EVENT COVERAGE

マジックフェスト・名古屋2020#1

観戦記事

決勝:三上 由朗(東京) vs. 石附 拓也(東京) 〜過去への感謝、未来への希望〜

小山 和志

 

 決勝ラウンドが始まってから、わずか1時間半足らず。

 グランプリ・名古屋2020#1は準々決勝と準決勝を終え、わずかふたりのプレイヤーを残すのみとなっていた。

 それもそのはず。トップ8へ進出したプレイヤーたちのうち半分が「青赤魂込め」――パイオニア環境で有力視されていた低マナ域のアーティファクト・クリーチャーを主体としたアグロデッキ――を使用しており、さらに残る4人のうち、ふたりも「黒単アグロ」「赤単ファイアーズ」という、単色のビートダウンデッキを使用していたのだ。

 昨年のフォーマット制定から半年足らず、最後の禁止改定からも1か月弱というわずかな期間ではあったが、着実に環境は成熟し、そして有力なデッキが生まれ、それらはこの名古屋の会場で使用者をプレイヤーズツアーへ送り出すことになった。

 だが、この決勝の舞台に残るふたりのデッキは、その「青赤魂込め」でも「単色アグロ」でもなかった。

三上 由朗 - 「ヘリオッド・カンパニー」
グランプリ・名古屋2020#1 スイスラウンド1位 / パイオニア (2020年2月1~2日)[MO]
7 《
4 《寺院の庭
3 《要塞化した村
3 《平地
3 《陽花弁の木立ち
2 《光輝の泉
-土地(22)-

3 《エルフの神秘家
3 《ラノワールのエルフ
1 《命の恵みのアルセイド
1 《金のガチョウ
4 《歩行バリスタ
2 《エルフの幻想家
2 《復活の声
1 《族樹の精霊、アナフェンザ
1 《魅力的な王子
1 《無私の霊魂
4 《太陽冠のヘリオッド
4 《民兵のラッパ手
3 《クルフィックスの狩猟者
1 《博覧会場の警備員
1 《秋の騎士
-クリーチャー(32)-
4 《集合した中隊
2 《召喚の調べ
-呪文(6)-
3 《安らかなる眠り
1 《静寂をもたらすもの
1 《漁る軟泥
2 《秋の騎士
2 《停滞の罠
1 《弁論の幻霊
1 《陽光鞭の勇者
2 《ゼンディカーの同盟者、ギデオン
2 《大天使アヴァシン
-サイドボード(15)-
 
三上 由朗

 スイスラウンドを堂々の1位で通過した三上 由朗が使用するのは、『テーロス還魂記』発売当初から注目を浴びていた《太陽冠のヘリオッド》と《歩行バリスタ》によるコンボを組み込んだ、白緑の《集合した中隊》デッキだ。

 ドローカードこそ無いものの、ユーティリティークリーチャーを多く搭載し、それらを《集合した中隊》や《召喚の調べ》で柔軟に運用できる構造となっている。

 上述のとおり、《太陽冠のヘリオッド》+《歩行バリスタ》の組み合わせは注目こそ浴びていたものの、幾多の強豪プレイヤーをもってしても解を導き出すことができず、有力な形を固定化できていなかった。

 三上はグランプリという舞台において見事に新たなカードの組み合わせを形にし、トロフィーまであと一歩のところまで迫っている。

石附 拓也 - 「青赤ウィザード」
グランプリ・名古屋2020#1 スイスラウンド2位 / パイオニア (2020年2月1~2日)[MO]
7 《
4 《シヴの浅瀬
4 《尖塔断の運河
4 《蒸気孔
1 《硫黄の滝
-土地(20)-

4 《僧院の速槍
4 《損魂魔道士
4 《嵐追いの魔道士
2 《戦慄衆の秘儀術師
1 《熱烈の神ハゾレト
-クリーチャー(15)-
4 《突破
4 《執着的探訪
4 《選択
4 《乱撃斬
3 《ショック
4 《魔術師の稲妻
2 《舞台照らし
-呪文(25)-
2 《無謀な怒り
1 《呪文貫き
2 《削剥
1 《軽蔑的な一撃
4 《神秘の論争
2 《ゴブリンの鎖回し
1 《イゼットの静電術師
1 《瘡蓋族の狂戦士
1 《宝船の巡航
-サイドボード(15)-
 
石附 拓也

 一方の石附が使用するのは、本イベントにおいてデッキテクでも取り上げられた「青赤ウィザード」だ。

 デッキの詳細については該当記事をご一読いただければとは思うが、決勝に臨むにあたり、石附はこのデッキについてこんなコメントを加えてくれた。

石附「どのカードも過去に使ったことのあるカードなんですよね」

 昨年モダンで行われたグランプリ・横浜2019。その時も石附の使用したデッキはデッキテクとして取り上げられた。そのデッキは「青赤ウィザード」

 新たなフォーマットで、過去の蓄積を余すことなく活かし、石附は王者の座まであと1勝のところまで来た。

 

 さて、ご存知の方も多いだろうが、この「Aichi Sky Expo」では並行してプレイヤーズツアーも開催されている。

 ふたりはこの名古屋ではプレイヤーズツアーへの参加が叶わなかったが、すでに次回の権利を手にしている。

 トップ8進出時のアンケートでその意義を問うたところ、ふたりはこんな答えを返してくれた。

Q:「プレイヤーズツアーに出場できることはあなたにとってどのような意味を持ちますか?」

三上「次の目標へのスタートライン」

石附「マジックに感謝できる場所へ行ける」

 さあ、グランプリ決勝の時間が始まる。

 ヘッドジャッジがひとしきり賞金の分配についての説明を行い、英語でふたりに声をかける。

「トロフィーをかけて、プレイしてください」

両者「Yes!」

 三上は未来への希望を、石附は過去への感謝に思いを馳せて、両者の戦いが幕を開ける。

 
三上 由朗(写真左) vs. 石附 拓也(写真右)
ゲーム1

 いきなりほぼ同時に「マリガンです」と宣言すると、両者はどちらともなく吹き出してしまう。

石附「締まんね~(笑) マリガントラブルで終わるのだけは避けたい」

三上「ですね」

 続く6枚をふたりともキープし、ゲームの幕が開ける。

 ゲームは三上にとっての最高のスタートである《ラノワールのエルフ》を、石附が《ショック》で退ける立ち上がり。

 そのまま石附は《僧院の速槍》を2体並べ、三上の戦線が整う前にダメージレースを仕掛ける……のだが、2ターン目をパスした三上が3ターン目に繰り出したカードが、石附の前に大きな壁となって立ち塞がる。

 2/4というサイズを1枚で除去できるカードは石附のメインデッキには、無い。さらに地味ながらライフ回復機能が素早くゲームを終わらせたい石附の思惑を狂わせる。三上のライブラリーは《平地》と、順調なセットランド&ライフゲインも見えている。

 石附は《突破》から《執着的探訪》で片方の《僧院の速槍》を4/5とし、一時的に《クルフィックスの狩猟者》を超えるサイズとするが、継続的にそれを乗り越える算段はあるだろうか。

 そして三上が4マナをフルオープンでターンを返すと、否が応にも1枚のカードが石附の脳裏をよぎる。

石附「《集合した中隊》かー」

 かつてスタンダード環境を席巻した、凶悪なインスタントカード。下手にコンバットに挑めば戦線が壊滅することもあり得るだけに、石附にとっては悩みどころ――

 ――かと思われたがしかし、彼に悩む選択肢はなかった。3体目の《僧院の速槍》をプレイし、フルアタック。

 石附の読み通り、三上の手からは《集合した中隊》がプレイされ、《民兵のラッパ手》と《命の恵みのアルセイド》が戦場に送り出される。

 《クルフィックスの狩猟者》と《民兵のラッパ手》が《執着的探訪》のエンチャントされていない《僧院の速槍》をブロックしたところ、石附は《クルフィックスの狩猟者》と《命の恵みのアルセイド》にそれぞれ《乱撃斬》を打ち込むと、一気に三上の盤面は空になってしまう。

 《集合した中隊》を乗り越え、悩まされていた《クルフィックスの狩猟者》を退け、盤面の差は圧倒的。一気に石附が三上を突き放したかに見えた。

 だが、三上の手には2枚目の《クルフィックスの狩猟者》。

 石附に2枚目を乗り越える余力はなく、三上の戦場にはついにキーカードとなる《太陽冠のヘリオッド》が降臨する。

 《戦慄衆の秘儀術師》を追加していた石附は、猶予がないとフルアタック。石附は墓地の《ショック》を三上が召喚していた《魅力的な王子》へ撃ち込み、7点を通していくが、未だ三上を焼き切るには至らず。さらに三上が3枚目となる《クルフィックスの狩猟者》から《光輝の泉》と続けると、ライフは二桁まで回復してしまう。

 《嵐追いの魔道士》という飛行戦力を手に入れた石附だが、やがて《クルフィックスの狩猟者》が《太陽冠のヘリオッド》の力により絆魂を得て攻撃を始めると、徐々に三上が戦況を押し返していく。

 
ジリジリと盛り返す三上

 石附も《損魂魔道士》を人質に取った《博覧会場の警備員》へ《魔術師の稲妻》を合わせ、隙をついてはダメージを通していくのだが、《太陽冠のヘリオッド》の加護により、三上のライフは先ほどと同様二桁付近を維持している。

 さらに三上は《民兵のラッパ手》から《ラノワールのエルフ》とブロッカーを次々と投入していくと、石附の口からは思わず弱音がこぼれてしまう。

石附「(三上のライフは)12っすよね。何とか繋げれば……」

 石附も火力呪文と《損魂魔道士》の組み合わせにより、上手くサイズの勝る三上のクリーチャーを捌いていたのだが、次々と巨大化し、ライフを原点以上まで回復した三上の前に、最終的に膝をつくこととなった。

三上 1-0 石附

 
石附 拓也

石附「つええなあ~。他の白緑と違って完成度が違う」

三上「そちらのデッキも新しいですよね。帰ってMagic Onlineで回したいです(笑)」

 ゲームが終わるやいなや、ふたりがお互いのデッキを褒めあう。グランプリ決勝戦とは思えないほどに空気が弛緩する。

石附「1本は取りたいなあ……」

 後がなくなった石附は、弱音とも取れる言葉をこぼすが、三上のデッキリストを確認する素振りすら見せない。

 やることはやった。あとはなるようになるだけだ。そう言わんばかりに、石附はすぐさま気持ちを切り替え、続くゲームへと臨む。

ゲーム2

 1ゲーム目と同様、両者マリガンを選択するが、石附はダブルマリガンの憂き目に合う。

 スタートこそ先手の利を活かし《損魂魔道士》に《執着的探訪》をエンチャントし、ダブルマリガンの損失を埋めに行くが、痛恨の1ランドストップ――

石附「正直、畳んじゃおうかと思いましたよ」

 半ば絶望の淵に立たされていた石附。マリガンゆえのリスクとは言え、このまま王座を明け渡してしまうのだろうか。

 否。マリガンゆえのリスクを抱えていたのは石附だけではなかった。対する三上も、《ラノワールのエルフ》こそプレイするものの、たった1枚の土地でキープしていたのだ。そして、手札から2枚目の土地は……置けない!

 《復活の声》こそプレイするが、返す石附に《ラノワールのエルフ》を《ショック》で落とされ、マナトラブルが拡大してしまう。

 石附は2枚目の土地を引き込むと、《僧院の速槍》+《執着的探訪》と続け、さらには《復活の声》のトークンを除去し、一気に三上を締め上げる。

 三上は何とか2枚目の土地を引き込み、再び《復活の声》をプレイするが、石附の手札から《魔術師の稲妻》がプレイされると、ライフは0を割ってしまうのだった。

石附 1-1 三上

 三上は星を落とすと、少しため息をついた。

 
三上 由朗

 プロフィールで述べていた「次の目標」――今のイベントシステムに照らせば、「プレイヤーズツアー・ファイナル」となることは簡単に予想ができる。

 そして、事実三上は試合前にそのことを口にしていた。

三上「プレイヤーズツアー・ファイナルに出たい」

 グランプリで与えられるプレイヤーズツアー・ファイナルの席はひとつのみ。あと少しのところまで迫った「目標」。三上は未来を追って、やはり石附同様にデッキリストへ目を通すことなく、最後のゲームへ挑む。

ゲーム3

 みたび三上がマリガンする一方で、石附はこのマッチ両者通じて初めて7枚でキープ。

 三上はまたしても1ターン目《ラノワールのエルフ》と好スタートを切るが、石附が生存を許すはずもなく、それを《乱撃斬》で処理すると、ここから石附は《嵐追いの魔道士》2体、《損魂魔道士》と続け、猛烈なプレッシャーをかける。一方、三上はまたしてもマナトラブル……土地が2枚で止まってしまったのだ。

 なんとか2マナで出せるブロッカーであり、かつ生き残れば巨大な壁として、そしてライフゲイン効果により戦況を一変させうる《漁る軟泥》をプレイする……のだが、やはり追加の土地が引けず、能力起動に使えるマナは無い。

 石附は《僧院の速槍》から《魔術師の稲妻》で《漁る軟泥》を処理し、一気に追い詰める。

 
勝利へ邁進する石附

 三上は《弁論の幻霊》をプレイするが、ブロックに回った際に《ショック》を合わせられ唯一の戦力を失うとともに、残りライフはわずか3。

 《戦慄衆の秘儀術師》を追加した石附に対し、三上はカードを引くと――

 

 ――プレイヤーズツアーファイナルの権利を手にすることになる対戦相手に握手を求めた。

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石附 2-1 三上

 試合が終わり、石附はすぐさま感謝の言葉を口にした。

 ともに調整を行ってくれた仲間、今マジックを続けられている自身の置かれた環境。そして何より、決勝戦を戦ってくれた三上に。

石附「良い人と2度も対戦できて本当にありがたい」

 過去は現在に繋がり、そして未来を形作っていく。

 「青赤ウィザード」を使い続け綿密な調整を行い、周囲の仲間とマジックを楽しみ、そしてこのグランプリで決勝戦を三上と戦った石附に待っているのは、新たな舞台で世界のトッププレイヤーと肩を並べる未来だ。

 さあ、新たなグランプリ王者を祝福しよう。

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 石附 拓也、グランプリ・名古屋2020#1 優勝おめでとう!

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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