル》 -クリーチャー(24)- |
3 《記憶の熟達者、ジェイス》 1 《見えざる者、ヴラスカ》 2 《情け知らずのガラク》 1 《月の賢者タミヨウ》 3 《忌むべき者のかがり火》 2 《時間の熟達》 -呪文(12)- |
4 《ルーデヴィックの実験材料》 -サイドボード- |
じっけんざいりょぉぉぉ。
まさかのサイド落ちである。しばらくは候補をそれぞれを3枚にしてみたりと調整したふりをしてみたのだが、もうどうやっても勝ちだろうといった局面になってようやく元気になる《ルーデヴィックの実験材料》が明らかに足を引っ張っていたため、サイドボード後のコントロール対策という立場に落ち着いてもらうことになった。代わりに枠を受け継いだ《時間の熟達》の真価は未だによくわかっていないものの、おそらく問題ない程度には活躍してくれるだろう。
残るは土地のバランスだけだ。基本的には青と緑が出れば成立し、《見えざる者、ヴラスカ》と《忌むべき者のかがり火》のために僅かな配慮が必要といった程度だろう。また、コントロールとのグダグダしたゲームを解決するためにも《ネファリアの溺墓》は欠かせない。4色デッキでの無色土地にはやや緊張するが、必要なら仕方がない。
6 《森》 6 《島》 1 《山》 1 《沼》 4 《内陸の湾港》 4 《進化する未開地》 1 《ラクドスのギルド門》 1 《ネファリアの溺墓》 -土地(24)- 4 《門を這う蔦》 4 《門衛》 4 《濃霧の層》 4 《斧折りの守護者》 4 《解放の樹》 4 《荘園のガーゴイル》 -クリーチャー(24)- |
3 《記憶の熟達者、ジェイス》 1 《見えざる者、ヴラスカ》 2 《情け知らずのガラク》 1 《月の賢者タミヨウ》 3 《忌むべき者のかがり火》 2 《時間の熟達》 -呪文(12)- |
4 《ルーデヴィックの実験材料》 3 《墓所の茨》 4 《否認》 2 《冒涜の行動》 1 《見えざる者、ヴラスカ》 1 《ネファリアの溺墓》 -サイドボード(15)- |
これで完成である。サイドボードはどうしても苦手なコントロールへの対策で溢れてしまった。《墓所の茨》は見て分かるとおりのゾンビ対策で、《冒涜の行動》は使い勝手の良い《忌むべき者のかがり火》として働く。追加の《見えざる者、ヴラスカ》はプレインズウォーカー対策であると共に《拘留の宝球》を破壊できる万能枠として採用してみた。
環境初期ということでやや乱暴で不安定な節も多いが、それなりに戦える構成に落ち着いた。
今回は「防衛」というキーワードに注目して構築してみたが、これに負けずとも劣らない多くの魅力が『ラヴニカへの回帰』には詰まっている。始まったばかりのまっさらで自由な環境だからこそ、皆さんも思うままに構築してみてはいかがだろうか。
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