MAGIC STORY

団結のドミナリア

EPISODE 04

サイドストーリー:彼女の帰郷

Seanan McGuire
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2022年8月12日

 

 あらゆる次元が異なる姿をしており、それらを渡り歩く者は皆そう知っている。知らずにいることなどできない。イニストラードの空気はゼンディカーの空気とは異なり、ゼンディカーの空気はカルドハイムの空気とは異なる。花も、その花粉も同じではない。小鳥たちの歌も決して完全に一致はしない。ひとつとして同じ次元は存在しない、リリアナはそれを知っていた。灯が点火して無意識にイニストラードへと連れて来られた時から――重く深い影の大地、そしてガヴォニーの濃厚な蜂蜜。

 それは多元宇宙でも最高に甘美なもの。そして彼女が朝に飲む紅茶にはいつもそれが欠けていた。

 その通り、あらゆる次元が異なる姿をしている。アルケヴィオス次元、ストリクスヘイヴンの神聖な建物を訪れるずっと前から、リリアナはそれをわかっていた。だがそういった不慣れな次元を我が家にしようと思ったことがないように、幾つもの授業と管理された混沌の日々が続く中、夜に苛立つことになろうとは思いもしなかった。ドミナリアの夜に聞こえる音とは違っていた。蛙たちは違う歌をうたっていた。

 夜を過ごすのがこれほど困難になるとは思いもしなかった。

 昼の間は十分に快適と言えた。若き知性を磨く手助けをし、自分の言葉でそれらを形作ってやる。時間さえあれば、自分が若い頃に見てきたような、犯してきたような無数の過ちから彼らを遠ざけるよう導くこともできるだろう。無限の力を持つような、不可避の結果ですら先延ばしにできるものに思えたような頃の。

 キャンパスには自分以外のプレインズウォーカーもいる。この学府に身を隠そうと訪れた時、その事実は予想していなかった。とはいえケンリスの双子はまだ若く、彼女の過去やウィザーブルームの生徒だった頃を、何気ない会話で教授たちを教育する習慣を持っていなかった頃を知らない。彼らが久遠の闇を旅して、彼女の悪行を非難する何者かに接触しない限りは、過去と繋がる名を聞くことも、他の誰かに告げることもない。死というものの主リリアナ・ヴェスは消え去り、ヴェス教授は永遠に教鞭をとる。

 アルケヴィオスの夜を眠る方法さえわかれば。

 彼女は私室の窓辺に立ち、闇の中でかすかに輝くセッジムーアの屍発光を眺めた。それは学生時代から変わらないもの、とはいえセッジムーアの雰囲気は常に変化している。花が咲いては萎れゆく、永遠に移ろい続ける風景。初めて見た時には、あらゆる次元で最も美しい風景だと思った。今もそう思っていた。

 けれど、ああ。その頃はずっとたやすく眠ることができていた。あの大戦よりも前、鎖のヴェールよりも前、ゲートウォッチやニコル・ボーラス、ギデオンよりも……

 その名前は彼女の心臓のあるべき場所に、壊れた鐘として吊るされていた。そしてそれを鳴らす度に、眠れぬ夜を過ごすのは当然と思い知らされていた。快適な部屋や愛するセッジムーアの眺めを楽しむような資格はない、消滅して仲間の死を償うのが当然――

「ここにいたのか、リリー」 聞き慣れた、冷たい、魅惑的な猫撫で声。「君を永遠に見失ったのかと思っていたよ」

 発作のように、ティーカップを握る手に力が込められた。だが彼女は振り返りはしなかった。

「さあ、私が君をそんなにも簡単に見捨てるとは信じていないはずだ。久しぶりであるのは確かだが、言わせてもらえば君は自ら進んでこれまでの力を失い、狼狽している。私の存在はその問題を幾らか深刻にしてしまうというものでもあるまい」

 リリアナ、多元宇宙最強の屍術師にして死者の軍団長、死そのものの征服者。彼女はひとつ深呼吸をし、窓枠にティーカップを置き、そして振り向いた。

 背後にいたのはひとりの男だった。見たところ人間。だがその両目はありえないほど眩しい、打ち延ばされた黄金の色をしていた。髪と髭は白く、申し分なく切り揃えて整えられており、古風な衣服は明らかにその体格に合わせて仕立てられていた。高貴な身分のように、権力を持つ者のように見えた。

 初めて姿を見せたあの日から、歳をとっていないように見えた。その口には甘い嘘を、その言葉には偽りの思いやりを。

アート:Chris Rahn

「やっと私に飽きてくれたのだと思っていたのだけれど。愚かな遊技は終わったのではなくて? 猫がネズミを弄ぶみたいな……ネズミが猫を追いかける側になったとしたら? お前は必要ないの。私のことは放っておいて頂戴」

「そしてどうするのかね? 教師生活と出来の悪い小論文にかまける人生を過ごすのかね? 害獣と無益なものばかりを相手にするのかね?」 その笑い声は苦々しく響いた。「いずれ飽きるとわかっているはずだ。君は目新しさを必要としている。力を必要としている。私とともに帰ろうではないか、そうすれば君のあらゆる願いは遂に叶うのだ」

 彼女は笑い声をのみこんだ。「そうは思わないわね。正直に、とっても正直に言うけれど」

「私が何を差し出せるか、君と私とで何ができるかは知っているだろう」

 即座にリリアナは言い返した。「私にも取り戻せない死というものがあるのよ、時に、失くしたものは失くしたまま。死者を悼むことしかできない、そんなことだってあるのよ」

「君自身を取り戻せないもののひとつとして、かね?」 彼は嘆かわしい視線でリリアナを見た。「帰ろうではないか、私のリリー。瑞々しい春の花のように君が成長した場所へ、私が初めて君を摘み取った場所へ。私の所へ帰ってくるがいい」

 そして彼は去った。鴉の大群、その全てが彼女へと羽ばたいて過ぎ、窓から飛び出してティーカップを床に叩き落した。

 陶器の割れる音がリリアナの悪夢を貫き、彼女ははっと跳ね起きた。くるまっていたはずの薄い毛布は胸元に掴んでいた。彼女は必死に部屋を見渡した。あの男も、鳥もいない。足跡はなく、羽根も落ちていない。自分ひとりだけ。

 半狂乱になった心臓の鼓動、そして恐怖から口の中に広がる金属味だけがあった。彼女は毛布をよけ、床に置いた室内履きに足を滑り込ませて立ち上がり、台所へ向かおうとした。一杯の紅茶がこの味を洗い流してくれるだろう。アルケヴィオスのこんな熱い夜は寝苦しいものだ。心を落ち着けるには、薬草と花を正しく混ぜ合わせて……

 何かが足元で砕けた。彼女は立ち止まり、気に入っていたティーカップの残骸を見下ろした。そして屈みこみ、周囲に飛び散った液体に指先で触れた。

 それはまだ温かかった。

 開いた窓へと顔を上げると、あの男の笑い声が聞こえるかのようだった。


 翌日の彼女はぼやけて見える生徒の塊、気まずい沈黙、そして失敗しかけの授業に引きずられた。ウィザーブルームの不安そうな二年生が、印象深いものの無益な魔法の飛沫で害獣を爆発させた。これで三人目。リリアナは基礎屍術の授業を解散とし、小論文を課した。自分に引き続いて別の教師をも落胆させることのないように。

 授業を中止すると、彼女は大図書棟へと足を向けた。幻覚か、霊か、あるいは自分自身の力が制御不能になって顕現したのか。それは問題ではなく、だが止めねばならない。あの男がアルケヴィオスの自分の前に現れたのは初めてではなかった。数か月前から姿を見せており、その訪問は次第に頻繁になり、朝まで熟睡できる夜は稀になってしまった。疲労が蓄積していた。もしこの状況が更に長く続いたなら、他の誰かを巻き込んでしまいかねず、つまりはその相手を危険にさらしてしまう。駄目、二度とそんなことはしない。あれの正体が何であろうと、自分の力で終わらせねばならない。自分だけで終わらせねばならない。

 あの男が現実に存在するなら――見せてきたもの、話した物事、行い、その全てから彼女は次第にそう信じるようになっていた。大図書棟には必要とする知識が収められているだろう。そこは多元宇宙のあらゆる知識を網羅してはいないかもしれない、けれど筋の通った何らかの目的のためには十分な力になってくれる。

 真昼の校内を威圧的なヴェス教授が早足で過ぎ去る様は珍しく、だが特別目を惹くというほどでもなかった。彼女は速やかに巨大な図書館へ向かい、小舟を接収し、数か月前に特定していたドミナリア次元の古い歴史を収めた区画へ向かうと調査を開始した。

 古い秘本をめくり、埃だらけの巻物に目を通して小一時間ほどが経った時のこと。あの男の声がした。しばしばそうであるように、背後から。追いかける影のように、獲物を追跡する捕食者のように。

「もっと遡らねばならないな。リリー、私を故郷へ連れ帰ろうというのなら、もっと深い所を探さねばならないだろうな」

 彼女は手にしていた本を勢いよく閉じた。「つまりお前は実在する、そう言っているのね」

「以前にもそう伝えたのだがね。繰り返してもいいだろう、それが星の巡りならば。私のもとへ帰って来いと言っている。私たちの再会のために、知識や古の名を鎧として欲しているなら、それらを見つけるためにできる限り手を貸そう」

 リリアナはさっと振り返り、彼を睨みつけた。平然と、相手は見つめ返した。

「放っておいてと言ったでしょう」 敵意を込めて彼女は言った。「お前との関係は終わったのよ。私はもう利用されはしない。また極悪な化け物の武器にさせられるのはごめんだわ」

「君自身が極悪な化け物になりはしないかね?」 彼は何も持たない両手を広げた。「リリー、君はとても近い所まで来ている。必要とするものはもうすぐだ。帰って来るがいい、そして君が失ったものを与えよう」

「出てお行き」

「仰せの通りに、だが君はきっと私の所へ来るだろう。常にそうであるように」

 そして男の姿は消え、その空間には鴉が満ちて漆黒の羽根がうねるように宙へ昇っていった。羽根が古の書物の背表紙の塵を落とし、鉤爪が一冊を引っかけて床に落とした。リリアナは受け止めようと慌てて飛び出し、だが寸前で間に合わなかった。鳥たちの姿が消えると、彼女はそれを取り上げて表紙を見つめた。

 テリシア史、題名はそう書かれていた。著者名はなかった。リリアナは眉をひそめ、その本を抱えて近くの机へ向かい、座し、読みはじめた。

 数時間して彼女は立ち上がった。新たな、恐るべき理解とひとつの名前とともに。あえて考えすぎないよう努める名前。何故なら、そうしたならその男が今は保持していない力を与えてしまうから。だがその男には名前がある、つまり自分の心の外の存在だということ。自分が創造したものではなかったのだ、自分が何らかの形でその男の影響下にあるのだとしても。

 あの化け物は自分の夢に取りつき、力ある怯えた少女を際どくも恐ろしい悪女へと変えた……けれどあの男は実在する。止めることはできる。殺すことはできる。

 この悪の一片を、多元宇宙から清めることはできる。ギデオンのために。

 その思いを固く抱き、彼女は大図書棟を出て休暇申請のために執務棟へと向かった。手続きは彼女が思っていたよりも簡単であり、この数週間の彼女の取り乱し具合を鑑みて更に簡単になっていた。学生たちは不満に思っており、彼らの苦情は既に広がりはじめていた。リリアナの地位は安定しているものの、少しの休暇は賢明であるように思えた。まさしく、全員のために。そして一日もしないうちに彼女はセッジムーアの端へと足を踏み入れると、その奇妙かつ愛おしい風景を今一度眺め、目を閉じた。

「いいでしょう、このろくでなし。帰ってあげる」

 灯が目覚めて闇が彼女を包み込み、光を通さない黒雲へと凝集した。数秒してそれが晴れた時、リリアナ・ヴェスの姿は消えていた。


 初めて出会った場所に来い、あの男はそう言っていた。どんな嘘よりも優しい真実を初めて囁きかけた場所へ。つまりそれはドミナリア、もっと詳しく言うならばヴェス家の地所。リリアナは闇のうねりをまとい、生家の背後の小高い丘へと現れた。そして、かつては自分の世界の全てであったものを見渡した。

 地面はぬかるんで乱れ、土は侵食されて腐敗していた。妙だった。沼地が生家を壊した頃、自分は沼地をこよなく愛していたはずだった。ヴェス家の邸宅は廃墟と化しており、ただ年月だけでは説明がつかないほどに崩れ、守りの影を投げかけていた壁は腐った肢のように地面から突き出し、不安定に傾いていた。リリアナはひとつ深呼吸をし、生家へと歩きだした。魔法で靴を守ることはせず、足元で泥が潰れ、水が浸み込んだ。

『おかえり』 過去の声が彼女の耳に囁いた。執念深い、古い声が。『私の元へおかえり』

 彼女は歩き続け、生家の廃墟へと向かった。喜ばしい日々の記憶が心を満たしかけた。長い年月――アナ婦人や前線の僧侶たちと共に訓練に明け暮れ、兄とともに陽光の草原を駆け、芽生えかけた彼女の魅力に引き寄せられた村の男の子たちと干し草に潜り込んだ。けれどそういった長閑な光の断片を、リリアナは押しやった。癒し手であり将軍の娘であった女の子はやがて宮廷の花となり、どこかの貴族の腕にすがる定めにあった。良く言ってお飾りであり、自分自身が輝くのではない。被ってきたもの、失ったもの、その全てが彼女をひとりの女の子以上の存在にしたのだ。

 後悔はしていなかった。自分の心にそれらを染み渡らせはしなかった。今も土に染み渡る腐敗のように――ドミナリアが決して駆除できないであろう、ベルゼンロックの名残。

 生家は今にも崩れそうであるのが見てとれた。そのため彼女は建物を迂回し、ヴェス家の祖先や何世代もの嘆願者たちが埋葬された墓地へと向かった。

アート:Martina Fačková

 ベルゼンロックとジョスが多数の死者の重みを圧倒したかのように、辺りの土は固く締まっていた。彼女は歩き、やがて墓地の中央に立つドミナリアのオーク樹の巨木にたどり着いた。そして腰を下ろし、背中を幹にあずけ、目を閉じた。

 そして再び目を開けると、生家は若い頃のそれであったかのように、光は眩しく無垢な黄金色に輝いていた。あらゆるものの輪郭がかすかな輝きを放っており、これは夢であると彼女に告げていた。更にそれでは十分でないとばかりに、鴉の男が目の前に立っていた。再生されたヴェス家の光景の中でただひとつ輝くことなく、光を飲みこむ存在。

「来てあげたわよ、それに私は眠ってる。お前はこの方が好みよね、意識がなければお前を刺し殺す可能性は低いのだから」 リリアナは声をかけた。「私に何を望むの?」

「私を見つけてほしかった。そしてどうやらそうしてくれたようだ。君は私が思う通りに成長してくれた。待ちわびたよ」

「私の何を待ちわびたの、リム=ドゥール?」 彼女は力の限り重々しくその名を発し、相手の反応を見つめた。

 だが残念なことに、彼は笑っただけだった。「その名を聞くのは久しぶりだな、夢の中であろうとなかろうと」

「嬉しいの? だとしたらもう言わないわ。傷ついたのならいくらでも言ってあげる」

 彼は再び笑い声をあげた。獣じみて飢えた鴉の鳴き声を。「ああ、リリー。なぜ私がずっと君を求めていたのか疑問には思わないのかね? 私がなぜ君を大切に思い、育もうとしたのかを。我々が力を合わせたなら奇跡を起こせるだろう。我々が――」

 リリアナは彼を睨みつけた。「どうして私をここに来させたのかを言いなさい」

 彼は言葉を切った。「愛しのリリアナと再会したかった、では不十分かね?」

「不十分よ」

「君は私の名を知っている。私の歴史についてはどうだね?」

「名高い屍術師。暴君。敗北して恥辱を受けた上に、お前が封じられていた魔法の物品は失われた、でしょう」

「ならば、私は決して眠りはしないし、眠るつもりもないと知っていよう。リリー、例え君であっても私を眠りにつかせることなどできはしない。私が環のひとつを成す鎖はあまりに長く、あまりに強い」 彼は溜息をついた。「君をその鎖に加えようと思ったものだよ」

「つまり私をお前のものにしようとしたということね」 彼女はそう言い放った。「私をお前の完璧な器に作り変えようとした。お前が作っていたリリアナ・ヴェスは私が望んだリリアナ・ヴェスだったのかしら、一度も聞かれなかったのだけれど?」

「親が子供にそのようなことを聞くだろうか?」 彼はかぶりを振った。「君は私の傑作であったかもしれないが、君を破滅させたのは君自身の選択だ」

 彼女は立ち上がり、木から一歩離れた。「ならどうして私をここに呼んだの?」

「なぜなら、ここにいるのは私だけではないからだ」 彼女を見つめる黄金色の両目は、墓地のように陰気だった。「あれらを放っておけば全てを破壊するだろう。知っての通り、私もかつては手を出した。だが常に身の丈以上の問題事を引き起こし、私も人生をふたつ手放す羽目になった。あれらは私をも殺し、君をもそうするだろう。全てを破壊してしまうだろう」

「つまり私を呼んだのは、お前の武器にするために?」

「そうだ、そして違うとも言える。君をドミナリアの武器にするために呼び寄せた。君が生まれた次元のために戦うのだ。私を救い、この次元を……君自身を救うのだ」 リム=ドゥールは何かを言いかけて止め、目を見開いた。その様子はまるで何かを恐れるような。「君自身を救うのだ」 彼はそう繰り返し、そして指を鳴らすと黒い翼の鳥の群れへと弾けた。それらは声高に鳴きながら方々へと飛び去り、やがて最後の一羽が見えなくなると、辺りの様子は彼女が到着した時そのままだった。夢のぼやけた輪郭は消え去っていた。彼女は目覚めており、あの男の言葉が真実であるなら、危険にさらされている。

 リリアナは立ち上がって荒廃した風景を眺め、前回の訪問から何か変化はないかと探った。ぬかるんだ地面に同一の瞬間はひとつとしてない、だがそれは想定通りのものだった。邸宅の壁はひび割れて傾くが、崩壊とは自然の摂理だ――それが不自然な手段でもたらされたものだとしても。彼女はそれ以上のものを探した。もっと深く、暗く、違和感のあるものを。

 彼女は魔法の糸を編み上げ、それを伸ばしていった。リリアナとその延長である魔法の糸はここで生まれ、腐敗した現在の状況であっても、大地は彼女を覚えている。それは飢えた犬が主の呼び声に応えるかのように、彼女の存在へと沸き立って反応した。糸を伸ばしながら彼女はそれを優しく撫で、繋がりと親しみの瞬間を楽しんだ。そして――

 魔法の糸が何か別の、異質な空洞に当たった。それは彼女を拒絶し、力を送り返して押しのけた。腐敗ではない。リリアナは腐敗をよく知っていた。大地が穢れる時、それが意味するものを知っていた。朽ちるということではなく汚れであり、新しくも恐ろしく、同時に古いもの。彼女は力を戻すとその空洞の方角を探り、かすめたものが何かを理解しようと試みた。彼女は動かなかった。その一瞬、まるで今の場所だけが安全であり、今の場所だけが死した家族のものであるかのように。

 けれど安全を求めていたのではない。リリアナはひとつ深呼吸をし、顎を引き締めてぬかるみの中へ足を踏み入れ、その違和感の痕跡へと向かった。それが生きていて、先程感じたように恐ろしいものであるなら、自分がここにいると知らしめねばならない。子供の頃のように隠れ潜みはしない――真っ向から対峙するのだ。

 ただ独り、リリアナ・ヴェスは暗闇へと進んでいった。その背後のぬかるみに、鴉の羽根が一枚沈んだ。


 邸宅を取り囲む森は沼に食い尽くされていた。それでも多くの木々が残り、根が腐り葉が落ちようとも反抗的に空へと延びていた。いずれそれらも倒れ、この土地の変質は完了するのだろう。リリアナは歩き続けたが、今も残るあの違和感を特定するために再び魔法の糸を伸ばそうという気はあまりなかった。あの時触れて、すぐに離れていくようなものではないと感じていた。

 大地へと向ける意識が、心の隅で震え続けていた。この土地は帰還を歓迎していたが、それは森が真の森であった時には決してなかったことだった。緑に溢れて瑞々しく、一心に成長していた頃には。ここもまた、リリアナの土地だった。だがこの土地は……自分に属する土地の隅から隅までが、自分の帰還を恐ろしいほど喜んでいた。足元の地面との繋がりに、そしてここにあるべきではないものを排除するための力に自信を持ちながら、彼女は歩き続けた。

 大気にこれまでにない匂いが混じった。金属的でありながら金属ではなく、血でも錆びでもなく、だがそれらのように舌の裏を刺す。違和感のある匂い。彼女は歩みを止めた。ここで起こっている何かを嗅ぎつけたのであれば、もう十分に近いということ。

 先祖代々の土地に感じた変化の地点に集中すると、彼女は両手に黒い煙をまとわせた。それは命令の力に応じてうねり、よじれ、リリアナは顔をしかめた。この場所に呼び出されただけでなく、この場所に呼び出されて見えない脅威に対峙させられる、それも少しの、嫌々ながらの警告程度で。それは無礼というものだ。

 魔法を引き寄せる途中で、ひとつの人影が木々の中から進み出た。その肌はコーに最もよく見られる白亜の色、頭髪も眉毛もなく、両目からは粘り気のある黒い液体が流れ出ていた。その液体は左手からも多量に滴っており、どうやら皮膚から染み出ているらしい。背中からはチューブに似たものが伸びて衣服の中に消えていた。

アート:G-host Lee

「止まれ」 その女性が発した声は生き物ではなく機械のそれで、共鳴と恐ろしい和音に満ちていた。「お前は我らの集いの場に踏み入った。その罰を受けねばならない」

「私は自分の家の土地に入っただけ。罰を受けるいわれはなくてよ」 リリアナはそう返答した。「ここに留まるのは私。立ち去るのはそちらでしょう」

「それは違う」 その女性は微笑んだ。そして浮かべた恐ろしい笑みは、そのような表情を浮かべることが何を意味するか、いかなる理由で浮かべるのかを忘れた者の笑みだった。「この土地は我らがもの。お前は遅すぎた。ここに来るべきではなかったのだ」

 背後でかすかな飛沫の音があった。わかっていたかのようにリリアナは辺りを見渡した。だが彼女が直面したのは予想していたような平凡な待ち伏せではなく、恐怖だった。

 リリアナにとって、死は謎でも驚きでも何でもない。穏やかなものから不敬なものまで、彼女はそれをあらゆる姿で目にしてきた。朽ちるということは自然の法則。再生もまた然り、何ら恥ずべきものではない。だがこれらは……

 彼女の背後に並んだ姿は、それら自身の本質からよじれ外れて姿を成したかのようだった。死肉が生者の肉とまだらに縫い合わせられ、死肉は生者の肉を殺すことなく、また生者の肉も死肉を生き返らせてはいなかった。人工的な組織と滴り落ちる不快な油がそれらをひとつに繋げており、銀の縫合線とぎらつくワイヤー、それらの見た目はぞっとすると同時に魅惑的でもあった。それらは複数の異なる材料から作られたように見えた。人間やエルフやコー、マーフォークや、さまざまな種族の部位がばらばらにされ、全てを合わせたよりもずっと能率的になるように組み立てられたような。どれも鉤爪や牙、あるいは上腕であるはずの場所に鎌のような刃を生やしていた。あるものは余分な肢あるいは顎を持ち、冷たい視線でリリアナを見つめていた。彼女の生も死も、それらにとっては何の意味もない。思いやりも後悔もなく殺すのだろう。

アート:Brock Grossman

 リリアナは今一度、最初に姿を現したコーの女性を見た。相手は黙って見つめていた。動いてもいなかった。

「とはいえ、お前には使い道がある」 コーの女性はそう言った。「亡霊の残骸がお前にまとわりついている。それがお前をここに呼び寄せた。我々はそれを手に入れる」

「鴉の男が?」 リリアナは尋ねた。この奇妙な人物がその名を知らなくとも、教えてやる気はなかった。「あいつとどんな関係があるのよ?」

「我々には我々の関係がある。お前の方はどのような関係だ?」

「若い頃からあの男につきまとわれているのよ。解放されたいの」

「ならば我らにその男を寄越せ。そうすればお前は自由だ」 コーの女性は再び微笑んだ。「ファイレクシアこそ最高の自由なのだから」

「私は自分自身の自由を追求する方がいいわ」 リリアナはそう返答した。これまでファイレクシアと対峙したことがあっただろうか? 無論、その話は知っていた――ドミナリアに生まれた者として、そしてヨーグモスの絶大な不実を知ることなく久遠の闇を渡る者はいない。だがその汚染はミラディンに閉じ込められていると彼女は考えており、その次元での戦いにも関わっていなかったという事実から、不意に直面したこの危機との繋がりに気付けずにいた。

 彼女は溜めていた力を解放し、もっと快適な場所へと逃げるための繋がりに、灯に手を伸ばした。それは彼女の呼びかけに飛びつき、少しの間、単純にプレインズウォークしてこの問題を他人に任せたいという誘惑が強まった。リリアナがコーの女性を見ると、相手は見つめ返した。自分が何をしているのかに気付いた様子はなく、リリアナを何らかの脅威とみなしたような様子もない。

 いいだろう。その過ちをすぐにでもわからせてやろう。

「どうしてここに?」 彼女は尋ねた。「どうして私の家族の土地に来たの?」

「我らが追う霊はこの地のどこかにある物品に繋がれている。土の中の奥深くに沈み、忘れられ眠りについている。我らが掘削隊が白日の下にさらすのだ」

 ここで自分が立ち去ったなら、この者たちは鴉の男に繋がれた遺物を掘り出し、あの男を奪い去るのだろう。二度とあの男に悩まされることはなくなる。リム=ドゥールは遂に忘れ去られ、その理解不能の策略に巻き込まれる者はいなくなる。

 その言葉は何よりも、彼女の次の行動を決定づけた。リリアナは灯からゆっくりと引き出していた力を手放し、コーの女性を見つめた。「お前の名は?」

「ありがたくも、コー追われのエラスと呼ばれている。ひとつとなったものでありながら、成すべきことのために別個のものでもある。なぜ尋ねる?」

「お前の墓石にどう刻めば良いかを知るためよ」 気さくな様子でリリアナは言った。彼女は沼地に眠る魔法へと再び手を伸ばし、この時は震えるワイヤーであるかのように強く掴んで引いた。リリアナを取り巻く大気が心霊体のように濃密に、墓地のように冷たく変化した。彼女を包囲する肉と鋼の怪物たちは一瞬、その反応の変化に驚いてか動きを止めた。

 リリアナは背を向け、駆けた。

 ウィザーブルームの技は成長と腐朽の内にある。生命の魔術は彼女へと決して簡単に応えてはくれないが、死の魔術はそうではない。そして沼はそれ自体がひとつの墓であり、何千という小さな生物の骨と死骸で満たされている。コー追われのエラスはファイレクシア製の怪物を八体従えている。リリアナには生物相ひとつぶんの死者がいる。逃げる彼女を追いかけるうちに、ファイレクシアの怪物たちは四方八方からの攻撃を受けていることに気付いた。遠い昔に死して骨と腱だけの姿へと腐り果てた蛇、齧歯類、鹿、大型犬ですらも。

 リリアナが用いるのは真の意味でのゾンビではなかった。ひとたび集中が逸れてしまうと、それらは自らの墓所へと戻った。それらは彼女の命令に従って殺すためだけに起き上がり、それが成されたなら速やかに再び倒れた。

 コー追われのエラスは見つめていた、まるでアンデッドの獣たちの洪水を面白がっているかのように。一体一体はファイレクシアの怪物に敵うはずもなく切り刻まれ、叩き落され、引き裂かれていった。それでもそれらの純粋な数だけでも、この屍術師の力を知るには十分だった。この長く腹立たしい仕事に、思わぬおまけがついてきた。自分たちは考古学者ではなく戦士なのだ!

 シェオルドレッドからの命令が何であろうと、あらゆる形で仕えることこそが栄誉。そして今、ドミナリアにおけるファイレクシアの立ち位置を強化できるような不意の幸運が手に入ろうとしている。大歓迎だ。

「その女を生かしたまま捕えろ」 完璧な落ち着きで彼女は言った。軍勢はリリアナへの攻撃を中断し、後を追い始めた。エラスは急ぐことなく、その背後を落ち着いた足取りで続いた。ファイレクシアに急ぐ必要はない。

 最終的に勝利するのは、常にファイレクシアなのだから。


 これはまるで侮辱。もっと強い骨が呼びかけを待つ墓地へと急ぎながら、リリアナは思った。怪物どもは自分を追跡しているのではなく、ついて来ている。全くもって異なる行動。数に劣っていなければ足を止めて振り返り、なぜ適切な追跡を行わねばならないのかを示してやるだろう。だが愚かなまま長く生きてきたわけではない。そのためリリアナは駆け、一歩ごとに足元の大地への繋がりを感じながら、やがて祖先が眠る土の上までやって来た。彼女は立ち止まり、振り返り、ファイレクシアの軍勢に対峙した。

 残っているのは六体。コー追われのエラスと、その命令に応える五体の……兵士たち。全員が何らかの人工的強化を受けており、この沼地のように変質し、真の性質から引きはがされていた。いいでしょう、この者たちを清めるのではない。それが多元宇宙における自分の役目であったことはない。彼女は両手を掲げ、名だたる者とそうでなかった者、何世代もの死者の力を掴んだ、そして迫り来るファイレクシアの怪物へと、腐敗の光を恐るべき威力で放った。確かに相手は人工物、けれど同時に生きており、その生体部位は腐り方というものを知っている。

 しかしながら、その血管に流れる不自然な汚染から、怪物たちはもはや死に方というものを知らないようだった。それらは屍術に侵食されて身体が萎び、腐り落ち、金切り声を上げた。だがそれでも、人工物らしさを増しながら怪物たちはリリアナに迫り続けた。前進するにつれ肉が落ち、それらは直ちに腐り果てた。

 コー追われのエラスは背中から一本の投げ槍を引き抜いた。物騒な棘のあるその先端からは汚れてねばつく液体が滴っていた。動くためにはファイレクシアの怪物たちを包む魔法を解かねばならず、そのためリリアナは相手を睨みつけた。エラスは足を踏みしめて身構え、槍を掲げた。

 エラスは熟達の狙撃手だった。狙いを精密に定めるのではなく、単に自分の位置を決め、腕を信じて標的に当てる。その槍は彼女が従える兵と同じぎらつく金属と、コーの戦士が誇らしく帯びる焼入れをされた木を組み合わせて作られていた。その木製部分がもっと多かったならとリリアナは願った。怪物たちの身体を構成する金属は未だ綺麗で錆びておらず、肉のように腐敗してもいなかった。

 正しく見たなら、死の進行というのは時の流れにとてもよく似ている。コー追われのエラスは投擲し、投げ槍が飛んだ。死に浸された、侵食された地面からリリアナは強く引いた――忌まわしい汚れと自然の死を、力の限り素早く、自分自身の力だけで。鎖のヴェールも、悪魔との契約もない。ただリリアナと、手にした死者の骨と、この大地だけ。

 そしてそれらの遥か底に、国をも転覆させる力を持つ屍術師の器が、屍術師自身よりも強大な者が所持していた器が、リリアナをその道具となるよう仕立てていた器があった――ひとつの指輪が。蓄えられた力を探し求める彼女の魔法がそれを掴み、本能の限りに精一杯引き寄せた。そこに真の、確固たる意図などはなかった。

 頭上で一羽の鴉が声を上げた。一瞬、リリアナは見た。

 死そのものの力を最初に引き出したドミナリアの魔道士。墓所の力を最初に手にし、その意のままに踊らせた男。その精神と力を引き継いだ弟子を支配し、そしてすぐに幾つもの新たな器が現れ、リム=ドゥールへと続いていった。指輪の手は変わり、やがてそれは彼女の祖先の所有物となり、悪用しようという者から隠すために埋められた――だがそれで終わりではなかった。あの鴉の男が、古の屍術師の魂の一片が、リリアナがよく知る器の内で身動きをして、とある娘の屍術遊びを通して次元の彼方より呼びかけた。そしてその娘はやがて、あのヴェールを手放したことで繋がりを断ち切った。手にする者が失われて鎖は沈黙し、彼女はそれが自らに意味するところを知った。

 彼女は始まりへ、今やその名も忘れ去られた魔道士へ戻るもうひとつの環として意図されたのだった。意志をその男の残骸に取り込まれ、魂を先立つ人々の形へと作り直されて。指輪は無限の力を囁きかけた。ただ屈するだけでいい、ただリム=ドゥールが意図したように、器になればいい。ただリム=ドゥールになればいい。ある意味、彼女はそれでもリリアナ・ヴェスでいることはできる。だがその一部は――生徒たちを愛し、セッジムーアを愛し、そしてギデオンと兄を悼む彼女は――幸いにも、消え去るのだろう。

 私は誰にも屈しない。彼女はその意志とともに指輪の約束を追い払い、それを取り囲む力だけを掴んだ。リム=ドゥールの覆いという重荷を受けることなく、自分にものにできるであろう力。

 リリアナは激しくうねる黒い霧を放ち、それは崩れかけたファイレクシアの怪物たちを一掃して投げ槍を宙で受け止めた。槍を構成する木材は即座に腐り落ち、ぎらつく金属だけが残された。コー追われのエラスの狙いは正確だったが、不意に構成素材を失った槍は軌道を変え、リリアナの肩に命中した。彼女は悲鳴を上げた。

 リリアナは力ある魔道士であり、戦士でもあると自負していた。だがドミナリア人の美徳に苦痛を受けて黙っているというものはなく、槍先は氷と酸のように彼女の肌を焼いた。手を伸ばし、彼女は槍先を引き抜いた。刺青が黄金色に輝いた。先程の黒い霧は、何もかもを飲みこむように見えた。だが彼女の身体が発する次なる波に比較したなら、最初のそれはただの薄い霧以外の何でもなかった。これこそが真の闇、足跡を残すことなく生者の世界を駆け抜けることを許された死。

 最初の波にとらわれたファイレクシア人たちはよろめき、関節の多い膝をつき、露出した金属は遂に汚れに屈して崩れていった。コー追われのエラスは霧の届かない位置にいた。軍勢が倒され、動きを止める様子を見つめながらも、彼女はその顔をわずかにしかめただけだった。

 そしてファイレクシア人たちは再び身動きをし、痙攣したように立ち上がった。振り返ってエラスを見つめるその瞳は、もはやきらめく漆黒の穴としか言いようがなかった。霧が晴れるにつれ、それらは彼女へと歩き出した。リリアナは両手を掲げ、刺青を輝かせ、手に入れた軍勢をかつての指揮官へと向かわせた。

 コー追われのエラスは一歩後ずさった。「邪道に堕ちるとは! ひとたびファイレクシアに加わった者は、ファイレクシアであり続けるというのに!」

 リリアナは歯を食いしばり、下僕を動かし続けようともがいた。エラスは間違っていない。ファイレクシア人の骨の中に、自らを主張する汚れが残っているのが感じ取れた。掌握を放してしまったなら、これらは再び立ち上がり、その恐ろしい家族へと戻る。だが今、ここはヴェス家の土地であり、彼女は土の下の死者たちへと根を下ろしていた。そしてそれらは他の何よりも前に、彼女のものだった。

 コー追われのエラスは更に一歩後ずさった。そして兵の運命よりも自分の命を選択し、逃げ出した。

 リリアナはその場で力を抜き、だがファイレクシア人たちの支配は解かずにいた。掌握を緩めたなら、すぐに失ってしまうとわかっていた。土の中にその存在を感じた指輪は、屍術の力が溢れ出す井戸はあまりに深くに埋まっており、この下僕たちを支配しつつ地表に持ち出す力を彼女は持ち合わせていなかった。石術を使えない以上、死者の手に頼らねばならないだろう。土を少しずつ掘り返し、何日もかかるかもしれない。だが放置してはおけないのも確かだった。ファイレクシアについては物語や歴史から多少知るのみだが、それらが何かを求めるのであれば、与えない方がいい。彼女は土の中の骨に残る力を引き出し、その秘宝を更に地下深くへと押し込み、それを遠ざけるよう古の死者たちへと命じた。ドミナリアの土の下、可能な限りの地の底へ。

 ようやくリリアナはファイレクシア人の支配を解き、それらは崩れて悶えた。続いて彼女は今も内に眠る魔力を集め、闇のうねりを残して久遠の闇へと踏み入った。遅かれ早かれ戻ってくることになるのだろう。この地を清め、埋めたものを守るために。自分に敵対した死者がそれを発見しないことを願うだけだった。だが今は、アルケヴィオスとセッジムーアが待っている。傷を清め、力を再び満たすために。

 影の中、黄金の瞳の男が彼女の出発を見つめていた。その操り紐を今一度引くことを喜びながら。紆余曲折はあったが、今もリリアナは彼のものだった。最終的に、リリアナは彼を守ったのだから。

 そしていつの日か、彼女は帰郷するのだろうから。

(Tr. Mayuko Wakatsuki / TSV Yohei Mori)

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