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プレイヤーズコンベンション千葉2025

第7回戦:市川 ユウキ(神奈川) vs. 安中 真人(新潟) ~絶対死の国から脱出させないマン~
チャンピオンズカップファイナル、初日の足切りラインである3敗をかけた第7回戦。「泡沫の戦い」と称されるこのバブルマッチの舞台へと足を運んだプレイヤーの1人は市川 ユウキだ。
マジックファンであれば彼の名を知らない者の方が少ないかもしれない。"瀬畑"のハンドルネームで知られるマジックストリーマーであり、過去には二度のプロツアーサンデー進出経験もある猛者である。
そんな市川が今大会へと持ち込んだデッキは「脱出基地」。《死の国からの脱出》と《研磨基地》の組み合わせで自身のライブラリーを全て削り、その過程でモックス系のアーティファクトをプレイしながらマナを増やして《ぶどう弾》か《神秘を操る者、ジェイス》で勝利するという墓地利用系のコンボデッキだ。
《死の国からの脱出》さえ戦場に出せれば他の必要パーツが全て墓地に落ちていてもコンボルートに入ることができるデッキであり、《変容する森林》があればその《死の国からの脱出》が墓地にあったとしてもコンボが可能。文字通り墓地を第二の手札として活用できるその安定性たるや、モダン環境最強の一角を占めるコンボの一つと呼んでも過言ではあるまい。
そんな市川の前に相対するは安中 真人だ。輝かしい実績とストリーマーとしての活動から多くのプレイヤーに知られた存在である市川と比べてしまうと、彼の名を知る者はそう多くはあるまい。本人も「これまで目立った実績はない」と語っていたために、それも無理からぬことであろう。
あるいは、安中は決して表舞台に立ってはいけない存在だったのかもしれない。なぜなら彼は人の姿をした殺意──"新潟から来た死の運び手"なのだから。
3 《栄光の闘技場》 4 《乾燥台地》 2 《血染めのぬかるみ》 2 《優雅な談話室》 1 《神無き祭殿》 4 《湿地の干潟》 1 《山》 2 《平地》 2 《聖なる鋳造所》 1 《薄暗い裏通り》 1 《灼陽大峡谷》 -土地(23)- 4 《魂の導き手》 4 《オセロットの群れ》 3 《敏捷なこそ泥、ラガバン》 4 《ナカティルの最下層民、アジャニ》 2 《溌剌の牧羊犬、フィリア》 4 《火の怒りのタイタン、フレージ》 1 《孤独》 -クリーチャー(22)- |
1 《外科的摘出》 4 《電気放出》 2 《スレイベンの魔除け》 1 《虹色の終焉》 1 《静牢》 3 《ゴブリンの砲撃》 3 《鏡割りの寓話》 -呪文(15)- |
2 《オアリムの詠唱》 1 《外科的摘出》 1 《除霊用掃除機》 1 《ドラニスの判事》 2 《石のような静寂》 1 《摩耗 // 損耗》 1 《フェアリーの忌み者》 2 《スカルドの決戦》 1 《孤独》 3 《黒曜石の焦がし口》 -サイドボード(15)- |
《スレイベンの魔除け》2枚を含めてメインデッキから墓地対策が3枚。そのうち1枚はマナを払う必要すらない《外科的摘出》。先ほど市川の「脱出基地」は墓地を第二の手札として活用できるデッキだと書いたが、安中のこのデッキリストはその全てを否定するかのようなものだ。
サイドボードまで目を向ければ、追加の《外科的摘出》に《除霊用掃除機》と《フェアリーの忌み者》、墓地対策ではないものの「脱出基地」のコンボ成立を阻害する《オアリムの詠唱》と《ドラニスの判事》、《死の国からの脱出》を破壊できる《摩耗 // 損耗》、アーティファクトの起動を封じる《石のような静寂》と、「脱出基地」に照準を合わせた受肉した殺意である。「墓地使うデッキにやられて、だんだんこうなっていきました」越後からはるばるやって来たリーサルウェポンは、後に自身のデッキリストについてそう語った。
強烈なメタデッキと相対することとなった市川だが、この第7回戦は市川にとっても2日目進出をかけた正念場である。果たして試合の内容はどうなっていくのか、2人の運命の一戦の模様をお届けしよう。

市川 ユウキ(神奈川) vs. 安中 真人(新潟)
ゲーム1
ガイドオセロットガイドガイドメインサージカル
市川 0-1 安中
ゲーム2
サイド後ガイドガイドオセロットガイドスレチャゴスバキュ
市川 0-2 安中
×◯◯◯◯××、4-3で初日落ち。ガイドオセロットガイドガイドメインサージカルで負け。サイド後ガイドガイドオセロットガイドスレチャゴスバキュで負け。最高のゲームです。 pic.twitter.com/q2AkXcYaFT
— Yuuki Ichikawa (@serra2020) February 8, 2025
……という冗談はさておき(実際、大筋ではこのとおりのゲームであったが)2人の健闘を記録する意味でも、ここに詳細な試合の流れを記述しよう。
「先攻取りたい……!」と願いを掛けながら振ったダイスの出目は市川のそれを上回り、安中の先攻で第1ゲームが開始された。
まずはと《聖なる鋳造所》をショックインし、《魂の導き手》をプレイ。続くターンには《魂の導き手》で攻撃を行いながら2枚目の《魂の導き手》と《オセロットの群れ》を並べるという「ボロス・エネルギー」の絶好の滑り出しを見せ、これには市川も思わず「すごい……(笑)」と苦笑を浮かべた。
対する市川は第1ターンに土地を置く前に《ミシュラのガラクタ》を設置。自らを対象に能力を起動してライブラリーの上を確認すると、数秒の思考時間を経てフェッチランドを置いて起動する。ライブラリーの上をリフレッシュしつつ《繁殖池》を探し出し、プレイしたのは《機能不全ダニ》。

市川 ユウキ(神奈川)
さらに第2ターン目には《ウルザの物語》を置いて2マナを得ると、《邪悪鳴らし》で墓地肥やしと手札の調整、そしてエルドラージ・落とし子トークンの生成と次ターンのビッグアクションに向けて大きくコンディションを整える。さらに《ミシュラのガラクタ》をプレイして安中のアップキープに起動してドロー内容を確認。手札の内訳までは不明なので気休め程度ではあるが、もしこのとき墓地対策カードである《外科的摘出》や《スレイベンの魔除け》が見えたならまっすぐコンボに向かうプランは取りにくくなるため、細かい点ではあるが勘所をしっかりと抑えたプレイと言えよう。

安中 真人(新潟)
対する安中は3枚目の《魂の導き手》をプレイしエネルギーを7つまで蓄えると、一斉攻撃の号令をかけながら《魂の導き手》の能力起動を宣言。《オセロットの群れ》と1枚の《魂の導き手》が空を駆け、テーブルの上を滑るかのように軽快に市川のライフを削る。
安中の激しい猛攻に猶予ターンがなくなってしまった市川は、ここが仕掛けどころとばかりに《モックス・アンバー》と《オパールのモックス》をプレイ。さらに《湖に潜む者、エムリー》をプレイして《モックス・アンバー》からマナが得られる状況を作り出すと、墓地にある《死の国からの脱出》を対象に《変容する森林》の能力を起動する。
だが、ここで安中が左手で盤面を制して「スタックで」と宣言。
その手からプレイされたのは《外科的摘出》。盤面の脅威と、市川も「完璧ですね」と苦い表情を浮かべて投了を宣言した。
続く第2ゲームでは、先攻の市川が《上天の呪文爆弾》をプレイ。続く第2ターンには《邪悪鳴らし》で《老練の学匠、タミヨウ》を手札に加える。

安中 真人(新潟)
対する安中は第1ゲームとまったく同様に2枚の《魂の導き手》と《オセロットの群れ》を並べる初動。絶好のプレイではあるが、今度は先攻を取っている分市川にも対応する余裕がある。ターンを受けた市川は《知りたがりの学徒、タミヨウ》をプレイし、《アノールの焔》で安中の《魂の導き手》1体を除去しながら2ドローを得て《老練の学匠、タミヨウ》へと変身させる。
これを放置するわけにもいかない安中。その攻撃は一度市川の《老練の学匠、タミヨウ》に吸われるが、3枚目となる《魂の導き手》をプレイして再び市川へと盤面の対処を迫る。

市川 ユウキ(神奈川)
市川もまた次々に繰り出されるこれらの脅威を無視することはできない。2枚の《オパールのモックス》をプレイしてストームを稼ぎ、《ぶどう弾》で《魂の導き手》のうち1枚と猫トークンを除去する。アドバンテージこそ失ったしまうが、重ねて引いてしまった《オパールのモックス》を後生大切に抱えていても仕方ないと割り切り、カードを使って猶予ターンを買った形だ。
だが、安中もまた市川に楽をさせることはない。市川のターン終了時には《スレイベンの魔除け》で墓地を全て追放し、さらに猫たちと《魂の導き手》が市川のライフを8まで削ると《除霊用掃除機》までをもプレイ。クロックと妨害の両方を盤面に揃え、盤石の体制を築く。
《死の国からの脱出》さえプレイできれば即座にコンボに移行できる体制を整えていた市川だったが、こうなっては苦しい。《ミシュラのガラクタ》をプレイして、自分を対象に起動。ライブラリートップを確認するのみでターンを終了する。
市川の苦しい時間は続く。安中は《ナカティルの最下層民、アジャニ》をプレイし、市川の虎の子の除去である《アノールの焔》を引き出していよいよ首元へと迫る。
もはや万事休する市川は、ともかく安中の見えている《除霊用掃除機》を意識しつつコンボを成立させるしかない。《邪悪鳴らし》で《死の国からの脱出》を手札に加え、これをプレイ。さらに二度目の《邪悪鳴らし》で《湖に潜む者、エムリー》を手札に加える。その誘発型能力で0マナのアーティファクトが墓地に落ちてさえくれれば、市川の盤面で石のように静寂を貫いていた《オパールのモックス》の「金属術」を達成でき、コンボ成立の望みが繋がる──
が、願いは届かず。安中の猛攻と妨害の両方に最大限の抗戦を見せた市川だったが、ここで膝を屈することとなった。
改めて、市川 0-2 安中