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マスターズから学ぶ
マスターズから学ぶ
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2016年5月27日
私は『モダンマスターズ 2015年版』のリミテッドが、我々の定めた『モダンマスターズ』リミテッドの基準に達していなかったことを認めます。このセットは決められた道に乗りすぎ、1つのデッキでだけゼロから英雄になるカードが多すぎ、基本的に横道戦略と変わった行動の数が十分ではありませんでした。さて、我々はこの全てを『モダンマスターズ 2015年版』のデベロップ中に知っていたわけではありませんでした――もし分かっていたなら、いくつかやり直しをしていたでしょう。
その代わりに、我々はそれに対するたくさんの意見に深く耳を傾けて『エターナルマスターズ』に取り組みました。『モダンマスターズ』のフォーマットにはいいこともたくさんありますが、改善すべきだったのにできなかったこともたくさんあります。どんなに努力しても我々は全てを成功させることはできないでしょうが、しかし将来により良いセットを作るためにこのようなセットからの教訓を得て、それらから学ぼうとします。
『Vintage Masters』からの教訓
このセットが『Vintage Masters』――いくつかのカードをMagic Onlineに初めて導入した、Magic Onlineだけに存在するセット――から多くの影響を受けたといっても多分驚きはないでしょう。『Vintage Masters』には興味深い制限があります――モダンで使用可能なカードよりも古いカードだけで構成されているのです。
『Vintage Masters』に取り組むにあたって、我々はこれが困難だと気づきました。とても、とても困難だと。多くの色が初期のマジックの極めてアンバランスな状態になってしまい、よく赤や緑のような色で我々の満足のいくクリーチャーがなくて苦労しました。我々が『Vintage Masters』を作ったとき、まさしく選択肢はなかったのです。
モダンで使えるカードの導入。これは『エターナルマスターズ』への大きな前進でした。我々はこれを『モダンマスターズ』とはっきり異なる雰囲気にしたいと思っていましたが、使えるカード・プールが『Vintage Masters』と同じでは、それととてもよく似た雰囲気になるのは避けられないことも分かっていました。我々は何か新しいことをしたいと考えたのです。
キューブからの刺激
『エターナルマスターズ』をデザインから引き継いだとき、我々がセットを作るとき普通にやっているパターンをたどりました――10の色のペア、それら全ての種となる多くのカード、多くはない横道戦略の材料です。古いマジックに大きく基づいたセットを作ることの問題の1つは、昔は10の色のペアの戦略を作っておらず、多くのセットを越えてそれを機能させる方法を見つけなければならないことでした。
多くの色のペアには我々ができることがたくさんありますが、そうでないペアは「良いカード」戦略の他にできることがほとんど存在しませんでした。『エターナルマスターズ』を初期マジックのスペシャル・バージョンにするためには、本物ではないと感じた色のペアの戦略を人々がプレイすることなく、このセットを機能させる方法を見つけ出す必要がありました。
このセットに取り組むとき、我々はこれを『エターナルマスターズ』のアイデアに見合うものにし、人々がマジックの歴史上最強のカード群から想像するものと一致しない色のペアの戦略を避けようとしました。例えば、引き継ぎのときの白黒デッキはクレリックで、いいデッキだったのですが、私はそれが人々に刺激を与えるとは思いませんでした。たとえこのデッキの競争力を上げるために《壊疽の大巨人》のようなものをコモンにしたとしても、マジックの歴史上最強のカードをドラフトしているという雰囲気にはなりませんでした。
その代わり、我々がほとんどの色のペアで向かった方向は、うまく定義されていなくても、ものすごく強い動きをさせることでした。例えば白黒は戦場に出たときの効果を明滅と墓地から戻してくるカードで繰り返し行うデッキになりました。これは青黒の墓地テーマとうまく重なり、わかりやすさに欠けているとしても自然な感じのデッキを作り出しました。しかしながら幸運にも、『エターナルマスターズ』は簡単なフォーマットになるようにはできていませんでした。これは以前の『モダンマスターズ』のように、ほとんどの経験あるプレイヤー向けのドラフト・フォーマットであり、深みがあって身に付けるのが難しい事柄は、そのような顧客に対して良いものだと私は思います。
『エターナルマスターズ』をどのようにプレイしたいかというおおまかな希望は、『モダンマスターズ』とキューブ・ドラフトの間ぐらいにししたいというものでした。キューブはとてもうまく機能し、やれることの多さがその再プレイ性につながっていると私は考えています。個々のカードやデッキのパワー・レベルはとても高く、そのシナジーは2枚コンボを中心に展開する傾向にあります。『エターナルマスターズ』には多くの2枚コンボが存在しますが、また我々はエルフのような直線的で強力なデッキがいくつかあるようすることにも挑みました。
その気にさせるカード:)
例えば、「本殿」サイクルが『エターナルマスターズ』に収録されているのはそれらがいずれかの色のペアの大きな背景に一致しているからではなく、それらがほんの少しのすごいものを取り上げ、まだ人々にクールなものと横道戦略を与え、そして(最も重要なことに)人々の楽しい思い出のカードだからです。我々は本殿を楽しいものとしてセットに加え、毎回のプレイテストで前に本殿をドラフトしていない誰かがパックを開け、それを見て、ピックしました――「本当に騙してないだろうな!」などとよく言いますが、安心してください――5枚全部あります。
とりわけ、『エターナルマスターズ』に取り組むチームにとって大事なことの1つは、このフォーマットをとても楽しいものにすることです。我々はこのセットを人々がまさにドラフトして楽しいカードで満たすことにしました。《戦隊の鷹》、《マーフォークの物あさり》、《嘘か真か》、《若き紅蓮術士》、《熊人間》、《リス・アラナの狩りの達人》、《小柄な竜装者》、まだまだあります。
これの基本的な考えは、我々は全てのカードを強力になる位置づけにできるということです――しかし、それらのカードを人々に楽しい思い出を蘇らせるようなものにすることも同様です。我々は全く機能しないカードを見つけてきて、それらを現在にある意味で輝くようにすることをよく好みます。それらは自分の居場所を確保しました――特に『コンスピラシー』は素晴らしい役目を果たしました――が、ここで我々は「最高の」リストにすることに焦点を当てたいと考えました。
『エターナルマスターズ』で他に素晴らしいことといえば、アートの見直し期限を過ぎた、再録したい何枚かのカードを収録する方法でした。多くの人々が『モダンマスターズ 2015年版』に十分な数の新アートがないことに関して不満であり、それは我々にはっきりと聞こえていました。20年分を越えるカードに触れて、我々は模様替えをする多くの機会と、人々にその人たちの新バージョンのお気に入りのカードを供給する機会を得ました――そのうちいくつかは初のフォイル化です。
エキサイティングなレア
魅力的なコモンとアンコモンがある以上に、我々はレアにドラフトで毎回出てこないカードとしての重みを持たせたいと思いましたが、それはただ強力な方向性のあるデッキの構築へと導くことになります。このセットにはたくさんの強力な汎用カード――《魔力の墓所》、《精神を刻む者、ジェイス》、そして世界の《刃の翼ロリックス》――がありますが、しかし我々は基本的にリミテッドで「何も書いていない」カードの枚数を大体ゼロにしようとしました。確かにいくつかのカードは他よりも強力ですが、使いものにならないカードはなくすべきです。
このようなセットでレアと神話レアを選ぶときの問題の1つは、それらの多くが人々が欲しがるカードであってほしいと同時に、それらがリミテッドで機能することも求められることです。確かに、何枚かの使いようのないカード――《大オーロラ》、《嵐の活用》、《ゲートウォッチ招致》のようなカードはどのセットにもあります。これらの存在理由はリミテッド以外にありますが、『エターナルマスターズ』のようなセットでは、我々は少なくともこのようなカードが機能する機会を与えます。
《世界喰らいのドラゴン》を例に挙げてみましょう。ええ、これは大きな飛んでいるレアですが、かなり大きなデメリットがついてきます。しかしながら、『エターナルマスターズ』では《動く死体》との無限ループのようなヴィンテージで長年使われているコンボができます。《アルゴスの女魔術師》があるのは《夜明けの宝冠》が『モダンマスターズ 2015年版』にあるのとは異なり、緑白エンチャント・デッキがそれをパックから出せた場合最高のレアの1つです。
思い出になるドラフト
結局のところ、私は我々が『エターナルマスターズ』で行ったことにとても満足しています。個人的に、私はこのフォーマットのドラフトを毎回本当に楽しみました。これは確かに、両『モダンマスターズ』よりも難しいのですが、大きく異なる方法で成功したと思います。私は皆さんに紙でもオンラインでも、何回か『エターナルマスターズ』のドラフトをしてみてほしいと思います。
さて、私は私自身がこのようなセットの対象顧客だろうということを分かっています。私は『ミラージュ』3つの時代から毎セットごとに数十回以上ドラフトをしてきましたが、このフォーマットが私よりも経験が何年か少ないプレイヤーにもアクセスできるものであってほしいと思います。我々はこのセットの向かう先と、人々がこのフォーマットに対してどのような反応をするかを見て、将来の再録セットの作成に役立てます。
今週はここまでです。来週はモダンについてお話しします。
それではまた来週お会いしましょう。
サムより (@samstod)
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