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戦略記事

渡辺雄也の「リミテッドのススメ」

第36回:Persona 7?『イニストラード』7つの分析

読み物

渡辺雄也の「リミテッドのススメ」

2011.10.05

第36回:Persona 7~『イニストラード』7つの分析


 こんにちは。渡辺です。

 ついに発売されたイニストラード。
 皆さんすでに新しい環境を思う存分楽しんでいることでしょう。

 今月末にあるグランプリ・広島の影響でしょうか、スタンダードが各地で賑わいを見せていますね。
 環境初期のこの時期はメタが固まっておらず、各々のデッキ構築能力が試される期間でもあります。
 デッキを作る能力が致命的に低い僕は、各地の大会結果を見ながら「この時期にデッキを作れる人は凄いなー」と思いながら、今月にあるイベントに向けて少しずつデッキを考えている毎日です。
 もちろん、この記事のためのリミテッドもちゃんとやっていますよ!

 まぁスタンダードのことに関しては、当サイトで連載しているコガモ(津村 健志)の記事を読めば大体のことは分かるので、あまり心配はしていませんが。
 いやーほんとコガモはんの記事は頼りになりますわー。

 さて、そろそろ本題に入りましょう。
 今回は新セット恒例の「7つの分析」をやっていきたいと思います。新しい環境を探るには「7つの分析」が一番手っ取り早いですからね。
 分析の方法については、以前の記事をご覧ください。

 ではさっそくイニストラード環境を7つの項目別に分析していきましょう。


その1 クリーチャー除去

 まずは環境にあるレア以外の除去と呼べそうなカードを見ていきましょう。

コモン
アンコモン

 除去と呼べそうなカードはこれくらいですね。
 今回のコモンの除去は全体的に弱めに設定されています。

 《硫黄の流弾》や《閉所恐怖症》といった使いやすくて強い除去もありますが、逆にそれ以外は何かしらの制約のついた除去が多いです。

 墓地がないと使えない《死体の突進》と《収穫の火》、打てる対象が限定されている《夜の犠牲》や《大物潰し》といった状況によっては使うことのできない除去カードが多いですね。

 前者の墓地を使う2種類はデッキ構築の際に墓地を貯めるギミックを使えば何とかなりますが、後者の2種や《信仰の縛め》なんかは相手のデッキのクリーチャーにどうしても依存してしまいます。
 実際のゲームでもこれらの除去を抱えていて、相手の生物に対処できない場面も多々ありますからね。
 そういった使いにくさはありますが、リミテッドでの貴重な除去には違いないので、デッキに入れるのを躊躇わないように。

 アンコモンまで見ると優秀なカードが多いですが、呪文よりも除去能力を持ったクリーチャーが多いですね。

 《悪鬼の狩人》や《忌まわしきものの処刑者》なんかは分かりやすく強いカード。
 環境にいる「変身」持ちのクリーチャーのほとんどは狼男なので《忌まわしきものの処刑者》が腐る場面は少ないでしょう。

 逆に《モークラットのバンシー》は見た目よりもずっと使いづらいカード。「陰鬱」の達成条件が思ったよりも難しいので、ただの5マナ4/4としてプレイすることもしばしば。
 手札に温存して「陰鬱」を狙うよりも、早めに場に出して攻勢に回ったほうが良いこともあるので、盤面の状況によって使い分けるようにしましょう。


その2 システムクリーチャー

 環境にあるシステムクリーチャーを見ていきます。

コモン
アンコモン

 システムクリーチャーと呼べそうなのはこの6枚。
 大型エキスパンションにしてはちょっと少ないですね。

 《アヴァシン教の僧侶》はこの環境のタッパー枠。
 白は人間が多いので、相手が白だったときはちょっと心細いですが、他の色には有効に働く場面が多いです。

 《錯乱した助手》はマナ加速+墓地増やし。
 《縫い合わせのドレイク》《その場しのぎのやっかいもの》のような、プレイする際に墓地のクリーチャーが必要なカードとの組み合わせはもちろん、上で触れた墓地を使う2種類の除去を使うための元にもなります。

 《縫い師の見習い》は自分のクリーチャーをホムンクルスに変えられるカード。
 相手の除去を避けたり、《燃え投げの小悪魔》のような死亡して美味しいクリーチャーとのシナジーも狙えます。
 出したホムンクルス自体を生け贄にすれば、ただで「陰鬱」も達成できます。

 《礼儀正しい識者》は今回のルーター枠。
 クリーチャーを捨てれば《人殺しの粗暴者》に変身して殴りにもいけるので、かなり使い勝手の良いルーターです。
 もし不本意に変身してしまっても、殴りにいかなければ表に戻るのも好評価。

 今回のイニストラード環境はこれらのシステムクリーチャーの活躍する場面は多いです。環境の除去が弱いので生き残りやすいのが追い風。
 前述の通り、環境にあるシステムクリーチャーの枚数は多くないので、どのクリーチャーがどういった状況で活躍するかをきちんと覚えておきましょう。


その3 タフネス1クリーチャー

 環境にいるタフ1クリーチャー達と、それに対する有効な対処手段を見ていきます。

 イニストラード環境のタフ1クリーチャーはそれなりに多く、

 といった戦線を支える各色のエース級のクリーチャー達もタフネス1です。
 またアンコモンやレアにもタフ1クリーチャーはちらほら見かけますね。

 全体的に見てもそこそこな数のタフネス1クリーチャーがいるイニストラード環境。
 ではそのタフ1を有効的に対処できるカードを見ていきましょう。

 一番効率よく対処できるのは《霊炎》。
 見たまんまですが、分かりやすくタフ1に対処するためのカードです。
 フラッシュバックでの再利用もできるので、かなり使い勝手はいいですね。5マナでタフ2も落とせるのも好評価。

 他には《灰口の猟犬》や《宿命の旅人》なんかもタフ1クリーチャーには良い牽制になります。

 ただイニストラード環境のメインテーマである変身クリーチャーにはタフ1クリーチャーがあまりいません。あまりタフ1クリーチャーに対するカードを取りすぎると変身した大型クリーチャーにやられてしまう可能性もあるので、タフ1を意識するのもほどほどに。
 環境のメインはあくまで変身クリーチャーによる戦闘だということをお忘れなく。


その4 マナ基盤

 次はイニストラード環境のマナ基盤を見ていきます。

 イニストラードのマナサポートは、レアの対抗色土地を除くと以下の3枚。

 《旅行者の護符》と《ゆらめく岩屋》はどの色でも使えるマナサポート。
 単体で見たときに弱いのが玉に瑕ですが、そのおかげで3色目のパワーカードが使えるならそれも甘受できます。

 3パック目で引いた色違いのレアのために取っておくという受けの広いピックは従来と一緒ですが、今回は《禁忌の錬金術》や《戦慄の感覚》のような元の色とは違うフラッシュバックコストの呪文があるので、こういったマナサポートにはお世話になる機会は多いですね。
 ただ純粋なマナサポートしてみたときはどれも弱い部類のカードなので、均等3色や4色などはできるだけやらないようにしたほうが良いでしょう。


その5 コンバットトリック

 次は環境のコンバットトリックを見ていきます。

コモン
アンコモン

 今回のコンバットトリックは盤面に大きく影響を与えるものが多いですね。

 《叱責》と《村の鐘鳴らし》は白の基本コンバットトリック。
 アンコまで見ると《深夜の出没》もありますし、相手が白かった場合、3マナオープンの時は常にコンバットを警戒するようにしましょう。

 《蜘蛛の掌握》は攻守共に活躍してくれる良カード。
 修整値が大きく、クリーチャーをアンタップまでしてくれるので、予想外の角度から戦闘を仕掛けることができます。
 今回の緑のカードの中で一番優秀なコンバットトリックですね。

 《月霧》は基本はただの《濃霧》ですが、自分の変身クリーチャーが絡んだときは優秀なコンバットトリックになります。
 狼と狼男以外の戦闘ダメージは無視されるので、盤面によっては一方的な戦闘を起こせますからね。
 デッキに入れるときの目安としては、自分のデッキに5体以上の狼男の変身クリーチャーがいるのが理想です。
 変身クリーチャーだけでなく、《暗茂みの狼》や《ケッシグの狼》といった狼クリーチャーのダメージも軽減されないのも覚えておきましょう。

 イニストラード環境のコンバットトリックはマナコストが重く大味なものが多いです。
 その分盤面に与える影響も大きく、下手をすれば有利な盤面が一気にひっくり返ることもあります。
 盤面に大きな影響を与えるのは3マナのカードが大半なので、相手が3マナ立たせているときは不用意な攻撃は控えるようにしましょう。


その6 装備品

 次は環境にある装備品を見ていきます。

コモン
アンコモン

 とりあえずアンコモン以下の装備品をリストアップしてみましたが、イニストラード環境には結構な数の装備品がありますね。

 数ある装備品の中でもっともシナジーを発揮しやすいのが《悪魔の長帷子》。
 カード単体で見たときはアドバンテージを失ってしまうカードですが、《宿命の旅人》や《霊廟の護衛》をコストにすればあまり損はしませんし、《裏切りの血》を使って相手のクリーチャーを装備コストに当てることもできます。
 装備した後の修整値が大きいので、うまく使えた時の強さはかなりのものです。
 また任意のタイミングで「陰鬱」を発生できるのも良いですね。

 《銀の象眼の短刀》《とがった三つ叉》《肉屋の包丁》は人間に装備させたときに追加で効果が発生するので、これらを使う場合はクリーチャーに人間が多い構成にしたいですね。

 特に《肉屋の包丁》は人間に装備できるかどうかでカードの強さがかなり変わるので、これが取れたときはできるだけ人間に寄せるように意識しましょう。

 これらの装備品をまとめて対策できる《帰化》や《古えの遺恨》は、サイドボードに用意しておくようにしたいですね。
今回の装備品は比較的ゲームに与える影響が大きいものばかりなので、対策は怠らないように。


その7 ブロックのメカニズム

 最後にこのブロックのメカニズムでアーキアイプができるかどうかを検証してみます。


変身
両面カードのルール

 イニストラード最大の目玉である「変身」。
 これはかき集めればデッキとして強力なものができるでしょう。
 方向性も分かりやすく、変身カードとそれをサポートするカードを集めるだけで成立しますからね。

 《月霧》や《昇る満月》はこのアーキタイプで真価を発揮するカードです。

 問題があるとすればこのアーキタイプをやる場合、自分のやっていることが周囲に筒抜けになってしまうことですね。
 変身カードばかり取っていては自分のピックや色を周囲に伝えているのと一緒ですからね。
 その分ドラフト中にカットを受けやすかったりしますが、それを補うほどのデッキパワーはあるので気にせず我が道を行くことにしましょう。

 一番の問題はどの変身カードも単体で強いので人気が高いことですかね・・・。


陰鬱

 「陰鬱」は残念ながらアーキタイプとしては成立しません。

 能力自体の達成が難しい上に、「陰鬱」を持つカード自体の枚数も多く用意されていないからです。
 《縫い師の見習い》を使えば「陰鬱」は簡単に達成できますが、《縫い師の見習い》の能力の起動にかかるマナもあわせると、実用的に運用できるのがかなり遅いターンになってしまいます。

 なので《ただれ皮の猪》や《森林の捜索者》のようなカードはデッキのメインコンセプトにせず、あくまでデッキの補助くらいの感覚で使うのが妥当ですね。

 もし《モークラットのバンシー》や《スカースダグの高僧》のような強力な「陰鬱」カードが取れた時はある程度意識してもいいですが、それでもデッキの核として「陰鬱」というシステムを目指すのはやめたほうがいいでしょう。
 「陰鬱」を発生させるために自分のクリーチャーを失っていては戦術として破綻していますからね。


フラッシュバック

 フラッシュバックもアーキタイプとして成立するのは難しいですね。

 フラッシュバックのカード自体はそれなりに多くありますが、それはすべて呪文なので戦場の構築に役立つわけではありません。
 やはりリミテッドの基本はクリーチャー同士による戦闘なので、フラッシュバックの呪文はそれらを補助するために使うようにしたほうが賢明です。

 ただ《燃え立つ復讐》がある時はフラッシュバックに盤面に触れる付加価値が加わるので、もし《燃え立つ復讐》が複数取れた時はフラッシュバックデッキを狙ってみるのもありかもしれません。



 今回はここまで。

 まだ始まったばかりのイニストラード環境。
 環境初期のこの時期ほどリミテッドが面白いタイミングはありません。
 新しいカード同士のシナジーを試したり、新しいアーキタイプを考えたりと、楽しみ方は多種多様です。

 これからしばらくお世話になる環境なので、環境の基本をしっかり覚えていきましょう!


 では今回はこの辺で。また来週お会いしましょう。

イニストラード

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