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グランプリ・京都2017
世界一マジックをプレイしている男、中村修平のシールドデッキ構築
by Sugiki, Takafumi
世界一マジックをプレイしている男、それが中村 修平(東京)だ。
中村 修平 |
約4500万円。
これが何の金額であるかがおわかりだろうか。これは、中村がこれまでマジックのトーナメントで獲得した賞金の総額であり、ブラジルの殿堂顕彰者にして現在世界ランキング9位のパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosa、プロツアー7勝の帝王カイ・ブッディ/Kai Buddeを超える額である。
そして、何と言っても、マジックのイベントへの参加、勝利によって獲得できるプレインズウォーカー・ポイントを、グランプリ・京都2017直前の時点で世界一の104,065ポイント積み重ねているのが、この中村修平である。
グランプリ優勝7回、プロツアートップ8入賞6回と輝かしい戦績を残す彼であるが、特筆すべきは、グランプリの優勝全てがリミテッドである、「リミテッド巧者」であることだ。
海外を拠点とし「ChannelFireball」の主力メンバーとして、「国籍が不明になる」ほど転戦しながら第一線で活躍するシーズンもあったが、現在は以前ほどに海外を転戦することはなく、「Hareruya Pros」の一員として、東京を中心に活動している。
発売から1週間、プロツアー『破滅の刻』を来週に控え、前乗りで京都入りした海外からのトップ・プロが多く参戦する中、日本人として、それらを返り討ちにするべく迎え撃つ筆頭が彼であろう。何と言っても、古都・京都は中村のホームタウンである。
プロツアーまでの限られた時間の中で練習するため、「Hareruya Pros」とのドラフトなどに時間を費やしており、このグランプリ・京都2017に向けてのシールドの練習はほぼ行えていないという中村。昨日1回だけシールドデッキ用のパックを開封しただけとのことである。しかし、これまで積み重ねたマジックの基礎力を活かし、活躍してくれるであろう。
そんな中村のデッキ構築を見ながら、この『破滅の刻』『アモンケット』シールドデッキの環境を俯瞰していこう。まず、中村にこのシールド環境の第一感を聞いたところ、《蠍の神》、《蝗の神》、《スカラベの神》の3種の神に《王神の贈り物》のいずれかをパックから開けよう。これらが飛び抜けて強い。とのことである。
そして、シールドデッキ構築の30分の時間配分について、中村に聞いてみたところ、中村はプランAとプランBがあるとのことだ。
- プランA: 最初の10分でデッキを組んで、リストを記入、残りの時間を一人回ししながら微調整。
- プランB: 最初の20分でデッキを組んで、リストを記入、残りの時間を一人回ししながら微調整。
難しいカードプールであると、プランBの配分になるが、出来る限り、プランAの配分で進められるようにしたいとのことだ。
そして、今回のグランプリにて開封したのがこちら。
{W} | {U} | {B} |
2 《王神の信者》 1 《典雅な襲撃者》 1 《選定の司祭》 1 《突風歩き》 1 《オケチラの報復者》 1 《レト一門の槍の達人》 1 《孤高のラクダ》 1 《仕える者たち》 1 《従順な召使い》 1 《演習ミイラ》 1 《信義の侍臣》 1 《尽きぬ希望のエイヴン》 1 《王神の天使》 1 《英雄的行動》 1 《デジェルの拒絶》 1 《排斥》 |
1 《狡猾な生き残り》 1 《迷宮の守護者》 1 《呪文織りの永遠衆》 1 《ヘクマの歩哨》 1 《最後の明日の予見者》 2 《エイヴンの葦原忍び》 1 《ナーガの神託者》 1 《選定の侍臣》 1 《川蛇》 1 《送還》 1 《ジェイスの敗北》 1 《巧みな軍略》 |
2 《廃墟ネズミ》 1 《不憫なラクダ》 1 《枯死コウモリ》 1 《呪われたミノタウルス》 1 《忌まわしい生き残り》 1 《無法の斬骨鬼》 1 《呻きの壁》 1 《スカラベの饗宴》 1 《大災厄》 1 《信者の確信》 |
{R} | {G} | 多色/無色 |
1 《血に飢えた振起者》 1 《燃え拳のミノタウルス》 1 《地揺すりのケンラ》 2 《ミノタウルスの名射手》 1 《戦闘の祝賀者》 1 《ケンラの潰し屋》 1 《棘モロク》 1 《戦炎の投槍手》 1 《花崗岩のタイタン》 2 《かすむ刀剣》 1 《発射》 1 《穿刺の一撃》 1 《破滅の刻》 |
2 《残忍な野猫》 2 《横這ナーガ》 1 《侵略ナーガ》 1 《採石場の運び屋》 1 《苦弓の名射手》 1 《人生は続く》 1 《造反者の解放》 1 《活力の贈り物》 1 《活力のカルトーシュ》 1 《楽園の贈り物》 1 《活力の試練》 1 《超克》 1 《サンドワームの収斂》 |
1 《血水の化身》 1 《無慈悲な投槍手》 1 《蝗の神》 1 《捲土 // 重来》 1 《立身 // 出世》 1 《黄昏のピラミッド》 1 《シェフェトの砂丘》 1 《栄光の砂漠》 1 《熱烈の砂漠》 2 《生存者の野営地》 1 《色彩の断崖》 1 《進化する未開地》 |
鬼に金棒、中村に《蝗の神》、見事引きたかったという神の1枚を引き当てている。さらには《破滅の刻》も引き当て、赤は確定だろうか。
中村が構築したデッキは下記のような形となった。
7 《島》 7 《山》 1 《熱烈の砂漠》 1 《生存者の野営地》 1 《進化する未開地》 -土地(17)- 1 《燃え拳のミノタウルス》 1 《地揺すりのケンラ》 1 《迷宮の守護者》 1 《呪文織りの永遠衆》 1 《血水の化身》 1 《戦闘の祝賀者》 1 《ケンラの潰し屋》 1 《ミノタウルスの名射手》 2 《エイヴンの葦原忍び》 1 《ナーガの神託者》 1 《選定の侍臣》 1 《戦炎の投槍手》 1 《蝗の神》 -クリーチャー(14)- |
1 《送還》 2 《かすむ刀剣》 1 《巧みな軍略》 1 《黄昏のピラミッド》 1 《発射》 1 《穿刺の一撃》 1 《破滅の刻》 1 《捲土 // 重来》 -呪文(9)- |
中村が選んだのはストレートな青赤デッキであった。ここからは、中村にこのカードプールの印象と、この赤青に決めた理由を伺っていこう。
――赤青を選択されました。他にも迷ったカラーコンビネーションもあったようですが、いかがでしたでしょうか?
中村「《サンドワームの収斂》があるけど、あまりパッとしない緑、粒ぞろいだけど、粒しか無い、しかも若干カードが足りない白、黒は弱い。ということで、赤青はわりとすんなり決まりました。赤白にタッチで《蝗の神》というのも並べてみましたが、カードが足りませんでした。」
――赤青とすることは決まったところで、さらに悩まれたりしたポイントはどこでしょう。
中村「《かすむ刀剣》が2枚入っているところが、どうも納得行かないですね。結局は入れましたが。《戦炎の投槍手》が入っている関係で、2枚の《かすむ刀剣》を入れないと、インスタント・カードが足りないんですよね。仕方なしって感じです。」
デッキリストの提出を終えた後で、同じく作業を終えた八十岡 翔太に意見を聞く。
八十岡「《戦炎の投槍手》のために《かすむ刀剣》を増やすのは、無いでしょ。本末転倒。《花崗岩のタイタン》、《川蛇》あたりを入れるほうがデッキパワー上がって良いと思う。」
八十岡とともにスリープイン・エリアでデッキ構築に取り組む中村 |
――目標はどれくらいのラインでの初日突破でしょうか。
中村「この環境のカードのパワーがどれくらいなのかがよく分からないのですが、2敗するかもしれないし、1敗で乗り切れるかもしれないというところでしょうか。」
――頑張って初日上位で通過してください。ありがとうございました。
そして、第5回戦。フィーチャーテーブルに中村を筆頭としたトップ・プロが集結する。
- 行弘 賢(東京) vs. マーティン・ジュザ/Martin Juza(チェコ)
- エリック・フローリッヒ/Eric Froehlich(アメリカ) vs. パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosa(ブラジル)
- アレクサンダー・ヘイン/Alexander Hayne(カナダ) vs. ヨエル・ラーション/Joel Larsson(スウェーデン)
- 中村 修平(京都) vs. ブライアン・ブラウン=デュイン/Brian Braun-Duin(アメリカ)
かつて、こんなに豪華なプレイヤーに埋められるフィーチャーテーブルがあったであろうか? プレイヤーの名前が読み上げられるたびに、会場内にどよめきが起こる。
熱と緊張感で異様な雰囲気の中、第5回戦での中村の様子を簡単にお伝えする。
第5回戦:中村 修平(京都) vs. Brian Braun-Duin(アメリカ)
中村にカバレージでの記載のために、署名と住まいの記述を求めると、住まいのところに、やや照れくさそうにしながら、「Kyoto」と。京都で生まれ育ったプレイヤーとしての矜持であろう。
ゲーム1、土地が2枚で止まったブラウン=デュインに対して、軽快にビートダウンを続ける中村。《呪文織りの永遠衆》、《血水の化身》がブラウン=デュインのライフを削り続ける。
《エイヴンの葦原忍び》も戦線に加わり、ブラウン=デュインが《気性の荒いクーズー》をブロッカーとして用意しても何のその、空からの攻撃を続けそのままゲーム1を先取した。
中村 1-0 ブラウン=デュイン
中村は、八十岡と相談していたとおりの修正をデッキに施す。
しかし、ゲーム2、ゲーム3と、ブラウン=デュインのレアパワーが炸裂する。《蝗の神》、《熱烈の神ハゾレト》を擁するブラウン=デュインのデッキパワーに追いつくことができず、これを連続で落とし、残念ながら敗北してしまった。
中村 1-2 ブラウン=デュイン
中村は「今日も早く帰れそうかな」と軽口を叩きながら、フィーチャーマッチ・エリアを後にする。この力の抜けようこそが、中村が長くトーナメントシーンで活躍し続け、世界一マジックをプレイし続けるまで登り詰める秘訣なのかもしれない。
RESULTS 本大会の対戦結果・順位
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