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プロツアー『ドミナリア』
注目のカード:ゴブリンの鎖回し
2018年6月1日
現在のスタンダード環境の水準を定義しているカードといえば《ゴブリンの鎖回し》をおいて他にないだろう。それを自分で使うのか、それともそれに対して有効な対策を立てるのか、少なくとも一方を採らなければならないということだ。もちろん、その両方であればなお良いことは言うまでもない。
このプロツアー『ドミナリア』では、170人以上のプレイヤーが自ら鎖を回すことを選択し、その結果として今スタンダードで最も使われるカードは《山》となった。《ゴブリンの鎖回し》がメタゲームに与える影響と、それがタフネス1のクリーチャーにとってどういった意味を持つかについて、マーティン・ジュザ/Martin Jůzaの話を聞いてみた。
「3週間前のグランプリ・バーミンガムのときよりも、スタンダードはより多様になっていると思うよ」 殿堂顕彰者は語る。ジュザはバーミンガムでグランプリの累計トップ8回数記録のトップ29回に並んだ。多くのプレイヤーがそうしたように、そしてその準々決勝で他の5人までもがそうしたように、彼は赤黒デッキを使っていた。しかしながら、その中でも彼は対戦相手の《ゴブリンの鎖回し》を考慮して《ボーマットの急使》を使うことをやめた、数少ないプレイヤーの1人であった。
13 《山》 4 《泥濘の峡谷》 4 《竜髑髏の山頂》 3 《産業の塔》 1 《霊気拠点》 -土地(25)- 4 《屑鉄場のたかり屋》 4 《ゴブリンの鎖回し》 2 《ピア・ナラー》 4 《再燃するフェニックス》 2 《栄光をもたらすもの》 4 《歩行バリスタ》 -クリーチャー(20)- |
3 《マグマのしぶき》 3 《削剥》 4 《無許可の分解》 3 《キランの真意号》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文(15)- |
1 《ピア・ナラー》 1 《栄光をもたらすもの》 4 《強迫》 2 《アルゲールの断血》 1 《削剥》 2 《大災厄》 2 《木端 // 微塵》 1 《グレムリン解放》 1 《反逆の先導者、チャンドラ》 -サイドボード(15)- |
「今のスタンダードにはたくさんのプレイアブルなデッキがあるね。白青コントロールがあり、緑系のデッキもいくつかあり、そして《スカラベの神》デッキもまた見られるようになってきた。少なくとも、僕はこの週末でバーミンガムのときほど《ゴブリンの鎖回し》を見るとは思ってないよ」
そのため、《ゴブリンの鎖回し》が環境にいたとしても、ジュザはタフネス1のクリーチャーはもはや愚かな選択ではないと主張している。「例えば《ラノワールのエルフ》の場合、これを序盤に使えれば《鉄葉のチャンピオン》や《霊気圏の収集艇》、《不屈の神ロナス》を早くプレイできる。一方で、3ターン目にエルフが死んでも大半の場合問題ないだろう」
「《ボーマットの急使》も今はマシになっているね。まず、以前より環境にコントロールデッキが増えていることがあって、これは一番重要なポイントだ。もちろん赤単や赤黒デッキに対峙したとき、クリーチャー1体が一方的に処分されてしまうというリスクははらんでいる。でも、一方でこういう赤いデッキとのミラー・マッチでは、時として《損魂魔道士》から入ることで、《ボーマットの急使》を対戦相手が《ゴブリンの鎖回し》をプレイする3ターン目以降まで温存することもできるんだ」
「メタゲームがどう変化するのかを見極めている時間はないんだ。ただ、この週末での僕の予想としては、《ボーマットの急使》が復権することを見られると考えているよ!」
プロツアー『異界月』覇者のルーカス・ブロホン/Lukas Blohonもまた同様の指摘をしている。
「1ターン目に来た《ラノワールのエルフ》は、死ぬ前に少なくとも何かひとつは仕事ができるはずだ。より興味深いのは《光袖会の収集者》の場合だろうね。このカードは非常に強力で、『ドミナリア』以前のスタンダードでは最も良いカードの1枚だった。そして、《ゴブリンの鎖回し》がある今も、このカードを必要とするデッキにとっては依然として素晴らしいカードなんだ。場合によっては、4ターン目に《光袖会の収集者》をプレイすることで、相手に他のアクションを取る代わりに《ゴブリンの鎖回し》を出すことを迫ることもできるだろうね」
ブロホンは肩をすくめて、付け加えた。「まあ、もちろんたまには相手が鎖回しを持っていないことを祈って2ターン目にプレイしなければいけないときもあるだろうけどね。ただ、それでも《光袖会の収集者》はそれほど悪い選択ではないはずだ」
一方で、ブロホンは《ゴブリンの鎖回し》は人々が言うように強力であることは認めている。「タフネス1のクリーチャーに対して圧倒的な負荷を与えているね。特に緑系のデッキに対して目を光らせて、トークン戦略のようなものをメタゲームから追いやっているよ」
「《損魂魔道士》とのシナジーは、クリーチャーを完全に除去しきる必要すらなくしてしまうんだ。この点は特に緑の戦場重視のデッキに対して非常に重要だ。3/3先制攻撃という本体性能自体も脅威で、想像以上に対処手段を必要とするんだ」
ブロホンは、《ゴブリンの鎖回し》をこの環境のデッキ構築に関する最大の制約であると考えている。「これは確実にスタンダードでプレイアブルなデッキの幅を狭めているよ。この週末でどんな状況になるかまではわからないけども、オンラインでは赤黒と白青が主流に見えるね」
彼は、赤黒デッキに対しては白青のテフェリーを中心としたノン・クリーチャーデッキが有効であると言う。「少なくとも、第1ゲームではね」と付け加えた。「ただ、赤黒デッキには変化の余地があって、どう変化するのか想像しなければいけないんだ。《ウルザの後継、カーン》が来るかもしれないし、《炎鎖のアングラス》があるかもしれない。このデッキは、サイドボード後に遅いプランに変化するという点でかつての『マルドゥ機体』と似ているけど、白青に対する勝率を上げるためには第1ゲームでより攻撃的に動く必要があるだろう。一方、白青側にとってこのプランは厳しいものになるね。サイドボード後はテフェリーの信頼性は落ちるし、相手が《強迫》を持っている場合には《残骸の漂着》もあまり良くなくなってしまうんだ」
ブロホンは《ゴブリンの鎖回し》が支配的であることにはあまり良い印象を持っていなかったが、一方でこのプロツアーに対しては楽観的だ。「デッキの中心になるようなカードが『ドミナリア』で何枚も見つかっているんだ。例えば、きっと誰かは《ミラーリ予想》を《霊気貯蔵器》ストームデッキで使う方法を見つけているんじゃないかな」
一方で、他の誰かはより良い《ゴブリンの鎖回し》デッキを作るだけかもしれない。今日の後半、場合によっては鎖回しが相手のクリーチャーやプレインズウォーカー、そして本体に3点のダメージを与え続けるだけの記事を読むこともきっとあるだろう。今後の記事もお楽しみに!
(Tr. Keiichi Kawazoe)
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