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チャンピオンズカップファイナル シーズン3ラウンド3

観戦記事

第7回戦:藤吉 学(熊本) vs. 高尾 翔太(神奈川) ~15分の間に起きたこと~

Hiroshi Okubo


 チャンピオンズカップファイナルでは、7回戦終了時点で初日の足切りが行われる。その時点で3敗を喫しているプレイヤーは、続くスイスラウンドに進出することができないのだ。

 トーナメントに残留できるか、あるいはここで終わるかという分水嶺。この重要なマッチアップでフィーチャーマッチテーブルへと呼ばれたのは藤吉 学(熊本)と高尾 翔太(神奈川)の2名だ。

 藤吉は熊本でカードショップ「MUGEN」の経営者でありながら、自身もプレイヤーとして活動する九州の雄だ。マジックの盛り上がりに寄与すべく、今大会主催者であるカードショップ・BIGMAGICとのチーム対抗戦を実施したり、日々精力的にマジックに取り組んでいる。この日も「赤単アグロ」を持ち込み、自らのショップ名をプリントしたTシャツを着用してトーナメントに臨む。

 相対するは、こちらも九州は長崎出身の強豪プレイヤーである高尾 翔太だ。独創的なデッキビルドや調整能力は国内のプロプレイヤーたちからの評価も高く、高尾を一躍有名にしたデッキの一つである「エスパー人間」などは当時から10年以上が経過した今なおファンのいるデッキだ。

 

 そんな高尾の持ち込んだのは、メインデッキから《幽霊による庇護》が採用された「ジェスカイ眼魔」。赤単アグロにとっては鬼門となるカードだが、果たして藤吉は高尾を乗り越えられるのか、あるいは高尾が藤吉を踏み越えて征くのか。2日目進出をかけた大事な一戦が幕を開けた。

藤吉 学(熊本) vs. 高尾 翔太(神奈川)

 
ゲーム1

 この超高速環境において、値千金の先攻を取った高尾。さっそく《シヴの浅瀬》から《略奪するアオザメ》をプレイし、続くターンに《プロフトの映像記憶》をプレイして2/2でクロックを刻み始める。

 

 「ジェスカイ眼魔」は《忌まわしき眼魔》をキーカードとした以前から存在するデッキではあるが、その本質は『霊気走破』や『タルキール:龍嵐録』によって大きく変わっている。《光砕く者、テルサ》やサイクリングカードをはじめとしたディスカード手段の多様化や、《略奪するアオザメ》のようにフィニッシャーを担える軽量クリーチャーの加入により、アグロデッキのようにも振る舞うことができるコンボ・アグロとなっている。

高尾 翔太(神奈川)

 

 対する藤吉は第1ターンにプレイした《心火の英雄》を《岩面村》で強化して攻撃。テンポは悪いがライフでは離されまいと、後攻ながらも食い下がっていく。

 

 しかし、1、2ターンと軽快に動いた高尾の足は止まらない。《光砕く者、テルサ》によって《略奪するアオザメ》が4/4に、さらに《プロフトの映像記憶》の能力が誘発して《光砕く者、テルサ》自身も5/5となり、これらが攻撃を仕掛けたことで一気に藤吉の猶予ターンが減ってしまう。

 《雇われ爪》と《心火の英雄》をプレイする藤吉だが、攻撃は宣言せず高尾に対するブロッカーとして立たせておく。完全に防戦に回されてしまった藤吉に対し、高尾は《蒸気核の学者》をプレイしてディスカードとドローを行い、《略奪するアオザメ》自身の能力と《プロフトの映像記憶》の誘発型能力によってさらに盤面を強化。ブロッカーを意にも介さず攻撃の号令をかける。

 

 高尾からの致命的な攻撃をチャンプブロックで凌いだ藤吉だったが、ここまでの攻防で残るライフはわずかに2点となっていた。あと一度攻撃が通ればゲーム終了だ。祈るようにブロッカーを立て、なんとかゲームを続けようとする藤吉。しかし高尾はその最後の一撃を通すための1枚、《洪水の大口へ》をその手に持っていたのだった。

藤吉 0-1 高尾

ゲーム2

 藤吉は先ほどのお返しとばかりに《心火の英雄》に《巨怪の怒り》をプレイして攻撃。続く第3ターンには流れるように《叫ぶ宿敵》をも並べ、素早く高尾のライフを締め上げていく。

 

 だが、高尾もさるもの。《略奪するアオザメ》、《逸失への恐怖》、《蒸気核の学者》とクリーチャーを並べながら手札と盤面を強化し、赤単アグロを仕留めるキラーカード、《幽霊による庇護》で藤吉の《心火の英雄》を追放。さらに絆魂によってライフ差を縮め、後攻のビハインドを一気に取り戻す。

 

 この絆魂に対し、藤吉は一手送れる形となるも《陽背骨のオオヤマネコ》で高尾のライフ回復を牽制しながら《叫ぶ宿敵》の攻撃で高尾のライフを削る。

藤吉 学(熊本)

 

 ならばと高尾は《幽霊による庇護》のついた6/5の《略奪するアオザメ》のみで攻撃し、さらに追加の《略奪するアオザメ》をプレイしてターンを終える。絆魂によるライフ回復はできないものの、6点クロックは藤吉のわずかなライフの優位を消し飛ばした。

 

 ライフが残すところ3点と、またも苦境に立たされてしまった藤吉は盤面に《熾火心の挑戦者》をプレイし、じっくりと時間を使いながら《熾火心の挑戦者》のみで攻撃宣言を行う。これは高尾の《逸失への恐怖》にブロックされるが、対応して《削剥》で高尾の《蒸気核の学者》を除去し、果敢によってサイズが増えた《熾火心の挑戦者》が《逸失への恐怖》を一方的に打ち取る。

 ライフこそ減らされなかったもののカードアドバンテージを失ってしまった高尾。だが、もはやゲームはカード1枚2枚のアドバンテージ差では覆らない領域まで進んでいた。高尾はその驚異的な盤面に《光砕く者、テルサ》を追加すると、藤吉は自らの敗北を悟り右手を差し出した。

藤吉 0-2 高尾

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