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マジックフェスト・横浜2019

インタビュー

教えて!ケンちゃん!! ―デッキ構築のいろは―

Hiroshi Okubo

 マジックをプレイする上で、絶対に必要なものがある。

 モダンはもちろんレガシーやリミテッドも然り。果ては統率者戦やプレインチェイス戦のようなカジュアルフォーマットであっても例外ではなく、なくてはならないもの。そう、デッキだ。

 すなわちデッキ構築とは、たとえプロだろうと初心者だろうとマジックをプレイする以上避けては通れない、万人の課題と言えよう。

 仮にコピーデッキを使用するにしても、どんなデッキリストを参考にするかは個々人の裁量に委ねられる。ましてオリジナルのデッキを組むとなれば、1万種をゆうに超える膨大なカードの中から選りすぐりのカードを選別しなければならないのだ。

 それはあまりにも果てしない道程。理論上無限に分岐し得る可能性の中から、存在するのかどうかさえ分からない最適解を見つけるなど、砂漠の中で一粒の真珠を探し出すようなものだろう。

 しかし。それでもなお逃れることのできないこの課題に対し、我々が備えられることがあるとしたら――

 プロツアー『アヴァシンの帰還』の「人間リアニメイト」。

 プロツアー『ドラゴンの迷路』の「アブザン・アリストクラッツ」。

 プロツアー『アモンケット』の「黒緑《ホネツツキ》」。

 これらを組み上げた唯一無二の人物。我々の立つデッキ構築という茫漠たる砂漠の中で、真実をすくい上げんと挑み続ける男。

 行弘 賢の言葉に、耳を傾けることではないだろうか?

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デッキを組むのは年々難しくなっていく

――どうすればより良いデッキを組めるのか? というのはマジックにおける永遠のテーマのひとつです。誰もが気になるこの問いですが、これまでさまざまなオリジナルデッキを作ってきた行弘さんなら答えを出してくれるのではないかと思い、声をかけさせていただきました。よろしくお願いします。

行弘「なるほど。じゃあ、まず『なぜデッキ構築は難しいのか』という話からしていこうか。これは行弘流の私見だけど、プロにせよそうでないにせよデッキを作るということのハードルは年々上がってきているよね」

――年々、ですか? 昔は組みやすくて今は難しい、なんてことがあるんでしょうか?

行弘「あると思うよ。だって昔は自分でデッキを組むしかなかったから。今みたいにプロツアーの数時間後にはトップ8のデッキリストが手に入るなんてことはなかったし、自分で組まざるを得ない。だけど今はインターネットも身近なものになって、情報の格差はなくなった。初心者でも簡単に強いデッキリストを手に入れられるじゃん?」

――それはそうですが、デッキを組む上で元手になる情報が多ければ構築の足がかりになりますし、むしろデッキは組みやすくなるんじゃ……

行弘「そうとは言い切れないよ。つまりね、昔は『何が強いか分からないからデッキを組む』だったのが、今は『何が強いか分かった上でデッキを組む』になってる。だから、たとえば赤単が最強だって分かった上で、赤単を倒せるデッキを組まなきゃいけない。他の情報ありきだから、かえってデッキを組むハードルが上がっちゃってるんだよ」

――「デッキを組む」という行為自体は同じでも、背景が異なっているとその意味するところも変わってくると。たしかに言われてみればハードルの高さは上がっているのかもしれません。

行弘「うん。それに、自分でデッキを組むのはやっぱり体力を使う。いくつもデッキを作っていれば、ごくまれに最初から強いデッキが組めることもあるけど、普通は一発で強いデッキを組むなんてことはそうそうできないからね。一からデッキを組むのは、ハードルも高い上に大変。これがデッキ構築の難しさと言えるかな」

スクラップ・アンド・ビルド

――「デッキを組むのは大変」までは分かったのですが、では我々はどのようにしてデッキ構築に取り組めばいいのでしょうか?

行弘「そもそもデッキを組むのはなぜかって言ったら、モチベーションの根底には『楽しいから』って感情があるはずだと思うんだよね。楽しいっていうのはさ、このカードは自分が見つけた! みたいな体験なわけじゃん。『いいデッキを作ろう』っていうのは本来は二の次というか、失敗を恐れちゃいけないと思うよ」

――失敗を恐れない、ですか。スクラップ・アンド・ビルドというかトライ・アンド・エラーというか。

行弘「まぁそういうことだね。そもそも100%正解のデッキがないのと同じように、100%失敗のデッキもないんだよ。少なくとも失敗したという経験値が溜まる。そうすると同じ失敗はしなくなるし、さらに言えば失敗デッキから使えるアイディアだけサルベージできたりする。ちょっと具体例を見て話していこうか」

行弘 賢 - 「黒緑ホネツツキ」
プロツアー『アモンケット』 3位 / スタンダード (2017年5月12~14日)[MO]
5 《
3 《
4 《花盛りの湿地
4 《風切る泥沼
4 《霊気拠点
-土地(20)-

4 《緑地帯の暴れ者
4 《牙長獣の仔
4 《巻きつき蛇
3 《光袖会の収集者
4 《ピーマの改革派、リシュカー
4 《ホネツツキ
4 《歩行バリスタ
-クリーチャー(27)-
4 《霊気との調和
4 《致命的な一押し
2 《闇の掌握
3 《キランの真意号
-呪文(13)-
3 《刻み角
2 《不屈の追跡者
4 《顕在的防御
1 《闇の掌握
1 《心臓露呈
2 《没収
1 《キランの真意号
1 《生命の力、ニッサ
-サイドボード(15)-

行弘「これは失敗の経験が成功に結びついたデッキで、俺は元々当時の『黒緑エネルギー』で《キランの真意号》を入れたリストを試したことがあったんだ」

――当時の黒緑といったら機体は《霊気圏の収集艇》か《領事の旗艦、スカイソブリン》が1~2枚入ってるくらいでしたね。《キランの真意号》を入れたリストは……たしかに記憶の限りほとんどなかった気がします。

行弘「カードは強いけどデッキに合ってなかったんだよね。だから俺もすぐにそのアイディアはダメだと思った。で、別のタイミングで今度は《ホネツツキ》を使ったデッキを組んだんだ。まぁそれも全然弱くてダメダメだったんだけど、《ホネツツキ》には可能性を感じて、そこで過去の失敗を思い出したのね。『あ、《ホネツツキ》なら《キランの真意号》乗れるじゃん』って」

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――このデッキも数々の失敗が実を結んだ結果だったということですね。

行弘「そうなるね。それぞれのデッキやカードの使用感を知っていたからこそ形にすることができた。さっきも言ったとおり、100%の失敗なんてない。むしろ失敗から学べることは多くて、たとえば環境末期の煮詰まっているときなんかは『このカード使ったことあるな』っていう経験が活きやすい。見た目ヤバそうなデッキでも、とにかくチャレンジしてみることが大事だよ」

好きなカードを見つけよう

――ではより具体的に、デッキを組むときに最初にすべきことや、コツなどがあれば教えてください。

行弘「俺がやってるのは、好きなカードや面白いカードを見つけるところからかな。『コンボデッキを作ろう』とか、あるいは『あのデッキを倒そう』みたいな全体像ありきではなくてね。これはリミテッドをプレイしているとそういうカードは見つかりやすいかもしれない。その次にカードの組み合わせを考えていく」

――まずはカード単体で好きなものを見つけて、組み合わせると。この組み合わせというのはどのように考えていけばいいのでしょうか?

行弘相性のいいカード、シナジーのあるカードを見ていくとかかな。これはトークン出すカードと相性いいな、みたいな。それでコンセプトを固めていくんだけど……ここで初心者にありがちなミスがあって、いろんなコンセプトを混ぜすぎないように注意しないといけない。マジックのデッキは必然的に3分の1~半分近くは土地になるわけだし、ひとつのデッキで成立させられるコンセプトはせいぜい1つか2つくらい。Aと相性のいいBはCとも相性がよくて、じゃあDも……みたいな欲張りは避けたほうがいいかな」

――たとえば「殴れるリアニメイト」みたいなものを組むべきではない、とか?

行弘「まぁそういうデッキが成立しないってわけではないけど、端的に言えばそういうことだね。で、コンセプトの周辺が決まったら、あとはそのコンセプトを助けるカードを……ドロー呪文やサーチ呪文も含むかな。そのあたりを入れていって、残った枠に妨害を入れて、土地を入れて完成。何度もデッキを組んでいればこのあたりの細かい配分の勘も身につくけど、ネットでいろんなリストを参考にしてもいいと思うよ」

――なるほど、だいぶデッキ構築の手段や流れが整理できました。お話を聞かせていただきありがとうございました!


 行弘のオリジナルデッキの数々は一見斬新で華やかで見えるが、その実それらは数えきれないほどのボツデッキの上に成り立っているのだろう。というより、行弘ほどのプレイヤーであっても裏技のような技術を体得しているわけではないのだ。

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 そして行弘は「デッキ構築に正解がないのと同じく、不正解もない」と言った。なんというわけでもないベタなセリフのようにも思えるが、しかしこの一言こそ長年経験を積み重ねてきた行弘の境地から見た唯一の真実なのだろう。

 この記事が、構築に悩める諸兄の一助になれば幸いだ。

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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