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グランプリ・名古屋2018
ジャッジフォーカス:レベル3ジャッジ 中村貴宣~「楽しさ」の教導者~
約2年ぶりに名古屋での開催となったグランプリ。期してか期せずしてか名古屋から新たなシルバーレベル・プロが誕生し、地域のマジックコミュニティが熱を帯びています。
そんな東海地方を中心に、長年コミュニティを支えている人物がいます。
中村 貴宣さん。
現在のジャッジレベルでは最高位となる「レベル3」ジャッジとして、新たなジャッジの育成に力を注ぎつつ最前線で今も活動しています。グランプリのみならず関西のプロツアー地域予選(RPTQ)などで彼の姿を見たことのあるプレイヤーは多いことでしょう。
それだけでなく、ルールへの深い造詣を活かし、現実のイベントのみならずTwitter上でも活躍されています。
ジャッジは「非日常」であり「趣味」と言い切る中村さん。ですが、大きな情熱を持って日々精力的に活動されています。
そんな中村さんのジャッジ活動への思いについてについてインタビューをお願いしました。
中村 貴宣さん インタビュー
「日常」と「非日常」
――ジャッジになられたきっかけというのはどういったものだったのでしょう?
中村「もともとは細々とプレイヤーしていたところに、就職した名古屋で遊び場を探していて、競技レベルのイベントにも興味があって顔を出していたんですね。その頃からルールはある程度知っていて、ネット上で意見などを出していたところに伊藤さん(現BIG MAGICイベントマネージャーの伊藤 秀敏さん)に声をかけられたのが最初です」
――意外にも中村さんがジャッジになられたのは就職後なんですね。学生時代からがっつり活動されていたのかと思ってました。過去のインタビューで趣味と仰られていたのもそれゆえにでしょうか。
中村「基本的にはそうですね。普段の仕事とぜんぜん違うことをやっている感覚があって、会場に来て他の人と話すのは楽しいし、プレイヤーの人と話すのも楽しい。それは絶対、通常ではできないことで、グランプリはそういう場なのかなと思っています。僕の場合仕事と趣味は完全に分かれていて、もちろん仕事中に趣味のことを考えることはあるんですけど、本気にならないんですよ。それが仕事の邪魔をすることはないし、趣味に全力なのかと言えばそうではないですね」
――ジャッジ活動は完全に仕事とは違う「非日常」なのですね。では、ジャッジレベルを上げることにためらいはなかったのでしょうか?
中村「僕はもともとあまりジャッジレベルを上げたくなかったんですよ。ずっと前線でやりたいという希望もありましたので。ただ、ある程度経験を積んだ時にレベルを上げて下にいる人たちを指導しなければいけないということを言われたこともありまして」
――そうしてレベル2、3と上がってきたわけですね。そうなると「日常」が崩れてしまうことはなかったのでしょうか?
中村「崩れそうにはなりましたね、一時期。ジャッジレベルが上がるとできることが一気に増えちゃったんですよ。レベル3になった時に視野がめちゃくちゃ広がってしまったんですね。何やっていいか分からなくなっちゃったんですよ。そうなると生活リズムが崩れますよね。そこからいろいろな人と話した結果『できることをやればいいんだ』と気づくのに1年かかりました。『できることが増えたから全部やろう』じゃないんですよ。『できることが増えたからやりたいことやればいいじゃん』と。そこで僕の強みというのがルールの解釈や他の人に教えるメンター(指導者、助言者)技能だということに立ち返って、今はそれを実践に移しています」
「楽しさ」の教導者
中村「例えば、今回のグランプリであればチーム戦なので経験したことのある人が少ないんですよ。そうなると未経験者のための文書が必要ですし、(グランプリの主催が)ChannelFireball Eventsに変わったので、その手順も訳さなければいけない。訳して初めて日本風にアレンジできるんです。和訳して初めて『これ日本じゃ無理じゃん』となることもありますし」
――なるほど……。そういったメンターとしての役割からMTG質問箱のような活動もあるわけですね。
中村「あれは実は違うんですよ。ふたつ理由があって、ひとつは昔あったマジックの疑問を寄せる公式な掲示板やネット上のコミュニティがなくなってしまい、プレイヤーが疑問をぶつけられるのがジャッジだけになっちゃったんですね。そうなって『気軽に質問を受ける場所があってもいいかな』と思って作ったのがあれなんです。もうひとつは自分以外の人にも協力してもらっていて、そこでのコミュニケーションなんかはSNSの利用目的のひとつだと思っているので、それのためですね」
――私もよくお世話になっています。きっとお世話になっているプレイヤーも多いと思います。
――中村さんのジャッジとしてのビジョンというのはどのようなものでしょうか?
中村「後進を育てる、というのは上のレベルのジャッジとしてやらなきゃいけないことですし、あとはできることを増やすか増やさないかですよね。例えば、今僕はグランプリのジャッジのチームごとにスライドを作ってるんですね」
そう言って中村さんが見せてくれたのは、自ら作成した資料集でした。グランプリではジャッジがさまざまなチームに分かれて業務を分担しています。そのチームごとに中村さんは必要な業務の流れや細かな知識をスライドにまとめ、共有しているのです。例えば今回中村さんが担当されていたデッキチェックのチームのスライドは10ページ以上に及んでいました。
中村「目標とやるべきこと、手順を書いて事前にチームメンバーに送っておきます。これに多少の現場のアレンジを加えて運用します。これを作っておくことで、漠然とした役割を形にでき、事前に決めた目標を立てて、後からチェックできるようになる。今回のグランプリだと、大体できたんじゃないかなと思っています」
――グランプリのチームを上手く動かしたい、ということですね。
中村「グランプリのチーム性っていうのはすごく良くできていて、あとはどうジャッジを上手く動かすか、役割を分かりやすくするかですね」
――ありがとうございます。中村さんが考えるジャッジの魅力や大事な点を教えていただけますか?
中村「ジャッジには運営と裁定という二面性があります。運営で楽しいのはスムーズに計画通り進めばやっぱりスカっとします。裁定としてはジャッジが呼ばれた時にプレイヤーの方が不満や不安が無いように解決する。全てはプレイヤーの良体験に行き着くと思います。僕が言うとすれば『プレイヤーとしてイベントに出て楽しいのであれば、それを広めてくれ』と。『あなたがジャッジをしているイベントでプレイヤーが楽しいと言ってくれるのであれば、あなたはジャッジとして素晴らしいと思うよ』と。グランプリはみんなそう考えて動いています。ただ、僕らが楽しければプレイヤーが楽しいかというと、そこは必ずしもイコールではありません。ですが、プレイヤーが楽しい経験をして、自分が楽しい経験ができたか、そこのバランスが大事なところだと思います」
――最後にマジック・ジャッジという役割と今後どのように付き合っていきたいと考えられているか教えてください。
中村「うーん……どうでしょうねえ……。これまでとそんなに変わらないんじゃないかな。とりあえずとにかく仕事と分ける。趣味は趣味です。楽しむためにやる。自分が楽しめなくなったら終わりなのかな。まず楽しむ。グランプリに来て楽しかったかと聞かれて、それに『はい』と答えられれば僕はそれで満足です」
――ありがとうございました!
最高位のレベル3ジャッジとして、中村さんは後進ジャッジ育成に大きく携わりながら、自らも現場でプレイヤーをサポートしています。
中村さんはこれからも「メンター=教導者」として日々活動されていくのだと思います。
「楽しさ」をもっと多くの人に広めるために――
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