By 津村 健志 　プロツアー決勝ラウンド。マジックプレイヤーならば誰もが憧れるこの夢の舞台で、この二人のプレイヤーはどんなプレイを見せてくれるのか。 　Coxのデッキは除去が豊富に入った緑黒デカブツ、いわゆる「恐竜」と呼ばれるアーキタイプで、対するPichonはここまで一貫して白赤「金属術」をドラフトしてきた決め打ち戦略だ。

Game 1

Elie Pichon

　先手のPichonの《燃えさし鍛冶》で幕を開けたプロツアー準々決勝。 　これに《シルヴォクの生命杖》を装備し、《燃えさし鍛冶》の能力も起動して3ターン目にして早くも4点のダメージを与える。 　3ターン目まで土地を置くだけのCoxを尻目に、軽快なスタートを切った格好だ。 　次のターン、Pichonは戦闘に入る前に《恐慌の呪文爆弾》を置いてアタックを敢行し、Coxが唱えた《蜃気楼のマイア》をブロック不可能にしてダメージを積み重ねる。 　Pichonは初めての大舞台ということもあってか緊張で手が震えているようで、それを隠すためか、机に手を置いたままプレイを続ける姿が印象的だが、それとは裏腹にプレイは正確そのものだ。 　Coxは《ファイレクシアの憤怒鬼》でドローを進めながらブロッカーの頭数を増やす。とにかく、デッキに数多く入っている「恐竜」軍団につなぐまでの時間がほしい。 　Pichonは《シルヴォクの生命杖》を生贄にささげて《カルドーサの再誕》を。大量のアタッカーを確保し、先の展開を見据える。 　Coxは5ターン目に《絡み森の大男》を召喚。ここでもアタックにはいかず、とにかく長期戦に持ち込む構えだ。 　6ターン目を迎えたPichonは、ドローをするとすぐさま全軍で攻撃宣言。 　《カルドーサの再誕》で生まれた1/1のゴブリン・トークン3体、《燃えさし鍛冶》で、Coxの《蜃気楼のマイア》、《ファイレクシアの憤怒鬼》、《絡み森の大男》に立ち向かう。サイズで負けている上でアタックをするということは、当然何かしらのトリックがあってのことだろう。 　もちろんそれを承知のCoxは、《ファイレクシアの憤怒鬼》で《燃えさし鍛冶》をブロックするだけにとどめ、ゴブリン・トークンは全て本体に通す。 　ここで炸裂したのは《軍団の結集》！ 　Coxに6点ものダメージを与え、《ファイレクシアの憤怒鬼》も一方的に葬りさる。 　更に戦闘後に《磁器の軍団兵》を追加し、一向に攻め手を緩めない。 　Coxも《最上位のティラナックス》でなんとか持ちこたえようとしたのだが、これが《消失の命令》で退けられ、ファイレクシア・マナで放たれた《変異原性の成長》がCoxのライフをぴったり0にした。 Pichon 1-0 Cox

Game 2

Pat Coxのデッキは《四肢切断》を2枚携えた「緑黒恐竜」だ 　あえて後手を選択したCox。デッキに大量の除去があるがゆえの判断のようだが、速攻デッキのPichonに対してこれが吉と出るか凶と出るか。 　2本目もゲームを先導したのはPichonだった。 　《献身的な補充兵》《燃えさし鍛冶》と1ターン目からテンポよく動き、Coxに回答を迫る。 　《燃えさし鍛冶》こそ《四肢切断》で対処したCoxだったが、Pichonが追加した《磁器の軍団兵》《ヴァルショクの模造品》を前に気の抜けない展開が続く。 　だがCoxは《ファイレクシアの憤怒鬼》で《磁器の軍団兵》を引きこみ、Pichonのそれと相打ちさせることでゲームスピードを落とすことに成功した。 　実はPichonは土地が3枚で止まってしまっており、手札の4、5マナ域のクリーチャーを召喚することができないでいた。《胆液の水源》《火膨れ杖のシャーマン》や《変異原性の成長》など、土地が伸びなくても動きが止まらないデッキではあるのだが、これらのカードではCoxの牙城を崩すまでにはいたらない。 　こうなってしまえばCoxの土俵だ。《最上位のティラナックス》がPichonに襲いかかり、《ゲスの評決》を絡めてPichonの攻勢を削いでいく。 　ようやく4マナ目を引いたPichonも、《錆びた斬鬼》で攻めを継続させるのだが、チャンプブロックに阻まれダメージが全く通らない。 　《最上位のティラナックス》が《盲目の盲信者》を引き連れてもう一度アタックをすると、ファイレクシア・マナと《ゲスの評決》ですり減っていたPichonのライフはあっという間に3点に。 　これを《ファイレクシアの愛撫》できっちりと削りとったCoxが、ゲームカウントをタイに戻すことに成功する。 Pichon 1-1 Cox

Game 3

Elie Pichonは《激戦の戦域》の投入すら視野に入れた、不退転の白赤 　流れを取り戻したいPichonはもちろん先手を選択。2ターン目に《磁器の軍団兵》を、3ターン目には《恐慌の呪文爆弾》からの《カルドーサの再誕》と、圧倒的な展開を見せる。 　Coxも2ターン目に《生命鍛冶》を喚ぶ、悪くはないまわりなのだが、いかんせん後続が続かず戦線を支えきれない。 　4ターン目にさらに《切りつける豹》を追加したPichonは迷うことなく全軍でアタック。この《切りつける豹》は《生命鍛冶》と相打ちになってしまうが、Coxのライフを11まで落とす。ライフ差だけでなく、クリーチャー数でも4対0と圧倒的有利を築いている。 　Coxは首を横に振りながらも《ドロスの切り裂き魔》を召喚してゲームを続ける意思を見せるが、次のPichonの戦闘フェイズに《変異原性の成長》が放たれるのを見届けると、素直にカードを片付けた。 　圧巻の5ターンキルである。 Pichon 2-1 Cox

Game 4

Pat Cox

　先ほどの5ターンキルを受けても、Coxの戦略は揺るがない。少し悩んだ様子は見せたが、ここでも後手を選択する。 　しかし勢いに乗るPichonは、このアシストを最高の形でゴールへと結びつける。 　またも2ターン目に《磁器の軍団兵》のキャストに成功したPichonは、続くターンにも《ヴァルショクの模造品》を喚び出し、3ターン目にして6点ものクロックを用意したのだ。 　Coxも《ファイレクシアの憤怒鬼》で《ヴァルショクの模造品》をブロックするが、Pichonの《変異原性の成長》が無残な結果を演出する。 　Coxはさらに《モリオックの模造品》をブロッカーとして用意するものの、Pichonは《ヴァルショクの模造品》に《ヴィリジアンの爪》を装着して、《磁器の軍団兵》と共に「先制攻撃」タッグで攻めたてる。 　この攻撃をチャンプブロックするわけにもいかないCoxは、両方とも渋々スルーを選択。すでにライフは4点という危険水域だ。 　何かしら逆転に向けた一手をうちたいCoxだったのだが、5ターン目は《沼》を置いただけでターンを返すのみ。 　再び襲いかかる「先制攻撃」タッグに、《蜃気楼のマイア》と《モリオックの模造品》をそれぞれチャンプブロッカーとして差し出し延命を図るCoxだったが、Pichonが戦闘後に喚び出した《レオニンの空狩人》を見ると、ドローを確認した後に右手を差し出した。 Pichon 3-1 Cox