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2020ミシックインビテーショナル

トピック

頂点に立つ歴史的ヒストリック王者、セス・マンフィールド

Corbin Hosler

2020年9月18日

 

(編訳注:埋め込み動画は英語実況のものです。)

 セス・マンフィールド/Seth Manfieldは長きにわたりチャンピオンとして君臨し続けている――少なくともそう思わせるだけの存在感を発揮している。彼は2007年に、わずか18歳にして初のメジャー・イベント優勝を果たした。しかしマジックの殿堂顕彰者の多くがそうであるのとは異なり、彼は継続的にプレイすることなくその若さで経歴の基礎を固め終えた。

 彼は大学の卒業に専念することを選び、しかしそれが終わると2013年にはゲームへと復帰し、すぐにランクを上げていく。彼が2015年のマジック世界選手権で優勝したのは、初のプロツアートップ8入りから間もなくのことだった。2007年以降も毎週末戦い続けたプレイヤーたちがいまだ到達していなかった高みへと、わずか2年間で一気に登りつめたのだ。

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 彼の最新の勝利である2020ミシックインビテーショナル優勝は、単にヒストリックにとってのみ歴史的、というわけではなかった。彼は最高峰のタイトルを3つ獲得した史上5人目のプレイヤー(リンク先は英語)となり、マンフィールドがマジックのベスト・プレイヤーとして何位に入るかという話題でインターネット上は――またしても――盛り上がった。

 しかしその話題はこの殿堂顕彰者にとって珍しいことではない。多くのプレイヤーが見逃してしまうような勝利を見つけ出すことで、マンフィールドはたびたび勝者となってきた。簡単に言えば、彼はマジックの経歴全体において成功してきたのだ。実際のところマンフィールドは、ブリッジの世界チャンピオンである父親と一緒にゲームを学んでいた子供のころから、常に粘り強く可能性を追い求め、自らが最高の選手たちと競い合える存在であることを自身に――そして他のすべての人へと――証明してきた。それが彼をこの実績へと導き、競技マジックの30年近い歴史の中でもめったに見られない早さで成功を収めるための鍵となったのだ。

 私たちはその偉大さを目の当たりにしている。彼はすでにプレイヤーズツアーファイナルでトップ16に入って2020年シーズン・グランドファイナル(リンク先は英語)への出場権を獲得しているが、今回のミシックインビテーショナルでも、敗者側ブラケットからの6連勝で優勝するという離れ業をやってのけている。偉大なる戦いぶりはこの世界チャンピオンにとって珍しいことではないが、月曜に自身のタイ記録達成の軌跡を公式配信で振り返りながら30歳の誕生日を迎えたこの男には、何らかの変化があった。

 2015年に完全な勝利を収めたマンフィールドだが、それに満足してはいなかった。その時点で復帰からたった2年しか経過していなかったが、彼は電光石火の早さでスター選手の地位へとのし上がったことにかなりの気まずさを感じていたようだ。そのトーナメントでは、殿堂顕彰者やマジックを継続してプレイし続けているベテラン、そして当時のゲーム界の大物たちを撃破しているのだが。

「私はいつも大舞台を前にとても緊張してしまうタイプの人間で、当時はそれがもっと顕著に出ていたのがわかると思う」と彼は説明した。「(世界選手権で)優勝した年も、私は自身のことを世界で五指にも入れないと思っていた。私は実力が証明されていないプレイヤーであり、勝ち目は薄いと感じていたんだ。その1年間みっちり研究していて、これが何かを証明するための唯一の機会だった。自分に何ができるのかを世界に示したかったけれど、自分がその域に達しているという確信は持てなかった」

 1つのトーナメントでの激走を経て、当時24歳だった彼は突如としてこのゲームの競技プレイヤーの顔となった。インタビューではおぼつかなげで緊張しているように見えたこの男だが、戦場では揺るぎないことを証明したのだ。しかしおそらく、緊張などがなかったわけではないのだろう。当時マンフィールドは、13勝1敗という圧倒的な記録を達成したにもかかわらず、世界選手権のトップ4に入ったことを驚いたというのだ。

 その後5年が経過し、マジック最大のトロフィーを2つ獲得、プロツアー『イクサラン』にてプロツアー初優勝、そして2020ミシックインビテーショナルをも勝利したマンフィールドは解き放たれた。

 

 彼の様子からもそれをうかがい知れる。マジックの対戦前にはまだ緊張するそぶりを見せるが、しかし勝てるかどうかについての心配はもうしていない。それは彼の取り組み方の変化からもわかるはずだ。かつてはイベントに向けてのテストプレイを秘密裏に行っていたプロが、今や多くの視聴者を前に定期的に配信しているのだから。

 彼の内面にある自信は、外から見ても伝わってくる。彼は簡単に言えば「今、その域に達しているとわかっている」のだ。

 それに間違いはない。マンフィールドが最高のプレイヤーかどうかについて、マジック界隈では多少評価の保留が行われていた。その中で彼は、何度もその実力を証明していった。転機となったのは、マジック:ザ・ギャザリングの殿堂入りだ。これを機に、彼自身を含めて変化が訪れたのだ。

「殿堂入りを果たして以来、それまでにあった緊張感や不安のようなものを感じなくなったんだ。マジックのことで本当に魂が揺さぶられる経験というのはわずか数度だけれど、これはそのうちのひとつだ。自分がやれるということを自身に証明しなければならなくて、そしてこの時に自分は十分やれているとわかったんだ。それがゲームのプレイであれ、インタビューや他の何かであれ、自分を信じることを恐れなくなった」

 ジョン・フィンケル/Jon Finkelやパウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ/Paulo Vitor Damo da Rosa、ガブリエル・ナシフ/Gabriel Nassifといったレジェンドとのあらゆる比較にさらされ、マンフィールドは口もきけなくなるほどの傷を負うときもあった。彼らの歴史的偉業にはかなわないと感じつつも、彼はその思いから離れるための適切な方法を探していた。しかしわずか6年でマンフィールドが成し遂げたことは、まさにそれだろう。

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セス・マンフィールド、マジック:ザ・ギャザリング世界選手権2019にて

 

 比較されることはまだ苦手かもしれないが、彼はもう会話を避けてはいない。

「それはもうプレイ中に悩むようなことではないんだ。それに、誰かがそれぞれ異なる時代の物事を正しく比較できるとも思わない」と彼はマジックの歴史を振り返りながら言った。「それでも、自分がその議論に挙げられるレベルのプレイヤーであると信じてはいるよ。席についてプレイするときは、自分がより優れたプレイヤーであると信じることが必要なんだ。それが真実であるとは限らないけれど、その考えを持っておかなければならない。自分がどの程度良いプレイヤーかは分かっているし、現時点で十分良いプレイヤーであることは証明できている。私の優勝経験数が7回だと聞かされたときは、『なるほど、7回もあるのか』と思ったんだ。それには気づかなかった」

「私にとっては」彼は続けた。「そこに興味はないんだ。トーナメントで戦う人数が少なくなるにつれて競争は厳しくなるけれど、それでも負けるわけにはいかない。私はまだ上達できるはずだ」

 スター選手としての立場が大きくなるにつれ、マンフィールドもまた大きく成長してきた。彼は自信にあふれているが他者を軽んじることはなく(脚注1)、冷酷さのない冷静さを備えている。彼は試合について対戦相手に感謝し、相手が自分を上回れば祝福を述べる(脚注2)。彼は(ミシックインビテーショナルのために助けてくれた仲間の中でも、特にスター選手のハビエル・ドミンゲス/Javier Dominguezとブラッド・ネルソン/Brad Nelsonの名を挙げて)準備を手伝ってくれたチームメイトを称賛している(脚注3)。彼はマジックの世界で「Team Envy」の象徴的存在となり、彼のチームに称賛のみをもたらしたのだ。

脚注1:
@shoop_hs との対戦が今終わったが、彼のプレイには本当に感銘を受けているし、この先もっと彼との対戦が増えることを確信している。私はというと…少なくとももう1ラウンドはプレイできるみたいだ :) 願わくばMPLでの運を使い切っていないことを #MythicInvitational

脚注2:
してやられたよ。

脚注3:
霊気の疾風》をメインに3枚入れたスゥルタイ・プレイヤー5人> @fffreakmtg @TonisRP と @JavierDmagic と @AliaDeschain 。トップ16に3人を送り込めた。助けてくれたみんな、ありがとう。

 

 では、このゲームですべてをやってのけた男の秘訣とは何なのだろうか?

「これは私なりの様式ではあるけれど、いまだにプレイするときはいつも緊張しているんだ。ミシックインビテーショナル中は自分の部屋をうろついてばかりだったよ。だけれど私にとって重要だったのは、ときには一歩引いて別の視点から眺められるようになったことかな。なぜなら、プレイするときには楽しまないとうまいプレイはできないし、楽しんでいるところを見せられれば見ている人も楽しめると思うからね」

 マジックはマンフィールドにとって職業であり、それを仕事として扱いながらも健全なバランスを維持することが、彼にとっては重要なことだ。トーナメントで勝利することは大変な仕事かもしれないが、彼は25年前に父親から教わった一組のトランプから始まった夢の実現を、常に喜びをもって目指している。マンフィールドの仕事の腕は達人級で、その歩みが遅くなることは当分なさそうだ。

(Tr. Yuusuke "kuin" Miwa)

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RESULTS

対戦結果 順位
14 14
13 13
12 12
11 11
10 10
9 9
8 8
7 7
6 6
5 5
4 4
3 3
2 2
1 1

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