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チャンピオンズカップファイナル シーズン3ラウンド3

戦略記事

デッキテク:平山 怜の「アゾリウス・アーティファクト」 ~《真昼の決闘》を追いかけて2~

富澤 洋平(撮影者:堀川 優一)


 イゼット果敢に対する絶対的メタカード《真昼の決闘》。本稿はその最適解を探していく2回目となる。

 デッキリストを眺めている内に、目に留まるプレイヤーネームがあった。平山 怜である。競技マジックイベントの常連であり、Hareruya Prosである彼は、常日頃から仲間たちとマジックにいそしんでいる。

 MO(以下、Magic Online)上ではrerereというハンドルネームで活動しており、4月末のスタンダードチャレンジでは優勝している。それもメインに《真昼の決闘》が入ったデッキで。

 もしかして思い、今回のデッキリストに目を移すとその予感は的中した。真昼の決闘》がメインボードに4枚採用されている

 

 しかし、ほかは《身代わり合成機》など見慣れぬアーティファクトばかり。一体どんなデッキなのだろうか。

 ならば平山本人に聞くしかあるまい。今回は《真昼の決闘》をメインボードに採用したアゾリウス・アーティファクトについてみていこう。

平山 怜 - 「アゾリウス・アーティファクト」
チャンピオンズカップファイナル シーズン3ラウンド3 / スタンダード(2025年5月3日)[MO] [ARENA]
6 《平地
4 《アダーカー荒原
4 《フラッドファームの境界
4 《金属海の沿岸
3 《
2 《フォモーリの宝物庫
1 《噴水港
-土地(24)-
4 《身代わり合成機
3 《バネ仕掛けの鋸刃
3 《再利用隔室
4 《団結の最前線
4 《編まれた網
4 《アイレンクラッグ
2 《カイラの再建
1 《バジリスクの首輪
4 《危険な罠
4 《真昼の決闘
1 《千の月の鍛冶場
2 《窯焼きの煉瓦
-呪文(36)-
3 《エルズペスの強打
2 《失せろ
2 《審判の日
2 《強情なベイロス
2 《除霊用掃除機
1 《三歩先
1 《否認
1 《喝破
1 《精神迷わせの秘本
-サイドボード(15)-

 

アゾリウス・アーティファクトとは

──「アゾリウス・アーティファクトとはどんなデッキでしょうか」

回転

平山身代わり合成機》を置いてある状況で、《危険な罠》と《編まれた網》を連打し、巨大なフレタン(《火炎舌のカヴー》の略称であり、ここでは除去性能付きのクリーチャーの意)を連打して有利なボードを作っていくデッキですね。3ターン目《身代わり合成機》、4ターン目から構築物・トークンを生成していくのが理想的なムーブです」

──「あまり見慣れないデッキですが、今大会に合わせて一から調整されたのでしょうか」

 

平山「『霊気走破』発売時に一度構築したんですが、その時はアグロに勝てなくて。当時は青黒で今より除去も強かったんですが、やはり《団結の最前線》の加入が大きいですね。かなり動きの感触が良くなりました。アイレンクラッグ》からの《団結の最前線》がこのデッキのベストムーブです」

デッキ詳細

──「ほかの《真昼の決闘》を採用したデッキとの差異としてはどんな点があげられますか」

 

平山「《真昼の決闘》を貼れれば確かにゲームはスローダウンし、イゼット果敢の攻勢は止まります。でもその間に《食糧補充》などでリソースを稼がれて、《洪水の大口へ》でエンチャントをバウンスされてからのワンショットの危険性があります。コントロールなどの遅いデッキにおいてこの傾向は顕著です。単に《真昼の決闘》を設置するだけでなく、その後いかにして自分優位なゲームプランがあるかが重要になります」

──「では、アゾリウス・アーティファクトは《真昼の決闘》設置後、どのようにしてゲームを進めていくのでしょうか」

 

平山「このデッキの場合はゲームが止まった後は《身代わり合成機》で次々に巨大なクロックを生成していきます。攻守を入れ替えて勝ちへ繋げられるのがいいところですね。呪文以外にも起動型能力をもつカードもあり複数行動とれ、テンポ差もひらきやすい構造になっています」

──「《再利用隔室》や《編まれた網》など起動型能力を持つカードもあり、複雑そうなデッキですね」

 

平山「いやいや、それがプレイ分岐も非常に簡単で。次のターンに生存の場合は《身代わり合成機》を設置、負ける場合は除去をプレイと戦場を見てこの分岐を繰り返していくだけです。比較的使いやすい部類のデッキだと思います。《団結の最前線》の加入により再現性と安定性は以前よりも高くなっていますし、セットが発売されるたびに強化されているデッキです」

デッキリストの変化と工夫

──「元のリストから工夫した点などはありますか」

 

平山先日のMOで優勝したデッキリストからはサイドボードを調整しています。以前は追加の除去として《声も出せない》を採用していましたが、《真昼の決闘》との兼ね合いを考えて《エルズペスの強打》に変更しています。審判の日》は版図大主の《機械の母、エリシュ・ノーン》を意識しています」

 

平山「《真昼の決闘》はこのデッキと相性は良いカードですが、メタカードの域は出ません。このデッキはリソースが余るため、効果が薄い相手に引いても1枚程度なら許容できます。今大会はデッキ公開性ですので、それを利用してメインに4枚採用を決めました」

平山「基本的にイゼット果敢とアゾリウス全知以外にはサイドアウトしています。対イゼット果敢だけをみるならば《一時的封鎖》も効果的ですが、《身代わり合成機》とマナ域を被らせないために《真昼の決闘》を優先しました」

──「《再利用隔室》はどのように運用するのでしょうか」

 

平山「《再利用隔室》は《身代わり合成機》の水増しです。《カイラの再建》も《団結の最前線》の水増し。勝敗はいかに《身代わり合成機》を早期に着地させるかにかかっていますので

デッキ選択の理由

──「このデッキの選択理由を教えてください」

 

平山「イゼット果敢は上手くいって五分程度。しかし、イゼット果敢をメタったデッキ、特に《一時的封鎖》を採用している版図大主などに圧倒的に有利な点です。どのくらい有利かというと《永遠の策謀家、ズアー》とダメージレースをして勝てるくらい。《身代わり合成機》の対処手段を少なく、ひとたび定着すれば常に全体除去を強要できます」

 

平山「同じ理由で白系のデッキや黒系ミッドレンジにも強いデッキですね。《身代わり合成機》は中速~低速デッキには滅法強く、メタデッキに強いメタデッキの立ち位置です。イゼット果敢をメタって勝ち上がってきたデッキに有利をとるために選択しました」

主要なデッキとの相性

──「今回のメタゲームブレイクダウンの上位デッキとの相性を教えてください。まずはイゼット果敢からお願いします」

 

平山「イゼット果敢はぶつかり合いだと先行ゲーで、《呪文貫き》があると負ける感じです。そこで《真昼の決闘》を使いゲームをスローダウンさせていきます。その後速やかに《身代わり合成機》へと繋げることで、ダメージを稼いでいきます。即座に《洪水の大口へ》されない限りは、ボードを固めて有利に立ち回れます」

──「ジェスカイ眼魔はいかがでしょうか」

 

平山「《忌まわしき眼魔》の早期着地や多面クロック展開などなければ十分勝負になります。《プロフトの映像記憶》の一点突破に対しても《編まれた網》がありますので。問題はサイドボード後でして」

 

平山このデッキは三人衆と呼んでいる致命的なカードがありまして、《兄弟仲の終焉》と《石の脳》、《機械の母、エリシュ・ノーン》の3種類なんですが、これを採用されているかどうか次第ですね。特に《兄弟仲の終焉》はボードを一掃されてしまうため、厳しいです。相手のデッキの構造上、ケアして立ち回るのも難しく動かざるを得ません。相手のサイドボードのカード次第ですね」

──「では、攻めが早く太いグルール・アグロや赤単アグロはどうでしょう」

 

平山「早ければ早いほどキツイです。テンポ良く《心火の英雄》、《多様な鼠》で負けですから。自分のボード作りと相手のクロックとどちらが早いかのスピード勝負となります」

──「解説いただいた以外に意識したデッキはありますか」

 

平山「ミッドレンジやコントロールなどのゆっくりしたデッキには全般有利です。《身代わり合成機》を誘発させ続けるだけで自然と有利になっていきますので」

 

平山それとこのデッキはどこまでいっても《団結の最前線》デッキなので、対戦相手の前に自分との戦いがあります。極論、《団結の最前線》のめくれ方次第でゲームが決まるといっても過言ではありません。相手にプレッシャーをかけられている場面でも《団結の最前線》頼みとなってしまいますし」

―ありがとうございました。


 イゼット果敢に対する絶対的なメタカード《真昼の決闘》。それは強力な反面、自身も影響を受けるためただ採用しただけでは意味をなさない。採用したうえで、どのような戦略に落とし込むかが重要となってくる。

 平山は《真昼の決闘》を設置した先に、身代わり合成機》による攻守の入れ替え、短期のダメージレースを想定していた。相手の速度を落としつつ、自分はサイズの大きな構築物・トークンを生成し、瞬時にライフを削りきる算段をたてていたのだ。

 《団結の最前線》により再現性と安定性に加えて、爆発力も得たアゾリウス・アーティファクト。プレイも比較的簡単とのことで、構築物・トークンで豪快に戦闘を体験したい方にはぜひお勧めしたいデッキとなっている。

 
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