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週刊デッキ構築劇場

第78回:清水直樹のデッキ構築劇場・怒ったり 作ったり

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週刊デッキ構築劇場

2012.09.17

第78回:清水直樹のデッキ構築劇場・怒ったり 作ったり

演者紹介:清水 直樹

 言わずとしれた、デッキ構築劇場看板役者。主な戦績は、プロツアー・アヴァシンの帰還 トップ8、プロツアー・オースティン09トップ8、グランプリ・京都07トップ8、日本選手権06トップ8など。
 「シミックの王子」の二つ名で呼ばれるように、シミックギルド(青緑)を愛し、青緑を含むデッキを構築した数で言えば、日本ではトップ、世界でも屈指のデッキビルダー。個性的なデッキ名をはじめとした数々のパフォーマンスには多くのファンがおり、青緑を使うプレイヤー数の増加に多大な貢献を果たした。
 また、交友関係も広く、清水を中心としたコミュニティの爆発的な広がりを『爆発的青緑(パンシミック)』と表現することもある。
 代表作は、スクリブ&フォース・セル・ABSOLUTE ZERO・ユグドラシル・イオナズン他多数。


『王子はラヴニカへの回帰にシミックが入らないことについてお怒りのようです』

 ~2012年9月 『ラヴニカへの回帰』発売を前にしたシミック王国作戦会議室~

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アメーバの変わり身》(以下アメボ)「王子、来月5日はいよいよ『ラヴニカへの回帰』発売です。それに合わせて、カードギャラリーでも続々と新しいカードたちが公開されています。」

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トレストの密偵長、エドリック》(以下エド)「中でも、いわゆるショックランド、《神聖なる泉》や《蒸気孔》などの再録は世間でも非常に大きな話題を呼んでいます。」

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王子「当然、我がシミック王国も『ラヴニカへの回帰』で復興するんだろうな?」

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アメボ「王子、それが...」

/

エド「『ラヴニカへの回帰』にはシミックは収録されません...」

/

シミックの幻想家、モミール・ヴィグ「っていうか、公式設定でシミック・ギルドは王国ですらなく、『連合』です...」

 (公式サイトより抜粋)

 シミック連合
 我が展望。我が進化。我がギルド。
 シミック連合はラヴニカの自然と荒野の世話係であり、
 ラヴニカの都市が成長を続けようとも自然界の保護と育成に努めることを使命としている。
 このギルドは人口過剰な都市圏の環境と両立しなかったり、あるいは相互排他的な関係となる要素を保護しようとしている。
 もちろんこれは簡単なことではない。というのもラヴニカでは文明の力が行き渡っており、それに対抗しようというものをことごと く呑み込みかねないからだ。
 だがシミックは独立性と全体性を奇妙な配合で取り混ぜており、大きな都市体系からの独立を果たしている
 ――そしてこの独立性の上に彼らの保全事業が成り立っているのである。

 (抜粋終わり)

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王子.........(震えながら眼鏡を外す)

/

王子「...アメーバ、エドリック、モミール、お前たちだけはこの部屋に残れ...」

(上記3名以外退室) 

/

王子「ちくしょー!!なんでだー!!」

/

アメボ「王子、安心して下さい次の『ギルド門侵犯』では《繁殖池》等の収録が約束されていま...」

/

王子「やだ!俺は今すぐにでも青緑のデッキが作りたいんだよっ!!」

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エド「最初のラヴニカ・ブロックでもシミックが入ったのは3番目の『ディセンション』だったじゃないですか。」

/

王子「やだやだ!それならアゾリウスも、ラクドスも先に入ってるのはおかしい!こんなやり方なんて大っきらいだ!」

/

モミール「いやでもその二つが好きな人だって大勢いらっしゃいますし・・・いくら王子でも言いすぎです。」

/

王子「そんなもん知るか!大っきらいだ!!」

/

王子「ちくしょうめ!!」

///

一同「・・・」

/

王子「そもそもシミック王国が王国じゃなくて『連合』だったなんて知らなかったぞ...いつの間にか王子になっていたと思ったが、そもそも最初から『連合』だったなんて聞いていないぞ!
 そうか、あれか、『グレートブリテンおよび北部アイルランド連合・王国』みたいな感じか。そうかシミックはイギリスなのか!」

 ~まるで子供のように駄々をこねるシミチン。もはやデッキを作る意欲は無くなってしまったのか...~

/

「...俺は諦めんぞ...」


「バイキルト」[MO] [ARENA]
5 《
3 《
4 《寺院の庭
4 《神聖なる泉
4 《内陸の湾港
2 《陽花弁の木立ち
1 《守護者の木立ち

-土地(23)-

4 《ドライアドの闘士
4 《アヴァシンの巡礼者
4 《不可視の忍び寄り
4 《聖トラフトの霊
3 《リーヴの空騎士
4 《死橋の大巨虫

-クリーチャー(23)-
4 《怨恨
4 《セレズニアの魔除け
4 《幽体の飛行
2 《高まる残虐性

-呪文(14)-
4 《栄光の騎士
3 《否認
3 《拘留の宝球
2 《解放の樹
3 《情け知らずのガラク

-サイドボード(15)-


 というわけで改めましてみなさんこんにちは!!
 あまりのショックに最初は取り乱しましたが、発売が待ちきれなくなって早速新しいスタンダードでデッキを作ってしまいました!

 皆さんよくご存知かとは思いますが、新しいスタンダードでは前のブロック構築で活躍したデッキがだいたい強いとされています。

 イニストラードブロック構築と言えば、プロツアー・アヴァシンの帰還で《ウルフィーの銀心》と《修復の天使》が大暴れしたことは記憶に新しいのですが、その一方で《聖トラフトの霊》に《幽体の飛行》を付けるデッキも強かったことを覚えています。

 というかそのデッキに最後負けた悔しい思い出が色濃く残っているんですけどね。

 イニストラードブロックの大きな特徴として、インスタントでのクリーチャー除去呪文が弱いことが挙げられます。

 一番よく使われたものでも《硫黄の流弾》で3点しか入らないために、上記の《ウルフィーの銀心》や《修復の天使》がとにかく死にませんでした。

 『ラヴニカへの回帰』」でも、「M13」でもあまりその傾向は変わっていないようで、インスタントでのクリーチャー除去はこれまでに比べてかなり弱体化しています。

 特に現在公開されているカードでは《修復の天使》をインスタントタイミングで除去できるまともな呪文は《殺害》くらいしかありません(編注:情報は執筆時点のものです)。
 これまでのように《喉首狙い》で次々にクリーチャーが殺されてしまうような環境ではありません。

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 ソーサリータイミングになれば《戦慄掘り》なんていうレガシー・モダンクラスなんじゃないかとすら思える強力呪文もあるんですがね...

 というわけで、インスタントでのクリーチャー除去が少ないと、必然的にクリーチャー強化の戦術は有効なものになってきます。なのでプロツアー・アヴァシンの帰還で、青緑白のクリーチャー強化ビートダウンが活躍できたのはそういった背景もあるのでしょう。

 今回のデッキはその《聖トラフトの霊》+《幽体の飛行》の戦略に沿ったカードとしてコイツを見つけたことから始まります!

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 でかい!
 もはや4マナ5/5というのはデメリットがつくどころか、メリットがついてしまうのが当たり前になってしまったのかと驚かざるを得ないのですが、そのメリットというのもなかなか強烈です。流石に墓地からの能力なのでコストは重めですが、呪禁との相性は抜群!

 特に《不可視の忍び寄り》に使えば完全に手がつけられない生物の誕生です。

 このカードによる強化が期待できるので《高まる残虐性》については枚数を2枚に抑えています。
 どちらも非常に強力な強化呪文なので、使いどころを間違えなければ必ずや勝利をもたらしてくれます!

 もちろん《死橋の大巨虫》もハイスペックなので、《怨恨》《幽体の飛行》を併せてやれば、これまで持っていなかった突破能力を身につけることになり、一級戦力になりますね!

 対戦相手の視点からみれば、《怨恨》がついたこいつを《殺害》とかで除去すると、《怨恨》は手札に戻るし、後から「活用」もされるしで全然得な交換にならないですね。かといってほうっておくわけにもいかないサイズ。
 いやはや、本当にこいつは4マナでよかったのか今でも信じられません。

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 このデッキでも採用していますが、《セレズニアの魔除け》は今後よく見るカードになるでしょう。どの能力も非常に強力です!
 特に、真ん中の能力で《ウルフィーの銀心》を簡単に対処できてしまうというのはそれだけで素晴らしいものです。
 ブロック構築をプレイしたことがある方なら、泣く泣く《大物潰し》を使っていた頃が馬鹿馬鹿しく思えてくるかと思います!

 先ほどは除去が弱いという話をしていましたが、《セレズニアの魔除け》はそういった環境を大きく変えてくれるカードになりそうです。というか、本当にこういうカードが入ってくれて安心しました。
 それくらい《ウルフィーの銀心》は強かったので...

 他にもこのデッキなら、相手のターンに2/2警戒の騎士・トークンを出してそれを《怨恨》《幽体の飛行》で強化したり、《聖トラフトの霊》を+2/+2能力で相打ちから救ったりと大活躍です。まさしくこのデッキ用のカード!

/

 他のクリーチャー選択についても、特に《ドライアドの闘士》は今後要注目ですね。

 ブロック構築では《未練ある魂》はあまりに強すぎて禁止カードになってしまったのですが、次のスタンダードではそんなことはありません。
 ただこいつがいればそのフラッシュバックを封じることができますし、《瞬唱の魔道士》を活用してくるようなデッキに対しても強力です。それでいて、1マナでパワー2というのだから本当にお買い得です。

 カードプールが狭くなって、《マナ漏出》もスタンダードから消えるので《瞬唱の魔道士》は少しはおとなしくなるかと思いますが、それでもイゼットのインスタント・ソーサリー呪文は粒ぞろいなようなので結局《瞬唱の魔道士》が跋扈することは変わらないかもしれませんね。こればかりは残りのカードを見てみないとはっきりしたことが言えないんですが...

 1ターン目に《ドライアドの闘士》を出しつつ、2ターン目に《怨恨》を付けて攻撃に行くのは往年の《飛びかかるジャガー》+《怨恨》を思い出させます。エコー無いですけど。

 ちょっと《未練ある魂》の話が出たのでここで触れておきたいのですが、《無形の美徳》と併せてブロック構築で禁止されていたことは非常に大きくて、そのために《ウルフィーの銀心》のサイズ強化が価値を持っていたように思います。
 トークンがわらわら出てブロッカーになれば、チャンプブロックで時間を稼ぐのも簡単になってしまいますからね。

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 『ラヴニカへの回帰』が入ったスタンダードでは、《未練ある魂》はかなり使われるカードになるのではないかと思うのですが、一方で《拘留の宝球》なんていう優秀なトークン対策もあったりで、なかなか面白そうです。
(今回はデッキコンセプト重視にしたためメインデッキでは採用していませんが)

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 《リーヴの空騎士》も、《修復の天使》と相性がいいことから非常に注目している1枚です。今回は《修復の天使》はオーラとの相性の悪さを理由に採用していませんが、この組み合わせはこれからよく見るんじゃないでしょうか。

 相手のプレインズウォーカーを1ターン止めたりできるのも大きなポイントですね。このデッキにおいては、《聖トラフトの霊》を阻むブロッカーを一時的に「留置」するのがメインの役割です。自身も3/1飛行なので、《死橋の大巨虫》や《怨恨》で強化していくと非常によい戦力になりますね。

/

 《守護者の木立ち》は土地ではありながらかなり派手な1枚です。起動の条件はたやすいものではありませんが、こういうデッキだと後半《アヴァシンの巡礼者》だけ残ってモジモジ、ということはよくあるので、そこで突如8/8が降臨するというのは良いですね。
 うっかり《幽体の飛行》が付いて生き残ろうものなら10/10飛行警戒という《セラの天使》もびっくりな怪物になります。

 今のところ白緑バージョンしか公開されていないので、他の色のサイクルが楽しみです。特に次のエキスパンションが楽しみです...



 今回のデッキは自分のクリーチャーの攻撃力をひたすら強化することがメインになるので、某国民的RPGの攻撃力強化呪文を持ってきました。なかなかどうして今回は分かりやすいデッキ名になってくれたんじゃないかと思います。

 『ラヴニカへの回帰』もいよいよ半分くらいのカードが公開され、次々に強力なカードたちが出てきました。皆さんも僕にとっての「シミック」みたいにきっとお気に入りのギルドがあるんじゃないかと思いますが、もしそれが今回の5つ以外でもがっかりせず、少しばかり他のギルドのカードを借りてくればデッキは作れます!

 これからどんなカードが出てくるのか楽しみですが、いよいよプレリリースまであと2週間!準備を怠らないように!

 Decks,be Ambitious!!

ラヴニカへの回帰

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