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津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ プロツアー『破滅の刻』特集
津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ プロツアー『破滅の刻』特集
こんにちは! 晴れる屋の津村です!
先週末に、シーズン最終戦となるプロツアー『破滅の刻』が開催されました。世界選手権出場選手、チームシリーズの上位2チーム確定など話題に事欠かない今大会ですが、スタンダード環境は一体どのように変化したのでしょうか。
まずはトップ8に残ったデッキをご覧ください。
プロツアー『破滅の刻』 トップ8デッキ
- 優勝・「ラムナプ・レッド」
- 準優勝・「黒緑巻きつき蛇」
- 3位・「ラムナプ・レッド」
- 4位・「ラムナプ・レッド」
- 5位・「赤黒アグロ」
- 6位・「ラムナプ・レッド」
- 7位・「黒単ゾンビ」
- 8位・「ラムナプ・レッド」
「ラムナプ・レッド」(赤単アグロ)の1人勝ち。優勝を収めたパウロ・ヴィタ―・ダモ・ダ・ロサ選手を筆頭に、トップ8に5名ものプレイヤーを送り込みました。今大会における「ラムナプ・レッド」は、事前の情報でもまごうことなき大本命だったため、決してマークが甘かったというわけではありません。ではなぜ、そのような状態でも「ラムナプ・レッド」は大勝することができたのか。今週はそんな「ラムナプ・レッド」の強さの秘訣と、それを取り巻く周囲のデッキについてお届けしたいと思います。
「ラムナプ・レッド」
14 《山》 4 《ラムナプの遺跡》 4 《陽焼けした砂漠》 2 《屍肉あさりの地》 -土地(24)- 4 《ボーマットの急使》 4 《ファルケンラスの過食者》 4 《村の伝書士》 4 《地揺すりのケンラ》 3 《航空船を強襲する者、カーリ・ゼヴ》 4 《アン一門の壊し屋》 3 《熱烈の神ハゾレト》 -クリーチャー(26)- |
4 《ショック》 4 《削剥》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -呪文(10)- |
2 《ピア・ナラー》 2 《砂かけ獣》 2 《栄光をもたらすもの》 2 《チャンドラの敗北》 1 《チャンドラの誓い》 2 《粗暴な協力》 2 《霊気圏の収集艇》 2 《反逆の先導者、チャンドラ》 -サイドボード(15)- |
前回のリストとの違いの説明は後回しにするとして、まずは「ラムナプ・レッド」の強さの秘訣を探っていきましょう。
「ラムナプ・レッド」が攻略されなかったみっつの理由
- 「速攻」クリーチャーと手数の多さ
- 難攻不落の《熱烈の神ハゾレト》
- 変幻自在のサイドボード
1.「速攻」クリーチャーと手数の多さ
「ラムナプ・レッド」のテンプレートリストには、24枚から28枚程度のクリーチャーが含まれていることがほとんどです。これだけ見ると《焼けつく双陽》や《光輝の炎》といったカードで簡単に対策できそうなものですが、ここで問題となるのはそれらクリーチャーの大多数が「速攻」を持っていることです。
これにより全体除去呪文からのリカバリーも容易になりますし、基本的にソーサリーの除去呪文はダメージを受けたあとでの対処になってしまうので、コツコツとダメージが蓄積していき、気が付けば《ラムナプの遺跡》の射程圏内に入ってしまうといった状況が多発します。
それに加えて、「ラムナプ・レッド」は環境屈指の手数を誇ります。ミッドレンジやコントロールデッキでこれに対抗するのは至難の業で、さらにそれに拍車をかけるのが《熱烈の神ハゾレト》の存在です。
2.難攻不落の《熱烈の神ハゾレト》
「ラムナプ・レッド」の攻略が難しい最大の要因が《熱烈の神ハゾレト》です。
このカードに効率良く対処できるカードは打ち消し呪文や《闇の掌握》くらいのものですし、毎ターン脅威を展開してくる「ラムナプ・レッド」相手にそれらのカード/マナを温存しておくことは非常に困難です。
クリーチャーベースのアグロデッキでありながらも、全体除去が効きづらく《熱烈の神ハゾレト》という最高のフィニッシャーに恵まれていること。これが「ラムナプ・レッド」の対策が難しいとされるゆえんであり、現環境でコントロールデッキが激減してしまった理由です。
3.変幻自在のサイドボード
そして昨今のスタンダードで勝ち抜くために欠かせない要素が、「サイドボード後の速度の変化」です。「ラムナプ・レッド」はメインデッキ戦では環境最高の速度で攻め入りますが、サイドボード後には重めにシフトすることで対戦相手の軽量除去をある程度無効化したり、ミッドレンジデッキのように変貌したりすることができます。
もしも対戦相手のデッキに《猛火の斉射》や《粗暴な協力》が入っている場合には、タフネス1のクリーチャーを大幅に減らすといった対抗策も取れますし、サイドボード後の戦略に幅があることも「ラムナプ・レッド」の強さの要因と言えるでしょう。
パウロのリストの特徴
メインデッキの《削剥》と《屍肉あさりの地》
これら2種類のカードは、プロツアー直前のプロツアー予選を突破した「王神の贈り物」デッキ(参考:Magic Online Standard PTQ 優勝 Olivettiのデッキ)に対して非常に効果的です。
今大会ではメインデッキからアーティファクト破壊呪文や《没収》などを見かける機会が多かったですが、それは参加者の多くがそれほどまでに「王神の贈り物」デッキを強く意識していた結果の表れだと思われます。
《屍肉あさりの地》は「王神の贈り物」デッキ以外にも、「ゾンビ」デッキの《無情な死者》であったり、「黒緑」の「昂揚」を止めたりと、見た目以上に多くのマッチアップでの活躍が見込めます。
《反逆の先導者、チャンドラ》
メインデッキとサイドボードに合わせて4枚採用された《反逆の先導者、チャンドラ》は、多角的な攻撃手段として重宝するだけでなく、「ラムナプ・レッド」対策として日の目を浴びてきた《ゲトの裏切り者、カリタス》への解答という役割も兼ねています。
「ラムナプ・レッド」に採用されている火力呪文の多くは、《ショック》《焼夷流》《削剥》など、3点以下が標準です。そこで白羽の矢が立ったのが《ゲトの裏切り者、カリタス》や《栄光をもたらすもの》といったタフネス4以上のクリーチャーだったわけですが、「ラムナプ・レッド」側もそれらのカードの増加に伴い《反逆の先導者、チャンドラ》や《集団的抵抗》を採用するようになりました。
《反逆の先導者、チャンドラ》だけでなく、先ほどの《削剥》と《屍肉あさりの地》もそうですが、これらのカードにはサイドボードのスロットを節約するという役割もあります。パウロたちのリストは、それにより空いたスペースを有効活用してサイドボード後に幅広い戦略が取れるようになっているというわけですね。
ミラーマッチの後手番をどうするか・「ラムナプ・レッド」以外の選択肢
「ラムナプ・レッド」は「速攻」持ちで、なおかつ《地揺すりのケンラ》や《アン一門の壊し屋》などのブロックを阻害する効果を持つクリーチャーが殴り合うため、どうしても先手の勝率が高くなってしまいます。従来の「赤単」ミラーマッチであれば《チャンドラの敗北》のような軽い除去を大量に投入すれば改善しそうなものですが、《熱烈の神ハゾレト》の前にはそれすらも無力であり、ミラーマッチの勝率を追求することに限界を感じたプレイヤーも多かったと思われます。
そんなミラーマッチを嫌ったであろうプレイヤーたちの多くが選んだのは、黒を基調としたデッキでした。
6 《沼》 5 《森》 4 《花盛りの湿地》 4 《風切る泥沼》 1 《ハシェプのオアシス》 3 《進化する未開地》 -土地(23)- 4 《残忍な剥ぎ取り》 4 《巻きつき蛇》 3 《不屈の追跡者》 1 《ピーマの改革派、リシュカー》 2 《ゲトの裏切り者、カリタス》 2 《新緑の機械巨人》 4 《歩行バリスタ》 -クリーチャー(20)- |
4 《致命的な一押し》 4 《ウルヴェンワルド横断》 2 《造反者の解放》 2 《闇の掌握》 3 《ゼンディカーの代弁者、ニッサ》 2 《最後の望み、リリアナ》 -呪文(17)- |
1 《不屈の追跡者》 2 《豪華の王、ゴンティ》 1 《墓後家蜘蛛、イシュカナ》 3 《精神背信》 1 《闇の掌握》 3 《没収》 1 《大災厄》 2 《不帰 // 回帰》 1 《灯の再覚醒、オブ・ニクシリス》 -サイドボード(15)- |
「ラムナプ・レッド」の対抗馬としてプロプレイヤーたちが活路を見出したのは、《ゲトの裏切り者、カリタス》《最後の望み、リリアナ》《闇の掌握》を擁する黒いデッキです。
《ゲトの裏切り者、カリタス》と《最後の望み、リリアナ》は「ラムナプ・レッド」に加え、今大会のメタゲームで2番手につけた「ゾンビ」デッキ対策としても最上級のカードです。
《闇の掌握》は《熱烈の神ハゾレト》を最も効果的に対処できる1枚で、それ以外にも《ゲトの裏切り者、カリタス》や《栄光をもたらすもの》などの幅広いレンジに対応できるため、対戦相手がサイドボード後にどのようなプランを選択してきても安定した活躍が見込める点が秀逸です。
「黒緑巻きつき蛇」デッキならではの魅力は、《巻きつき蛇》を最大限に生かした爆発力と、戦略の柔軟性です。このデッキは序盤のアクションもしっかりしていますし、それでいて《不屈の追跡者》に《豪華の王、ゴンティ》、さらには大量の「プレインズウォーカー」と、短期戦から長期戦までそつなくこなせるオールラウンダーです。
2色のデッキだけあってサイドボードの選択肢も多いですし、環境が今以上に「ラムナプ・レッド」と「ゾンビ」対策に傾いていくようであれば、「黒緑巻きつき蛇」の持つ柔軟性は大きな武器になるでしょう。
19 《沼》 3 《イフニルの死界》 2 《ウェストヴェイルの修道院》 -土地(24)- 4 《墓所破り》 4 《戦慄の放浪者》 4 《無情な死者》 4 《戦墓の巨人》 4 《呪われた者の王》 3 《ゲトの裏切り者、カリタス》 -クリーチャー(23)- |
3 《致命的な一押し》 4 《闇の掌握》 4 《闇の救済》 2 《リリアナの支配》 -呪文(13)- |
3 《屑鉄場のたかり屋》 3 《精神背信》 4 《没収》 2 《不帰 // 回帰》 1 《領事の旗艦、スカイソブリン》 2 《最後の望み、リリアナ》 -サイドボード(15)- |
プロツアーで「ラムナプ・レッド」に次ぐ勢力となったのが「ゾンビ」デッキです。「黒緑巻きつき蛇」と同様に、黒い神器3点セットをふんだんに使用できる点と、メインデッキやサイドボードに大幅な変更を加えることなく「ラムナプ・レッド」に善戦できる点が評価されての使用率の高さでしょう。
佐々部さんのリストで印象的なのは、他のリストではサイドボードに採用されることがほとんどだった《ゲトの裏切り者、カリタス》がメインから起用されている点です。
《闇の掌握》もしっかりと4枚採用されていますし、仮想敵は「ラムナプ・レッド」とミラーマッチという明確な意志が伝わってくる素晴らしいリストです。サイドボードには「王神の贈り物」デッキ対策に4枚の《没収》と、苦手なところもきちんとカバーされていますね。
「ゾンビ」デッキはプロツアー直後に開催されたプロツアー予選でも大活躍(参考)で、今後最も要注目のアーキタイプと言えるかもしれません。
《削剥》が登場したために以前ほど多くのマッチアップで大活躍とはいきませんが、こと「ゾンビ」ミラーマッチにおける《領事の旗艦、スカイソブリン》の存在感は依然として強烈なので、これからもミラーマッチが多発するようであれば2枚目の採用も検討に値するでしょう。
「今週の一押し~白青・王神の贈り物~」
7 《平地》 3 《島》 4 《港町》 4 《大草原の川》 2 《灌漑農地》 3 《イプヌの細流》 2 《敵意ある砂漠》 -土地(25)- 4 《査問長官》 4 《スレイベンの検査官》 4 《機知の勇者》 4 《陽光鞭の勇者》 3 《発明の天使》 3 《激変の機械巨人》 -クリーチャー(22)- |
4 《巧みな軍略》 4 《復元》 4 《王神の贈り物》 1 《農場 // 市場》 -呪文(13)- |
2 《賞罰の天使》 2 《保護者、リンヴァーラ》 1 《払拭》 4 《否認》 3 《霊気溶融》 1 《俗物の放棄》 2 《燻蒸》 -サイドボード(15)- |
アメリカの新鋭、ノア・ウォーカー/Noah Walkerが選択したのは、件の「王神の贈り物」デッキでした。
基本的な動きは、《査問長官》《機知の勇者》《巧みな軍略》といったカードを駆使して《王神の贈り物》を速やかに墓地に送り込み、《復元》で釣りあげます。
あとは《陽光鞭の勇者》《発明の天使》でライフを安全圏に引き上げつつ戦線を拡大して勝利に向かいます。今大会での結果は奮いませんでしたが、それはあまりにも対策カードが氾濫しすぎていたためだと思います。
ヤソ (八十岡 翔太) さんいわく、直前のプロツアー予選で優勝して目立っていなかったなら、プロツアー本戦を席巻した可能性があるほどのポテンシャルを秘めているとのことなので、今後アーティファクト破壊カードや墓地対策カードが減ってくれば再びチャンスが巡ってくるのではないでしょうか。
おわりに
今週の「津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ」は以上です。プロツアーは「ラムナプ・レッド」の圧勝で幕を閉じましたが、その後のプロツアー予選(参考)では「ゾンビ」デッキが存在感を示すなど環境は目まぐるしく変化しています。
今週末にはアメリカでグランプリ・ミネアポリス2017が、Magic OnlineでもMagic Online Championship Playoffが開催されますので、スタンダードがお好きな方はそれらの大会結果もお見逃しなく!
それでは、また次回の連載でお会いしましょう!
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