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EVENT COVERAGE
マジックフェスト・名古屋2020#1
デッキテク:石附 拓也の「青赤ウィザード」 ~同窓会に呼ばれない奴~
プレイヤーズツアーのカバレージブース内部で、ちょっとした噂が流れていた。
「グランプリの初日全勝者に、おもしろいデッキがいた」
「どうやら『青赤ウィザード』らしい」
その場にデッキリストを見た者はいないが、そのことがかえって神秘的で、「あれ入ってるんじゃない?」「さすがにそれは弱いでしょ」「あのカードを使ってるところ見たよ」と噂が噂を呼んでいるような事態を巻き起こしていた。
カバレージスタッフになるような変わり者は基本的にみんなマジックオタクなので、なんとなくの「青赤ウィザード」像は思い浮かぶのだが、正直スタンダードでさえパッとしないポジションにいた地味なデッキだったために、パイオニアのグランプリで全勝できるほどのポテンシャルを秘めたリストを思い浮かべられる者はいなかった。というか、パイオニアが過去のスタンダードの同窓会だとしたら、「青赤ウィザード」は絶対呼ばれない。そもそも青赤といったら《アーティファクトの魂込め》か《弧光のフェニックス》だよね。あいつらは挙動も派手だしなんか陽キャっぽい。
ともかく、このグランプリというフィールドで鮮烈なデビューを果たした「青赤ウィザード」にスポットを当てるのがカバレージの役割と言えるだろう。使用者の石附 拓也に、さっそく話を聞いてみた。
デッキ誕生の経緯
――このデッキはどのようにして生まれたのでしょうか?
石附「パイオニアでも青赤のデッキが組みたいなと思って、自分で試行錯誤をしながらデッキを組んでいたのが始まりです。当初は《若き紅蓮術士》などを使ったデッキを考えていたのですが、パイオニアはモダンやレガシーと比べて”ズル”ができないので、《若き紅蓮術士》の爆発力も活かし切ることができなくて、デッキを組むのは難航しました」
――パイオニアには《秘密を掘り下げる者》もいませんしね。
石附「そう! 本当は《秘密を掘り下げる者》を使いたいんですけどね。でも、ないものはないので。そうして試行錯誤をしているうちにMagic Onlineでたまたま『青赤ウィザード』の原型のようなリストを見つけて、すぐに『これだ!』と思って真似して組んでみました」
――組んでみてどうでしたか?
石附「それがめっちゃ強かったんですよ。特に《魔術師の稲妻》が見かけ以上にいいカードでした。パイオニアって、タフネス3以上のクリーチャーをテンポよく除去できる火力があまり多くないんですよね。その点、このデッキではウィザードが10枚入っていることもあって、《魔術師の稲妻》はほとんど《稲妻》と変わらない使用感でプレイできます」
――なるほど。とはいえ青赤デッキの宿命かもしれませんが、やはりこのデッキも勝ち筋が細そうに見えます。
石附「実はそんなことなくて、むしろかなり太いデッキです。モダンの『青赤デルバー』からカウンター(打ち消し呪文)を抜いた感じのデッキで、その分能動的に動けるカードを多く採用しているので、モダン以上に押し付ける戦略を実現することができます。実際、今回のグランプリでもメイン戦は1ゲームも落としてないんですよ」
デッキの特徴
――デッキには《執着的探訪》が4枚採用されていますね。スタンダードの「青単」ではよく見かけたカードですが、パイオニアやモダンではさすがにあまり見ないカードです。
石附「《致命的な一押し》など、強力な単体除去がある環境ですからね。しかし、このデッキでは貴重なアドバンテージ源ですし、《戦慄衆の秘儀術師》との相性もいいので、デッキに合っているカードです。とはいえ、やはりサイドアウトするようなマッチアップも多いですけどね。もちろん全部抜くわけではなくて、せいぜい1枚程度ですが。また、《執着的探訪》を見た相手はこちらがカウンターを持っていると警戒して動くようになります。意味深に1マナ残してプレイすると、惑わされる相手も多いです」
――たしかに《執着的探訪》はスタンダードでも《呪文貫き》や《潜水》と合わせて使われることが多かったので、土地が1枚立っているだけでも当時のトラウマがフラッシュバックしそうですね……。では、このデッキの一番強いカードは《執着的探訪》ということになるのでしょうか?
石附「いや、それは《損魂魔道士》ですね。このカードは《僧院の速槍》以上に強いです。というか、4枚入れてはいますが、実は《僧院の速槍》ってウィザードじゃないんですよね(笑) なので、サイドボード後に《僧院の速槍》が減ることはあるんですけど、《損魂魔道士》を減らすことはまずないです。火力によるダメージを-1/-1カウンターに変えることができる能力も地味ながら役に立ってくれる場面は多いです」
――なるほど。他には《突破》の採用がユニークですね。さきほど「能動的に動けるカードを多く採用している」と仰っていましたし、その一環なのかなと思うのですが、ソーサリーであることがデメリットになることもありそうに思えます。
石附「1マナのキャントリップ呪文はいろいろと試したのですが、《突破》の強いところは『対象を取らない』という点です。呪文が立ち消えるリスクがないので、気軽にプレイすることができます。また、トランプルがつくという能力も意外と《執着的探訪》と相性がよかったりして、活躍してくれるケースもあります」
――他にもデッキを工夫した点はありますか?
石附「メインはそこまで拡張の余地はないのですが、サイドボードはかなり工夫しています。パイオニアのメタゲームに存在するデッキのほとんどに枠を割くことができています。このグランプリを通して1枚だけ構築ミスが発覚しているのですが、それも致命的というほどではないので、概ね満足ですね。イン・アウトもかなり練り込んでいて、今回デッキリストをシェアしている藤田 修(東京の強豪プレイヤー)と一緒にイン・アウトの内容をすべてスプレッドシートにまとめています。」
――もはや仕事ですね。
石附「藤田さんとは同じ職場で働いているので、職場でもデッキの相談したりしてますね」
主要なマッチアップの相性
――今回のグランプリでは「青黒《真実を覆すもの》」や「黒単アグロ」が非常に多かったと思います。これらのデッキとの相性はどうでしたか?
石附「実は『青黒』には微不利なことが発覚していて、相性差は45:55くらいです。《致命的な一押し》をはじめとした単体除去が多くて、クロックを止められやすいんですよね。さきほどサイドボードの構築ミスがあったと言いましたが、《神秘の論争》を1枚だけ《軽蔑的な一撃》にすればよかったです。ただ、本当に軽微な相性差なので対戦中に不利を実感するほどではないですね」
石附「『黒単アグロ』も同じく45:55くらいで微妙に不利です。火力でクリーチャーを焼いても戦場に戻ってくるので、リソースを回復されると厳しいです。とはいえこのマッチアップはほとんど先手ゲーですね。サイドボード後はこちらが多くのカードを入れられるので、そこで差をつけられます。このマッチアップもほとんど拮抗していて、相性差は本当に微差です。逆に『青赤《アーティファクトの魂込め》』や『白単ヘリオッド』などのクリーチャーデッキには有利です」
――なるほど。このデッキの強みを一言で言うと何でしょうか?
石附「知られていないことですね。さっきも言ったとおり、相手がカウンターを警戒して動きが鈍くなったりするとこちらとしてはやりやすいのですが、デッキがバレてしまえばそうしたイニシアチブもなくなります」
――最後になりますが、このデッキに手を入れるとしたらどんな感じになりますか?
石附「メインは100点満点で、とても強いデッキに仕上がっていると思います。強いて言うなら《熱烈の神ハゾレト》を《戦慄衆の秘儀術師》に差し替えてもいいかなぁ? とは思いますが、このグランプリでメイン戦を落としていないことを考えると、手を入れる必要はないかもしれません。サイドボードはさっき言ったとおり、『青黒《真実を覆すもの》』に対して有効な《軽蔑的な一撃》を1枚増やしたいですね」
――ありがとうございます。このあともがんばってください!
「青赤ウィザード」は「同窓会に呼ばれない側のデッキ」だったかもしれない。しかし、今大会で活躍していることを鑑みれば明確に”勝ち組”への進化を遂げたと言っていいだろう。
このデッキに限らず、過去のスタンダードの中にも埋没していたデッキは無数に存在する。もしかすると、そうしたデッキたちもパイオニアでは輝けるのかもしれない。
7 《山》 4 《蒸気孔》 4 《尖塔断の運河》 4 《シヴの浅瀬》 1 《硫黄の滝》 -土地(20)- 4 《僧院の速槍》 4 《損魂魔道士》 4 《嵐追いの魔道士》 2 《戦慄衆の秘儀術師》 1 《熱烈の神ハゾレト》 -クリーチャー(15)- |
4 《突破》 4 《乱撃斬》 3 《ショック》 4 《選択》 4 《執着的探訪》 4 《魔術師の稲妻》 2 《舞台照らし》 -呪文(25)- |
2 《ゴブリンの鎖回し》 1 《イゼットの静電術師》 1 《瘡蓋族の狂戦士》 2 《無謀な怒り》 1 《呪文貫き》 2 《削剥》 1 《軽蔑的な一撃》 4 《神秘の論争》 1 《宝船の巡航》 -サイドボード(15)- |
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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