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Beyond the Basics -上級者への道-
もっと軽くできるだろうか?
もっと軽くできるだろうか?
Gavin Verhey / Tr. Yuusuke "kuin" Miwa / TSV testing
2017年10月19日
あなたは《殺戮の暴君》をどのくらいの頻度で用いるだろうか?
強大な6マナ7/6クリーチャーは、多くの対戦相手にとって災難となるだろう。コントロール・デッキを使うプレイヤーは対処できない巨大な恐竜を睨んで歯噛みする。ミッドレンジやアグレッシブなデッキに対してすら戦場を支配し、ほとんどの除去はそれを処理できない。《殺戮の暴君》に対抗する最良の方法の1つは、自分もそれを使うことだ。こいつの優れている点は、特定のデッキを必要としないところにある。つまり、単体で十分に強いということだ。
それは戦況を変化させる。完全なるパワーカードだ。まさに恐るべき竜!
そう、とても単純な話だよね。スタンダードで使える間はこいつを4枚スリーブに入れて、緑マナの出るデッキすべてで使えばいい。簡単なことだよね。これでこの記事で話すことは終わりかな?
まあ、あなたもわかっているとは思うが、そんなことはない。
《殺戮の暴君》が強力なカードだというのは事実だ――そしてこれを絶対に入れるべきデッキがいくつかあるのも確かだ。しかしそれは、あらゆるデッキで入れるべき、という意味ではない。これは6マナを必要とするカードで、コストを払えるなら強いが、そこにたどり着くための負担はデッキ全体の足かせとなる。
この件についてもっと調べてみようじゃないか。
マナ・カーブを確認する
デッキを組むときには、マナ・カーブ(訳注1)を念頭に置かなければならない。過去にも「マナ・カーブの組み立て方」などで(主にリミテッドでの解説として)軽く説明してきている。ともあれ、リミテッドでも構築でも、こう自問しなければならない。「もっと軽くできるだろうか?」
(訳注1:マナ・カーブ/マナ域ごとの枚数をグラフにすることで見える曲線)
あるいは逆に、あまり意識されなさそうな「もっと重くできるだろうか?」という自問もまた必要だろう。
確かに、ある種のデッキは、6マナを出して《殺戮の暴君》を叩きつけたいはずだ。しかしそれが適切でないデッキだとしても、入れるだけなら簡単にできる。
過去に私が「ReConstructed -デッキ再構築-」という記事を連載していたころは、毎週毎週、読者が投稿してくれるとんでもない量のデッキリストに目を通してきた。世界中のプレイヤーがそのデッキを組むためにどのように検討し選択したかを感じ取れたので、それらのデッキを見ていくことは、とても素晴らしい体験だった。
そして、このコラムを通して多くの優れた発想を得ることができた。しかし一方で、デッキ構築における最大の(あるいは2番目か3番目の)失敗は、何度も繰り返し目についた。その失敗とは、そのデッキが対応しきれないマナ・コストのカードを採用してしまうことだ。
実質的に、使いたいと考えたそのいくつかのカードを入れることで、デッキ全体が悪化してしまっている......本当によくあることだった。
《業火のタイタン》を採用したアグレッシブな赤単から《僧院の速槍》を4枚入れたコントロール・デッキまで、あらゆるものがあった。
このような問題はなぜ起こるのだろうか? それについて説明するつもりだが――まずはその疑問をスタックに置いて、ブースタードラフトについて話すこととしたい。(すぐにそれらが繋がることになるよ。)
ブースタードラフトにおけるコスト
リミテッドのデッキを構築する時は、単にカードを集めていくわけではない。デッキに必要なものを集めるんだ。相乗効果があれば嬉しいが(特に『イクサラン』のような部族セットでは!)、少なくとも、自分のデッキが何をしようとしているのかは知っておきたいところだ。
このデッキは守備的だろうか? 攻撃的だろうか? 戦闘でクリーチャーの相打ちを狙うのか、それとも相打ちを避けるのか? デッキに入れるためのカード候補は、それらの質問によってどんどんそぎ落とされていく。
よし、いいかな。ブースタードラフトで、あなたは《殺戮の暴君》をどのくらいの頻度で用いるだろうか?
《殺戮の暴君》 アート:Yeong-Hao Han |
確かに、《殺戮の暴君》はドラフト・デッキではかなりの採用率となるだろう。ミッドレンジ戦略を取るクリーチャー・デッキ、つまり『イクサラン』ブースタードラフトにおけるほとんどの緑のデッキなら、採用しない理由が無い。
しかし仮に、極めてアグレッシブな緑青マーフォーク・デッキを組んでいたとしたら、どうだろう?
デッキの作戦はこうだ。パワーと回避力を兼ね備えた軽量クリーチャーをいくつか展開し、《水罠織り》や《風と共に》のようなカードを用いてダメージを確実に通す。《大嵐呼び》や《切り裂き顎の猛竜》のような、数枚の強力な4マナ域をマナ・カーブの頂点としている。
ドラフト時に手に入れていた《殺戮の暴君》を、このデッキに入れるべきだろうか?
このカードは、軽量クリーチャーを大量に並べて早い段階で対戦相手を倒すというデッキの主目的には合致していない。加えて、一番重いカードが4マナ域であるなら、より良いマーフォークを詰め込むため、デッキから土地を1枚か2枚は抜いても問題ないだろう。しかし6マナを必要とするなら、逆に土地が必要になるはずだ。
もっと軽くできるだろうか?
ああ、《殺戮の暴君》を唱えることができたならば、おそらく素晴らしい結果が待っているだろうね。しかし、序盤から攻撃を仕掛けられる何かの代わりに、これが序盤の数ターン手札に居座っている時はどうだろうか?
土地を抜いてデッキの目的に合致するカードを何枚か問題なく加えられるのであれば、私はこのデッキでは《殺戮の暴君》を使わないだろう。これはデッキに入れられる他のカードにも依存する問題だが、《殺戮の暴君》はデッキの主目的には合わない。むしろ、これに合わせてデッキが方向性を変えられてしまうだろう。
もちろん、逆もまた真なりさ。
私は《アダントの先兵》を並べるのが好きだ。一斉に攻撃できるなら素晴らしいね。
しかし白青の遅いコントロール・デッキをドラフトしていたなら、これは大抵防御のために用いることになるだろう。そうであれば、《アダントの先兵》はもはやこのデッキに適していないカードかもしれない。
ああ、ドラフトの場合は例外が存在する。例えデッキに合わないとしても、そうするだけの価値があるほどにそのカードがとんでもなく強いなら、絶対に入れよう。私はドラフトで、4マナ域が最高のかなりアグレッシブな赤のデッキに、6マナの《業火のタイタン》を入れたことがある。なぜなら、それが繰り返し使える除去であり、なおかつ大型クリーチャーだったからだ――出たら終わりで、対処が極めて困難な、ね。
この話題を取り上げた理由は、ブースタードラフトにはデッキ構築の基本が凝縮されていて、ここで見られる原則がマジックのどんな構築においても通用するからだ。ここでは、素朴なデッキ構築原理が数多く見受けられる。
ではもう一度、構築フォーマットの話に戻ろう。
構築フォーマットにおけるコスト
直前に、ドラフトで極めてアグレッシブな赤のデッキを組んだとしても、テーマに合わない《業火のタイタン》を採用すると言った。しかし最初のほうで、構築で極めてアグレッシブな赤のデッキに《業火のタイタン》を入れるのは間違いだ、とも言っている。
なぜ違うのだろうか?
リミテッド・フォーマットが素朴なデッキ構築の理念を提示しているのだとすれば、構築フォーマットはその理念を限界まで推し進めて洗練させたものだからだ。
構築のデッキと比較すれば、リミテッドのデッキははるかに弱い。リミテッドで時々見受けられる巨大な爆弾カードは、戦況を一変させ、使う価値のあるものだ。なぜなら、それに対する解答を持たれている場合のほうが少ないからね。
構築フォーマットでは、そうはいかない。
《業火のタイタン》 アート:Kev Walker |
構築戦では、目指すゲームプランに最も適した状態になるよう、デッキを最適化する必要がある。極めてアグレッシブな動きを目的とするなら、最高位の1マナ域をそれぞれ4枚ずつすべて採用し、コストの重いカードは投入を避けるだろう。デッキをなるべく軽くしたい。そこに《殺戮の暴君》を入れるだろうか?
その暴君はしまっておこう。これの出番じゃない。
アグレッシブ・デッキで《殺戮の暴君》を使おうとすると、デッキに負担がかかる――例えば、土地が余分に必要になるとかね。デッキは、本来の目的を達成するために最善と思われる手法に集中したほうがいい。
同様に、緑のランプ(訳注2)・デッキで《殺戮の暴君》を素早く出すつもりなのであれば、最高の1マナ域クリーチャーはデッキに不要なものだ。必要なのは重いカードであって、軽いクリーチャーではない。
(訳注2:ランプ/マナを伸ばす行動)
デッキが何をしたいのか混乱している場合、その混乱は対戦中に引くカードに如実に表れるだろう。
限界まで
この記事は《殺戮の暴君》についての話だ、と思うかもしれない。しかし実際には、何かしらの重いマナ・コストを持つカードがどのような影響を及ぼすのかを示すための一例に過ぎないんだ。我々はそういうカードをこれまでにいろいろと作ってきたし、今も作っている。そしてこれからも作っていくだろう。いずれにせよ、重くて強力なカードの力を利用するならデッキ構築のほうに負担がかかる、ということだ。
リミテッドでも構築でも、デッキを構築する時に判断をつけかねることがあると思う。私ならそういう場合、同じくらいの強さを持つそれらの選択肢の中から、より軽いコストを持つものを選択するのが好みだ。なぜだろうか? そのほうがより柔軟に利用できるからだ。よりゲームの早い段階で唱えられるし、同一ターン中に他の何かと一緒に唱えるのもやりやすい。そして、ゲーム中のマナの問題から受ける影響がより小さくなる。
この記事から何か1つだけ覚えてほしいとすれば、以下の内容だ。デッキのためにカードを選ぶ時、このデッキはそのカードを使うのが当然だ、と思えるかどうか考えてみよう。カード・タイプはそれでいいだろうか? カードの機能はデッキに必要だろうか? マナ・コストについてはどうだろうか? 何か1つでも不満があるなら、そのカードや他のカードについて再検討してみるといいだろう。
単純な確認ではあるが、無視はできないものだ。
何か疑問や思いついたことはあるかな? どうか教えてほしい! TwitterやTumblrで伝えてくれてもいいし、BeyondBasicsMagic@gmail.comに(すまないが英語で)メールを送ってくれてもいいよ。
『イクサラン』を楽しんでくれ。《殺戮の暴君》を出すときは常に、デッキがそれを使うつもりであらんことを。
Gavin / @GavinVerhey / GavInsight / beyondbasicsmagic@gmail.com
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