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プロツアー・パリ11

読み物

準々決勝: Paul Reitzl(アメリカ) vs. Patrick Chapin(アメリカ)

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「リーツェル、ばったばったとなぎ倒す」

by Tim Willoughby / translated by Masashi Oiso



ポール・リーツェル (ボロス) vs. パトリック・チャピン (青黒赤テゼレット)

 ポール・リーツェルはフィーチャーマッチ・アリーナに慌てて駆け込んできた。根っからのゲーマーであり、プロツアー・アムステルダムチャンピオンである彼は、まさに"グランプリ"・パリ2日目ドラフトを終えた直後!広い会場の中を駆け抜け、"プロツアー"・パリの準々決勝へ戻ってきたのだ。ポールは前日、パトリック・チャピン謹製グリクシス・テゼレットコントロールとの相性をしきりに嘆いていた。リーツェルは暇つぶしにグランプリでプレイしていたが、日曜日がこんなに忙しくなるとは思っていなかっただろう。なんといってもグランプリ初日の成績も9-1なのだ。リーツェルに、第1ドラフトの出来について尋ねたところ、

 「まあまあだね。ただ間に合うかどうかがちょっと心配なんだ...多分最初のラウンドは負けかな。」


ポール・リーツェル(左)は、盟友パトリック・チャピンと準々決勝を争う。

 チャピンは少し気取った、そして落ち着いた格好で現れた。チャピンのテストプレイの結果では、どうやらポールが思っているほど一方的なマッチアップではないようだ。しかし、1ゲーム目で先攻を取れた場合はチャピンに分があるそうだ。

Game 1

 先攻のチャピンは即座にキープしたが、リーツェルは手札を見つめたまま長考に沈む。後攻であるリーツェルはいわゆるブン回りが必要だ。リーツェルは積極的にマリガンに挑むプレイヤーでは無いが、今回ばかりはそうも言っていられない

 チャピンは《定業》からの滑り出し。リーツェルは《ぐらつく峰》でターンを終える。2ターン目、チャピンの《太陽の宝球》に対し、最初のクリーチャー《板金鎧の土百足》を送り出す。3ターン目の《ゴブリンの先達》は《冷静な反論》に阻まれるが、フェッチランド起動からの5点を叩きこむ。また戦闘後に《石鍛冶の神秘家》から《冒険者の装具》を入手。

 チャピンは《金屑の嵐》でリーツェルの2体のクリーチャーを一掃。しかしリーツェルからすぐに新たな脅威《槌のコス》が登場。もちろん即座に忠誠度を4に増やし、《》の攻撃がチャピンのライフを10とした。プレインズウォーカーはいつでもコントロールデッキの悩みの種。このマッチではチャピンがその番だ。チャピンは《精神を刻む者、ジェイス》をキャスト、即座に《Brainstorm》で解決策を探しにいく。チャピンは《オパールのモックス》と《予言のプリズム》をキャスト、《オパールのモックス》のみを立ててターンを終了した。

 リーツェルは戦闘前に《戦隊の鷹》をキャストし、仲間を探さないことを選択。コスの能力で《》がジェイスを葬った後、2匹目の《戦隊の鷹》をキャストして、今度は仲間を呼び寄せた。


当然ながら、リーツェルのように2つの認定トーナメントに同時にプレイしたことのある人物はほとんどいない。

 チャピンは《紅蓮地獄》でリーツェルの場を《槌のコス》のみにすると、《地盤の際》でリーツェルの土地を3枚にした。もちろんリーツェルはそんなのお構いなしだ。

 この時点でグランプリ・パリのデッキ構築時間が終了し、リーツェルのグランプリ第11回戦がアナウンスされた。チャピンは

 「座席が発表されたのかい?行っても構わないよ?」

 とおどける。リーツェルは遅刻によるマッチロスを気にも留めず、4/4になった山に《冒険者の装具》を装備して6点のダメージを与える。リーツェルは戦闘後に《戦隊の鷹》を追加。チャピンはカードを引いた後にカードを片づけた。

 リーツェル 1-0 チャピン

Game 2

 2ゲーム目は両者ともマリガン無し。リーツェルが《ステップのオオヤマネコ》を1ターン目に出せないのを見て、チャピンが微笑む。

チャピン 「コントロール対決がしたいんだね。うれしいよ。」

リーツェル 「たぶんキャストし忘れたんだろ。」

 チャピンは《永遠溢れの杯》X=1をキャスト。

 リーツェルは2ターン目《板金鎧の土百足》。しかしチャピンの《転倒の磁石》の前にはイマイチで、必要なら寝かすまでだ。最初の攻撃ではチャピンはムカデの攻撃を受け入れ、フェッチランドによって5点のダメージが与えられる。戦闘後、《戦隊の鷹》がキャストされ、2枚の鷹によってリーツェルの手札が7枚に膨れ上がる。

 《紅蓮地獄》が場をリセットし、チャピンはフルタップで《太陽の宝球》をキャスト。《戦隊の鷹》を並べるのみだったリーツェルに対し、チャピンはまず《定業》から《宝物の魔道士》で《ワームとぐろエンジン》を入手。リーツェルは《反逆の印》をサイドインしておらず、この6マナクリーチャーはリーツェルにとって非常にやっかいな存在だ。しかし、仮にサイドイン、もっと言えば手札に《反逆の印》があったところで、状況は芳しくない。...《転倒の磁石》の存在が《反逆の印》を抑え込んでいる。

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 リーツェルが《冒険者の装具》を《戦隊の鷹》に付け、さらにもう一匹を《ぐらつく峰》で強化したところでチャピンは1回目の《転倒の磁石》。リーツェルは絆魂、接死付きの6/6が現れる前にチャピンのライフを10とした。

 6枚の手札を抱えるリーツェルには山ほど選択肢があり、じっくりと考える。リーツェルは《石鍛冶の神秘家》の能力で《肉体と精神の剣》を戦場に出すことを選択し、それを《戦隊の鷹》に装備する。これでリーツェルの鷹は両方とも武器持ちだ。チャピンは、戦場のフェッチランドを意識して《冒険者の装具》付きの鷹をタップ。3点のダメージを受けると共に、2枚の《金屑の嵐》と《紅蓮地獄》を含むライブラリ10枚が墓地へ送られる。リーツェルはこれを見て大喜び。また、ブラッド・ネルソン・狼トークンがリーツェルの軍勢に加わった。

 戦闘後、さらに《戦隊の鷹》が加わった。


チャピンはエンジン全開!

 チャピンは当然《ワームとぐろエンジン》で攻撃し、これによりライフはチャピン13、リーツェル11となった。チャピンはもう1枚の《転倒の磁石》を追加し、ダメージレースを成立させない。

 追い込まれつつあるリーツェルは、このターン慎重に考える。まず《進化する荒野》をプレイ、《コーの火歩き》と《ゴブリンの先達》をキャストして1点のライフを得る。そして《冒険者の装具》を別の鷹に付け替えてから《進化する未開地》を起動した。これらのクリーチャーの攻撃を受け、チャピンのライフは8となった。

 チャピンは《ボーラスの工作員、テゼレット》をキャストし、+1の能力から《オパールのモックス》を見つけ出すとすぐにこれをキャスト。ワームが攻撃すると、リーツェルはチャピンの手札をうかがいつつ、《石鍛冶の神秘家》を差し出した。これでライフが14となったチャピンは、さらに《転倒の磁石》。

 リーツェルは《オキシド山の英雄》をキャスト。前のターン同様《乾燥台地》をプレイし、上陸が誘発した後に《冒険者の装具》を付け替えることで効果を分散し、《転倒の磁石》に備える。

 チャピンは《肉体と精神の剣》を持つ《戦隊の鷹》と《オキシド山の英雄》をタップ。攻撃を考えるリーツェルを眺めている。リーツェルは《ゴブリンの先達》《コーの火歩き》を《ボーラスの工作員、テゼレット》へ、パワー3の鷹をチャピンへ送り出した。そのままダメージが与えられ、《ゴブリンの先達》がチャピンの《冷静な反論》を明らかにした。

 リーツェルはもう手札を使い切ってしまっている。《ワームとぐろエンジン》を《戦隊の鷹》でブロックしてライフを維持するものの、チャピンのライフも安全圏へ。チャピンは《オキシド山の英雄》と《戦隊の鷹》をタップし、《コーの火歩き》を《忍び寄るタール坑》でブロックし、結果3点のダメージを受けた。戦闘後、リーツェルは唯一起きている《ゴブリンの先達》に装備を全て移し替えた。

 全ての装備とフェッチランドによって、リーツェルは《ゴブリンの先達》と《ワームとぐろエンジン》を相討ちに持ち込むことができる。ワームは結局、絆魂持ちのブラッド・トークンと、接死持ちのワフォ・タパ・トークンへと姿を変えた。チャピンはライフ20、リーツェルはライフ12だ。

 「そっちもビートダウンだったっけ?」

 と、クリーチャー同士の死闘にリーツェルは冗談を飛ばす。

 3つ目の《転倒の磁石》が鷹を寝かせて最後の仕事を終えると、ついにリーツェルは《肉体と精神の剣》による攻撃が可能となった。チャピンは何もプレイできず、ただリーツェルの攻撃を眺めるしかない。《肉体と精神の剣》により、チャピンはライフだけでなく、ライブラリにも危機が迫っている。


ポール・リーツェル七変化。

 リーツェルはチャピンの墓地をじっくりと確認し、チャピンのライブラリを逆算する。結果、チャピンのライブラリには《ボーラスの工作員、テゼレット》《感電破》《紅蓮地獄》と、他のもう1枚しか呪文が無いことを確認した。《肉体と精神の剣》の能力により、5本マッチにおいて非常に重要な要素である"対戦相手のサイドボード・プラン"が明らかになったことは大きい。

 チャピンの場には《墨蛾の生息地》が控えているが、《オキシド山の英雄》に無力化されている。チャピンは《墨蛾の生息地》を起動しようとしてリーツェルに突っ込まれるまで、この事実に気付いていなかったようだ。《オキシド山の英雄》はブロックしたものの、チャピンはこの攻撃で12点のダメージを受けた。これでチャピンのライフは12であるが、それ以上にライブラリのカードが2枚しか残っていない。リーツェルにとって、もう《紅蓮地獄》は関係ない。もう一枚は《精神を刻む者、ジェイス》?はたまた《ボーラスの工作員、テゼレット》?

 チャピンはカードを引いて少し考えたが、結局投了した。

 リーツェル 2-0 チャピン

 リーツェルは現在、プロツアーのベスト8のゲームにおいて、なんと11連勝を記録している。もうひとつ記録を伸ばせば準決勝進出だ。厳密に言えば、リーツェルはグランプリ側でゲームロス、マッチロスがあるため日曜日の連勝記録は途絶えているが、そんなことはリーツェルにとって大した問題ではない。彼はグランプリをドロップさせられないことを確認し、両トーナメントからプロポイントを引き出す努力を重ねているのだ。

Game 3

 3ゲーム目はリーツェルにとって最高のスタート、1ターン目《ステップのオオヤマネコ》から始まった。チャピンが《予言のプリズム》を出す間に《乾燥台地》から4点のダメージを与えると《板金鎧の土百足》が続く。もちろん《紅蓮地獄》を撃つには十分すぎる状況だ...もしチャピンが持っていればの話だったが。

 《乾燥台地》が上陸クリーチャー達を大幅に強化し、《ゴブリンの先達》まで加わると、チャピンのライフはもう5しか残されていない。戦闘後、リーツェルは《石鍛冶の神秘家》から《冒険者の装具》を用意した。

 チャピンはおもむろにリーツェルのデッキを数え始めた。冗談半分といった感じだ。

「奴はおれのデッキが61枚でゲームロスが出ないか期待してるんだ。」

 リーツェルは笑顔で応じる。

「分かってるだろうけど、おれはプロツアー初出場の新人じゃないよ。」

 チャピンも笑顔で答えつつ、カードを引く。


いつだって、試す価値は、ある。

リーツェル 「全体除去をもってるかい?」

 チャピンは《予言のプリズム》をキャスト。もしこのドローが《紅蓮地獄》なら、リーツェルのクリーチャー陣を一掃できる。

 チャピンはナシフに祈りを捧げ、カードを表にした。

 ...そのカードは《》であり、チャピンは握手を求めた。

(訳注:ガブリエル・ナシフがプロツアー・京都09の準々決勝で、最後の願いを込めてドローしたカードが表にすると、それが望みどおりの《残酷な根本原理》であった、という出来事に由来する)

 フィーチャーマッチ・アリーナの外から、マット・スパーリングがリーツェルのグランプリの座席を叫んでいる。リーツェルは準々決勝を戦い抜いたにも関わらず、遅刻により失ったのはたったの1マッチ。そのままの勢いで、リーツェルはグランプリの座席へと駈け出した。リーツェルはどちらのトーナメントも勝ち抜くつもりなのだ。

 リーツェル 3-0 チャピン

 ポール・リーツェル、準決勝進出!

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RESULTS

対戦結果 順位
16 16
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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