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戦略記事

渡辺雄也の「リミテッドのススメ」

第2回:包囲戦7つの分析

読み物

渡辺雄也の「リミテッドのススメ」

2011.01.31

第2回:包囲戦7つの分析

 みなさんこんにちは。

 「リミテッドのススメ」第2回目となる今回ですが、前回紹介した7つのポイントに当てはめて、「ミラディンの傷跡」と「ミラディン包囲戦」のリストをリミテッド視点で見てみたいと思います。

 「ミラディンの傷跡」に関しては去年の連載で散々触れているので復習する感じで、「ミラディン包囲戦」に関しては(この原稿を書いている今現在)まだ実際にプレイしていない状態なのですが、リストから読み取れることを出来るだけ書いていこうと思います。

 そして、今までの「ミラディンの傷跡」から「ミラディン包囲戦」が入ったことにより、どのように環境が変化するかも、あくまで自分の想像の範囲内ですが書いていこうと思います。

 なお、以降は「ミラディンの傷跡」を「傷跡」、「ミラディン包囲戦」を「包囲戦」と略させていただきます。


その1 クリーチャー除去

 本題に入る前に、前回の内容で「オンスロートは除去の少ない環境」ということを書いたのですが、「オンスロートは除去の少ない環境ではなく、むしろ多い環境」という指摘を頂きました。

 そこで改めて当時のリストを見てみると、除去として使えるカードは多く、「除去の少ない環境」とは言えないということが分かりました。これは明らかに自分のミスです。間違った情報を提示してしまい申し訳ありませんでした。
 またご指摘していただき、ありがとうございました。この場を借りてお礼申し上げます。

 それでは気を取り直して、まずはミラディンの傷跡にある除去から見てみましょう。

傷跡・コモン

 ミラディンの傷跡のコモンにある除去と呼べそうなものはこの12種。多すぎず少なすぎずといったところですね。

 見た感じでは黒と赤に除去が3種類づつと多いですが、黒は《煙霧吐き》と《感染の賦活》が除去として優秀な部類ではないので、《感電破》《粉砕》《金屑化》と擁する赤の方が除去色として優秀と言えますね。

 アーティファクト・クリーチャーの多いブロックなので《存在の破棄》《粉砕》《シルヴォクの模造品》はクリーチャー除去としてカウントできます。
 《転倒の磁石》は厳密に言うと除去ではないですが、やっていることが普通の除去よりも強いので除去枠に入れてみました。また、《風の突き刺し》は除去できる範囲が限定されていてメインボードに入れにくいカードですが、相手によっては優秀な除去になるのでサイドボード要員として。そういった意味では「除去ではあるものの、その中では一番点数が低いカード」と言えますね。

 《闇の掌握》《感染の賦活》《感電破》《粉砕》はインスタントなので使い勝手の良いカード。相手が黒だったり赤だったりの場合はこれらのカードで戦闘が損にならないように警戒するようにしましょう。

 また相手が赤だった場合には、自分のクリーチャーへの無意味な装備品の装備はしないようにしましょう。《金屑化》を打たれたときの被害を最小限にするためです。

 これらのカードはコモンなので出現率が高く、警戒しすぎて損ということはありません。相手のマナや動きを考えながら常に警戒して動くようにしましょう。

傷跡・アンコモン

 アンコモンともなるとカードの効果も強くなってきますね。
 《皮裂き》や《オキシダの屑鉄溶かし》は4マナ3/3のクリーチャーに除去能力が付加されている超優良カード。
 《電弧の痕跡》や《真っ二つ》なんかも、1枚のカードで2枚分の働きが出来る優秀なカードです。

 これらのようなアンコモン以上のカードは見ていない内から警戒する必要はありません。コモンとは出現率が大分違うので「持ってない」可能性の方が高いからです。
 ただし、1ゲーム目で見たカードは、その後の2~3ゲーム目では警戒するようにしましょう。

包囲戦・コモン

 包囲戦のコモン除去はこの6種。小型エキスパンションの除去の数としては妥当な枚数ですね。

 そのうち、赤いカード2種は優秀なスペックなので、ミラディンの傷跡と合わせて考えると今回の赤は除去が豊富な色と言えるでしょう。
 また、黒の《病気の拡散》は能力が非常に強い割に色マナを1つしか要求してこないので、2色デッキにタッチして使うことも多々ありそうです。

 《ピスタスの一撃》は傷跡の《風の突き刺し》と同じような立ち位置。ただ効果が強力なので、もしかしたらメインボードに入るスペックかもしれません。環境で使われる飛行クリーチャーの数次第なので、これはやっていくうちに自然と分かるでしょう。

 白いデッキ相手の《神への捧げ物》や赤相手の《不純の焼き払い》など、相手が2マナ立たせていたらこの辺りのカードを警戒するようにしましょう。


包囲戦・アンコモン


 やはりアンコモンのカードは強力ですね。

 《堕落した良心》や《カルドーサの炎魔》なんかはゲームエンド級になりえるカードですし、《核への投入》や《ヴィリジアンの堕落者》も1枚で2枚分の働きをする優秀カードと、なかなかのラインナップです。

 上でも書いたようにアンコモンはあまり警戒しないほうがいいですが、今後白を相手にしたときは、《正義の施行》と《窒息の噴煙》があるので、相手が3マナオープンの状況で戦闘を行う場合は慎重にプレイしたほうがいいかもしれませんね。


その2 システムクリーチャー

傷跡

 傷跡のシステムクリーチャーはアンコモンまで全て合わせてこの8種。正直少ないですね。
 しかも単体で機能するのは《高僧の見習い》と《錆ダニ》くらいで、他のカードは何かしら別のカードと組み合わせないと効果を発揮しないカードばかり。
 ただその分、ハマった時の効果が強力なものも多いので、デッキの方向性をよく考えて使うようにしましょう。

 また《炉の式典》はクリーチャーではないですが、デッキによっては強力なシステムを作ることが出来るカードだということは出てきましたので、今後も覚えておいてください。


包囲戦

 包囲戦にいるシステムクリーチャーはたったの4種。しかもコモンは無し。

 傷跡と合わせて考えると、この環境はシステムクリーチャーの少ない環境だと言えるでしょう。

 上記の4枚の中でも《ヴィダルケンの解剖学者》は単体で使って強そうなカードですね。他の3種はデッキを選ぶような効果になっています。


その3 タフネス1クリーチャー

傷跡

<タフネス1クリーチャー>

 他にも《テル=ジラードの堕ちたる者》や《ニューロックの透術士》のような中盤用のカードの中にもタフネス1はそれなりに居ます。
 こうして見るとタフネス1がそれなりに多い環境だと言えます。

<タフネス1に対処するカード>

 コモンでは《煙霧吐き》と《感染の賦活》くらい、アンコモンまで見ると《燃えさし鍛冶》《電弧の痕跡》《伝染病の留め金》と優秀なものがそれなりにありますが、それでも数が多いわけではありません。

 タフネス1のクリーチャーの数とそれに対処できるカードの少なさを考えるに、傷跡環境のタフネス1は問題なく使用できるという判断になりますね。


包囲戦

 では包囲戦が入ってどうなるかを考えてみましょう。

<タフネス1クリーチャー>

 包囲戦にいるアンコモン以下のタフネス1のクリーチャーは17種類。コモン・アンコモン100種中の17種なので、数としては多くもなく少なくもなく、というところです。

 《枝モズ》や《回転エンジン》のような単純に強いタフネス1クリーチャーや、《眼魔》や《マイアの種父》のように破壊されても仕事するようなものもいます。


<タフネス1に対処するカード>

 アンコモン以下で有効的に対処できるのはこの3枚。
 小型エキスパンションのコモンに2種類なので傷跡よりはマシですが、それでも少ないと言えるでしょう。

 以上のことを考えるに、傷跡に包囲戦が加わってもタフネス1の重要度はあまり変わらないように思えます。

 ただ、タフネス1が多くタフネス1対処が少ない中では、《火膨れ杖のシャーマン》は輝いて見えますね。毎回活躍が期待できそうなカードです。


その4 マナ基盤

傷跡

 傷跡にあるマナサポートは、各種マナマイアと《地平線の呪文爆弾》くらいしかなく、普段その役割を務めているはずの緑のコモンにもマナサポートは無く、特に色マナをサポートするカードは皆無に近いです。

 その上で、有色のカードはダブルシンボルのカードが多いため、サポートの少なさ+色拘束の強さの両方を考えれば、普通にデッキを作る場合、2色という基本的な戦略をとることが理想となります。

 ただし、ミラディンの傷跡環境が通常の環境とマナ基盤の部分で大きく違う点として、「使用に色マナを要求しないカードも多い」ということは意識しておきたいところです。
 色拘束が強いカードはタッチなどで使いにくく、自分のデッキの方向を決めてしまいやすいので、ある程度の強さのカードならば、色のついているカードよりも色のついていないカードを取ることで受けを広くすることができました。

 通常のマナサポートが無い代わりに、このように色選択へのアプローチができるというのは面白い環境ですよね。

 また、模造品サイクルのように使用するのには色マナを要求せず最低限の仕事はしてくれ、その上で色マナを使うことでさらなるスペックを発揮してくれるカードの存在によって、3色目をタッチすることは可能でした。

 特に能力が強い《シルヴォクの模造品》なんかではよくありますね。
 自分がよくやっていた例は、緑以外の色をやっているときに、《銅のマイア》と《地平線の呪文爆弾》と少量の《》から緑マナを供給するという方法です。キャストする際に色マナがかからないので、後から緑マナを確保すればよく、なかなかに使い勝手が良かったです。

 マナ加速のために色の合わないマナマイアとピックすることも多いので、そういう場合は「自分がどの色のマナマイアを取っているか」を覚えておくことが、ピックの幅を広げることがある環境でした。


包囲戦

 緑のコモンに《ヴィリジアンの密使》、アーティファクトのアンコモンに《太陽の宝球》と2種類の色マナサポートが追加されましたが、マナ基盤として考えると正直少ないです。この環境で4色以上のデッキを普通に狙うのは厳しそうです。

 ただし、前述のタッチ戦略を狙っているときにはサポートとして使いやすくなるので、頭の片隅においておくのもいいでしょう。包囲戦から先にピックするようになるので、《太陽の宝球》を遅い順目で拾えるのならば確保しておいて、傷跡での『模造品』などのタッチを検討できるのではないかとリストを見る限りでは考えています。

 さらには、《病気の拡散》のようにタッチしてでも使いたいようなカードは増えたのも追い風でしょう。なのでタッチも含めた3色までは視野にいれてドラフトするようにした方がいいでしょう。逆にタッチ用にピックした《病気の拡散》を使いやすくなる《鉛のマイア》の需要なども今後はあがるかもしれません。


その5 コンバットトリック

傷跡

 以上の6種類、数的に少なくはないですが、問題はその性能。
 《荒々しき力》以外正直どれも効果が微妙なのです。

 《荒々しき力》はマナの分だけ修整値を上げられるので大きい効果が期待できますが、他のコンバットトリックは地味なラインナップになってしまいます。
 《テル=ジラードの抵抗》はキャントリップが付いてるだけマシだったり、《汚れた一撃》は相手が毒じゃない場合に《濃霧》的な使い方が出来たりと色々ありますがどれもインパクトに欠けますね。やはり「マナ効率が良く、プラス修整を与えられる」カードが少ないのが原因かと思います。

 とはいえ、どのコンバットトリックにもそれなりの役目はあるので、デッキに入れる際には役割をしっかりと見極めて使いましょう。


包囲戦

 包囲戦にあるコンバットトリックはこの4種類です。

 《形勢一変》と《軍団の結集》は自分または相手のクリーチャー全てに影響するカードなので、マナコストの割に強い能力だと言えます。

 《ミラディンの血気》は分かりやすい《巨大化》系呪文。ただ緑の感染で使ってもただの+2/+2修正でしかないので、緑の金属術が組めるかどうかですね。
 《不自然な捕食》は修整値も付加効果も微妙なので使う頻度は少なそうです。

 青と赤にある全体修正のコンバットトリック2種類は両方とも強力な効果なので、戦闘で一方的な損をしないように覚えておくようにしましょう。


その6 装備品

傷跡

 「ミラディン」の名を擁するだけあって装備品の種類はコモンからレアまで多種多様、その数15種類。
 コモンの装備品なんかは効果が弱めになってますが、レアリティの高い装備品には適当なクリーチャーに付けて殴るだけで勝ってしまうような恐ろしい性能を秘めているものもあります。
 ブロックのテーマである「感染」と「金属術」は基本的にクリーチャー主体の能力なのでその両方をバックアップできる装備品はデッキに欲しい存在です。

 量、質、ゲームに与える影響度、どれを見ても装備品というシステムが「ミラディンの傷跡」環境で重要なのは間違いないでしょう。


包囲戦

 「生体武器」という新メカニズムは装備品に付属されている能力なので、必然的に装備品が多く、その数11種。小型エキスパンションとしては破格の数字です。
 能力的にも強いものが多い印象なので、環境に対する影響はかなり高いでしょう。

 装備品が重要なら《圧壊》のような対策カードもよく使われることになりそうですね。傷跡の《金屑化》も今以上に需要が高くなりそうです。
 今まで使われることが少なかった《燦爛たる放心》も「生体武器」に対しては良い働きをするかもしれません。


その7 ブロックのメカニズム

傷跡

 「感染」と「金属術」。
 この2つがブロックのメカニズムであり、明確な環境の2大アーキタイプです。

 過去にも何度か説明しているので詳しい説明は省きますが、両メカニズムともデッキ全体の構成が重要なアーキタイプです。
 「感染」は感染クリーチャーの数やそれらをバックアップする補助カード群、「金属術」は金属術を持ったカードとそれを機能させるための規定数以上のアーティファクトが必要になります。
 両方ともデッキの多くのスロットを割かなければ機能しない能力だと言えますね。

 以上のことから、ミラディンの傷跡環境はそのブロックのメカニズムがデッキ構築に大きく影響を与える環境だといえるでしょう。


包囲戦

 包囲戦が入っても「感染」と「金属術」が2大アーキタイプなのはおそらく変わらないでしょう。

 包囲戦の新メカニズムである「生体武器」と「喊声」はデッキの主軸となるような能力ではなく、むしろ「感染」と「金属術」をサポートするような能力です。
 集めれば集める分だけ強さを増していくような能力ではないので、無理に集めず「感染」「金属術」をサポートするオプションとして考えた方が良さそうです。

 包囲戦で白い感染クリーチャーが出たことにも注目です。

 傷跡までの「感染」は基本的に黒緑で組むのがセオリーでした。黒と緑にしか感染クリーチャーがいないので当然ですね。
 ですが、包囲戦で《ノーンの僧侶》や《枝モズ》のような白の感染クリーチャーが出たことによって、その常識は無かったことになるでしょう。
 これからは黒、緑、白の3色の中から2つを選んで「感染」を組むことになりそうです。

 色が増えるということは戦略の幅が広がり選択肢も大幅に増えることになります。
 傷跡環境で今まで見向きもされなかったカードが、実は感染で使うと強い、なんてこともあるかもしれません。

 包囲戦の環境をやる前にもう一度傷跡のリストに目を通す必要がありそうです。


 今回はここまで。

 先日のプレリリースでは「陣営ブースター」を使ったため、ある程度自分の組みたい方向性のデッキを狙って組むことが出来ました。
 が、通常のブースターを使う場合はそれはできません。先日のプレリのシールドとは同じカードを使ってはいるものの、まったく別の環境と言えるでしょう。

 ミラディン包囲戦が真の姿を現すのは今週末の発売日から。
 陣営ブースターではない通常ブースターでのリミテッド環境がどんなものになるのか、今から楽しみですね。

 では今回はこの辺で。また来週お会いしましょう。

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