EVENT COVERAGE

マジックフェスト・横浜2019

観戦記事

準々決勝:髙橋 哲大(茨城) vs. 原田 暖平(大阪) ~ゴースト/横浜の幻~

Hiroshi Okubo
髙橋 哲大 vs. 原田 暖平

 テーブルに着くや、原田 暖平はライフメモに力強く「SE1」と書き込む。

 原田は国内グランプリに精力的に参加しているという競技プレイヤーだ。普段は関西のコミュニティでレガシーを中心にプレイしているらしく、このグランプリで使用するデッキを決めたのは先週だったという。

 この日この舞台まで駒を進めたのは本人にとっても望外の出来事だったかもしれないが、それでもなお気後れすることなく、横で見守る仲間たちに勇姿を見せつけていた。ライフメモにそう刻んだように、準々決勝で戦う自らの姿をギャラリーに刻み付けんと堂々対戦に臨もうとしていた。

 対する髙橋は関東の草の根大会でオリジナルのローグデッキを使用し、しかもたびたび上位に勝ち上がっている不思議なプレイヤーだ。《不朽の理想》を使ったエンチャントデッキや《時間のねじれ》を連打する「エターナルブルー」など、本当にデッキが読めないローグ愛好家である。

 この日手にしていた獲物はなぜか「バント・スピリット」。決してメタ外のデッキとは言えないが、メタゲームブレイクダウンを見る限り現在のモダン環境では主流のデッキとも言えない微妙なポジションだ。彼なりの信念やポリシーがあってのデッキ選択なのだろうが、この日ここにいるということは、何を使ってもコンスタントに勝てるという髙橋のマジックそのものの強さが現れているのかもしれない。

 さて、グランプリのプレイオフでは試合前にデッキリストを交換する。互いのデッキを知った上でゲームがプレイされるのだ。

 髙橋は「嫌だなぁ、《燃焼》……」と、原田のデッキリストを穴が空くほど見つめる。「ずっと睨みつけていたら《燃焼》なくなったりしないかな」と漏らしていたのを見ると、穴が空くほどという表現は慣用句としての意味以上の意味合いを含んでいたかも知れない。

 一般的に「ドレッジ」と「バント・スピリット」は前者が有利なマッチアップだと言われることがあるが、それも決して絶対的な差というほどではない。互いの引き次第、噛み合い次第でどうとでも転がるマッチで、ましてサイドボード後にはドレッジ側がいかに墓地対策をクリアするかという要素も加わるので、髙橋が憂慮するほど絶望的な対戦ではないだろう。

 しかし、それも相手が並のドレッジであればの話だ。ここまで勝ち進んできた原田が並のプレイヤーであることを祈るのはあまりにも意味がない。もちろんこれは原田にも言えることで、油断なく髙橋のデッキリストを見つめる姿から、髙橋とのマッチに余裕などないことはすでに感じ取っている様子が見て取れた。

 いろいろと書いたが、つまりできること、そしてすべきことは。

 目の前の相手を打ち倒し、勝利を掴み取ることだけなのだ。

ゲーム1

 髙橋は《金属海の沿岸》から《霊気の薬瓶》とベストに近い動き出し。対する原田も《信仰無き物あさり》でさっそく「発掘」の支度を開始し、臨戦態勢を整える。

 続く第2ターン、髙橋は《霊廟の放浪者》をプレイし、原田は《壌土からの生命》を「発掘」。この《壌土からの生命》は「発掘」要員でありながら、《燃焼》の火力を高める働きもする、試合の鍵を握る1枚だ。さっそくこれを唱え、手札に土地を蓄える。


原田 暖平

 だが、髙橋は先攻の利を活かす。原田のエンド時に《貴族の教主》をプレイし、返すターンには《ドラグスコルの隊長》と《無私の霊魂》を並べ、懸念していた《燃焼》への備えも万端。2度の誘発型能力の誘発を終えた《霊廟の放浪者》に「賛美」の祝福を合わせ、一挙5点のクロック原田のライフを刻んでいく。

 原田はなかなか《壌土からの生命》以外のドレッジャー(「発掘」持ちのカード)を見つけることができない。動き出しが遅い原田を尻目に、髙橋は戦線に《聖トラフトの霊》も加えて攻勢を仕掛けていく。


髙橋 哲大

 《ドラグスコルの隊長》の攻撃には原田も《ナルコメーバ》のブロックと《暗黒破》を合わせるが、《無私の霊魂》が《ドラグスコルの隊長》を守り、戦況は依然として髙橋が優位だ。

 一矢報いたい原田。《信仰無き物あさり》で「発掘」を進めていき、なんとかブロッカーの《ナルコメーバ》を用意することができるが、それもターンが1つ延びるだけで根本的な問題解決には至らず。

 続くターンに祈るような気持ちで《信仰無き物あさり》を「フラッシュバック」する原田に髙橋が《呪文捕らえ》を差し向け、原田の希望は完全に潰えた。

髙橋 1-0 原田

ゲーム2

 先攻の原田は《ナルコメーバ》をプレイ・・・。髙橋はこれをひと目見て「ブロッカーか……」とつぶやき、《霊廟の放浪者》と《至高の幻影》を連打してクロックを刻んでいく。

 さらに続く第3ターンに髙橋が《安らかなる眠り》を設置すると、原田は思わず顔をこわばらせる。手札には《自然の要求》がある。あるが、《霊廟の放浪者》に睨まれている状況では唱えることができない。

 痺れる原田に《集合した中隊》を見せ、さらに戦線を拡充させた髙橋は準決勝へと駒を進めることとなった。

髙橋 2-0 原田

  • この記事をシェアする

RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

RANKING

NEWEST

サイト内検索