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ローリング・プレーンズ
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ローリング・プレーンズ
Zac Hill / Tr. Shin'ichiro Tachibana / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2012年5月25日
今週はプレインチェイスウィークということで、2枚のカードをみんなに紹介しよう。1枚目は"現象"というプレインズウォーカーが次元間を移動するときに遭遇する次元デッキのカードだ。2枚目はマジック・ザ・ギャザリング・トレーディング・カードゲームのデッキに入れられる、実際のマジック・ザ・ギャザリング・トレーディング・カードゲームのカードで、ここ最近リリースされるカードの中で最も私好みなカードだ。それらを通じて今回お送りする話題は:多人数戦用のセットをリリースするにあたって完全に新しいカードを印刷するという決定の過程は? そして、普段はどのようなカードを再版するのか?だ。
ドゥダッ・ドゥドゥドゥー――現象!――ドゥダッ・ドゥドゥドゥー
私は多人数戦のマジックをあまりしない、だがプレイする時、するのはプレインチェイス戦だ。
これにはいくつか理由がある。私はマジックをはじめたのは8歳の時で、チェスの大会のラウンド間の時間つぶしのためだった。そして、自分でも気付いていなかったが、チェスよりもマジックを楽しむようになった。そこで、私は比較的早くに競技環境に飛び込んだ。私にとってゲームをする場合、競技環境にあるのが当たり前だったからだ。最初はとても怖かったが、競技的、1対1という視点でゲームへアプローチしていたので、それがマジックについて考えたり、マジックを楽しむ根本的な方法に影響を及ぼした。
競技的とは言っても、「あらゆるものを投げ出して勝つ」ということではない。なぜなら、土曜の部屋の掃除を放り出して、20代の優秀なプレイヤーとトーナメントで9歳そこそこでプレイしていたからだ。競技的というのは、より精神的な意味で――たとえ失敗しても、マジックについての基礎的なことを無視したり試そうとする衝動を抑えて、各ポイントで可能なかぎりベストプレイを試し、探そうと心がけた。
《Takenuma》 アート:Cliff Childs |
私はもうイベントでプレイしていないが、マジックへの態度は、若かりし頃に脳内に別の視点を通してゲームを理解していたときに固まったと考えている。そして、それをできるようにするのがマジックのデベロッパーとしての我々の仕事の一部であり、実際に各自がプロツアーでトップ8入賞した経験があるにもかかわらず、スパイク向けにしすぎないようにしている。考えをひっくり返し、「そう、ここで見つけられるわずかな利点のために5分間を費やすほど重要なことじゃない」と考える視点が必要なのだ。
プレインチェイス戦の何が好きで、なぜよくプレイするのかというのは、それが私に簡単にスイッチをオフにする「許可」を与えてくれるからだ。このゲームには「ランダム性が存在し、何かすごいことを引き起こすということを席に着く前に理解している」という鉄則がある。このゲームのメカニズムを使うのは、私にとっては解放なのだ。ほとんど制御できない何かが起こるのを受け入れることしかできなず、ただ流されることになるからだ。そして、デッキを作るときは、あらゆるリソースについて絶え間なく制御しようとする義務から離れ、何かイケてることをすることに焦点を当てられる。通常のゲームもすべても制御できないのであれば、おそらくこれは一般的に非常に自然な考え方だ。
ここから教訓のようなものが得られる。
チェイスをイケてるものにしている要素の1つは、あなたに大きな変化と大きな衝撃をもたらし、各ゲームで大きな意味を持つ効果をもたらすと言うことだ。その理由の1つに、各次元は「常在型」の能力に加えて加えて「カオス・ロール」の効果を持ち、時にどう考えてもあり得ない何かを起こす。6面ダイスを振って特定の1つの面が出たときにしか発生しないので、基本的にゲームにおけるその効果はとても抑制されている。
さて、それらの1つをお目にかけよう。
このカードの使い方を説明しよう。次元デッキをめくられたとき――すなわち誰かがプレインズウォークした瞬間――こいつと遭遇する。そのとき効果が発生し、そして次のカードをめくる。もしそれが再び現象だったなら――そう、さらにめくるのだ!
《混沌の霊気》 アート:Dan Scott |
私はあなたにこのカードが記憶に残るゲームを作ってくれることを約束しよう。これがめくられたとき、すごいことが起こる。1ターンで80点のライフを得たり、《森滅ぼしの最長老》に48個のカウンターを置いたり、212点のトランプルダメージを与える攻撃をしたり、《陰謀団の貴重品室》で2人のプレイヤーをライブラリーアウトに追い込んだり。もちろん、ちょっとしたラッキーだって言えるかも知れない。――でも、それこそがプレインチェイス戦の醍醐味なのさ!
秘密諜報員
ご存知の通り、プレインチェイスの製品にはいくつかの次元カードとそれと一緒に使うためのマジックのカードのデッキが入っている。それらのデッキは多人数戦を楽しむためにデザイン・デベロップされており、通常のセットでは様々な理由――パワーレベル、ゲームプレイスタイル、クリエイティブ的な扱い、など――で実装が困難だったテーマやメカニズムが導入されている。 それらに含まれるカードは、時折、バランスの問題のためブースターパックへは通常封入しないカードが、より管理された環境下で良く機能することがある。何を言っているかの例として、デュエルズ・オブ・ザ・プレインズウォーカーズ2012で私がデザインしたカーンのデッキには、4枚の《Mox Sapphire》が入っている。このデッキという文脈においては、それで何ができるかを制御できるからだ。デュエルズはもちろん独立型の多人数戦製品ではないが、カードのパワーレベルはまわりのものに対してであり、主として周りが何をしているかで定義されるということを示していると考えている。
そこで、こいつを見てくれ。
我々は、我々の過去の教訓を踏まえて3マナの続唱カードを作った。
基本的に、プロツアー・ホノルル
《断片無き工作員》 アート:Izzy |
そのため、軽い続唱持ちのものをどれだけ入れるかに細心の注意を払って、そのメカニズムに戻すべきだと決めた。続唱がたくさんのいかれたキチガイなことができるものであるとしても、巧い使い方をすればそれが面白いことであるのは疑いがない。大きな変化と大きな衝撃をもたらし、完璧なカードを引き当てたときには興奮の瞬間を作り出すのだ。
この《断片無き工作員》の例では、 彼は意味のあるレベルのコストで常にアドバンテージをもたらしてくれる強力なクリーチャーだ。まして彼はアーティファクトであり、彼を入れたデッキは無数に組めることだろう。しかし、このカードが使えるのは《均衡の復元》や《祖先の幻視》などで対策カードを探すことができ、いつもの《タルモゴイフ》もいるような環境であるエターナル・フォーマットでのみ使用可能なので、安心して世に送り出すことができたのだ。
みんな、すぐに戻るんだ
ここで、興味深い疑問が浮かんでくる。:統率者やプレインチェイスのようなセットに新しいカードを入れたいと気がついたのはいつだったのか。
直近2年分のマジックのセットだけで構成されるスタンダードは、他のカジュアルな構築デッキに比べてパワーレベルが非常に低い。その理由は簡単なことだ:使用可能なカードが増えると、より多くの選択肢を与え、あなたがデッキのために選ぶことができるカードプールが大きくなる。ほとんどのカジュアルなグループでは、より緩い制限下でデッキを作る。モダンであったり、レガシーであったり、クラシックであったり、(もっとも多いのは)無制限だったりする。それらの環境下では、スタンダードのカードの多くが押し出され、競技マジックの範疇外になるのだ。
《相互の天啓》 アート:Jason Felix |
だがそれはこの種のプレイヤーのためのカードを作るのをやめるということを意味しない! 問題は、ゲームのパワーレベルを押し上げることなくどうやってするかなのだ。もしわれわれが単純に他のよりも強力なマジックのカードを加えたなら、もはや歯止めのきかない軍拡競争になってしまう。
我々が理解したのは、プレインチェイスのようなデッキはこれらのカードにうってつけだということだ。なぜなら、デッキは箱を開けて直ちにプレイできるためにデザインされており、《超起源》のようなものや通常のマジックのゲームで見るような効果を入れることができる。そして、プレイヤーがそれらのデッキから新しいデッキを創りはじめたとき、彼らはより高いパワーレベルの環境、そしてより高度な社会的「ルール設定」の世界に踏み込むのだ。これによって、スタンダードに関係ない世界で、強力で魅力的なカードを作ることができるようになった。
きみたちにとって、これにどんな意味があるのか?
多人数戦の各商品において、そのフォーマットをプレイするプレイヤーのタイプに焦点をあてる傾向にある。例えば統率者のゲームにおいては、重くて強烈な効果、そして特定のレジェンドが紡ごうとする物語に沿ったテーマを中心とするものだ。これらの商品には、スタンダードではバランスを取れない可能性のあるカードであってもその文脈で非常に良いカードが入っているということになる。《トレストの密偵の統率者、エドリック》はこの種のカードで私が好きな例だ。一方、プレインチェイスは、典型的な無差別多人数戦ゲームプレイで良く働くカードをフィーチャーすることになる。もちろん、その両者に共通するカードが存在しないというわけではない。そういうカードも存在するだろうし、実際存在するのだ。最低限のラインははじめからその環境のニーズを念頭に置くことで、その特定の環境において新しいカードをより良くデベロップできるようになったということだ。
重要な事は
たとえあなたが伝統的な多人数戦の熱烈な愛好者でないとしても、機会があればプレインチェイス戦をやってみることをお薦めしよう。最初、私は食わず嫌いを決め込んでいたが、始めてしまえば本当に楽しいものだった。ここまで言ってきた通り、それは解放のようなもので、他のマジックのゲームでは得られない物語を紡いでくれるのだ。多人数戦を好むプレイヤーなら、それこそあなたのために作られたこのすばらしいものを楽しんでもらえることを望んでいる。
この商品はうまく行ったのか? あなたが気に入ったのは何で、気に入らなかったのは何なのか? 多人数戦のプレイヤーのためにこれから何ができるだろうか? もっと根本的なところで、多人数戦のプレイヤーはそもそもどれぐらいいるのだろうか?
Twitter、メール、方法は何でもいいので意見をお聞かせ下さい。
Zac (@zdch)
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