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戦略記事

Beyond the Basics -上級者への道-

ブースタードラフトに挑戦する5つの理由

Gavin Verhey
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2018年7月12日


 17年前、私はまだ11歳で、ブースターパックを手に入れる方法を探していた。ある金曜の午後、私の母親は、住んでいた小さな町の近くにゲームショップが無いか探してくれた。私が欲しかったマジックのカードが置いてある店が、どこかにあるはずだ。

 そしてついに、母は金の鉱脈を掘り当てた! 新しいブースターパックだけでなく、私が聞いたこともないような過去のセットのものまであるという場所だ――そこにはサプライ品の数々も揃っている、ということは言うまでもない。

 私と兄は、すぐにそこまで車で向かってほしいと母親にせがんだ。

 私たちが店内に足を踏み入れた時、私は目を大きく見開いた。ブースターボックスはタイル張りの壁紙のように並べられ、カウンターには最新最高の情報が特集された雑誌が展示され、テーブルの上にいくつも置かれた長くて白い箱にはカードが詰め込まれていた。ひとところにこんなにマジックのカードがたくさんある場所など、見たこともなかった!

 私たちはカウンターに向かい、パックをいくつか選んだ。カウンターの向こう側にいた人が、いくつかお勧めしてくれたんだ。私たちが支払いをすると、その人が聞いてきた。それは私の世界を変化させる問いだった。「君は、今夜のフライデー・ナイト・マジックのドラフトに参加するために来たのかな?」

フライデー・ナイト・マジックって? ドラフトって何ですか?」

 彼は、それはドラフト中に開封したパックのカードだけで遊ぶゲームだ、とその刺激的で新しいフォーマットについて説明してくれた。私が母親を見つめると、母はうなずいた。

「やりに来ます!」

 その日の夜、私はその店に戻ってきて、私にとって初めてとなるブースタードラフトをプレイした。そこで私の初めてのマジック友達となる人々と出会い(その時の店長は今でも友人だ)、マジックの世界へと導かれ、そしてその大きな流れの中で、ドラフトに挑戦してみた。

 17年後の今も、ドラフトはマジックの遊び方としてお気に入りのもののひとつだ。

 ブースタードラフトについて簡単に説明しておこう。あなたを含めた8人でテーブルに輪になるように座る。1人につきブースターパック3つが与えられる。1つを開封し、好きなカードを1枚取って裏向きに置く。残りのカードは伏せて左のプレイヤーに渡す。次に、右側から来たカードの束から好きなカードを1枚取って、残りを左に渡す。これを回すカードが無くなるまで繰り返す。それから2パック目を開封し、左ではなく右のプレイヤーに束を渡すことを除いて、同じことを繰り返す。3パック目はまた左のプレイヤーに束を渡す形で、同じ流れだ。そこまで終わったら、取ったカードと自由に使える基本土地を使って、40枚のデッキを組むんだ。(ブースタードラフトについての説明は、このページをチェックしてくれ。)

 そのような遊び方に不安を感じるかもしれない。構築戦で自分の好きなデッキを組むためにやってきたことは、そこでは意味を持たない。開封したパックの中身がどうであれ、それらでデッキを作ることになる。その場その場で決定を連続して下していく必要があるんだ。

 にもかかわらず、ブースタードラフトはとても楽しい。

 もしドラフトについてのその意見を完全に信用できないとしても、『基本セット2019』はドラフトを初めて遊ぶのに最適なセットだ! ドラフトに挑戦してみるべき大きな理由が5つある。

1.新しいカードがたくさん手に入る!

 あなたが遊び始めたばかりでカードを少しだけ持っているとしても、遊び続けてカードが詰まった箱をたくさん持っているとしても、ドラフトは最新のセットからカードを集めて手に入れる最高の方法のひとつだ。

 ドラフトではパックを3つ開封し、そこから欲しいカードを1枚選ぶことができる。したがって、その中に(おそらくレアとして)素敵なものが入っていたとしたら、それを最初に手に入れられるのはあなただ。それとは別に、テーブル内でカードの束を順に回していく過程で、他のプレイヤーが開封したパックも見ていける。ある人にとって不要なカードも、他の人にとって宝かもしれない――しばしば、欲しいカードが回ってくることだろう。ドラフトでカードを取っていけば、最後には素晴らしいカードがたくさん手に入っていることだろう!

 それは3パックを買うのと変わらない……全部そのまま手に入れるか、1枚ずつ取るかの違いだけだ!

 新しいセットの欲しいカードを手に入れる方法の1つとして、私はいつもまずドラフトをすることにしているんだ。ドラフトなら新カードをたくさん手に入れながらマジックを楽しめる。完璧だ!

2.マジックの基礎を学べる

 マジックが上手になりたければ、ブースタードラフトは上達のための最良の方法のひとつだ。

 ブースタードラフトから学べる要素は、構築戦のデッキで成果を出すことにもつながる、マジックの基本を身に着けるための鍵だ。ドラフトを数多くプレイすることで私の技術は磨かれ、より良いプレイヤーになることができた。

 どうして? ああ、これはドラフトで学べる要素の、ほんの一部の例だ。

  • カード評価――この新カードは自分のデッキに適しているんだろうか? ドラフトでは、その質問が常に繰り返される。新しいデッキを組んだり新しいセットが登場するたびに、構築戦用のデッキのために何度も自問することになるわけだが、ドラフトはそれら各カードの基本的な強さの基準を把握する助けとなる。
  • デッキ構築――ドラフトでは毎回新しいデッキを作る必要がある。既存の結果を出しているデッキにこだわり続けることはできない。その代わりに、ドラフトしたデッキがなぜうまく動いたか(あるいは動かなかったか)、そして次回以降に向けて何を改善すればよいのかを繰り返し学ぶことができる。
  • 基本的なゲームプレイ――ドラフトのゲームプレイは、最も基本的なマジックだ。クリーチャーによる攻撃やブロック、呪文でクリーチャーを破壊したり、戦闘中にクリーチャーを強化したり、その他にもいろいろとある。これがマジックの核となるものだ。これらをうまく行う方法を学ぶことは、構築戦での通常のデッキ構築へと徐々に生かされていく。
  • 新たな相互作用の発見――私たちの脳は、過去の手法を繰り返しがちだ。ドラフトでは、やったことのない色の組み合わせに向かうことになったり、普段は使わないカードを用いなければならないことがたびたびある。これにより、過去にプレイしたことのない能力や相互作用のまったく新しい組み合わせを見ることになるだろう。私も過去に、ドラフトですごい組み合わせを発見して「んん――これでデッキを組まなきゃ!」となったことがあるよ。

 そして新しいデッキを組むことに関して言えば……

3.新デッキを組むためのきっかけになる

 ドラフトが終わり、対戦がすべて終わったら、そこには40枚のデッキが残る。

 では、その次は?

 まあ、時には、それをコレクションの一部として整理したり、デッキに入れるためにばらしたりすることもあるだろう。しかし、あなたが新しく独自のデッキを組み始めようとしているなら、このドラフトデッキは新デッキの種となりうる!


緑探しのドライアド》 アート:Greg Opalinski

 40枚のデッキは、ドラフトデッキの典型的な枚数であれば、だいたい土地が17枚、それ以外が23枚で構成されているだろう。それを60枚デッキにするのはとても簡単だ。土地を8枚、クリーチャーなどの呪文を12枚入れればもう完成だ!

 これは気軽なデッキをきちんと組める手堅い手法だ。とりわけ、バラエティに富んだものや、友達に渡すためのもの、あるいは大量にデッキが必要な何らかの理由があるときに、とても便利な方法だろう。

4.平等な対戦の場

 ドラフトに参加するプレイヤーは、まったく同じ条件で対戦する。渡されるのは3つのパックだけだ。

 私がマジックを始めたころはまだ持っているカードが少なくて、マジックの構築戦でほかのプレイヤーが行使していた立派なデッキを相手に戦うのはなかなか難しいと感じたものだ。ドラフトはその差を初期の状態へと戻す。私と対戦相手がデッキを構築し終えるまでに至る過程は、同じということだ。

 ああ、もちろんプレイには経験が関係してくる。ドラフトには多くの技術が存在し、経験豊富なドラフトプレイヤーが結果を出すことが多い。とはいえドラフトは、全員が同様にカードを選んでいくわけで、デッキを組むために必要な道具はそこにすべて揃っていることになる。

5.常に新しい体験がある

 私のマジックプレイヤーとしての人生の多くをドラフトが占めている理由として考えられるのは、それが常に、毎回、その都度、違うものになる、ということだ。ドラフトを2回行った時、それは同じものにならない。別のデッキと対戦することになるだろうし、ドラフトしたデッキも違うはずだ。仮に同じ2色のデッキをドラフトしたとしても、そこに含まれているカードは違うだろう。

 つまり、最初の数回だけ楽しいというわけではなく、何度でも楽しめるということだ。このような多様性が、ドラフトをいつも刺激的なものにしてくれる。いったん遊んでみて、組んだデッキが気に入らなくても問題はない。もう一度遊んで全く別のデッキを組むことができるんだ!

そこにドラフトはあるか?

 この記事を読んで、あなたの中でドラフトをしたいという気持ちが沸き上がってくれれば幸いだ! ドラフトはとても面白いんだ――ぜひ楽しんでほしい。

 初めて挑戦するときのための簡単なヒントを3つ伝えよう。

  • デッキを組むために土地が17枚、土地以外が23枚ほど必要になる。最低でもクリーチャー15枚を目指そう。
  • 2色にこだわることを推奨する。デッキに一貫性を持たせ、土地と呪文がうまく揃うようにしたい。2色はそうするための素晴らしい選択だ。
  • 対戦相手の強力なクリーチャーを除去できるようにしておくことが重要だ。「除去呪文」(1体以上のクリーチャーを破壊することができるカード)は優先して取ろう。

 ブースタードラフトについてもっと助言が欲しいかな? マジックのプロプレイヤーである、リード・デューク/Reid Dukeによるこの記事(訳注:リンク先は英語)を強くお勧めしておくよ。ドラフトにおける基本が網羅されているんだ。

 何かほかに疑問はあるかな? 気軽に尋ねてくれ! TwitterTumblrでメッセージを送ってくれてもいいし、BeyondBasicsMagic@Gmail.comにメールしてくれてもいいよ。(編訳注:英語でお願いいたします。)

 ドラフトを楽しもう――いずれ長い年月を経て、自身の初めてのドラフトのことを懐かしむ時が来るかもね。

Gavin / @GavinVerhey / GavInsight

(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing)

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