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プロツアー・パリ11

読み物

Round 8: Patrick Chapin(アメリカ) vs. Ben Stark(アメリカ)

「普通にゃ行かない」

/

by Tim Willoughby / translated by Yusuke Yoshikawa



パトリック・チャピン vs. ベン・スターク (ドラフト)


チャピン 「やあ、おめ」

スターク 「ども。ていうか、そっちもな。プロツアーにしちゃ、良すぎるスタートだと思わない? 神さまか何かが一日の最初に(初日全勝を)持ちかけてきても、7-1を選んじゃいそう。」

チャピン 「オレはそうは思わないな。初日7-1のためにプレイするくらいなら、定職につくね!」

 パトリック・チャピンが全勝記録を求めて妥協がないのに対し、対戦相手のベン・スタークはもう少し現実的で、この場にアメリカ人プロが2人いるという良い状況をかみしめているのかもしれなかった。

 「オレが正解だと考えていることの反対を行って、オレの考えが間違っていると気づかせてくれて新しいことを覚えさせてくれるような、世界ドラフト十傑衆を選ぶとしたら、」とチャピンは言う。「ベンは間違いなくその中に入るね。ゲイブ・ウォールズ、ウィリアム・ジェンセン、エリック・フローエリッヒ、リッチー・ホーエン、津村健志とかと一緒にね」

 チャピンは高い称賛をもって続ける。2007年くらいより前には、自分自身をリミテッド・プレイヤーだと思ってはいなかったとも言った。

 これは、きっと興味深いマッチになるだろう。

Game 1

 双方がキープし、まずスタークが《信号の邪魔者》から始め、次いで《胆液爪のマイア》で少し早めの「毒」クロックを見せつけた。

 さらには《媒介のアスプ》と《浸透のレンズ》も続け、しかもチャピンが3枚目の土地を置く前のことなのだ。これは、もはやゲームが終わることの予告にさえ見えた。

 しかし、チャピンの赤青デッキは、この緑黒の感染デッキへの回答を持っていた。まず《火膨れ杖のシャーマン》をキャストして《胆液爪のマイア》を除去すると、続くターンには《オキシダの屑鉄溶かし》で《浸透のレンズ》を。これでスタークの盤面は急に迫力のないものになってしまった。

 スタークは《転倒の磁石》をプレイして、攻撃しようともせずにターンを渡す。この《転倒の磁石》が《オキシダの屑鉄溶かし》を阻止したので、チャピンは《火膨れ杖のシャーマン》で2点のみを与えるにとどまったが、《鉄を食うもの》と《眼魔》を出す。早期に4個の毒を食らってしまったものの、チャピンは形勢を持ち直しているようだ。


ベン・スタークは2枚の巨大化呪文で勝どきをあげた。

 しかし、見た目はいくらでも騙りうる。

 スタークは《媒介のアスプ》と《信号の邪魔者》で攻撃する。《眼魔》が《媒介のアスプ》の前に立ちふさがったものの、彼はまず《不自然な捕食》を、続いて《ミラディンの血気》を放ち、勝ちに必要なちょうど6点の「感染」ダメージを与えたのだった。

 チャピン 0-1 スターク

チャピン 「次、後手で」

スターク 「これだから頭の切れる奴とプレイするのは嫌いなんだよ。毎回ぼさっとプレイする人間が相手だったら、ずっと簡単なのにな」

 チャピンとスタークは、「選べるときには常に先手をとる」という決まりきった考え方に対し、日頃から疑問を持つようなプレイヤーである。プロツアー・ホノルルのときのように、ときには構築戦でさえ、スタークは自分のデッキにとって後手をとることが正解だと気づき、それを狙っていったこともあるのだ。

Game 2

 第2ゲームでは、スタークのドローはあまり芳しくなかった。最初の4ターンにわたり土地は《》だけで、《モリオックの模造品》と《媒介のアスプ》はあまり効果的ではなかった。《感染の三角護符》が戦場に出たときは良さそうに見えたものの、すぐさまチャピンの《オキシダの屑鉄溶かし》がこのトークン発生器を排除した。

 チャピンは《オキシダの屑鉄溶かし》を再利用しうる《ニューロックの模造品》を持っていたが、これはタップアウトのうちに《シルヴォクの模造品》に破壊された。チャピンは代わりに《鉄を食うもの》をプレイしてターンを返す。

 スタークは今や6枚の土地をコントロールしていたが、どれもが《》で、チャピンの《銀白のスフィンクス》にも頷くしかなかった。ターン終了時、スタークは《屍肉の呼び声》をプレイする。彼がコンバット・トリックを持っていることはすでに知られているところだが、チャピンがすぐさま危機に直面しているとは、どうも思えなかった。

 スタークは《死体の野犬》を出そうと試みるが、これは《鋼の妨害》に遭った。これでチャピンの第2ゲーム勝利はほぼ完遂されたようなもので、《銀白のスフィンクス》がゲームを終わらせるにはまだ数ターンかかるものの、スタークのデッキは第1ゲームで見せたほどの力には欠けているように見えた。

 「上手くいった、というかツイてた」とチャピンは言う。この第2ゲームの幸運についてだ。「まあ、1ゲーム目ではドローがアレだったからな。これでおあいこなんじゃないの」

 チャピンはターン終了時、スタークがたった今プレイした《肉食いインプ》に向けて《感電破》をキャストする。

 「そいつはよろしくないねえ」とスタークは賢しげに言う。チャピンがスタークに残された最後の飛行クリーチャーに《決断の手綱》をキャストすると、彼の言うとおりだったようで、スタークはカードを片付けた。

 チャピン 1-1 スターク

 さて、2人のうちどちらが無敗で金曜日の朝を迎えられるかを決める一戦。選ぶ権利のあるスタークは後手を選んだ。

 「頭のいい奴とプレイするのは嫌いだよ」とチャピンは笑った。

Game 3

 このゲームの最初のプレイは、チャピンの第3ターンの《眼魔》だった。その前に、スタークの《ファイレクシアの破棄者》を《鋼の妨害》で止めているのだが。

 小さな1/1を戦場に残して、チャピンはまたもカウンターを構えていた。今回は《冷静な反論》で、これが《屍肉の呼び声》を止めた。

 スタークは《テル=ジラードの抵抗》をサイクリング目的で使うが、それ以上のプレイはなかった。彼は早いクロックにさらされているわけではなかったが、同様に彼自身も何も提示できていなかった。

 少し考えた後、スタークは《液鋼の塗膜》をプレイし、それをチャピンの唯一の《》へと起動した。そして、それを除去すべく《ヴィリジアンの堕落者》をキャストした。

 《ヴィリジアンの堕落者》は対応して《不純の焼き払い》されるが、スタークは気にも留めないようだった。彼は続くターンに《肉食いインプ》をキャストすると、ゲームの流れを取り戻し始めた。

 チャピンの《停止命令》が《シルヴォクの模造品》を止めるものの、さきの《液鋼の塗膜》が決定的な、チャピンにとっては致命的な仕事をしたことが明らかになりつつあった。チャピンがカードを引いても、次なる《》に巡り会えないのだ。

 その間、スタークの《肉食いインプ》が毒2個を与え続ける。あと2個、というところで、チャピンはとうとう回答たりえる《銀白のスフィンクス》を引き当てた。

 スタークは考えに沈んだ......かと思われたが、すぐにある事実を明らかにした。彼が、それほど深く考える必要がなかったということを。

 彼は攻撃を宣言し、《不自然な捕食》から《荒々しき力》とつなげるやり方で、勝利を決定づけた。


パトリック・チャピンのリアクション。
スタークがまたしても2枚の巨大化呪文で勝どきをあげたのに対して。

 チャピンは手札を広げて投了し、彼は7-1のスコアに落ち着くことになった。

 チャピン 1-2 スターク

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RESULTS

対戦結果 順位
16 16
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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