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グランプリ・千葉2018

インタビュー:瀧村 和幸 ~リミテッドは心技体、それはまるで相撲~
「リミテッドにはマジックの基礎が詰まっている」……殿堂プレイヤー・八十岡 翔太にそう言わしめるフォーマット、リミテッド (シールド+ドラフト)。
デッキ構築技術、戦闘技術、サイドボード技術など、マジックにおける様々な基本技術の総合力が問われるこのフォーマットにおいて、有り余る想像力を駆使して勝利を重ねる男がいた。
ゴールドレベル・プロ、瀧村 和幸。
その深遠なる思考は、もはや私たちの考えるありきたりなロジックの及ばぬ地点にあると考えられる。何せ、少なくともシールドにおいてはおよそアンプレイアブルなカードと目されていた《幽体化》を駆り、シールド初日全勝を果たしたのだ。
そのあまりに鋭角な決断は、一体どのような思考のメカニズムによって引き起こされたものなのだろうか。そして瀧村のリミテッド観とは。瀧村本人にインタビューしてみることにした。

――今回は瀧村さんに、瀧村さんの考えるリミテッドの技術というものと、それを鍛える方法について話を伺えればと思っております。
瀧村「よろしくお願いします」
――その前にどうしても聞いておきたいことがあって、瀧村さんはよく「マジックは相撲」「ドラフトは相撲」といった趣旨の言葉を仰っている気がする (?) んですが、これは具体的にどういう意味なんでしょうか?
瀧村「まずリミテッドは基本的に寄り切りとか押し出しが強いゲーム、というのが前提としてあります。あとリミテッドは相撲と一緒で『心技体』が大事なんですよね」
――なるほど。全然なるほどじゃないけど、ここはなるほどと言っておきましょう。それで「リミテッドは」ということは、たとえばスタンダードはそうではないと?
瀧村「スタンダードはむしろ心を殺すゲームのような気がしますね。技もそこまで重要ではなく、やはり体、すなわちデッキが大事なフォーマットかなと思います」
――瀧村さんの言うマジックにおける心技体とは、それぞれどういった概念を指しているんでしょうか?
瀧村「心とはつまり強い精神力ですね。心を鍛えれば、カード単体の評価とシナジーの評価を峻別し、正確なカードプールを見ることができます。逆に心が弱いと、乱雑なカードの集まりをデッキとして組んでしまう。全体を見ることが必要なわけですね」
――ははあ。では技、そして体とは?
瀧村「技とはその名のとおり、デッキ構築の技術やプレイの技術を指します。体は先ほども言いましたがデッキそのものですね。この3つはどれが欠けてもダメで、3つのバランスが重要というのが、リミテッドが相撲たる所以です」
――心技体が重要というのは、おぼろげながらわかりました。では、マジックにおける心技体を鍛えるにはどうすればいいんでしょうか?
瀧村「まずは心を鍛えることです。ブースタードラフトなどはなあなあでやってしまいがちですが、どういったカードがどういった状況で機能するのか、またはしないのかという、心の引き出しを増やす感覚でプレイすることが重要です。あとは瞑想も効きますね。僕もシャワーを浴びているときとかによく瞑想するんですよ。やまけん (山本 賢太郎) とかあんちゃん (高橋 優太) もグランプリのラウンド間などによくやってるじゃないですか、瞑想」
――あれは普通に寝て体力回復してるのかと思いますが……
瀧村「いや、きっと瞑想ですね。集中力を自在に引き出せるようにならないと、いざというときに正確な判断ができなくなりますからね」

――瀧村さんは前回のプロツアー『ドミナリア』でプロツアー『戦乱のゼンディカー』以来2度目のトップ8に入賞されましたが、これは瀧村さんの心技体が成長したから、ということなのでしょうか?
瀧村「いえ、成長とかはあまり感じないですね。『あ、打ったら入ったなぁ』という感覚です。プロツアー『戦乱のゼンディカー』のデッキは間違いなく金属バットだったんですが、この間のプロツアー『ドミナリア』のデッキは、今振り返ってみると木製くらいのバットだったかもしれませんし」
――なんかたとえが相撲から野球に切り替わってますけど、バットが変わってもスタンドに入るようになったのなら、それはバッターの実力が上がったからだと考えられるのでは?
瀧村「もちろん成長するための努力は日々しているので、自分で感じられないだけで成長はしているのかもしれません。私の場合はMagic Onlineでの練習を取り入れるようになったことが一番大きな変化ですね。おかげでドラフトの実力も大きく底上げされたと思います」
――今回シールドデッキに《幽体化》を投入することができたのも、そうした努力があればこそということですよね
瀧村「もちろんそうですが、あれはどちらかというとリミテッドの王道、寄り切りと押し出しではないんですよね。リミテッドでは通常、強いカードを強く使うのが勝率が一番高い方法になるんですが、M19(『基本セット2019』)ドラフトは非常に受けづらく、攻めることがとても大事な環境なので、そういった環境の中での抜け道にあたる戦略なんですね」
――じゃあ《幽体化》は相撲で言うと何なんですか? 猫だまし?
瀧村「いや、猫だましほど痩せてはいないです(笑)。かち上げてその隙に倒すイメージですね」
――「よくわかりま (せんで) した、ありがとうございました」
「心を鍛える」「瞑想」「打ったら入った」「かち上げ」……およそマジックの記事とは思えない単語が並ぶ結果となったが、瀧村がこのゲームにおいて所与のものとして捉えている概念はそういった新言語を介してしか伝えることができない高次元のもの、ということなのかもしれない。
ただ、ひとつだけ言えることがある。それは、瀧村はリミテッドに対して非常に真摯に向き合っており、そしてだからこそ普通なら検討しないような選択肢の中から奇跡のような可能性の粒を拾い上げることができている、ということだ。
必要なのは、全体を見ることができる強い心。それを涵養することで、瀧村のように卓越したリミテッドスキルを身に付けることができるということなのだろう。
――大丈夫かな、この記事……
瀧村「いやいやいや、そっちが『相撲でたとえて』って言ったんでしょ!『絶対わけわかんなくなるからやめよう』ってだから言ったのに!」
――一応最後に確認なんですけど、リミテッドは相撲で、スタンダードは相撲じゃないということは、モダンは相撲じゃない、ということで合ってますか?
瀧村「いや、モダンは相撲ですよ。デッキ選択の段階で、強い心が必要になるじゃないですか」
――なるほど。ひとまず結論としていま私は、この記事への反応を受け取るために強い心が必要になりそうです。
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