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チャンピオンズカップファイナル サイクル1

観戦記事

第12回戦:河野 融(東京) vs. 辻川 大河(東京) ~噛み合いの末に~

富澤 洋平
 

 チャンピオンズカップファイナルもこの時がやってきた。スイスドロー最終ラウンド、つまりはトップ8進出をかけたバブルマッチの時が。

 トップ8への勝ち残りをかけたマッチへ挑むプレイヤーの名前が呼ばれ、フィーチャーテーブルへ2人のプレイヤーが姿を現す。3敗で並ぶ辻川 大河と河野 融の2人だ。

河野 融(写真左) vs. 辻川 大河(写真右)

 辻川 大河はグランプリメルボルン2018での優勝経験を持ち、プロツアーなどの大規模大会にも複数参加している。ジョニーのお店の契約選手であり、本日もロゴ入りのパーカーを羽織り戦ってきた。今大会の調整仲間を聞くと廣澤 遊太や細川 侑也、加茂 里樹、地元九州の強豪セキ ケイタの名前があがり、オンラインを中心に実施したとのこと。

 対するは河野 融に戦績を聞くと、第28回マジック世界選手権への参加権利をかけたポイントレースにて上位24名に残った経験を持つと教えてくれた。残念ながら世界選手権への参加権利は逃してしまったが、代わりに本大会を含めて3回分のチャンピオンズカップファイナルへの参加権利を手にできたとのこと。

 調整についてはこちらからも豪華な名前が挙がった。平山 怜や小泉 裕真、斉藤 徹ら同年代のプレイヤー、そして井川 良彦や熊谷 陸といったマジック・プロリーグに所属している選手らと研鑚を積んできているのだ。

IDを検討する両者(顔を突き合わせて順位の計算をする姿も、テーブルトップならではの風景だ)

 2人はテーブルにつくとシャッフルの前にID(合意による引き分け)が可能かどうか検討を始める。IDを選択すればトップ8への道を諦めなければならないが、代わりに2人ともプロツアーへの参加権利を手する可能性がある。

 トップ8へはもちろん入りたいが、それと同等か、それ以上にプロツアーへの権利を欲しているのだ。

 だが、検討に検討を重ねた後、どちらともなく「やりましょう」と声が聞こえ、シャッフルが始まった。

 シャッフルする空気も、お互いの視線先にいる対戦相手も、全てがテーブルトップならではの光景だ。デッキを交換してシャッフルを終えると、ダイスが宙を舞う。

 これより始まるのはラクドス・ミッドレンジによるミラーマッチ。果たして、次へと進むのはどちらのプレイヤーか。

ゲーム1

 先手の辻川が《目玉の暴君の住処》から《税血の収穫者》を流れるようにプレイするが、阿吽の呼吸で河野は《致命的な一押し》で応じる。

 瞬時に交換を終えると、次の手も辻川から。《思考囲い》を唱えて河野の手札を丸裸にしていく。公開されたのは、

死の飢えのタイタン、クロクサ

苦難の影

砕骨の巨人

鏡割りの寓話

黙示録、シェオルドレッド

 というもの。濃厚な手札に頭を悩ませるも、ここから《鏡割りの寓話》を捨てさせる。

 ここから河野が地上に《苦難の影》、《砕骨の巨人》を並べ、辻川はミラーマッチのキーカードである《領事の旗艦、スカイソブリン》で返す一進一退の展開。現状、「辻川 16-20 河野」とライフで優位に立っているのは河野だが、2ターンと経たない内に《領事の旗艦、スカイソブリン》が戦場とライフの両方をつめてくる。

 河野の出した結論はさらにクリーチャーを並べてダメージレースによる真っ向勝負。《砕骨の巨人》で攻撃に向かうと《黙示録、シェオルドレッド》が戦場へ。

 辻川は自身のアップキープに血・トークンを生け贄に捧げ、《黙示録、シェオルドレッド》へ《致命的な一押し》を見舞う。自身も《黙示録、シェオルドレッド》を着地させてすぐさま《領事の旗艦、スカイソブリン》へ搭乗する。この過程でライフは6まで落ち込むが最小限のロスで辻川はボードの支配に成功したことになる。

 しかし、河野にとってはこの2点で十分だった。6枚目の土地を置くと、手札のない辻川に対して《死の飢えのタイタン、クロクサ》を提示する。脱出も合わせて瞬時にライフを削りきった。

河野 1-0 辻川

河野 融
ゲーム2

 ゲーム1と同様に、動く辻川と応じる河野の構図は変わらない。辻川が《勢団の銀行破り》、《鏡割りの寓話》と連続してプレイし、河野は《踏みつけ》から《砕骨の巨人》で返す。

 辻川は英雄譚を進めて手札を入れ替えてから《戦慄掘り》でボードをクリアにしつつ、アンタップ状態の土地2枚を並べてターンを返す。ゲーム展開がスローダウンすれば《勢団の銀行破り》分、有利になる算段だ。

 河野の手には《勢団の銀行破り》への対処手段もリソースを伸ばせるカードのいずれもない。対処の難しい《墓地の侵入者》をプレイし、盤面の有利を狙う。

 だが、河野の願いも虚しく、《勢団の銀行破り》は辻川へ戦力を届け、《砕骨の巨人》、《黙示録、シェオルドレッド》とパワーの高いクリーチャーが並んでいく。

 さらに悪いことに、河野はこの《黙示録、シェオルドレッド》を除去できない。2点、また2点と河野のライフは蝕まれていき、気がつけば13。

 代わりに自身も《黙示録、シェオルドレッド》をプレイし、ライフの増減にストップをかけるが、戦力差はいかんともし難い。

 辻川はトップデッキした《鏡割りの寓話》をプレイするが、続くターンに手札を入れ替えない。《黙示録、シェオルドレッド》と《墓地の侵入者》、ゴブリン・=[./r12_kouno.jpg]河野 融トークンを攻撃へと送り出すと、攻撃時の誘発型能力で生成されたばかりの宝物トークンを使い、《致命的な一押し》。これで《黙示録、シェオルドレッド》をコントロールしているのは辻川のみとなった。

 戦闘後、辻川は河野のライフが4であることを確認すると静かにターンを返す。ドローフェイズに《黙示録、シェオルドレッド》の効果が誘発したのを見届け――

 辻川は《砕骨の巨人》を提示した。

河野 1-1 辻川

辻川 大河
ゲーム3

 このマッチで初めて先手を手にする河野。攻め手と応じ手が入れ替わり、トップ8をかけた最後のゲームがスタートする。

 マリガンした辻川へ突きつけられたのは、河野の《強迫》。公開されたのは、

黙示録、シェオルドレッド

黙示録、シェオルドレッド

削剥

 というもの。《削剥》を捨てさせると残るは《黙示録、シェオルドレッド》2枚と土地のみ。そう、重い手札が残り、河野の軽い手札と噛み合ってしまったのだ。

 河野は《税血の収穫者》から《鏡割りの寓話》、《黙示録、シェオルドレッド》とアグレッシブに展開を続ける。《鏡割りの寓話》のゴブリン・トークンこそ《致命的な一押し》する辻川だったが、さらに《死の飢えのタイタン、クロクサ》まで追加されてしまい防戦一方。

 《黙示録、シェオルドレッド》で何とか盛り返しを図るも、相打ちを恐れない《死の飢えのタイタン、クロクサ》を前に手札もなくライフも10とゲームを維持すること自体が難しい。

 河野の墓地にカードはないため、せめて《死の飢えのタイタン、クロクサ》を対処できる《致命的な一押し》が引ければ。願ってドローを重ねるも、辻川にはこれ以上時間が残されていなかった。

河野 2-1 辻川

河野 融、トップ8進出決定!

試合後

 ラクドス・ミッドレンジのミラーマッチは非常に複雑だ。ゲーム2のようにカード交換後に片方のプレイヤーのみに《黙示録、シェオルドレッド》が残ったかと思えば、ゲーム3のように手札破壊からクリーチャー展開へと繋げ、さながらアグロデッキのような一方的な押し付け合いも発生する。

 だからこそトップ8レベルの2人へ、ミラーマッチのコツを聞いてみた。

 「ミラーマッチは難しすぎる」と一言おいたうえで、返ってきた答えは手札と展開の噛み合わせやお互いのゲームプランのすり合わせという流動的なものだった。

 手札と展開の噛み合わせとはまさにゲーム3が該当する。自分の手札にクリーチャーが複数枚あるならば相手の手札の除去呪文を抜き、アグレッシブにライフを詰めていける。手札破壊で見た際に自分の手札と見比べて、対応できないパターンを作ればそれだけ勝機が訪れるのだ。

 基本的にミラーマッチはリソースを交換し合っていくためゆっくり構えたほうが有利になるが、片方のプレイヤーが極度に軽い/重いなどお互いのゲームプランが合わなければ一方的な展開となる。《思考囲い》は相手の手札1枚と交換できるだけではなく、使用者にのみにこの先のゲームへの展望までも授けてくれる。

 中~長期戦を目指しながら、序盤の展開にも対応しなければならない。それでいてドローの度に選択肢は変わるため柔軟な対応も求められる。たとえ両者同じ手札であっても、先手と後手で捨てさせるカードは異なるとのことだった。

 当然ながらミラーマッチを制するには経験値が不可欠。まずは、《思考囲い》で「対応できないパターンを作る」ことから始めてみよう。

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