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世界選手権11

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Round 18: Luis Scott-Vargas(アメリカ) vs. 彌永 淳也(東京)

By Takeshi Miyasaka  三日間にわたるスイスラウンドもいよいよ最後の18回戦が始まろうとしている。  すでに多くの選手たちがサバイバルから脱落していったなか、日本勢で唯一日曜日へ進出するラインに踏みとどまった彌永 淳也が最終ラウンドにアリーナへ呼び出された。  栄光のプレイオフ進出をかけて、アメリカの至宝チャネル・ファイヤーボールの総帥Luis Scott-Vargasと対戦することになった彌永。    すでにプレイオフ進出を決めているLSVに勝つ以外に選択肢がない。  LSVは下から上がれるかもしれない友人のために、そして上位者が先手を獲得できるプレイオフのアドバンテージのためにも、彌永に勝ちを譲ることはできないと断ったからだ。彼が使用するスタンダードのデッキは《鍛えられた鋼》であり、先手が重要なアーキタイプだ。  勝てば最終日へ、負ければここで終わり。分かりやすいラストゲームを前にして、多くの観客がこのゲームを見守っている。途中で敗れていった彌永の仲間たちが彼の勝利を願って最後のゲームが始まるのを待っていた。 Round 18

Game 1

 ペイライフして《蒸気孔》から《密林の猿人》スタートのLuis Scott-Vargas。  ついで《沸騰する小湖》から《踏み鳴らされる地》ペイライフで《タルモゴイフ》と景気よく展開したLSVのライフはすでに15だ。  ターン終了時に《湿地の干潟》で《湿った墓》をサーチしてライフを17とした彌永は《孤立した礼拝堂》をセットすると、《真髄の針》で《遍歴の騎士、エルズペス》を禁止する。  《霧深い雨林》をセットして、《密林の猿人》と《タルモゴイフ》を攻撃に向かわせたLSVは、ダメージ解決前に《稲妻》を彌永へキャストし、クリーチャーと合わせて7ダメージが入り彌永のライフは10と半減する。  《》セットでターンを返す彌永に、《霧深い雨林》で《寺院の庭》をサーチしたLSVは、ふたたび2体で攻撃して彌永のライフを6にする。  ターン終了時に《エスパーの魔除け》で2枚のカードを入手した彌永は、《》セットで4マナを揃えて《滅び》でクリーチャーを一掃するが、そこに突き刺さる《稲妻のらせん》。  これで彌永のライフは3、LSVは18点まで回復。  そこまで追い込むと、さらに《野生のナカティル》をキャストし、彌永へ早急な対処を要求する。  《湿地の干潟》をセットした彌永はすぐに起動してライフを2としながら《平地》を入手すると、5マナフルタップで《弱者の消耗》で対応する。  もう一度《野生のナカティル》を展開するLSVだが、《神秘の指導》で《疲弊の休息》を入手し、ライフを8点獲得し10まで引き上げる。  《野生のナカティル》が殴って彌永のライフを7に減らすが、《瞬唱の魔道士》が《疲弊の休息》にフラッシュバックを与え、彌永のライフは安全圏の15へ上昇する。  一息ついた彌永は《思考囲い》でLSVの手札を確認すると、3枚の《流刑への道》が示される。一枚を2ライフと交換しライフは13へ。さらにLSVのアップキープに《野生のナカティル》を《流刑への道》して攻撃を抑制し《》がLSVのボードへ追加される。  一方、引いてきた《タルモゴイフ》が戦場へ投入されるが、メインに《エスパーの魔除け》で2枚のカードを補充した彌永は、《破滅の刃》でこれを排除し、《瞬唱の魔道士》で攻撃開始。  17、15、13、と削りながら《コジレックの審問》をプレイすると、LSVはカードを片付けた。 Luis Scott-Vargas 0-1 彌永 淳也

Game 2

彌永 淳也  《沸騰する小湖》から《踏み鳴らされる地》ペイ2ライフで《野生のナカティル》、続くターンに《沸騰する小湖》から《神聖なる泉》ペイ2ライフで《野生のナカティル》がアタックすれば、彌永 17、LSV 14 というズーおなじみのスタート。  彌永は《忍び寄るタール坑》《平地》とセットして《死の印》を《野生のナカティル》へキャストするが、これは《否認》で却下される。  攻撃を受けた彌永のライフは14へ。さらに《乾燥台地》からの《血の墓所》ペイ2ライフで11となったLSVだが、《台所の嫌がらせ屋》を戦場に加えてライフを2点差し戻す。  《機を見た援軍》によって彌永を守る兵士・トークンが3体戦場へ現れるが、気にせずLSVは全軍をレッドゾーンへ。  《台所の嫌がらせ屋》が兵士・トークン2体にキャッチされ、《野生のナカティル》がダメージを与えると、彌永のライフは11へ。一方のLSVは頑強した《台所の嫌がらせ屋》でライフを15へ引き上げる。  《涙の川》をセットして終了する彌永へ《稲妻》《稲妻のらせん》が叩きつけられる。  ライフ5の彌永へ、ちょうど死んでしまう攻撃力を持つ《野生のナカティル》と頑強した《台所の嫌がらせ屋》が攻撃するが、それぞれ《燻し》と兵士・トークンでキャッチして脅威に対応する。  窮地を凌いだ彌永はドローゴーでターンを返す。  ターン終了時に《瞬唱の魔道士》をキャストしたLSVは《稲妻のらせん》をフラッシュバックし、彌永のライフを2とすると、たらまず彌永は《瞬唱の魔道士》で《燻し》をフラッシュバックして《瞬唱の魔道士》を排除する。  そこへ、LSVがキャストするは《部族の炎》。 Luis Scott-Vargas 1-1 彌永 淳也

Game 3

 行ったり来たりの好ゲーム、シーソーゲームを見せてくれた18回戦のフィーチャーマッチもいよいよ大詰め。  ここまで素晴らしいゲームを展開してきた両者だが、最後の最後でダブルマリガンに見舞われてしまうLSV。  《忍び寄るタール坑》でスタートした彌永に対し、《沸騰する小湖》《聖なる鋳造所》ペイ2ライフで《ステップのオオヤマネコ》というスタートのLSV。  彌永は《涙の川》をプレイすると、将来の脅威である《ステップのオオヤマネコ》を《破滅の刃》で事前に摘み取っておく。  ダブルマリガンゆえに少ないリソースでの戦いを余儀なくされているLSVは、ここで追加の脅威を展開できず《繁殖池》をタップインしてターン終了となる。その隙に《湿地の干潟》をセットすると《平地》をサーチし、《エスパーの魔除け》で手札を2枚補充する。  土地祭りを起こしているLSVが《乾燥台地》を2ターン続けてプレイする合間に、彌永はマナベースを整えて《神秘の指導》で《否定の契約》を確保する。  ターン終了時に《瞬唱の魔道士》をキャストしたLSVだが、攻撃へ転じる直前に飛んできた《流刑への道》によって《平地》へと変えられてしまう。
 《乾燥台地》2枚を《血の墓所》《蒸気孔》へ、合計6ライフ支払って変換すると《イーオスのレインジャー》をキャスト。《野生のナカティル》2体を入手したLSVは《霧深い雨林》をセットして《》をサーチしこの《野生のナカティル》を戦場へ投入する。  しかし代償は大きくライフは10となった。  ターン終了時に《湿地の干潟》を《》に変えたのち、2枚目の《神秘の指導》で《瞬唱の魔道士》を手札にくわえた彌永は、《コジレックの審問》でLSVのハンドを検閲する。  《野生のナカティル》に2枚の《瞬唱の魔道士》という手札から《瞬唱の魔道士》を1枚奪うと、LSVがライフを支払って展開した脅威をまとめて《滅び》の餌食とする。  あらためてLSVが《野生のナカティル》2体をプレイすれば、《機を見た援軍》で兵士・トークンを3体投入し、《瞬唱の魔道士》で《流刑への道》を片方の《野生のナカティル》へ打ち込む彌永。  除去されたクリーチャーはまた展開すればいい。引いてきた《タルモゴイフ》をキャストしてふたたび脅威を突きつけるLSV。  しかし、ダブルマリガンで奮闘してきたLSVの勢いもここまでだった。  《タルモゴイフ》を《流刑への道》した彌永は《忍び寄るタール坑》で攻撃してライフを7とする。  《ステップのオオヤマネコ》をLSVがプレイする間に、《神秘の指導》をフラッシュバックして《エスパーの魔除け》を入手し、これでLSVの手札2枚を刈り取ることに。  しかたなくいぶし出された《瞬唱の魔道士》が戦場へ出るも、《忍び寄るタール坑》は止められず、LSVのライフを4へと減少させる。  完全に彌永がボードを掌握したことを認めたLuis Scott-Vargasは、右手を差し出すと「Good luck tomorrow!」と彌永の勝利を称えるのだった。 Luis Scott-Vargas 1-2 彌永 淳也  マジック・オンライン・チャンピオンシップ・シリーズ(MOCS) で世界選手権の出場権を手に入れ、交通費がペイできるからと一ヶ月前に出場することを決めた若者が、栄光の世界選手権最終日へのキップを手にした瞬間、それまで戦っていた両者の間に流れていたピンと張り詰めた空気が緩和したのが分かった。  それまで硬い表情をしていた若者は、観戦していた八十岡 翔太が祝福の言葉をかけるととたんに破顔し笑顔を浮かべた。 八十岡 「おめでとう。」 彌永 「ビートでもコンボでもなくコントロールで勝ったのは強者の証ですよね。」 八十岡 「ははは。そうだね。」  世界最高レベルのプロチームを率いる総帥を前に、落ち着いて丁寧にプレイをし、値千金の勝利を手にした彌永は、その試合が終わったとたんにデッキの内容とサイドボードについて八十岡と検討を開始した。  この貪欲さこそが、彼を世界選手権へと導き、そしていま、世界王者へ続く道へと誘ったのだろうか。  彌永はこれから MOCSの最終ラウンドを戦い、そして明日は世界選手権の決勝ラウンドに挑む。  会場にいる359人の参加者の中で、もっとも多く、もっとも過酷な4日間を過ごす一人となった。その過酷な道の終着点に、世界チャンピオンの称号が待っていることを、祈念してやまない。  18回戦終了後、彌永は最終順位7位で明日のプレイオフへ進出したことが発表された。  また、日本代表チームがリーダーボード最上位で最終戦を終え、チーム戦決勝戦に進むこともあきらかとなった。
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RESULTS

対戦結果 順位
18 18
17 17
16 16
15 15
14 14
13 13
T4
T3
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
T2
T1
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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