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Red Bull Untapped 2021 日本大会

観戦記事

トップ32決定戦:内山 智勝 vs. ナカシマ シュンイチ ~不可避の4ターンキル!~

伊藤 敦

 

 

 いよいよトップ64が出揃い、2日目はトップ8決定まで3回戦のシングルエリミネーションとなる。

 言ってしまえば8人で3-0を争うフライデーナイトマジックが8卓あるような状況だが、ここからの3-0はそれとは比べようがないほどに難しい。なぜなら、相手は233人からここまで勝ち残った強豪ばかりだからだ。

 その初戦、フィーチャーマッチに選出された対戦は「マーフォーク」を駆る内山と「ネオストーム」を使うナカシマとのマッチアップ。

 「マーフォーク」は今大会でもアーキタイプ順位6位、使用率も5%を超える人気アーキタイプである一方で、「ネオストーム」を選択したのは233人中ナカシマただ1人のみ。しかしここまで勝ち上がっているということは、メタを読んだ良い選択だったと言えるだろう。

 ちなみに「ネオストーム」の勝利条件を一応確認しておくと、「《海門の嵐呼び》を出してから《新生化》を唱える=勝利」というコンボデッキである。

 コピーの《新生化》が解決すると、スタック上の《新生化》本体をコピーできるクリーチャーがライブラリーから呼ばれ続けるので、最終的に最大4体の《二重詠唱の魔道士》と最大4体の《玻璃池のミミック》が3/3サイズで登場した後に《タクタクの瓦礫砦》で全員速攻を得て《戦闘の祝賀者》で戦闘フェイズが2回発生して対戦相手が宇宙の果てまで吹っ飛ぶので、この2枚と4マナが揃ったら打ち消しがない限りほぼ即死である。

 したがってマナ加速からの最速3ターンキルすらも可能なデッキであり、数多くのデッキタイプが存在するヒストリックの中においても随一の速度とお手軽さを誇るオールインコンボと言えるだろう。

 しかもナカシマはレガシーの大型大会を「スパイ」で優勝した経験もあるほどのオールインコンボの名手。「イゼット・フェニックス」と「ジャンド・フード」をはじめとする盤石なミッドレンジや、白緑人間、赤単マッドネス、マーフォークといったアグロにあふれたヒストリックフォーマットで、コンボ使いとしての意地を見せることができるか。

 

ゲーム1

 2ターン目《選択》から3ターン目に《楽園のドルイド》という落ち着いたスタートのナカシマに対し、内山は《海辺の斥候》→《銀エラの達人》→《メロウの騎兵》と快調にクロックを展開して、早くもナカシマのライフを残り12点まで追い詰める。

 殴りきられる前にコンボを決めなければならないナカシマだが、まだコンボパーツが揃っていないのか、《花の壁》から《金のガチョウ》を展開。一方、内山は《メロウの騎兵》だけ残しつつの2体アタックでダメージを2点だけ通すと、集合した中隊》を匂わせる4マナ構えでターンを終える。

 だがここで、返すターンにも《海門の嵐呼び》を引けなかったナカシマが、しかしおもむろに《新生化》を唱え始める。あれ、コンボパーツはまだ揃っていないのに……?と思いきや、「ネオストーム」というデッキを見くびっていた。そう、足りなかったのはコンボパーツではなくマナだったのだ。

 すなわち、《楽園のドルイド》を生け贄に捧げつつの《新生化》プレイから、解決前に二重詠唱の魔道士》!

 これぞネオストームの第2のコンボルート。解決すれば《海門の嵐呼び》の場合と同様のことが起きるため、内山は対応を迫られる。

 しかもこの局面でナカシマは《否定の契約》も構えており、並大抵の妨害では貫通してしまう……と、そのはずだった。

 だがこんなときのために4マナを立たせていた内山は、まず《二重詠唱の魔道士》の能力の対象になっているスタック上の《新生化》を断固たる否定で打ち消しにかかる。

 もちろんこれだけならナカシマは《否定の契約》でかわせば済む話だが、このプランにはひとつの問題があった。内山はこれに加え、2ターン目の《銀エラの達人》で公開情報となっていたマーフォークのペテン師》をも構えているのだ。

 この状況で《否定の契約》を唱えてしまった場合、戦闘前に《マーフォークのペテン師》によって《タクタクの瓦礫砦》が能力を失ってしまう。もちろんそんな場合に備えてナカシマのデッキには2枚の《タクタクの瓦礫砦》が入っているのだが、そうなると今度はアタッカーの《二重詠唱の魔道士》がタップされた上でブロッカーが2体立つことになるため、いずれにせよ初期ライフ20点のまま変動していない内山のライフをこのターン中に削りきることができない。そしてそれは次のターンの契約不履行によるナカシマの敗北を意味してしまうのだ!

 オールインの使い手として当然この未来が見えているナカシマは、無駄に《否定の契約》で追いかけるようなことはせず、大人しく打ち消しを受け入れるしかない。だがそれはそれで、コンボパーツはまた1から集め直しということを意味する。そして内山のデッキはもちろん、そんな時間を与えてはくれなかった。

 すなわち、返すターンの《集合した中隊》で《海と空のシヴィエルン》と《メロウの騎兵》を呼び出すと、続く《海辺の斥候》プレイで《花の壁》がタップされ、ムキムキとなったマーフォークたちによる致死量を余裕で超える打点によって、逆にナカシマの方が宇宙の果てまで吹っ飛ばされてしまった。

内山 1-0 ナカシマ

 

ゲーム2

 《花の壁》スタートのナカシマに対し、内山は《海辺の斥候》→《銀エラの達人》(公開は《クメーナの語り部》)と1ゲーム目同様のロケットスタート。

 さらに3ターン目もセットランドのみでターンを返したナカシマに対し、内山はさらなる《銀エラの達人》を戦線に追加しつつ、すでに見えており召喚できるはずの《クメーナの語り部》を出さずに1マナ立たせてターンを終える。

 だが、4枚目の土地をセットしたナカシマはコンボパーツをすべて手札に揃えていた。すなわち、《海門の嵐呼び》召喚からの《新生化》!

 一方、もちろん内山とて何の勝算もない手札をキープしたりはしない。構えていた1マナからは唱え損ねが飛ぶ!

 しかし再度の記述になるが、ナカシマは「すべて」揃えていたのだ。そう、否定の契約》も含めて

 パーフェクトな4ターンキルで40点ほどのダメージを受けた内山が月まで吹っ飛ばされ、勝負の行方は3本目に持ち越された。

内山 1-1 ナカシマ

 

ゲーム3

 《クメーナの語り部》スタートの内山に対し、土地4枚に《神秘の論争》《神々の憤怒》《否定の契約》という受けハンドをキープしたナカシマは、続く《銀エラの達人》を《神秘の論争》で打ち消すと、さらに《真珠三叉矛の達人》の返しで神々の憤怒》!

 開幕3ターンで3体のマーフォークを処理し、内山のクロックを0点に抑え込むことに成功する。

 一方、4枚目の土地を引き込むも《植物の聖域》だった内山は、3マナ構え、手札3枚という状態でターンを返す……のだが、返す後手4ターン目、ナカシマの手札には驚くべき光景が広がっていた。

 すなわち、初手には影も形も見当たらなかった海門の嵐呼び》《新生化》が揃っていたのだ!

 前述のとおり、ナカシマはそれに加えて《否定の契約》も握っている。しかし、ナカシマの脳裏には1ゲーム目の二段構えがチラついたのだろう、ここで焦って仕掛けるようなことはせず、内山がクロックを作るためにタップアウトする瞬間を狙ってターンを返す。

 続くターンにも内山のアクションはなく4マナ構えでターンを返したのに対して、ナカシマは《可能性の揺らぎ》から探し当てた《楽園のドルイド》をそのまま展開してゴー。内山はそのターンエンドに《集合した中隊》を唱えるが、登場したのはクロックとしては力不足な《マーフォークのペテン師》が2体。

 やがてこの程度のクロックではいたずらにターンを与えるだけだと意を決した内山は、さらに《真珠三叉矛の達人》を戦線に追加し、ナカシマのライフを一気に詰めにいく。

 だが、それは内山に二段構えの可能性がなくなったということでもあり、ナカシマが待ち望んだ瞬間が来たということを意味していた。

 すなわち、《海門の嵐呼び》召喚からの《新生化》。そして《才能の試験》を《否定の契約》 !

 不可避の52点シュートにより、ナカシマが内山をトーナメントから文字通り弾き飛ばしたのだった。

内山 1-2 ナカシマ

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