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マジックフェスト・名古屋2019

戦略記事

パイオニアの先駆者・松本 友樹に聞く! ~パイオニア未来予想図Ⅱ~

Hiroshi Okubo

 マジックには、ティミー/タミー、ジョニー/ジェニー、スパイクといったユーザー属性のセグメントが分けられている。さらに言えばヴォーソス、メルといった心理的な区分けもある。このあたりはマジック:ザ・ギャザリングの「ユーザー」(プレイヤーに限らない)であれば、一度は聞いたことがあるだろう。

 ティミー/タミーはマジックを通して得られる興奮や喜びを、ジョニー/ジェニーはデッキ構築やコンボを勘案することによって自己表現を、スパイクはトーナメントで勝利を重ねることを目指している。ヴォーソスとメルについては割愛するが、より詳細についてはこちらの記事が参考になるだろう。

 さて、マジックのプロプレイヤーと呼ばれる層はおおよそスパイク的要素を持っている傾向にあるだろう。プロプレイヤーの定義にもよるが、仮に恒常的にミシックチャンピオンシップに参加しているプレイヤーを指すとすれば、そもそもグランプリやMCQといったトーナメント自体を勝たないことにはミシックチャンピオンシップそのものに参加することができないし、これらで勝利を目指した果てにあるのがミシックチャンピオンシップなのだから。

 しかし、中には統率者戦や非公式フォーマットに目がないプロも少なくはない。たとえば「カードラッシュ」のスポンサードプロである高橋 優太などは、マジックというコンテンツそのものへの愛が深すぎるがゆえに、カジュアルフォーマットについても非常に深い知見を持っている。モミール・ベーシックやパウパーといったフォーマットが今ほど市民権を得ていなかった2011年ごろの時点で、すでにそれらのフォーマットの攻略記事をこのウェブサイトに連載していたほどである。

 そしてそうしたプレイヤーは高橋だけではない。特に「松本ハーレー」「マルドゥ・イグニッション」といった松本ブランドを世に発信してきた松本 友樹などは、スパイク的でありながらも本質的にはジョニー的側面も強いデッキビルダーとして知られている。

 時は10月21日。マジックプレイヤーの前に、新しいおもちゃ――「パイオニア」という前人未到のフォーマットが発表される。それを受け、松本と言えば……

 このはしゃぎようである。

 わずか3日程度の間に6~7個(本人のTwitterにはここで挙げた以外のデッキも紹介されている)のデッキリストを投下するという、もはや狂気じみているとさえ言えるテンションの上がりっぷりだ。それでいてそれぞれのデッキに独自性があり、回してみたいと思わせる出来になっているのはさすが松本といったところだろうか。

 今、日本で一番パイオニアに熱を上げている(かもしれない)松本は、この環境をどのように読み解いたのか。早速話を聞いてみた。


 
松本 友樹

未来予想図 ~環境初期はサヒーリコンボ中心になりそう?~

――というわけで、さっそくパイオニアの環境についてのお話を伺いたいと思います。どのようなデッキが強いのでしょうか?

松本「まず、サヒーリコンボが頭一つ抜けているかなという印象です。コンボに必要な必須カードの枚数が少ないので、様々な構成が考えられますが、個人的には《金のガチョウ》や《王冠泥棒、オーコ》を入れた『ミッドレンジサヒーリ』と、《時を越えた探索》や各種除去を採用した『コントロールサヒーリ』の2つが考えられますね」

――やはりサヒーリコンボですか。しかし《王冠泥棒、オーコ》と組み合わせるというのはどういったことでしょう?

松本「単純に《金のガチョウ》によってトップスピードが上がることももちろんですが、《王冠泥棒、オーコ》自身が継続的に戦力を生み出すことができるのが強いと思います。それに《王冠泥棒、オーコ》自身が対戦相手の対策カードをメインから対策できるカードなので、その点も強いですね。サヒーリコンボは除去でも火力でも止まってしまう脆いコンボではあるので、コンボをちらつかせながら殴るプランも取れるようになるのは偉いです」

――コンボ成立を助ける《時を解す者、テフェリー》も使えますしね。しかし、ここでも《王冠泥棒、オーコ》は評価が高いんですね。

松本「個人的には、パイオニアで一番強いカードなんじゃないかと思ってます。青と緑を触っているデッキならどんなデッキでも《金のガチョウ》とセットで入る可能性がありますね。いずれにせよ、サヒーリコンボが環境の中心になるのは想像に難くないです。なので、パイオニアのデッキを考える際はまず最初にサヒーリコンボを仮想敵に定めることになるでしょう。逆に言えば、サヒーリコンボに勝ち目がないデッキは無理というか、厳しいかなと思いますね」

――サヒーリコンボは脇を固めるカードも強いですよね。他にはどのようなデッキが考えられるでしょうか?

松本「僕が気になっているのは《金のガチョウ》+《王冠泥棒、オーコ》パッケージに、《致命的な一押し》や《突然の衰微》、《時を越えた探索》などを加えたスゥルタイ・コントロール(黒緑タッチ青)ですね」

――スゥルタイですか。なんとなくパイオニアはコンボ優位の環境になりそうなイメージがあるのですが、フェアなコンセプトのデッキも生き残れるでしょうか?

松本「うーん……《思考囲い》のような妨害や各種プレインズウォーカーも十分強いですし、何より環境屈指の除去である《致命的な一押し》を非常に強く運用できそうなので、可能性は大いにあると思います。サイドボードの選択肢も多いですしね」

――なるほど。他にも注目しているデッキはありますか?

松本「赤単や黒単ゾンビなど、過去のスタンダードで活躍したデッキをバージョンアップしたデッキもありえますが、中でも緑単信心は今少し話題になっていますね。《豊穣の力線》次第ですが、理論上2ターン目《絶え間ない飢餓、ウラモグ》も可能で、爆発力はパイオニア随一だと言えます。ただ、ブン回りが強いデッキの宿命として安定感には少し不安もあり、そこがモダンのトロンとは違うところですね。他のデッキ次第ではありますが、たとえばPTQなどで勝つかと言われると何とも言えないような気もします」

――あとはイゼット・フェニックスなども話題になっていますね。

松本「そうですね。《氷の中の存在》も使えますし、モダンのイゼット・フェニックスと比べてもあまり遜色ないレベルの強さだと思います。ただ、《漁る軟泥》や《虚空の力線》、《安らかなる眠り》など、パイオニア環境に存在する墓地対策はいずれもモダンやレガシーで通用するレベルの強力なカードが揃っているので、対策のしやすさという点で少し落ちるかもしれません。他にも《アーティファクトの魂込め》を使ったデッキなどもありそうですし、環境はしばらく動き続けそうですね」

――ありがとうございます。


 松本の慧眼をしても環境の未来を具体的に予測するのは難しいようだったが、大方の世論と同じくサヒーリコンボは環境の最大の注目デッキとなりそうだ。その上、パイオニアでも《王冠泥棒、オーコ》が活躍しそうだという知見は興味深い。

 ティミー/タミー、ジョニー/ジェニー、スパイク。いずれのプレイヤーにとっても、未知の領域であるパイオニア。環境がどのように動いていくことになるのか、このフォーマットの行く末が楽しみだ。

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RESULTS

対戦結果 順位
15 15
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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