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チャンピオンズカップファイナル シーズン3ラウンド3

デッキテク:田瀬 裕也のオルゾフ・ピクシー ~「いっぷうがキーカード」~
チャンピオンズカップファイナル シーズン3ラウンド3(以下、チャンピオンズカップファイナル)の本戦への最後の権利をかけた大会が5月2日に開催され、4名のプレイヤーが過酷な戦いを通過した。
大本命であるイゼット果敢は当然として、対抗馬のアゾリウス全知、オンラインで密かに増加中のオルゾフピクシーだ。イゼット果敢に対する絶対的メタカード《真昼の決闘》の姿こそいないものの、アゾリウス全知とオルゾフ・ピクシーはそれに勝るとも劣らないメタカードを採用している。《一時的封鎖》である。
マナ総量に制限こそあるものの、アグロ全般のボードを一掃し、ゲームをリセットしてくれる。パーマネント全般を巻き込むため、イゼット果敢の《コーリ鋼の短刀》に対しても非常に効果的なカードである。
しかし、《養育するピクシー》を擁するデッキといえば、オルゾフよりもエスパーがメジャーである。なぜこの二択からオルゾフを選択したのだろうか。
ならば本人へ聞くしかあるまい。2日のラストチャンス予選を抜けて本戦への参加権利を獲得し、目下3連勝と好調のプレイヤーであり、オルゾフ・ピクシーを使用する田瀬 裕也(東京都)に。過去にはプロツアー『指輪物語』への参加経験もある折り紙つきの競技マジックプレイヤーだ。

今回はエスパーとは一味違う、オルゾフ・ピクシーの正体を見ていこう。
4 《コイロスの洞窟》 4 《ブリーチボーンの境界》 4 《平地》 4 《沼》 4 《秘密の中庭》 3 《眠らずの城塞》 1 《薄暗い裏通り》 -土地(24)- 4 《分派の説教者》 4 《陽光真珠の麒麟》 4 《養育するピクシー》 2 《跳ねる春、ベーザ》 1 《第三の道のロラン》 1 《黙示録、シェオルドレッド》 -クリーチャー(16)- |
2 《失せろ》 4 《一時的封鎖》 4 《望み無き悪夢》 4 《逃げ場なし》 3 《勢い挫き》 3 《不浄な別室 // 祭儀室》 -呪文(20)- |
2 《失せろ》 2 《安らかなる眠り》 2 《強迫》 2 《鋼と油の夢》 2 《除霊用掃除機》 1 《不気味なガラクタ》 1 《不浄な別室 // 祭儀室》 1 《機械の母、エリシュ・ノーン》 1 《第三の道のロラン》 1 《黙示録、シェオルドレッド》 -サイドボード(15)- |
オルゾフ・ピクシーとは
──「オルゾフ・ピクシーとはどんなデッキでしょうか」
田瀬「エスパー・ピクシーから青抜き、デッキ全体を重めにした構築です。《養育するピクシー》で《跳ねる春、ベーザ》、《不浄な別室 // 祭儀室》などを再利用してアドバンテージを稼いでいくデッキです」
──「田瀬さんは昨日のラストチャンス予選を抜けての本戦参加ですよね」

田瀬「昨日はスイス7回戦を6-1、決勝ラウンドを1回戦に勝利して権利を獲得しました」
──「本戦も3-0と好調ですね」
デッキ詳細
──「デッキの強みとしてはどんな点があげられますか」
田瀬「キークリーチャーは《分派の説教者》。マナ総量2以下のカードを"いっぷう"で封じ込めて、3以上で戦います。メインデッキから《分派の説教者》と"いっぷう"を採用できるのが青との違いであり、強みです。実態はピクシー要素を残したミッドレンジですね」
──「いっぷうとは?」
田瀬「《一時的封鎖》(いちじてきふうさ→いっぷう)の略称です。自分独自の略称かもしれません」
田瀬「エスパー・ピクシーと比較すると打点は伸びなくて、キルターンは遅く、ゆっくり目なデッキです。除去を挟みながらダメージレースをするよりは、除去を使いまわしてボードを綺麗にしてからゆっくりと攻撃へ転じる感じですね。また、エスパー・ピクシーとの違いはドロー要素の薄さです。こちらは引いたカードを使いましてゲームプランを練り上げていく必要があり、マリガンが重要となります。そのためデッキ公開性はキープ基準に直結し、大きなアドバンテージとなっています」
デッキリストの変化と工夫
──「元のリストから工夫した点などはありますか」
田瀬「ベースはボローニャで開催された地域予選のオルゾフ・ピクシーで、その後MO(Magic Online)のスタンダードチャレンジでも好成績を残しているのを確認していました。それらを参考にデッキを構築していますが、サイドボードはジェスカイ眼魔に対して厚めに対策を敷いています。具体的には《鋼と油の夢》×2と《除霊用掃除機》×2、《安らかなる眠り》×2と6枚のカードを割いています」
──「ジェスカイ眼魔というよりも《忌まわしき眼魔》そのものを対策している感じですね」

田瀬「そうですね。そのくらい《忌まわしき眼魔》が厳しくて。地上は《分派の説教者》で止め、飛行クリーチャーなどは《逃げ場なし》で除去できますが、《忌まわしき眼魔》には単体での対処段をもち合わせていません。そのために手札と墓地を対策し、絶対に《忌まわしき眼魔》を着地させないようにしています」
デッキ選択の理由
──「このデッキの選択理由を教えてください」
田瀬「自分は直前まで版図大主を調整していたんですが、正直成績がふるわなくて。エリア予選も同デッキで参加したのですが、結局抜けられず。昨日のラストチャンス予選も直前まで版図大主で参加しようかと考えていましたが、友人からストップがかかりオルゾフ・ピクシーへ乗り換えました」
──「版図大主からオルゾフ・ピクシーというと大胆なスイッチですね。きっかけはあったのでしょうか」

田瀬「本戦のメタゲームを予想するにイゼット果敢、赤単アグロが多いと思いました。版図大主は赤単アグロがしんどく、必敗レベルでして。イゼット果敢に対してはまだ相性改善を図れたものの、それ以前に色マナを確保したり、ある程度マナを伸ばしたり、きちんと除去を引くなど自分との戦いもあります。持ち込むにはハードルが多く感じたため、デッキの変更を決めました」
田瀬「エスパー・ピクシーは候補にあがりましたが、3色だと色事故がしんどくて。2色のオルゾフ・ピクシーに決定しました」
主要なデッキとの相性
──「今回のメタゲームブレイクダウンの上位デッキとの相性を教えてください。まずはイゼット果敢からお願いします」
田瀬「イゼット果敢はいっぷう(《一時的封鎖》)が明確なキープ基準になります。次点で《分派の説教者》。イゼット果敢はいっぷうや《分派の説教者》を対処できないため、メインデッキはかなり有利となります。いっぷうで攻守を入れ替え、《望み無き悪夢》を使いまわし手札にもダメージを与えていきます。」
田瀬「サイドボード後は《轟く機知、ラル》や《陽背骨のオオヤマネコ》対策に《失せろ》を複数枚採用しています」
──「ジェスカイ眼魔はいかがでしょうか」
田瀬「メインは《忌まわしき眼魔》が着地した時点で必敗、サイドボードで対策して勝負といった感じです。《機械の母、エリシュ・ノーン》は主に版図大主用のカードですが、ジェスカイ眼魔に対しても副次的な対策となります。《蒸気核の学者》や《光砕く者、テルサ》など戦場に出たときの効果をもつカードが多く採用されていますから。」
──「では、攻めが早く太いグルール・アグロや赤単アグロはどうでしょう」
田瀬「両方とも有利です。《一時的封鎖》と《分派の説教者》を越える手段を持ち合わせていないためです。今大会はデッキ公開性のため、相手のマナ総量3のクリーチャーの採用枚数でいっぷうでキープするかどうかも考えられるのも良い傾向です。エスパー・ピクシーと違い、ダメージランドがかさ張って負けてしまう心配もありません。そのためサイドボードもほとんど用意していません。《不気味なガラクタ》と《失せろ》くらいですね」
──「解説いただいた以外に意識したデッキはありますか」
田瀬「版図大主やジェスカイ・コントロールのようなゲームレンジの長いデッキは相性悪いです。こちらは《不浄な別室 // 祭儀室》でリソースを伸ばすしかないので。サイドボード後は手札破壊や《第三の道のロラン》でパーマネントを対策し、部屋を安定して維持できるかが焦点となります。あとは《黙示録、シェオルドレッド》次第ですかね」
──ありがとうございました。
イゼット果敢と赤単アグロと環境トップの2種のアグロに強いオルゾフ・ピクシー。得手不得手ははっきりしており、今大会のメタゲームを見る限りは絶好のポジションにつけている。
田瀬はメタゲームを的確に読み解き、キーカードのいっぷう(《一時的封鎖》)をメインデッキに採用したこのデッキを持ち込んだ。2色のため色事故もほとんどなく、《養育するピクシー》で少ないリソースを使いまわすテクニカルな一面を味わえる。
イゼット果敢と赤単アグロに有利なデッキを探している方には最適なデッキといえるだろう。

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