環境最強と目され、参加者の3人に1人以上が使用していたイゼット果敢に対し、ソリューションとも言うべきオルゾフ・ピクシーを持ち込んだ長尾選手。決勝ラウンドでは、1ゲームも落とすことなく（しかも3試合とも後手で！）3つのイゼット果敢を粉砕しました。

　大会終了後、簡単にお話を伺いました。

 

――まずはプロフィールからお伺いしたいのですが、マジックはいつ始めましたか？

長尾「始めたのは中学校くらいですね。『ジャッジメント』『オデッセイ』くらいの頃です。ほかのカードゲームをやっていて、ショップでマジックをやっているのを見かけて、やってみようと思った感じです。昔いたお店には、八十岡（翔太）さんとか来てましたね」

――えっ、神奈川のお店ですか？

長尾「そうです。当時のけっこう強い人たちが、たくさんお店にいたと思います」

――その頃は競技的というより、カジュアルに遊んでいたんですか？

長尾「いや、ふつうに負けたくないから強いデッキ使うって感じで（笑）。あとはPWC（草の根大会）とかにずっと出ていて。実況のnage（斉田逸寛）さんとか、BIGsの中道（大輔）さんとか、そのへんの人たちとずっとやってきた感じですね」

 

――PWCのコミュニティで、古くからのお知り合いがたくさんいらっしゃるということですね。それから今までずっと、マジックを続けてこられた？

長尾「いや、大学時代はそんなにやってなくて、卒業してからまたやり始めました」

――プロツアーの出場経験はありますか？

長尾「ないですね」

――今回、世界選手権の権利に加えてプロツアーの権利も獲得されましたが……。

長尾「そうなんですよね……ちょっと2回仕事を休むというのは難しそうで、世界選手権のほうだけはなんとしても、というふうにしたいなと」

――それは仕方がないですね。普段の調整はどのようにしているのでしょうか？　お仲間と？

長尾「最近はもりしょー（吉森奨）さんが仕切ってるコミュニティに入らせてもらったりしてるんですが、今回は完全に個人で、『MTGアリーナ』でずっと回し続けてました。ある程度BO1で勝てるデッキにしたあとで、勝てないデッキへの対策をサイドボードに入れて行くような感じで作ってます」

――へえー、先にBO1からという作り方なんですね。とすると普段は『MTGアリーナ』がメインなんですか？

長尾「いや、テーブルトップでも普段から大会に出ていますし、『MTGアリーナ』もどちらもやります」

 

――チャンピオンズカップファイナルへの権利は何で獲得されましたか？

長尾「3月末ごろのエリア予選で、その時はオルゾフ・ブリンクでした。そのデッキを渡したまわりの人たちも、何人か抜けていたような感じでしたね」

――その後新セットの加入を経て、今回オルゾフ・ピクシーになった理由は？

長尾「慣れているデッキなのと、イゼット果敢に対して有利が取れそうなデッキかなと思ったので。イゼットに当たり続けることを祈った結果、うまく当たりました（笑）」

――イゼットが絶対多いはずだと思っていらしたと。

長尾「最低20％はいるだろうと思っていました。その上で、赤単に対しても一定の勝率があるデッキなので。ただ、ドメインはどうにもならない。全知はまだサイド後どうにかできるんですけど、ドメインだけはサイドに有効なカードがなくて、当たらないのを祈るだけでした」

――イゼットが倒してくれるだろうと。そして実際、当たらなかったわけですね。イゼットにはどれくらい当たったんですか？

長尾「予選ラウンドは……イゼットには4回当たって全部勝って、あとは赤単2回、グルール高揚、ジェスカイ眼魔、全知とかでしたね。勝敗は1日目が6-2で、2日目が3-0-1です。ドメインに当たらなかったし、あんまり当たりたくないデッキには当たらずにすんだかなと……一番無理だったのは細川（侑也）さんのティムールコンボで、あれもどうにもならなかったです」

――デッキ公開制の大会なので、そのための対策はありますか？

長尾「1枚だけ入っている謎のカードたちがそうです。特に《クチルの側衛》。全知と眼魔に対して強いカードです。これをトップデッキして、相手の《全知》を妨害してそのまま勝ったという試合がありました。そういうのが散らしてあれば相手も警戒せざるを得なくなるので」

 

――なるほど。そういった点もうまくいって、優勝に結びついたと。

長尾「うーん、サイドボードはだいたい合ってたかなと思いますが、今回はとにかく運が良かったというのに尽きます」

――配信のインタビューでも仰っていたように、バブルマッチで引き分けた対戦があったために、決勝ラウンドでイゼットにだけ当たることになったという当たり運もありましたね」

長尾「そういうのも含めて、全部ラッキーでした。ツイてました」

   

――年末の世界選手権に出られることになりましたが、意気込みなどありますか？

長尾「まあ、やれることをやるだけですね。それよりは、この場で勝てたのが純粋にうれしいという感じです」

――はい、今回は大変おめでとうございました！

 

　長尾選手は古くからのプレイヤーで、今大会で実況をつとめた斉田さんとも長い付き合いです。いわく、「楽しんでマジックをやり続けていたら、自然に結果がついてきたというタイプ」だそう。まさに「好きこそものの上手なれ」。大きな目標を掲げるのではなく、目の前の試合をひとつずつ楽しみながら勝てればいいという自然体の姿勢、ほどよい距離感こそが、優勝へと導く要因だったのではないでしょうか。

　というわけで、チャンピオンズカップファイナルのシーズン3はこれにて終了となりました。ですが、6月には『ファイナルファンタジー』とのコラボ、プロツアー、スポットライトシリーズなどが立て続けにやってきます。また次のイベントでお会いしましょう！