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週刊デッキ構築劇場

第35回:清水直樹のデッキ構築劇場・時を読む狼男

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週刊デッキ構築劇場

2011.10.24

第35回:清水直樹のデッキ構築劇場・時を読む狼男

演者紹介:清水 直樹

 言わずとしれた、デッキ構築劇場看板役者。主な戦績は、プロツアー・オースティン09トップ8、グランプリ・京都07トップ8、日本選手権06トップ8など。
 「シミックの王子」の二つ名で呼ばれるように、シミックギルド(青緑)を愛し、青緑を含むデッキを構築した数で言えば、日本ではトップ、世界でも屈指のデッキビルダー。個性的なデッキ名をはじめとした数々のパフォーマンスには多くのファンがおり、青緑を使うプレイヤー数の増加に多大な貢献を果たした。
 また、交友関係も広く、清水を中心としたコミュニティの爆発的な広がりを『爆発的青緑(パンシミック)』と表現することもある。
 代表作は、スクリブ&フォース・セル・ABSOLUTE ZERO・ユグドラシル・イオナズン他多数。


 みなさん、こんにちは!
 イニストラードが発売されてからというもの、僕は毎晩狼男モードに入ってテンションの上がり下がりで大変です!
 それに、今週末はいよいよグランプリ・広島です!!

 かく言う僕も、この大会に向けてなんとか時間を見つけてはスタンダードの調整に励んでいます。
 今日はこの調整の中から出てきたデッキの中でも、いかにも「構築劇場向け」なデッキをご紹介したいと思います。

 前回は《出産の殻》を使って《アヴァブルックの町長》などをすぐに変身させようというコンセプトのもと、狼男シミチンさんが中2病の赴くままに中2病全開なデッキ「魔狼フェンリル」を作ってくれましたが、
 今回はもうちょっとクールに、《アヴァブルックの町長》を使っていこうと思います。

 そういえば先日、グランプリ・ブリスベンの優勝デッキは青黒コントロールでした

 また、赤緑《ケッシグの狼の地》も一大勢力を築いて、さながら去年の今頃の、「青黒コントロール VS 《溶鉄の尖峰、ヴァラクート》」を彷彿とさせるメタゲームになっています。

 昨年のその続きといえば、そこに颯爽と登場した《戦隊の鷹》《饗宴と飢餓の剣》によるクロックパーミッション、「Caw-Blade」。

 プロツアー・パリの優勝から、そのまま一気に環境の支配者にまで上り詰めてしまいました。

 つまるところ、現在のメタゲームはビートダウンに若干元気がなく、一方パワーカードを連打する「太陽拳」や「赤緑ケッシグ」といったコントロールデッキと、それを食い物にする青黒などのパーミッションが支配的になっている、といった感じです。
(このあたりはコガモ大先生こと津村君の週刊連載で復習していただければと思います。)

 そして、こういった環境に強いのは新たなるCaw-Blade!!

 というわけで、《深夜の出没》を手に入れた「青白ブレード」を調整してみたのですが今一つ攻撃力に欠けるんですよね。
 特に赤緑の《古えの遺恨》は本当に終わっているスペルで、《饗宴と飢餓の剣》頼みのこのデッキには致命的と言えます。
 じゃあ、ということで更に環境をさかのぼると《苦花》に辿りつきました。

 ん?

 2マナ・・・毎ターントークン・・・こ、この符合!!

 そして《アヴァブルックの町長》の変身能力は、クロックパーミッションに持ってこいです。

 つまり、いちいち《出産の殻》を使って
「インヴィンシブルフルムーンだフゥーワハハハ!」
 とかやらずに、おとなしく「ターン終了です」と言えばいいのです。
 変身したら《マナ漏出》でも《雲散霧消》でも構えておけばよいのです。

 というわけで今回のリストです。

『Counter Wolf』[MO] [ARENA]
8 《
10 《
4 《内陸の湾港
4 《墨蛾の生息地

-土地(26)-

4 《アヴァブルックの町長
2 《最後のトロール、スラーン
3 《瞬唱の魔道士
2 《聖別されたスフィンクス

-クリーチャー(11)-
3 《はらわた撃ち
4 《マナ漏出
4 《雲散霧消
3 《熟慮
2 《内にいる獣
3 《饗宴と飢餓の剣
1 《殴打頭蓋
3 《情け知らずのガラク

-呪文(23)-
2 《解放の樹
2 《秋の帳
4 《瞬間凍結
2 《帰化
2 《
1 《殴打頭蓋

-サイドボード(15)-


 前回のデッキと比べると、だいぶレシピが綺麗になりました。まぁ前回が1枚挿しが多すぎて汚すぎたという説が濃厚なのですが(笑)。

 まずは個々のカードを解説していきましょう。


アヴァブルックの町長》/《吠え群れの頭目

 今回の構築劇場でもキーとなった町長。
 すでに解説しているように、2ターン目に出してからはあとはカウンターを構え続け、狼の群れで一気に片を付けるのが主な動きとなります。
 相手がカウンターを構えるようなコントロールデッキの場合、こいつが2ターン目に出てしまうと、あっという間に物凄い点数のライフを持って行くことになります。


饗宴と飢餓の剣

 皆さんはもうよくご存じかと思いますがこのカードはクロックパーミッションのためのカードです。
 「Caw-Blade」でその凶悪さはお墨付き。青黒そして赤緑のどちらにもプロテクション(黒)(緑)は有効です。
 装備の土台を供給するのは《戦隊の鷹》ではなく、《アヴァブルックの町長》の裏、《吠え群れの頭目》というわけです。


情け知らずのガラク》/《ヴェールの呪いのガラク

 《吠え群れの頭目》だけでもよかったのですが、トークン生成機として採用。もちろん除去能力も持ち合わせているので非常に優秀です。
 このデッキでは《ヴェールの呪いのガラク》になることは少ないかと思いますが、まぁ《聖別されたスフィンクス》でも持ってきておけばよいでしょう(笑)。
 サイドボードからは一転、《迫撃鞘》とのコンボを期待しています。苦手なビートダウン系デッキに対する解答の一つです。


最後のトロール、スラーン

 《饗宴と飢餓の剣》との相性が抜群であることは勿論のこと、流行りの青黒コンに対するキラーカードでもあります。
 コイツを出してから、《聖別されたスフィンクス》をカウンターするだけでゲームに勝てることも!


マナ漏出》《雲散霧消

 もはや解説不要枠。主に相手の大ぶりなアクションを咎めるカードです。
 理想としてはカウンターを撃ち続けて攻め続けたいところではあるのですが、よほど引きが強くないとそれは難しいので、除去呪文なんかはおとなしく受け入れなければならないことも多いと思います。
 うっかり《原始のタイタン》や《聖別されたスフィンクス》などが通らないようにくれぐれもご注意を。


瞬唱の魔道士

 ミスター・クロックパーミッション。《マナ漏出》《雲散霧消》を回すのが主な役割です。
 ただ1点注意してほしいのは、《吠え群れの頭目》が元に戻ってしまうことです。
 まぁ戻ったら戻ったでコイツは人間ですから3/2で攻撃できたりしますし、もう一度構えてターンを返せばまた変身するわけですし、特に大きく気にすることはないと思います。

 サイドボードからは《瞬間凍結》をフラッシュバックするオプションが付いてきて更にお買い得。この組み合わせのせいで、赤緑が青系に対して苦戦を強いられているようですね。


はらわた撃ち

 カウンター呪文で捌ききれないやっかいなクリーチャーは主にタフネスが1です。
 《流城の貴族》《極楽鳥》《アヴァシンの巡礼者》《墨蛾の生息地》なんかが狙い目ですね。
 《瞬唱の魔道士》との相性はお墨付き。


聖別されたスフィンクス

 強靭・無敵・最強!!


内にいる獣

 そんな相手の《聖別されたスフィンクス》をただの脳筋に変えます。
 自分のパーマネントに撃って《饗宴と飢餓の剣》装備! という裏ワザもありますよ。


熟慮

 パーミッションというのは相手より多くのカードを引くことによって初めて成立します。
 相手と同じ枚数のカードを引いて、相手の脅威を全て捌き切るというのは相手より引きが相当強くないと無理ですからね。
 かといって《熟慮》ではちょっと心もとないのですが、他にまともなのがないのでやむなしですね。


秋の帳

 《大貂皮鹿》があったころは見向きもされなかった青黒対策。
 ところがどっこいこのデッキにおいてはかなりの強さを示します。
 《アヴァブルックの町長》を守る使い方をはじめとして、1ターン丸ごとカウンターされなくなる上に除去も効かなくなるので、《饗宴と飢餓の剣》がお祭り状態となります。
 《瞬唱の魔道士》でフラッシュバックすると・・・ゴクリ。
 赤緑《ケッシグの狼の地》のサイドボードにも最近では採用が増えている、オススメの1枚。


殴打頭蓋

 たまには赤単にも勝たせてください・・・という希望の表れです(笑)。


解放の樹

 たまには赤単にも勝たせてくd(略



 今回のデッキは、いわゆる「マナ加速!でかいクリーチャー!どーん!」という僕の典型的なデッキとはちょっと趣が違ったクロックパーミッションです。
 そのため、プレイのときにはどこでカウンターを構えるか、どこで仕掛けるかという押し引きが重要になってきます。

 例えば、対戦相手はブリスベンを制したような青黒っぽいデッキ。2ターン目に《アヴァブルックの町長》を召喚したもののすぐに《破滅の刃》で除去されてしまった3ターン目。
 手札は2枚目の《アヴァブルックの町長》、そして《雲散霧消》。

 ここで《雲散霧消》を構えるか、それとも《アヴァブルックの町長》を出してみるか?

 大多数のプレイヤーは《アヴァブルックの町長》を召喚するプレイを選択すると思いますが、相手は実は青黒ではなく「太陽拳」で、《ヴェールのリリアナ》が出てきてしまってガーン!という裏目もあります。
 こうしたスリルと戦わなければならないところが難しいところではありますが、逆に面白いところでもあります。

 「押し引き」の部分はプレイヤーの腕が最も出る部分ですから、是非ともこういったデッキは沢山プレイして腕を磨いておきたいところです。
 相手の攻勢をトークンでチャンプブロックを繰り返しつつ、的確に致命的な呪文にはカウンターを合わせる。
 針の穴に糸を通すように着実にダメージを積み重ねていき、うまく1ターン差で勝てたときの快感は癖になりますよ。

 デッキ名はあのプロツアー・フィラデルフィアで大活躍した「Counter Cat」をリスペクトしてみました。
 僕のデッキのデッキ名としてはずいぶん普通です。正直こんなんでいいのかというくらい普通です。ですがなんとなく語感がとてもよいので(強制終了)


 さて、冒頭でも言及していますが来週はいよいよグランプリ・広島です。
 ここしばらく実績が残せていないのでそろそろ勝ちたい! ...ところではあるのですが、果たしてこれまでの調整は上手くいっているのでしょうか。
 おそらく僕と同じように、クロックパーミッションが強いのではないかと思って調整をされている方も多いのではないかと思います。
 果たして本戦では一体どんなデッキが勝ち上がるのか。今から楽しみですね!


 それでは、Decks, be Amibtious!!

グランプリ・広島2011

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