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楽しむための策略
楽しむための策略
Sam Stoddard / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2014年6月6日
『コンスピラシー』ドラフトはマジックの新しい遊び方です。新しい物事というのは難しいもので、従って我々は『コンスピラシー』を可能な限り楽しいものに作りあげるために多くの時間を費やし、それはつまりいくつかの多人数戦の慣習に反して取り組まねばならないということでした――それは長期に渡る、たくさんの強烈なカードが降ってくる作業でした。
とは言え強烈なカードや、多人数戦の一般的な働きを否定したというわけではありません。通常のやり方は統率者戦では巧く機能しますが、より「通常の」リミテッドに適用するといくつかの問題が生じます。その理由のひとつとして、統率者戦は40点のライフと100枚(統率領域の統率者を含みます)のデッキでゲームを開始するので、つまり物事が常に進行中でプレイヤーはその中身に到達する時間があるということが挙げられます。
このプレイ・スタイルに伴う問題は、リミテッドのデッキが40枚しかないことです(従ってゲームを長引かせることができません)。我々はこれらのゲームを興味深いものにする強烈なカードを基本的にコモンには入れず、そしてアンコモンにもまれにしか入れないことにしています。もしこのゲームがレアによってだけ決まるのならば、とても興味深いものにはならないでしょう――そしてそれらが大抵ライブラリー・アウトによって決まるなら、やはりそれも興味深いものにはならないでしょう。我々はコンスピラシー戦で高いライフ初期値を使う可能性について簡単に議論しましたが、「普段の」ブースター・ドラフトに似ているところを維持し、このセットで使用できる大量のデザイン・スペースを使うことが最善だと判断しました。
今回の記事では、『コンスピラシー』の新しい3つのメカニズムについてと、それらを使ってどのようにハイペースで、なおかつ、舞台となるフィオーラの世界を表現するドラマと陰謀を作り出すために十分なプレイヤー間のやりとりを生み出す、多人数戦の経験を作り出したかについてお話しします。
《高層都市パリアノ》 アート:Adam Paquette |
敵を作る
1対1のマジックでは、目的はとてもはっきりしています――全力で対戦相手を排除することです。多人数戦をプレイし始めた場合、いきなり生き残ることがより重要になり、それはしばしば政治的駆け引きが必要になることを意味しています。1人のプレイヤーを倒すことは素晴らしいことかもしれませんが、それによって他の対戦相手に対して無防備になるならばそうであるとは言えません。大事なのはダメージを最も多く与えることでも、最も多くカードを引くことでもありません――目的は生き残って最後の1人となることなのです。
相手に隙を見せられないことはゲームを停滞させ、誰も動かない約束を望む状況へと導く可能性があります――完璧な瞬間が来るまで戦力を積み上げ、味方を作るのです。コンスピラシー戦をプレイすることは友達を作ることが目的でもあります......ある意味では。つまるところ、敵の敵は味方というわけです。
我々が『コンスピラシー』で得たかった感覚は、秘密と不意打ちに満ちた陰謀と駆け引きのひとつでした。我々が必要としたものは人々が議論して同意ができ、将来の好意と交換できるものでした。投票はコンスピラシー戦に最も早く加えられたものの1つで、「普段の」マジックで行うことから最もかけ離れたものです。ほとんどの議決カードで重要なことは、これらがプレイヤーに不平等に被害を(または利益を)もたらすものの間に投票するよう奨励していることです――例えば各プレイヤーはクリーチャーを1体生け贄に捧げるか、4点のライフを失うか、などです。クリーチャーがいないプレイヤーは極めて強い意見を持っています――クリーチャーを生け贄に捧げるのは最良の選択肢に見えます。しかし1体だけクリーチャーがいる(そしてそれは良いクリーチャーです)プレイヤーは当然ライフの喪失を望むでしょう。このような緊張を作り出す場面はプレイヤーがお互いに攻撃する理由ができるシナリオを作る助けになり、それは必然的にゲームを決着させる助けになるでしょう。
狩人狩り
それと同じく、廃位(デベロップでは「王殺し」と呼ばれていました)は、内向的すぎて通常の多人数戦マジックでは敵を作るリスクを冒さないプレイヤーに、攻撃するとても良い動機を与えます。プレイヤーに通常のリミテッドのマジックと同じ行動をさせる方法の1つはそれに報酬を与えることで、それらのことを我々は内部で「クッキー」と呼んでいます。そう、何かをすればクッキーがもらえるわけです。それはライフを得ることだったり、ダメージを与えることだったりします。そう、普通にクッキーです。
物事次第では、我々はあなたにより良いクッキーやより良くないクッキーを与えることができます。例えばカードを引くことなどは通常それ自体が報酬なので、そのことに何か大きな報酬をつけようとはしませんでした。より難しいことを行うほど、それをしようとする人に対して提供するクッキーは大きくなります。他のセットの例として、このカードを見てください。
おお、そのセットのメカニズムを使うと《ショック》がどこかに飛ぶ赤いエンチャントです。これはほとんどお約束になっていますが、それはこのカードの働きによるものです。《燃え立つ復讐》や《知識と力》のようなカードは同じ動きをします。我々はこの手のカードをゲーム・プレイの経験にいくらかの多様性を加えるためと、前からそれを行っている人に遙かに大きな報酬を与えるために作っています。
同じように、廃位は最もライフの高いプレイヤーを狙う人に報酬を与えます。これは最もライフの低いプレイヤーを攻撃することとは違い、自然にゲームから脱落させることはありませんが、ライフの最も高いプレイヤーは目まぐるしく入れ替わる傾向にあるので、それは良いことです。我々はゲームが「弱いものいじめ」のようになることを望んでおらず、ゲームが動き続け、廃位の対象が絶えず変わることを望んでいます。「王位」にあるプレイヤーがそれぞれ攻撃されるにつれて、全てのプレイヤーがそれぞれ一撃で倒されてしまうところまでたどり着きます。これはただライフを得るだけでは逃れられない、ゲームの継続的な展開を作り出します。
廃位を持つクリーチャーを見てみるとそれらはアグレッシブです。0/4はいませんが、その代わり軽い傾向にあって、しばしば攻撃するときに最も良く働く能力を持っています――《知恵の蛇》のような能力や、《玉座の災い魔》の2回目の戦闘フェイズを得る能力です。我々は最も高いライフを持つプレイヤーにダメージを与えることで報酬を与えませんが(そうすると混乱を招くので)、一番ライフの高いプレイヤーを攻撃することに報酬を与えることにより、毎ターン異なるプレイヤーを攻撃することにかなり大きな動機付けをしています。
パーティを続けよう
協議の元々の名前は「カード・パーティ」で、その由来はまさしくこれの挙動によるものでした――皆がカードをもらえるのです。我々はプレイヤーが常にカードを使い果たしてゲームが大きく失速することを望んでいないので、これは重要なことです。土地を何枚か連続で引いてしまうと辛くなりがちですが、ゲームには他に3人のプレイヤーがいて、それぞれが他の誰かを倒すために弱くなる瞬間を探しており、実際に死亡フラグになりかねません。この課題はあなたがこれらに対して使えるカードを得ることでした。確かに、これらはあなたにとってはキャントリップの一種ですが、それぞれの対戦相手にもカードを与えます。従ってこの効果は可変し、その固有のリスクがあるにもかかわらず使うほど十分に強くなければなりませんでした。これが我々がこのようなカードを作った理由です。
5マナで3/3が1体ではちょっと弱くて、2体だとかなり強力です。しかし《セルヴァラの突撃》はそれよりさらに多くなり得ます。協議に失敗する可能性は常にありますが、我々は協議カードを適正なパワー・レベルにするためでなく、プレイしてより楽しいものにするためにこの手のリスクを必要としました。結果として何を得られるかを正確に知ることはありません。
協議カードは実際にコンスピラシー戦が機能するためのパズルの最後の1ピースでした。これらが十分にプレイされれば人々の手札は比較的早く補充され、ゲームの流れが止まらない傾向にありました。さらに、情報が多すぎるとゲームの流れが鈍くなる1対1のゲームとは違い、多人数戦では公開することで各プレイヤーがその情報を全て知り、しばしば新しい人に目標を定めてゲームの流れを劇的に変える役割を果たします。
近くのお店に行こう
私は今回数百語ほど『コンスピラシー』について書きましたが、このセットについて最も重要なことは皆さんがこれを経験できることです。『コンスピラシー』は......今日(訳注:原文の掲載は6月6日でした)、あなたの近くのお店に並びます。私はあなたがこれを試してみることを、とても強く願っています。デベロッパーとして、そしてスパイク寄りのプレイヤーとして、私はこのセットの楽しさと、多人数戦の視点を楽しめたことに感動しました――本当に予想もつかなかったことです。私は1対1のフォーマットでこれをドラフトしたいという人々のことを耳にしましたが、正直なところデベロップで試したことがないので、それがどうなるのかは分かりません。このようにしてあなたがどうしてもこのセットを試してみたい場合、やってみてください。しかし少なくとも同様に多人数戦のドラフトもやってください――それがどうなるかわかります。どんなに好きになってしまうのか、あなた自身が驚くかもしれません。
このセットの素晴らしいことのひとつは、様々な人数でプレイしても上手くいくことです――多くのセットではできないことです。これは(ほとんどのマジックのセットとは違い)プレイヤーが奇数のときに1人で座っている人がいないので真実です。デベロップ中に我々が行ったドラフトの多くは4人か5人で、その後各プレイヤーはデッキを作り、その後無差別戦でゲームをします。5人以上のプレイヤーなら我々が最適だと考えたものよりちょっと騒がしくなり、それ以上の人数がいるならばドラフトしてから2つのグループに分かれることをお勧めします――3人ずつ2つのグループ、4人と3人のグループ、4人ずつ2つのグループ、などなど。9人目がいるなら、普通に9人でドラフトをして4人と5人のグループに分かれるといいでしょう。
ではまた来週お会いしましょう。
サム(@samstod)より
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