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プロツアー『ドミナリア』
プロツアー『ドミナリア』での両日ドラフト全勝
2018年6月2日
このプロツアー『ドミナリア』で2017-18シーズンの「ドラフト・マスター」の称号はエリアス・ワッツフェルト/Elias Watsfeldtに贈られたが、彼も通算全勝をを成し遂げることはできなかった。一方、他の多くのプレイヤーも、両日のドラフトで3連勝し、この『ドミナリア』環境のドラフトでの6-0を目指したのだった。
それでは、2日目全勝者の内訳を見てみよう。
2日目ドラフト3-0の色組み合わせ
色 | 人数 |
---|---|
白青 | 6 |
青黒 | 2 |
黒赤 | 2 |
赤緑 | 3 |
緑白 | 3 |
白黒 | 2 |
黒緑 | 5 |
緑青 | 1 |
青赤 | 4 |
赤白 | 1 |
3色以上 | 6 |
プロツアー2日目のドラフトで全勝を成し遂げた大半のプレイヤーが行った準備については実際述べられることは少なく、その他大勢のプレイヤーが行ったそれと大きな違いはないだろう。この結果を得るためには、ブースタードラフトというフォーマットに熟達するための専心と、そして技術が必要とされるのだ。初日から2日目に移り、青赤は依然として強力なものの、白青や3色以上が最多を占めたように、他の組み合わせも十分な結果を残すようになった。
グランプリの常連であり、今週末のドラフトで6-0を達成した1人であるコーリー・バークハート/Corey Burkhartは、この専心ということに重きを置いている。「自分自身でカードセットのレビューを作るようにしているんだ」と彼は説明した。「『Limited Resources』(訳注:リミテッドに関する有名なポッドキャストのひとつ)で、彼らがカードのランク付けをしているのを聞けるだろうけど、僕も自分のスプレッドシートを作ってA~Fのランク付けをしているんだ。このカードはどのくらい強いのか?ってね。」
彼の分析の第一段階は、プロの間での一般的な意見に沿うものだ。「まずこの第一段階で、このフォーマットがあまり速くないことがわかったんだ。だから、その次に『この2/2は使えないかな?』って考えるんだ。セットには2/2や2/3がかなり多いから、《小剣》や《馬上槍》は良いカードになるね。装備品を壊す手段は《焦熱の介入》や《壊れた絆》くらいに限られて、メインにはあまり入ってこないからね」
遅い環境というのは何を意味するのだろうか? バークハートは言う。「基本セットのリミテッドでは顕著だったけど、2/2同士の戦闘でコンバット・トリックを使うのはあまり良くないだろうね。4/4で出てくる《ベイロスの大喰らい》や、それ以降の終盤向けクリーチャーが強いんだ。《セラの天使》はこの環境最高の1枚だし、《ウィンドグレイスの見習い》もいいね。」
どのセットであっても、個々のカードではなくセット全体のメッセージは何かを考えることが大事だとバークハートは言う。「このセットは僕に何をさせたいのかな?ってね。(例えば『ドミナリア』では)伝説のカードは強力で、実質レア級に働くんだ。《クローサのドルイド》とか以上にドラフトのハイライトとして効いてくるね。そういうカードももちろんいいんだけど、例えば《血の儀式司、ウィスパー》や《模範となる者、ダニサ・キャパシェン》、《逃亡者、梅澤哲子》なんかは他のクリーチャーより、はるかに有用なんだ。」
どちらのドラフトでも、バークハートは《水底のドルイド、タトヨヴァ》をピックしている。青赤を組んだときはデッキに入らなかったものの、黒緑の方ではタッチして使っている。「黒緑は長期戦になるから、このカードは方向性として欲しいカードなんだ」
しかし、彼の話は伝説のクリーチャーに限ったことではなく、セット全体に関することだ。「レアの種類は多いけど、それぞれに『このカードは何をさせようとしているのか?』ということを考える必要があるんだ。そのカードが強力に見えたとして、それを活かす方法は何か?と考えて、その方向を心に留めて構築しなきゃいけない。例えば《炎の番人、ヴァルダーク》と《小剣》か《馬上槍》とか、《雑食のサリッド》と《新緑の魔力》みたいな2枚コンボはたくさんあるから、そういうコンボでデッキを充実させれば対戦相手を打ち破れるだろうね」
両日で全勝を成し遂げたのはバークハートだけではない。チーム「Massdrop East」のティモシー・ウー/Timothy Wuはこの2年間チーム内で最も安定したドラフトの戦績を挙げているが、彼は違う方向から考えている。
「セットがオンラインで実装される前に強豪8人で集まって、発売1週間前からドラフトの練習をしたんだ。最近はオンラインでもっとやるようにしているけど、準備不足を感じているよ。大体15回くらいしかやってないんじゃないかな」
ウーは基本的に、世界王者のセス・マンフィールド/Seth Manfieldやプロツアー/グランプリの古豪アレックス・マイラトン/Alex Majlatonなどに代表される強豪のドラフト戦略を頼りにしている。このセットに対する一般的な意見には彼も同意していたが、それは彼自身にとってより大きい意味であった。「僕自身はアグロ戦略の方が向いているから、こういう遅い環境の『ドミナリア』はあまり好きではないね。今回のドラフトデッキはどちらもちょっとアグロに寄り過ぎたけど、マッチアップの幸運に救われたね。もっといいデッキは他にあったけど、彼らは当たり運が悪かったんだ」
「Massdropチームでは、勝率と使った色の統計を取ることができるんだ。プロツアーに来た時点で、僕の勝率は中級レベルで60%しかなかったよ。Magic Onlineのリーグでは、組んだデッキで3ラウンド戦って、実際にそのデッキが使えるかを試すことができるんだ。シングルエリミネーションのドラフトだとそういう悪い当たりを引いてしまうと何もできないから、結局デッキが使えるのかの情報を得られないんだよね」
ウーはどのようにして、他のプレイヤーより強力なデッキを作り上げているのだろうか? 彼はドラフトで「読む」ことをしているようだ。
「大半のチームはカードのランキングを持っているんだ。つまり、もし各色の上位のカードを把握していれば、上家のプレイヤーが何をしているかを察することができるということだね。例えば、3~4手目で《祝福の光》が流れてくるようなら、きっと上家は白をやっていないはずだ、とかね。最初の数枚のカードで、上家が興味を持たないであろうカードを知ることができるんだ。環境によっては、初手で色に対して受けの広いカードをピックすることも有効だね。この環境では、柔軟性のあるピックはきっと奏功するはずだ」
この柔軟性という視点は、初日に比べて2日目の方がより多様な色が成功を収めたという違いを説明しているだろう。
もちろん、ウーは全てのデッキに精通しているわけではない。他の多くのプレイヤーと同様に、彼は特定のプレイスタイルを好んでいる。そのことを意識していたことが、彼の6-0という結果に繋がったのだ。
「多くのトップ・チームは黒緑が『ドミナリア』最良のデッキだと考えているけど、僕自身は一度もその色で成功したことはないんだ。僕の一番の強みは、自分がどういうプレイヤーかを理解していることだろうね。例えば、初日のドラフトで《選択》と《猛り狂い》のどちらを取るかという場面があったんだけど、間違いなく、僕は《猛り狂い》を取るべきプレイヤーだ。そして、2日ともデッキにはレアを1枚も入れていないんだ。これは、自分のドラフトの方向性を意識することが大事だということの証拠になるだろうね」
「ドラフトは、デッキを組むだけでなくプレイもしなきゃいけないんだ。時として、相手がなにも持っていないことに期待して『賭け』に出ざるを得ない。今回、それがいい方向に働いて結果を残せたのは、きっとデッキがそうしろって言ってくれたからだね」
(Tr. Keiichi Kawazoe)
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