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戦略記事

Beyond the Basics -上級者への道-

リミテッドでの1マナ域のプレイ

Gavin Verhey
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2018年10月26日

 

 マナ・コストが1マナのクリーチャーはマジックと同じ長さの歴史を持つ。《サバンナ・ライオン》、《ラノワールのエルフ》、それに《モンスのゴブリン略奪隊》。

 そして25年たった今でも、ああ……いまだにいくつかのクリーチャーはマジックで現役だ。

 これまでに数多くの1マナクリーチャーが作られてきた。信じられないほど強力な1マナ域もたくさんあり、マジックの最高峰の舞台で使われるのを私たちは目撃してきた。いずれにしろ、(無料の呪文を除けば)支払いが最も安いコストで済むものでゲームに影響を与えられるのであれば、それはまさに賢明なマナの使い方だ。そして構築戦では、使えそうなものがあるときにだけ1マナ域の山からカードを選び取ればよい。

 では、ブースタードラフトシールドデッキで戦うときは、どのような場合にそれをデッキに入れるべきだろうか? これらのフォーマットでは、そこにあるカードしか用いることができない。それらをデッキに入れるのが正しい場合とは、そしてデッキから外しておいたほうがいい場合とは?

 それを判断するのは難しいかもしれない。

 デッキに1マナ域を入れるか否かを判断するには、多くの要素が関係してくる。今日はこれについて調べてみよう!

カードのコスト

 指をパチンと鳴らすだけで《真珠三叉矛の人魚》が空中から現れて戦場に出てくるとしたら、それは素敵なことだ。コストの不要な1/1クリーチャーには多くの有用性がある。しかし、本物の魔法使いでもないかぎりそれは不可能だろう。問題となるのは、実際にはマナ以外にも負担がかかる、という点だ。

 1マナ域はマナ・コストとしては最も低いが、そのカードを使うためのコストはそれだけではない。デッキに採用したすべてのカードは、採用しなかったカードの犠牲の上に成り立っている。1マナのクリーチャーを使うためにカードの枠を消費したのであれば、そこから採用しただけの価値を得なければならない。

 その価値を得るためには、その1マナ域でどれほどのダメージを稼ぐ必要があるだろう?

 最も多く見かけるものの1つは、1/1の飛行クリーチャーではないだろうか。

 地上クリーチャーでは止まらない! 毎度1点のダメージを与えられる! 何か悪いことでも?

 さて、それについて少し考えてみよう。

 初手に《陽光尾の鷹》があり、1ターン目にそれをプレイするとしよう。対戦相手が飛行クリーチャーを出さないかぎり、毎ターン1点のダメージを与えることができる。その状況で4ターン目まで対戦相手が飛行クリーチャーを出してこなかった――とすれば、《陽光尾の鷹》は3点のダメージをたたき出す。これはかなりよくある状況だ……とは言うものの、リミテッドのデッキで3点のダメージを与えるためだけに1マナを払うことはほとんどないだろう。

 《溶岩の撃ち込み》のようにプレイヤーに直接ダメージを与えるカードは、他の相互作用があるか(やあ、秘儀があるね!)、いつでも対戦相手を焼き尽くせる量の火力呪文を集めてその力を合わせるのでもない限り、リミテッドでは使われない。そこに問題があるんだ。《陽光尾の鷹》は《溶岩の斧》に比べればはるかに安いコストで唱えられるが、6ターン目に引くカードとして見たとき圧倒的に強いのは《溶岩の斧》だ。それから、ああ、《陽光尾の鷹》はブロックに参加できるけれど、攻撃クリーチャーと相打ちできることはほとんどない――プレイヤーへのダメージを1度肩代わりするだけだろう。

 たとえ《陽光尾の鷹》が最後までブロックされないとしても、採用する価値があるかどうかはまだわからない。そのダメージ効率は2マナ2/2クリーチャーに比べるとかなり悪いんだ。それを強化する方法があるなら別だが、《霧まといの川守り》のようなブロックされない1マナ1/1クリーチャーも、同様の理由で通常は採用に値しない。

 1マナ域に価値を感じるには、攻撃や防御をする上でもっと使えるものであってほしい。そうするための簡単な方法がある……

パワー2

 リミテッドで私の目を惹く1マナ域で、すぐさまその価値を見出せるであろう一番のものといえば、パワー2のクリーチャーだ。

 パワー1のクリーチャーは、攻撃や防御をするためのカードとして、そのコストに見合うだけの価値を見出すのは難しい。タフネスが1のクリーチャーとなら相打ちを取れるが、リミテッドではそういった状況は少ない。そして1ターン目に出せたとしても、相手がクリーチャーを出してくるまでに2点ほどのダメージを与えるのが関の山かもしれない――2点ダメージを与えて1度ブロックして終わるだけのカードは、基本的にはデッキに入れたいものではないだろう。

 しかしながら、パワーが2なら、話は全く変わってくる。

 《灰色熊》にちなんで、2マナ2/2クリーチャーのことを「熊」と呼ぶのだが、熊は基本的に、マナ・カーブ(訳注1)を整えるためにデッキに採用されるものだ。必ずしもすべてを入れるわけではないが、確かに強い影響力を持っている。ともかく、2マナ2/2クリーチャーはリミテッド・フォーマットにおける基本的存在だ。

(訳注1:マナ・カーブ/マナ域ごとの枚数をグラフにすることで見える曲線)

 1マナでパワー2のクリーチャーがある場合、マナをより効率的に使うことができる。攻撃的なデッキであれば、すぐに戦場に出て攻撃し、より多くのダメージを与える可能性が高まるわけだ。1ターン目と2ターン目の両方でパワー2のクリーチャーを出すことができれば、2ターン目に2点、3ターン目に4点のダメージを与えることができる。

 そして防御的なデッキであっても、1マナでパワー2のクリーチャーは、対戦相手のクリーチャーと相打ちを取るときのマナ効率という観点から見て優秀だ。こちらが1マナで出した《先兵の精鋭》と、対戦相手の《栄光の探求者》を相打ちを取ることができれば、基本的には嬉しい相打ちだ。1マナのカードで2マナのカードを打ち取ったんだからね。

 そういった理由から、2点ダメージではなくパワー2がここで重要となる。例えば、《先兵の精鋭》と《敵意ある征服者》の間には、その有用性に大きな差が存在しているんだ。

 それらを似たようなものと思うのは簡単だ。どちらも攻撃すれば相手のライフは2点分減る。しかし《敵意ある征服者》は実際のところ、最も攻撃的なデッキや、吸血鬼というサブタイプを活用するデッキにのみ適したクリーチャーだ。これはブロックに使う場合かなり弱いし、攻撃に行ける条件もかなり厳しい。対戦相手がタフネス2のクリーチャーを出している場合、《先兵の精鋭》なら攻撃に行けるが、《敵意ある征服者》は無理だ。

 1マナパワー2のクリーチャーを常に採用するとは限らないが、まず検討するものとしては素晴らしい――それらはしばしば私のリミテッド・デッキにも用いられる。

ゲームを通しての有用性

 1マナ域の問題がゲームの後半で役に立たない点にあるとすれば、ゲーム後半で機能する能力が組み込まれているカードは、その問題を回避できる素晴らしい1マナ域だ。

 例として《セイレーンの嵐鎮め》と《物盗りインプ》を取り上げてみよう。

 前述した《陽光尾の鷹》のように、これらのカードも序盤に少々のダメージを与えることができる。しかし、大きな違いはこれらが持っている能力にある。後でこれらを使用すれば、これらのカードの価値は高まるんだ。これらは対戦相手のカード1枚を道連れにできる。その成果は大きい。

 その1マナ域が将来何らかのカードと引き換えになるのであれば、それは素晴らしいことだ! 戦場に残っている間は少々のダメージを稼ぐことができて、その後いよいよとなったらもっと意味のある効果を発揮してくれるわけだからね。

 しかしこれはカード・アドバンテージ(訳注2)に限った話ではない。

(訳注2:カード・アドバンテージ/パーマネントや手札のカード枚数における優位)

 《チフス鼠》のようなカードは、パワーが1であってもあらゆるクリーチャーと相打ちを取れるので有用だ。多くのコストを費やしたクリーチャーと1マナのクリーチャーとの相打ちはとても気軽に行える。《ゴブリンの旗持ち》は後々余ったマナの受け皿となり、重いクリーチャーとも相打ちを取れる手堅いカードだ。こういったカードは、対戦相手がタフネス2のクリーチャーを出してきてもまだ役に立つ。

 それから、もちろん、《ラノワールのエルフ》もそうだ。

 1ターン目のこのカードは極めて大きい影響を及ぼす。それはマナの展開で対戦相手に先んじ、ゲームの展開を一歩早めるということだ。つまりゲーム全体に影響するということであり、ひいてはゲーム後半の役に立っていると言えよう。ああ、ゲームの後半に引くと弱いのは確かだが、序盤のとほうもない強さは、その危険を受け入れるだけの価値がある――それは本当に1マナ域に求められる最大の成果だ。10ターン目に活躍できる1マナ域はほんの一握りに過ぎないので、多くの場合は「これは序盤の数ターンに引いたとき、どのくらい強いだろうか?」と考えることになるだろう。

 《ラノワールのエルフ》の場合、答えは「とても強い」だ。

相互作用を見つけ出す

 私が取り上げたい最後の題材は、『ラヴニカのギルド』ドラフトを遊んでいるプレイヤーには特に関係のある、相互作用についてだ。『ラヴニカのギルド』にはリミテッドで過去最高の1マナ域がある。

 それについて語ろう。《癒し手の鷹》だ。

 これはさっき採用しないほうがいいと言っていたカードによく似ている。ああ、これは絆魂も身につけていて素晴らしい――しかしそれでも、ほとんどのリミテッド・フォーマットでは、私はこれを基本的にはデッキに入れないだろう。

 しかしここでその考えをひっくり返すものとは? 召集と教導だ!

 ここまでに私が述べた要点には、パワーが2であることとマナのためにタップできることの2つがあったが……これらのキーワード能力はその2つを行うものだ!

 《癒し手の鷹》を教導で2/2に強化するのはとてもよくあることだ。それならデッキに入れる価値は確実にある。召集持ちをより素早く出すためにクリーチャーをタップして加速することは、《癒し手の鷹》を《ラノワールのエルフ》として用いることになる。デッキに《癒し手の鷹》を6枚も詰め込んだりするわけではないが、この『ラヴニカのギルド』というリミテッド環境では頻繁に採用するカードだ。《追われる証人》も似たような理由でデッキに入れる、よい1マナ域仲間だね。

 そして、今述べたのは現在のセットでの話ではあるが、相乗効果を見つけ出すことはいつでも意識すべきことだ。例えば、オーラが多く見かけられるなら、1マナ域はより活躍できる可能性がある。危険を伴う戦術ではあるものの、『基本セット2019』を用いたリミテッドの対戦の多くは、1ターン目の《錆色翼の隼》に《騎士の誓約》をつけることで決着したはずだ。通常よりも1マナ域を生かすことができるデッキの構成について意識し続け、1マナ域を適切に評価していこう。

全と一

 次にシールドデッキ戦に参加して1マナ域を見かけた時は、序盤にどれくらい影響力があるのか、後半に何ができるのか、そして他のカードとの相打ちに価値があるのかどうかを考えてみよう。それらをデッキに入れるならば、引いて唱えるときにそれがゲームにどんな影響を及ぼすかを考えよう。それらについて注意深く考えることは、それらがデッキに入れる良い選択肢であるかどうかを知るための最初の一歩だ。

 リミテッド・デッキにどのカードを採用するかについては多くの要素が関係してくる――そして1マナ域を見かけた時に、より多くの情報に基づいて判断できるようになることを願うよ。

 この記事について話し合いたい考えがあるかな? 何か疑問は? いつでもTwitterTumblrでメッセージを送ってくれてもいいし、BeyondBasicsMagic@Gmail.comにメールしてくれても大丈夫だ。(編訳注:英語でお願いいたします。)

 『ラヴニカのギルド』を遊ぶ楽しい時間を過ごしてくれ――そしてあなたの初手にいつも1マナ域が来ることを願うよ。また会おう!

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight

(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing)

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