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日本選手権2019

観戦記事

第13回戦:藤原 瑞季(大阪) vs. 黒田 正城(大阪) ~古豪だろうがルーキーだろうが~

今泉 陸

 BIG MAGIC所属プレイヤー、黒田 正城。日本人初のプロツアー優勝を成し遂げた他、グランプリやThe Finalsでの優勝経験も持つ。

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 「古豪」とでも形容するべき経歴を持つが、彼の活動拠点である大阪で大会に参加すれば、同じ参加者として彼を見かけることは比較的多い。

 店舗大会でのラウンド間、直前の対戦相手と談笑する姿も珍しくなかった。

 ところで、カバレージにおける観戦記事では、記事掲載のためにプレイヤーの出身の都道府県名を紙に記載していただいている。

 今回の観戦記事でも、いつもの通り筆者からお願いし、まずは黒田に記載をお願いした。その後、対戦相手の方にもメモ用紙をお渡しする。

 書き終えた後の紙を見て、黒田が口を開いた。

「あれ、大阪?」

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 藤原 瑞季。出身地は大阪。

 黒田と同郷のプレイヤーだ。

 「ふだん、高槻でプレイしているんですよ」と藤原は言う。大阪府ではあるものの京都府寄りの地域だ。同郷にもかかわらず黒田が見かけないのは、ちょっとした活動場所の違いによるもの。隣人という表現も近いかもしれない。

 聞けば、藤原はマジック歴3年と言う。『異界月』発売頃からプレイを開始し、2017年7月発売の『イクサラン』から、いわく「がっつり」マジックのプレイを始めたそうだ。「ルーキー」と呼ぶこともできるだろう。

 遠く大阪の地からここ東京の地で相まみえた両者。

 日本選手権2019、予選最終ラウンド開始のアナウンスが鳴り響く。

「よろしくお願いします」の掛け声で、両者はデッキに手を伸ばした。


 
藤原 瑞季 vs. 黒田 正城

 「古豪」だろうが「ルーキー」だろうが、勝者がトップ8だ。

ゲーム1

 後手・黒田の《ラノワールのエルフ》が先手・藤原の《軍団の最期》に飲み込まれながらゲームがスタートした。それにより公開された黒田の手札は以下の通りだ。

 黒田のデッキは「ジャンド・ダイナソー」であることが判明。黒赤緑カラーのマナ・レシオの良いクリーチャーで速やかに対戦相手を屠る、直線的なアグロ・デッキだ。

 一方の藤原は《神聖なる泉》《水没した地下墓地》と並べていることからエスパー(白青黒)であることが判明している。中でも彼のデッキは《第1管区の勇士》を扱う「エスパー・ヒーロー」だ。

 《ラノワールのエルフ》を失ったものの、黒田の手札には単体で強力なカードが揃っている。

 エスパー・デッキを駆る藤原からすれば、どれか1つでも通れば対処を余儀なくされる。なるべく丁寧な対処を心がけたいところだ。

 藤原は黒田のオープンした手札をじっと見つめる。

 黒田もまた、なにやら考える藤原の顔を見つめている。

 やがて藤原は、頭を掻きながら、持っていたペンで《原初の飢え、ガルタ》を指定し、宣言した。

「(対象)これで」

「いや、《思考消去》ちゃうから(笑)」

「あっ、そっか!」

 2マナで手札を奪い去る《思考消去》と、2マナで手札を奪い去るかもしれない《軍団の最期》。確かに挙動が似ていて間違えることもあるだろう。

 「絶対途中から間違えてるやろなって思ってたよ(笑)」とコメント。ツッコミも速く、大阪らしい朗らかな雰囲気だった。

 さて、2ターンを迎えた黒田、《無法の猛竜》を引いて、プレイ。「ジャンド・ダイナソー」の速度が1段階上がるエンジンだ。

 これを生かしてはおけない藤原、手札にある《思考消去》に優先して《ケイヤの誓い》。《無法の猛竜》の退場を迫った。

 3ターン目、黒田は《朽ちゆくレギサウルス》で攻めに行く。3マナ、7/6のスペックは、歴史の長いマジックのカードの中でも比肩するものはなかなかない。

 対処されないままターンを迎え、藤原にダメージを刻んだ。残りライフの3分の1が消えうせる。

 さらに黒田は2枚目の《朽ちゆくレギサウルス》で果敢に攻めに行く! 実は藤原の土地は3枚でストップしている。《ケイヤの怒り》が降り注ぐ前に削り切れるだろうか。

 藤原、カードを引くも土地を引けない。2枚の《朽ちゆくレギサウルス》に踏みつぶされるのを待つのみか……そう思った瞬間だった。

 同名のカードを巻き添えに、土地以外のパーマネントを追放する。《朽ちゆくレギサウルス》たちがヴィダルケンに吸い込まれていったのを見た黒田から、わずかに苦笑が漏れる。

 そのまま土地を引き続ける黒田を下すのに、藤原に時間は要らなかった。

 「エスパー・ヒーロー」の顔とも呼べる勇士が、「古豪」のライフを速やかに削り取った。

藤原 1-0 黒田


 
ゲーム2

 ゲーム2を迎えた両者、真剣な顔でサイドボードを吟味する。

 藤原は《強迫》《覆いを割く者、ナーセット》《肉儀場の叫び》をデッキから外し、最適化を図る。

 黒田もまた、《原初の飢え、ガルタ》や《縄張り持ちのアロサウルス》のような、相手のデッキに弱いカードをサイドアウトした。

 藤原が逃げ切るか、黒田が追い付くか。

 2ゲーム目、スタート――とお互いにデッキをテーブルに置いたとたん、ジャッジから声がかかった。

「デッキチェックです」

 デッキチェック。不正防止のため、競技イベントでは時折行われる、プレイヤーのデッキ確認だ。

 事前に提出されたデッキリストと照らし合わせ、リスト通りのデッキがプレイされているかを確かめる。

 ジャッジの指示に従い、2人とも自身のデッキをケースに戻し、ジャッジに渡した。

 藤原はその後で苦い顔をする。

「昨日、(リミテッド・ラウンドの)デッキリストの記入を間違えて、1回ゲームロス喰らってるんですよ」

 ゲームロスとは、デッキリストに不備などがあった場合に下される、その時に臨んでいたゲームが1つ負け扱いとなるペナルティである。

 最大3ゲームしかないうちの1ゲーム。言うまでもなく影響力が高く、プレイヤーが恐れるペナルティである。

 一方、黒田にもデッキチェックに良い思い出がない。

「1回、プロツアーでゲームカウント1勝1敗になったときにな、さあ盛り返すぞ! って気合入れた瞬間、デッキチェックで持っていかれたことがあってな。その後《虚空の力線》2枚の初手をキープしたら、上からもう2枚《虚空の力線》引いてくる冷え冷えのデッキ持ってこられたわ(笑)」

 当たり前の話だが、誰がデッキを触ろうと、引きが悪くなる保証もなければ良くなる可能性もない。とはいえ、嫌な思い出は記憶に残りやすいものである。

 デッキチェックというイベントと繋がるのも仕方のないことだろう。

 ジャッジがデッキを持って行ってからしばしして、黒田がつぶやいた。

「……遅いな」

 だんだんと、2人に嫌な予感が募り始める。

 そしてそれは、再び訪れたジャッジがデッキを持ってこなかったことで彼らの実感へと変わった。

 藤原が呼び出され、黒田が残される。「大丈夫やろか」とぽつりつぶやいた。

 やがて帰ってきた藤原は、開口一番こう言った。

「大丈夫じゃないんで、先手いただきます」

 ……無念の藤原、デッキ不備によりゲームロス。

 サイドボードのカードを1枚だけ間違えてしまっていたようだ。

藤原 1-1 黒田

「え、サイドチェンジ変わるんやけど(笑)」

 全く思いもよらない結果でゲーム2は結末を迎えることになってしまった。

 サイドイン・アウトを吟味したはずが、全く関係なく3ゲーム目が始まってしまう。

 当然、先手と後手が入れ代わる。

 藤原が再び先手を選択した。


 
ゲーム3

 ラストゲームの幕を開いたのは藤原の《思考消去》だ。《溶岩コイル》《丸焼き》+土地5枚の手札から《丸焼き》を墓地へ送る。

 黒田は返しに《恐竜との融和》を引き込むと、それにより《変容するケラトプス》を手札に加えた。

 しかし、先に臨戦態勢に入ったのは藤原だ。

 1枚目の《第1管区の勇士》が黒田の《溶岩コイル》と交換されるのを待つと、2枚目の《第1管区の勇士》と《思考消去》を連続で唱えて3点分のクロックを揃えた。黒田の手札から《変容するケラトプス》が抜ける。

 黒田はライブラリートップにあった《朽ちゆくレギサウルス》でアタッカーを用意するも、藤原は《ドミナリアの英雄、テフェリー》でドローを始めた。

 《朽ちゆくレギサウルス》でどうにか対処したいところだが、《第1管区の勇士》による兵士・トークンがそれを阻む。

 なんとかこの状況を打破しようと、黒田は2マナのアーティファクトに望みを託した。

 《ビビアンのアーク弓》。どんなカードでもライブラリーにあるクリーチャーに高確率で変えてしまう頼もしいアーティファクト。土地も5枚と十分揃っている。

 藤原は自身の手札を見た。土地が2枚と《害悪な掌握》。黒田に尋ねる。

「直接、場に?」

「出します」

 対処を誤ると優位が崩れかねない。藤原は慎重に行動を選び、《ドミナリアの英雄、テフェリー》で《朽ちゆくレギサウルス》をライブラリーの上から3番目に押し込んだ。

 黒田はターンをもらうとそのまま静かにターンを返す。藤原が《時を解す者、テフェリー》を追加したターンの終了時に、《ビビアンのアーク弓》の能力で《朽ちゆくレギサウルス》を戦場に呼び戻した。

 とはいえ、《朽ちゆくレギサウルス》の攻撃が兵士・トークンに止められてしまう状況に変わりはない。

 冷静に恐竜の進撃を兵士・トークンで阻むと、藤原は《時を解す者、テフェリー》の能力で《ビビアンのアーク弓》を手札に戻す宣言をした。

 黒田はここで数十秒使用する。

 《ビビアンのアーク弓》の能力は使えるものの、《朽ちゆくレギサウルス》を従える現状、アップキープを迎えると同時に《ビビアンのアーク弓》を捨てることになってしまう。

 それを防ぐにはこのターン《ビビアンのアーク弓》を起動せず、手札を温存しておけば良い話だが……攻め手を緩めると《ドミナリアの英雄、テフェリー》に手を付けられなくなる。

 考えた末、黒田の結論は「起動」だった。現れたのは《無法の猛竜》。

 アップキープを迎えた黒田、《ビビアンのアーク弓》を捨てると、今引いた《変容するケラトプス》を召喚する。3体の恐竜が場に並んだ。

 黒田はそのまま《朽ちゆくレギサウルス》で《ドミナリアの英雄、テフェリー》の、《無法の猛竜》と《変容するケラトプス》で藤原本人の首を狙いに行く!

 しかし、藤原は先ほどから温めていた《害悪な掌握》で《変容するケラトプス》を、《暴君の嘲笑》で《無法の猛竜》をそれぞれ対処する。

 鮮やかな処理である。たった1枚のクロックとなった《朽ちゆくレギサウルス》ではどうしようもない。黒田に挽回の余地は残されていなかった。

藤原 2-1 黒田


 白星を挙げたのは「ルーキー」だった。

 小さくないハプニングを乗り換え、「古豪」を打ち破り、日本選手権2019のトップ8へ、堂々進出を決めてくれた。

 思いだしてみれば、前大会(日本選手権2018)覇者の森山 真秀も、当時のマジック経験は2年である。

 藤原はマジック経験3年目。森山に続く「新星」として、その名を轟かせてくれるだろうか。

 そんな筆者の期待をよそに、「《殺戮の暴君》に怯えてました(笑)」と藤原は表情を緩めていた。

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