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Savor the Flavor
「装い」についての話
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Savor the Flavor
「装い」についての話
by Doug Beyer / Translated by Mayuko Wakatsuki / Translation-Supervised by Yohei Mori
2011年10月12日
よそおい【装い】[名詞] ある者の身元を把握するためのもの。
我々はポリウレタン製のハロウィン衣装を身に着けてウルヴァリン・キャンディー探索モードになったり、セクシー・フランケンシュタインの中に我々自身を組み込んで夜を過ごす。その他どんなことでも。有用性は多様だろう。だけど私が今日語ろうとしている、「装い」という名詞が意味するものはそれだけではない。
私が大好きな文脈、マジックのフレーバーに舞台裏についてのそれの中で「衣装」について語る時は何かもっと、映画スタジオで「衣装」という言葉が意味する以上のものが存在する。映画において、衣装は映画の全体的な外観の一部だ。芸術的デザインの一部だ。俳優へと縫いつけられることになる舞台装飾の要素だ。衣装は時代、場所、舞台の詳細を人類学の言語で伝えてくれる。衣装とは身に着ける文化だ。
マジックのアートにおける衣装も同様だ。今年の《森》はどんな姿をしているのか、もしくは固有名詞をどう発音するのかと同じように、それは舞台で起こっていることを伝えてくれる。事実、ファッションさえ見ればその世界がどのようなものかがわかる。「プレインズウォーカーのための案内」シリーズ以外で舞台の魂を垣間見たいって? ならば、その人々が身につけているものをチェックすることだ。
危険に満ちた冒険の次元、ゼンディカーでは? 探検装備だ。武器は道具としても役立ち、多くのスペースを取らない。丈夫な革と、汚れてへこんだ少々の金属板。
《ヘイラバズのドルイド》 アート:Wayne Reynolds |
《崖を縫う者》 アート:Paul Booner |
ドラゴンが狩り回る、ジャンドの荒々しい地獄の風景では? 獲物の皮の小さな切れ端。シャーマンの刺青。骨でできた戦利品。
《ゴブリンの死の略奪者》 アート:Raymond Swanland |
《枝分かれの稲妻》 アート:Vance Kovacs |
荒廃を経験し、回復しようともがいているドミナリアの不毛の大地では? 空気を濾過するフェイスマスク。魔術師の目を保護する彫刻的な装具は、彼らが打ち負かしたファイレクシア人の抜け殻から影響を受けた。
《流動石の媒介者》 アート:Alan Pollack |
《虚空魔道士の沈黙者》 アート:Chippy |
我々はワールドガイドの全ページを衣装に捧げた。加えて舞台の海岸線と大陸をデザインするにあたってスラーティバートファースト(注1)を演じるようになり、また次元の衣装文化を作り上げるためにナイラ・ディクソン(注2)やジャン=ポール・ゴルティエ(注3)を演じた。我々はハトメ金(注4)やコートのボタン、襟の折り目や肩章について考えるようになった。長手袋と膝上まであるブーツ。プロシア風の軍服風デザインの鎧とヘッセンの兵士風ジャケット。聖職者のローブの袖と吸血鬼ハンターが杭を下げるホルスター。コルセット付きの田舎風ドレスと、天使たちの夜着を連想させるガウン。そして帽子。もしゴシックホラーの舞台を作ろうとするならば、聖なるアヴァシンの気高き名のもとに帽子あれ。
注1:SFコメディ「銀河ヒッチハイク・ガイド」に登場するキャラクター。オーダーメイド惑星の製造に携わり、海岸線のデザインが得意。
注2:ニュージーランドの舞台衣装デザイナー。
注3:フランスのファッションデザイナー。
注4:靴紐や書類を綴じる紐を通す穴に取りつける環状の金具。
帽子帽子帽子帽子帽子帽子。 |
このことに我々クリエイティブ・チームは興奮した。新たな世界のコスチュームデザインは我々のプロジェクト・ランウェイ/WotCデザイナーズバトル(注5)だった。実際にそれらを縫ったり物理的にそれらの詳細を作図したりはしなかったが、それでも勇敢な魔術師、戦士、そしてマジックの世界に住まう庶民の服装一そろいを用意することに我々は興奮を感じていた。
注5:「プロジェクト・ランウェイ」はファッションデザイナーをテーマとしたアメリカの視聴者参加系TV番組。
人間の衣服
我々の目標はゴシックホラーの物語の雰囲気を想起させることだった。伝統的な吸血鬼や狼男を扱う物語の舞台に似合うのは、1790年代から1800年代の西ヨーロッパ的な雰囲気であろう。だけど我々はその中に独自性を求めた。我々は雨に濡れたロンドンの石畳を正確に再現しようとは思わなかった。昔のルーマニアの暗い街道も、シュバルツバルトの冷え冷えとした常緑樹も。だけど我々はそれらの要素全てを想起させたかった。イニストラードの人間の衣装には、広範囲からの影響を一つに組み込みながらも一つに繋がった文化だとわかるようなデザインが必要だった。気候は明らかに秋の涼しさで、湿気った落ち葉が君の荷車の車輪に貼りつき、田園の道は時雨模様の霧の中に消える。それに追加して影響を受けたのは、カリガリ博士(注6)や吸血鬼ノスフェラトゥ(注7)、ジェヴォーダンの獣(注8)といった作品に多く見られたジャケットだった。これらは一纏めにされた。天候はより裕福なイニストラード人たちがいかした革のジャケット、革のベルトにスカーフ、そして下着の上に布製チュニックを身に着ける言い訳を我々にくれた。
注6:原題「Das Kabinett des Doktor Caligari / The Cabinet of Dr. Caligari」、1920年にドイツで製作されたサイレント映画。
注7:原題「Nosferatu - Eine Symphonie des Grauens / Nosferatu」、1922年にドイツで製作された映画。ドラキュラを扱ったホラー映画の元祖とされる。
注8:原題「Le pacte des loups」、2001年公開のフランス映画。18世紀フランスが舞台。
《精鋭の審問官》 アート:Jana Schirmer & Johannes Voss |
《霊廟の護衛》 アート:David Palumbo |
聖職者は男女ともに、重厚な襟と装飾のある袖付きの分厚いローブを身にまとう。これにはいくつかの意味がある。それは息が白くなる気候の隙間風から彼らを確実に守ってくれる。それはまた彼らの大動脈と美味しそうな肉の部分を不快な怪物たちから隠してくれる。だがそれはまた、時間の当惑した物語の中でヴィクトリア朝的な謙虚な社会のイメージを強めてくれる。
《勇壮の時》 アート:Christopher Moeller |
《アヴァシンの巡礼者》 アート:Jana Schirmer & Johannes Voss |
だが一般庶民もまた着飾ることを楽しんでいる。地味な羊飼い、村人、そして農場労働者でさえも素敵な長い上着、フード付きの外套、そしてもしかしたらフリルのついたスカーフ(量は控えめだが)を身に着ける。陽気な感じだろう?この世界には労働者たちがいるが、彼らのすぐ前の兄弟が死んでからずっと、泥に汚れた同じ衣服を着続けている必要はない。彼らのデザインには狼殺しや聖戦士の部隊長と同じくらいの時間が費やされた。
《ガツタフの羊飼い》 アート:Mark Evans |
《物騒な群衆》 アート:Ryan Pancoast |
《月桂樹の古老》 アート:Terese Nielsen |
Daarkenによるコンセプト・アート |
犠牲となった衣装
以上が、人間が着るものだ。我々は多くの努力を費やして人間の衣装に打ちこんできた。それはこの地の人類の文化と姿勢を示す重要な手段というだけではなかった、全くもって。人間の服装はまた、ある狼男が変身していない時に身に着けているものを示す。彼が狼と化した時には、君達はその衣服が足元に引き裂かれて落ちるのを見る。この世界の不浄なゾンビやスカーブ、スケルトンが身にまとうのもまた、人間の衣服がぼろぼろになり汚れたものだ。
《扇動する集団》/《野生の血の群れ》 アート:Greg Staples |
《グール起こし》 アート:Steve Prescott |
《甲冑のスカーブ》 アート:Volkan Baga |
《裂け木の恐怖》 アート:Eric Deschamps |
広範な吸血者
このタイムリーな10月のコスチュームツアーにて、我々が次に停車するのは吸血鬼村だ。我々はイニストラードの吸血鬼へと、ゼンディカーにいる彼らの片割れよりも少々洗練されたものを求めた。必要なのは裕福な雰囲気だった。彼らには、威厳のある薄暗いゴシック様式の城に住まうことを求めた。我々はまた吸血鬼たちの姿を明らかにした。厚着をするイニストラードの人間たちとは対照的に、彼らからは周りの空気の冷たさを感じない。そして彼らは頸動脈を隠す必要がない。その結果、吸血鬼は人間ほど肌を少々露出することを気に病まない。
《自堕落な後継者》 アート:Winona Nelson |
《血に狂った新生子》 アート:Cynthia Sheppard |
《系統の王》 アート:Jason Chan |
我々は「吸血鬼のゴシックな鎧」がここではどんなものになるのかを楽しく想像した。あり余る財産と永遠の貴族階級の倦怠、ゴシックホラーの城のクモの巣だらけの暗い回廊、それらは素敵なものとなった。君たちは「プレインズウォーカーのためのイニストラード案内」の「ステンシアと吸血鬼」の回にはもっと沢山の吸血衣装のコンセプト・アートを見るだろう。
《ファルケンラスの匪賊》 アート:James Ryman |
《流城の巡回兵》 アート:Karl Kopinski |
「覗き穴つきの布」以上のもの
イニストラードの衣装デザインは形のないものたちまでにも広がった。我々はイニストラードのセットに多くの霊魂がいることを知っており、これら幽霊たちに(我々が彼らを「geist/ガイスト」と呼ぶように)このゴシックホラーに影響を受けた舞台において道理にかなった存在になることを求めた。鎖と、ひだがあって宙に漂う布地が幽霊たちを表現してくれるのは間違いないし、我々は期待を伝えたかった、少なくともある程度までは。だがコルセットを着けてぼろ布で着飾ったバンシーもいる。ボタンのある透明なジャケットを着て、子供をさらってしまう恐ろしい森のお化けもいる。これらの空想的な、透明な存在の中にさえ君たちはイニストラード的衣装の形跡を見つけることができる。
《鏡狂の幻》 アート:Howard Lyon |
《モークラットのバンシー》 アート:Svetlin Volinov |
《赤子捕らえ》 アート:Terese Nielsen |
マジックの衣装
《エストワルドの村人》 アート:Kev Walker |
10月はコスチュームの季節だ(リンク先は英語)。君たちはマジックをテーマにしたハロウィンの仮装を計画しているだろうか? その証拠写真はあるだろうか、もしくは今月それを調達するつもりだろうか? もしそうなら、君のコスチューム写真をFlickr や Tumblr、もしくは他の画像提供サービスを通して私に送って欲しい。今月終わりのこの記事で、最高のものをいくつか、是非とも共有したいと思っているから。
今週のお便り
親愛なるダグ・ベイアーへ
その力が頂点に達していた頃、アヴァシニアンの秘宝はイニストラードの怪物たちに対抗できたほど強力であったように思えます。ですが、もしとあるプレインズウォーカーがそれらの秘宝の一つを別の次元(ゼンディカーとしましょう)へと持ち出し、そこの吸血鬼に対して使用しても効果は現れるのでしょうか? それとも秘宝は次元固有のもので、その「モンスター」が同じ種類であるとは認識しないのでしょうか? 同様に、ソリンのようなプレインズウォーカーは、非プレインズウォーカーの片割れたちを撃退してしまうような秘宝に対して免疫を持つのでしょうか。少なくともより多くの抵抗力を持つのでしょうか?
--Evanより
アヴァシニアンの聖印や他の秘宝の力の真の源は、聖職者たちやそれを用いる信者の信仰心だ。アヴァシニアン教会の信者が吸血鬼を追い払い、幽霊を消滅させ、グールをばらばらに吹き飛ばしてしまえるほどに、大天使アヴァシンの本質はあまりにも強大である。聖印はクレリックに信仰心を集中させるのを助けるが、アヴァシンへと繋ぐ大天使自身の力が大きな要因を占める。つまりもし誰かがそのような聖印を他の次元へと持ち去ることができても、君が言うように、大した違いは生じないだろう。君がゼンディカーの吸血鬼に直面した時に本当に必要なのはアヴァシンの力であり、それをゼンディカーへと運ぶには遥かに大変な時間がかかるだろう。ギデオン・ジュラのような誰かがアヴァシンの聖印を突き出したとしても、ゼンディカーの吸血鬼は含み笑いをこらえきれないだろう。イニストラードの吸血鬼一族だけがその聖印に考慮を払っているからではなく、アヴァシンの力がゼンディカーまでギデオンとともに旅をすることができないからだ。
《無私の聖戦士》 アート:Slawomir Maniak |
全てのプレインズウォーカーがアヴァシンの信仰魔術に免疫を持つという全面的な声明を出すことには躊躇するが、実際、彼らのほとんどはそうかもしれない。それは、関係する魔術師の相対的な力の問題だ。吸血鬼・プレインズウォーカーのソリン・マルコフ。その年齢や知恵、多元宇宙のあらゆる次元から引き出す魔術は、平均的な、小さな街の、一回限りの登場しかしないアヴァシニアンのクレリックよりも遥かに強力だ。強大な大天使への信仰も問題ではない。意思の戦いと魔法的武器庫は完全にソリンが優勢だ(そしてそのすぐ後、昼食だ。もぐもぐ)。
興味深いことだが、ソリンには格別にそのような魔術から影響を受けない別の理由があるかもしれない。このブロックのもっと後で知ることになるだろう。
次週:ネファリアとイニストラードの死後の生命について少々身の毛のよだつような姿を見よう。その間に、マジックをテーマにしたコスチュームを私にリンクしてくれ!
翻訳監修:森 陽平
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