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チャンピオンズカップファイナル シーズン3ラウンド3

決勝:植松 亮志(神奈川県) vs. 半藤 進之介(北海道) ~黒の時間~
総勢320名が参加したジャパンスタンダードカップ:『タルキール:龍嵐録』(以下、ジャパンスタンダードカップ)。大方の予想通り、決勝ラウンドに進んだイゼット果敢は5名と半数以上を占めていた。まごうことなきトップデッキであり、その早さと継戦力から形成される強さは誰もが手に取って使用したいと思わせるデッキである。

遥々北海道より参加した半藤 進之介はまさにこのイゼット果敢を使用し、途中引き分けを挟んだものの、残りを全勝した。昨日のチャンピオンズカップファイナル シーズン3ラウンド3(以下、チャンピオンズカップファイナル)は初日落ちしてしまったとのことだったが、その経験値が生きたかたちだ。北より来る精鋭は最強デッキを手に、ジャパンスタンダードカップの王座へと手をかけようとしている。
だが、そのイゼット果敢を待ち受けていたのは、突如として現れたメタデッキ黒単デーモンである。
イゼット果敢が攻に秀でているならば、黒単デーモンは守……のみならず返す刀で致命傷を与えるだけの攻も密かに併せ持つ万能感のあるデッキ。まさにミッドレンジの真骨頂といえるだろう。

「ジャパンスタンダードカップに参加するためにきました」という植松 亮志は、メタゲームをしっかりと読み込んだ最先端のデッキを持ち込んできた。イゼット果敢を狩るために存在するこのデッキは予選ラウンドを全勝(ID含む)という結果で示し、スイスラウンド1位通過をプレゼントしてくれた。
両者が喉から手が出るほど欲しかった先手は、植松が手にしているのだ。
これより始まるは最精鋭と最先端のデッキによる対戦。自身の名をジャパンスタンダードカップへと刻むため、両者が激突する。
ここはジャパンスタンダードカップ、競技マジックの原点にして新たなタイトルとなるべき場所である。
さぁ、最後の一戦を始めよう。

ゲーム1
《嵐追いの才能》のカワウソトークンと《切り崩し》の交換から、植松は《大洞窟のコウモリ》で手札を検閲する好スタート。だが、半藤の手札も負けてはいない。
《洪水の大口へ》
《食糧補充》
《コーリ鋼の短刀》
《噴出の稲妻》
土地2
という高カロリーハンドを公開し、選択を迫る。植松は素直に《コーリ鋼の短刀》をキャッチ。

半藤が土地をおくのみでターンを終えると、返すターンに植松は《大洞窟のコウモリ》2枚目、さらに《強迫》を続ける。
この手札破壊3連打には流石の半藤も参った。すべてを奪われる前に動かざるを得ない。レスポンスで《洪水の大口へ》と《噴出の稲妻》でボードをクリアにし、《コーリ鋼の短刀》を取り返す。
植松は《食糧補充》を選択し、リソース源を経つと同時に、後に自身がプレイする《黙示録、シェオルドレッド》に対する回答へのアクセスを遮断する。
半藤は待望の1マナ域である《手練》をトップデッキし、《コーリ鋼の短刀》から連続して唱え、すぐさまモンクトークンを生成し、ダメージレースをスタートする。
植松は予想通りに《黙示録、シェオルドレッド》をプレイし、ライフの供給と同時にボード対するプレッシャーをかけていく。ダメージレースは水面下で進行しており、植松19-15半藤。
半藤は血を流しての《選択》、そして《嵐追いの才能》でモンクトークンを追加しつつ、2体でアタック。もちろん、赤マナはアンタップ状態で、だ。

植松も《巨怪の怒り》を警戒し、ブロックはせず果敢込みで5点のダメージ入り残るは植松14-13半藤。
しかし、ターンが返ると一気にゲームが動き出す。植松が再度タップアウトでプレイしたのは《スピードデーモン》!生きたドローエンジンは《黙示録、シェオルドレッド》に反応し、ライフまでも供給する。
巨大なブロッカーが2面待ち受ける場に対し、半藤は《僧院の速槍》を追加して4体でアタックを宣言。ここで植松はライフと果敢の数値を見比べて考慮に沈む。ライフは17と十分にあるが、残る2マナからどんなアクションが飛び出すのか。《巨怪の怒り》あると仮定したとして、ライフは残るかなど。
結果《スピードデーモン》で装備付きのモンクトークンをブロック。予定調和に半藤の手札から《巨怪の怒り》が飛び出し相打ちに。すり抜けた3体のクリーチャーが果敢のバックアップを受けて6点のダメージを刻み、残るは11に。
植松は《大洞窟のコウモリ》で最後の手札である《ドレイクの孵卵者》を奪い、ついに《黙示録、シェオルドレッド》をアタックへ送り出す。たった一度の攻撃で半藤の残るは6へ。
そして第2メインに《ドロスの魔神》をプレイする。そのカードパワーでもって強引に、わずか1ターンで攻守を入れ替え、ゲームに幕をひきにきた。
半藤の場に4体のクリーチャーはいるものの、手札は先ほど引いた1枚のみ。モンクトークン2体のみでアタックし、《大洞窟のコウモリ》がチャンプブロックしたところで、投了の代わりに手札が土地のみであることを公開したのであった。

序盤の手札破壊が勝負を分け、重量級クリーチャーたちだが一気にボードを制圧し返した。
半藤「あの《強迫》、強かったなぁ」
植松 1-0 半藤
ゲーム2
2ターン目には《コーリ鋼の短刀》が着地を果たすと、先手の利を生かして《手練》、《噴出の稲妻》で早くもモンクトークンを生成。植松は手札から除去を切る。
返すターン、植松はダメージレースに滅法強い《カルシの帰還者》をプレイ。
半藤は《選択》から《声も出せない》で《カルシの帰還者》を無力化しつつ、再度《コーリ鋼の短刀》を誘発させる。
対して植松はゲーム1同様に《黙示録、シェオルドレッド》をプレイ。
ターンが返り、ライフは植松16-18半藤。半藤は《轟く機知、ラル》をプレイし戦線を横へ広げる。つまり、《黙示録、シェオルドレッド》に対する除去はなかったのだ。
植松は《黙示録、シェオルドレッド》を《轟く機知、ラル》へと差し向けるが、忠誠度が1残ってしまう。

半藤は《手練》から回答を求め、ここでめくれたのは《轟く機知、ラル》と《精鋭射手団の目立ちたがり》。後々のことを考え《轟く機知、ラル》の2枚目を手札へ加える。
半藤は悩みながらも2体でアタックし、植松は無力化されていた《カルシの帰還者》でブロック、3点抜けてライフは植松13-16半藤。

ここでリスクを承知で《陽背骨のオオヤマネコ》をプレイし、ライフを植松12-11半藤とする。植松はこのエンドに《魂石の聖域》をアクティベート。
さらに自身のアップキープに《シェオルドレッドの勅令》で《陽背骨のオオヤマネコ》を処理、《切り崩し》でブロッカーを対処すると、2ターンがかりで《轟く機知、ラル》を落とす。

半藤は《轟く機知、ラル》プレイから《嵐追いの才能》。《コーリ鋼の短刀》がモンクトークンを生成し、《轟く機知、ラル》へ忠誠度カウンターが置かれる。これによりカワウソ4、モンク2と戦場はトークンであふれかえっている。植松は10点分のダメージを通し、残るは3に。だが、これですべてのリソースをはききってしまった。
さきほどのターンと同じように、植松は半藤のエンドに2枚目の《魂石の聖域》を起動し戦場のダメージソースを10とする。

返すターン、植松は《カルシの帰還者》を《魂石の聖域》を対象に起動。2体のみでプレイヤーを攻撃する。
半藤は再三ブロックを考えるが、返すターンに何かしら引くことを考えスルー。
《黙示録、シェオルドレッド》の効果も相まって残ライフは2。引いたカードは────
《食糧補充》!
5枚の中にはたして《巨怪の怒り》はあった。慌てず騒がずまずは《嵐追いの才能》で2度目の果敢を誘発させ、7体のクリーチャートークンを攻撃へと送り出す。
土地ばかりを引き続けていた植松は《巨怪の怒り》を見るまでもなく敗北を認めた。

植松 1-1 半藤
半藤「《黙示録、シェオルドレッド》が強すぎる」

ゲーム1、2ともに《黙示録、シェオルドレッド》がイゼット果敢の攻撃に待ったをかけ、ゲームをスローダウンさせる。キークリーチャーであり、その前にクロックが残せるか、安定して定着するかがカギとなりそうだ。
勝負は序盤。黒単デーモン側の動きがややにぶければイゼット果敢が押し込み、適切にさばけばゲーム1と同様の結果となる。
ゲーム3
半藤「黒単お好きなんですか」
植松「いや、初めてです」
一同「え!?」
そう、我々は大いに驚かされた。まるで熟練者のごとく黒単デーモンを操る植松のプレイに。彼のプレイにブレはない。
両者ともキープを宣言し、最終戦は始まった。初動は半藤の《精鋭射手団の目立ちたがり》を計画から。
半藤は2ターンに渡り《精鋭射手団の目立ちたがり》を計画し、3枚目の土地こそないものの、見えないプレッシャーをかけていく。
植松「裏目ったなぁ」

おそらく単体除去ばかりでキープしていた植松にとって、この計画2連打は想定外。安易にフルタップしようものなら、呪文の連鎖によりあっという間にライフを削りきられてしまう。計画された《精鋭射手団の目立ちたがり》が、植松の動きを縛りマナを残さざるをえない。
幸いだったのは植松のマナが止まらずに伸び続けたことだろう。4ターン目に2マナ残しつつ、《大洞窟のコウモリ》をプレイ。公開されたのは、
《巨怪の怒り》2
《噴出の稲妻》2
《選択》
《陽背骨のオオヤマネコ》
と高カロリーな6枚。半藤は先のターンに《選択》で安易に土地を求めず確実に計画する道を選んだわけだ。ここから《噴出の稲妻》をキャッチ。

続くターンに《選択》をプレイするも3枚目の土地はこず。《大洞窟のコウモリ》のアタックに対し《噴出の稲妻》をプレイ。

5マナまで伸びた植松は再度《大洞窟のコウモリ》で、今度は《手練》をキャッチ。
3枚目の土地を置き、ターンを返す半藤。
《大洞窟のコウモリ》をアタックへ送り出すも再度《噴出の稲妻》が飛ぶ。
植松はこの2枚目の《噴出の稲妻》をプレイされるのを待っていた。3マナ残して《分派の説教者》が安全に着地を果たす。残る手札は3枚だ。
半藤「《分派の説教者》出てたら……行くしかないか!」
本当は《食糧補充》で十分にリソースを伸ばし、潤沢な土地と手札を得たかった。しかし、《分派の説教者》が出たからには攻め込むしかない。遂に計画は解かれた。

2体の《精鋭射手団の目立ちたがり》が《手練》に反応するも、スタックして《喉首狙い》。確実にダメージソースを減らす。これで植松に残るは1マナのみ。
これにより《精鋭射手団の目立ちたがり》が《切り崩し》の圏外へと脱したため、半藤は呪文を連鎖的にプレイしパワーを上げていく。最終的に《巨怪の怒り》を2枚ともプレイし、一挙12点!わずかワンパンで植松の残ライフを8とした。

しかし、《分派の説教者》がアタックしだすと風向きはゆっくりと、それでいて着実に変わりだす。
半藤が《手練》をプレイしたのみで終えると、そのエンドに植松は《魂石の聖域》をアクティベート。ターンが返っても2体目はクリーチャー化せず、慎重にマナを残しながら攻撃へ移ろうとする。
半藤「攻撃クリーチャーの指定どうぞ」

悩みながらもコウモリトークンへ《噴出の稲妻》をプレイするも5点入り残ライフは植松8-10半藤。そう、半藤は引き込んでいたのだ、3枚目の《噴出の稲妻》を。2枚目の《大洞窟のコウモリ》がいなければ対処されていたのは《分派の説教者》だった。
ここで《コーリ鋼の短刀》が駆けつけるも時すでに遅し。《洪水の大口へ》で《分派の説教者》を手札へ追いやりつつモンクトークンを生成するが、植松の手札から除去がこぼれ落ちる。さらに《魂石の聖域》2体がダメージを刻み、残るは3。
半藤は《陽背骨のオオヤマネコ》をプレイし、投了の意志を示した。

植松 2-1 半藤
ジャパンスタンダードカップ:『タルキール:龍嵐録』は植松 亮志が王者となった。最先端の黒単デーモンを淡々とプレイする彼には、自然と王者の風格が備わっていた。
勝者が決まると同時に、表彰式が始まる。さきほどまでの激闘が嘘かのように熱は急速に冷めていく。観覧者は祝福の言葉を投げかけつつも足早に会場を去り、そして閉場の準備が行われていく。
今日が終わり、明日がやってくる。特別な1日が過ぎ去り、日常へと戻っていく。
夢のような時間は誰にでも訪れるが、同時にその終焉も味わうことになる。歓喜、興奮、昂揚、そしてちょっぴりの悔しさと寂しさ。
時間とは誰にとっても平等で、有限で、だからこそその時その瞬間を、目一杯楽しもうとする。
いや、勝者だけではない。敗れはしたものの、半藤 進之介も満ち足りた時間を過ごしたはずだ。優勝にこそ手は届かなかったが、全11回戦を戦い、ジャパンスタンダードカップ:『タルキール:龍嵐録』のファイナリストとなったのだから。その横顔は、悔しさよりも喜びにあふれていた。
そして戦いの舞台は次なるステージであるチャンピオンズカップファイナルへと移っていく。王者である植松をはじめ、権利獲得者は挑戦者として、次のチャンピオンズカップファイナルへと挑むことになる。
何でもない日常に、また、少しだけ刺激的な時間がやってくる。その貴重な体験を味わえる瞬間を自ら勝ち取ったのだ。
ここはジャパンスタンダードカップ、競技マジックの原点にしてチャンピオンズカップファイナルへの通過点。そして。
刺激的な非日常を味わえ、プレイヤーに特別な体験を届け、新たなタイトルとなるべき場所なのだから。
勝者を祝福し、優勝者の名を未来永劫ここに刻もうではないか。

「ジャパンスタンダードカップ:『タルキール:龍嵐録』」、優勝は植松 亮志!!
おめでとう!!
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