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プレインズウォーカーのための『タルキール:龍嵐録』案内 その2


2025年2月24日
『タルキール:龍嵐録』では龍が舞い、マジックで最も象徴的な次元のひとつで氏族が戦います。「プレインズウォーカーのための『タルキール:龍嵐録』案内」はこのセットの先見せであり、これは二部構成の記事の第二部です。第一部はこちらでご覧いただけます。カードのプレビューは「『タルキール:龍嵐録』ファーストルックまとめ」をご覧ください。タルキールの未来は不確定な状況にあります。『タルキール:龍嵐録』の物語は3月3日に公開され、オーディオブックもThe Magic Story Podcastで視聴可能になります。何が起こるのかを是非とも最初に目撃してください。
『タルキール:龍嵐録』は2025年4月11日に発売です。この嵐の中心に何が潜んでいるのかを見つけ出しましょう。このセットはお近くのゲーム店、Amazonなどのオンライン小売店、その他マジック製品を販売している店舗で現在予約注文できます。氏族に加わり、嵐を打ち破りましょう!
その2、目次
スゥルタイ:無駄になるものは何もない
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アート:Cristi Balanescu |
タルキールの密林を領土とするスゥルタイは、困難を好機へと変えることに長けている。彼らは周囲の土地を巧みに耕作し、広大な密林を効率的な農場に変え、危険な地形の只中に美しい都市を築き上げている。スゥルタイでは、死でさえ氏族の最も有益な人員を止めることはできない。彼らが擁する強大な屍術師たちは誉れある死者を蘇らせ、引き続き指導と奉仕を行わせる。スゥルタイの戦士部隊は小規模ながらも精鋭揃いであり、隠密や地形の知識、諜報活動を活用して敵を出し抜き、この次元における氏族の地位と権力を維持している。
肥沃な土地と優れた農耕技術により、スゥルタイが産する食料と資源は次元中で大いに求められている。スゥルタイは貿易と外交を有利に活用している。表面上は良好な関係を維持することで、より巧妙な詐術を駆使して氏族の権力と地位を高めることができるのだ。彼らは間諜と斥候の広大なネットワークを用いて他氏族の活動を追跡し、スゥルタイの次なる動向を決める助けとしている。一方で高度に専門化された兵士たちは、紛争において入念な計画と地形を有利に活用する。
スゥルタイの再興
シルムガルの群れに属する人型生物たちは危険極まりない人生を強いられ、その価値は移り気な龍王の気分ひとつで測られていた。民間人の間には怒りと不満が渦巻いた。龍王は小さな反乱こそ簡単に鎮圧したものの、抵抗の根は広がっていった。反乱軍の目にシルムガルは、過去のスゥルタイの指導者層と何ら変わらない圧制者として映っていた。浪費的で退廃的で残酷で、富を蓄えながら民の苦しみを無視し、密林の自然資源を台無しにしているのだと。
反乱軍の指導者たちはスゥルタイの名のもとに団結し、デーモンとの契約以前の氏族の起源に目を向けた。ファイレクシア戦争の余波で人型生物の反乱は勢いを増し、シルムガルの領土を手に入れていった。シルムガルに背いたナーガたちが反乱軍の魔道士へと訓練を授けた。力を得た魔道士たちは屍術を用いて戦士や指導者を死から蘇らせ、数で劣る勢力を増強した。これらの不死者たちは名誉と地位を与えられた。彼らの知識と専門技術は非常に貴重であり、死によって失わせるわけにはいかなかったのだ。彼らの力を得た軍勢により、シルムガルも他の龍王たちと同様に敗北した。
スゥルタイの社会
龍の支配を経験し、多くのスゥルタイは単一の指導者に従うことを躊躇している。結果としてスゥルタイ内の権力の大部分は分散している。「牙の番人」がスゥルタイの支配者であるとみなされているが、日常生活においては小さな役割を担うのみだ。彼らの主な義務はスゥルタイの村々の関係を調整すること、精霊龍と共に公平な裁判官を務めること、そしてスゥルタイの常備軍と他氏族に対する防衛を管理することである。村々では選出された村長が、共同体からの尊敬を集める屍術師の司祭長と共にほとんどの決定を下す。
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アート:Evyn Fong |
スゥルタイの常備軍はラシィドと呼ばれており、他氏族と比較するとその規模は小さい。彼らは高度な訓練を受けた熟練の戦士集団であり、密林の込み入った地形での戦いに習熟している。彼らは高い適応力をもって他氏族の、より大規模だが柔軟性に欠ける軍を出し抜くことに長けている。ラシィドの中には間諜や斥候や暗殺者もおり、スゥルタイの安全と防衛を確保するために次元中を機敏に動き回っている。
ナーガはこの次元で最も力ある魔法使いの一部を成している。彼らは生命の要素を操る達人で、害を与えも助けもする。スゥルタイでは多くの村にナーガの守護者がひとりおり、村長や屍術師とは別個の立場で村とその周辺地域を氏族内外の脅威から守り、祝福あるいは呪いの形で審判と罰を下す。
デーモンのラクシャーサは現在のスゥルタイ社会では忌避されており、これらと契約を交わした者は追放されるか殺される。ラクシャーサはシルムガルやかつてのスゥルタイの残虐行為と搾取を助長する者とみなされており、大逆者タシグルが古いスゥルタイを売り渡した理由として憎まれている。
日々の生活
スゥルタイの民間人は主に農業生活を営んでいる。多くは農民や漁師として氏族を支え、輸出用の品々を提供している。また、船大工や織工や鍛冶師といった職人や芸術家も氏族内で高く評価されている。小規模ながらも強力な商人階級であるパンジャシがこれらの品物や材料を他氏族に販売している。同時に彼らはスゥルタイの大規模な情報ネットワークの一部として、諜報活動に従事することもしばしばある。
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アート:Iris Compiet |
- 農業と畜産……多くのスゥルタイ市民にとってこれらは日々の生活の中心である。彼らの暦は作物の生育期と需要によって決定される。スゥルタイは美しく優雅な園芸技術でも知られており、アルビノの爬虫類や鮮やかな羽毛の鳥、極端に大きな植物といった観賞用の動植物を育てている。追加して、彼らは村の中にも美しい庭園や景観を造っている。
- 芸術と手工芸……スゥルタイは秩序ある美を非常に重視しており、銀細工や金細工、精巧な宝石やその他の装飾品の製作など、多くの芸術的追求が幅広く行われている。スゥルタイは織布と染色にも非常に優れており、他氏族が切望する鮮やかな絹や綿を生産している。また、都市を飾るための印象的で精巧な石の彫刻を職人たちが制作している。これは非常に大規模なものだ。
- 蓮の舞踏……スゥルタイには熟練の踊り手たちもおり、優美で優雅なスゥルタイの生き方を表現している。大規模な公演は人気の娯楽であり、収穫祭には舞踏がしばしば取り入れられる。
- ドゥサン拳闘……スゥルタイでは様々なスポーツが地域社会の娯楽となっている。敵意のない競技は個人の野心と競争心の発散の場として利用されており、人気のドゥサン拳闘もそのひとつだ。最も一般的なルールは、武器を使わず、拳と前腕に縄を巻き付けて一対一で戦うというものである。
不易の実り
「あらゆる生物は死ぬ。その本質が大地を養い、次なる収穫をもたらす」――不易の実りはスゥルタイの核となる信念である。死後、個々の生命エネルギーは大地という巨大な生命力の泉に帰り、新たな生命となって戻ってくる。スゥルタイにとって、これは全く同一の個や意識が戻ってくるというものではない。戻ってくるのは個の本質、あるいはエネルギーなのだ。大きな泉へと杯から水を注ぎ、また汲む。すると杯の水は前と同じではない。そして泉には常に水を注ぎ続けねばならない。そうしなければ枯れてしまうからだ。
更生の儀式
死者の蘇生は神聖なる更生の儀式を通して行われる。死者の提供は通常は近親者によって、または提供すべきと生前に記された遺言に基づいて行われる。旧体制下では、人をシブシグとして蘇らせることは刑罰として利用されていた。それは恐怖と威嚇によって大衆の忠誠心を獲得するためのものだったのである。新たなスゥルタイはこの慣習を、支配階級の残酷で無駄な堕落の象徴とみなして不本意な個人の蘇生を禁じている。敬愛された指導者、熟達の職人、尊敬を受けた戦士などが最も多く蘇生される。蘇生は今やひとつの名誉とみなされ、広大なスゥルタイ社会における価値の象徴として、多くの人々が切望する運命となっている。
儀式は死体の準備から始まる。これは細心の注意を要する繊細な工程であり、特製の湿布薬や血清、そして屍術魔法を必要とする。死体は必要に応じて修復される。手足の代わりに上質の義肢が作られ、傷は縫合され、その他の装飾が追加されることもある。その後、死体は儀式用の衣服を着せられ、寺院内の浴場に浮かぶ筏に乗せられる。そして司祭たちが屍術を用いてエネルギーを体内に戻し、屍を生き返らせるのだ。とはいえ、儀式を受けた全員が無事に蘇生されるわけではない。蘇生に失敗するのは、その個人のエネルギーが大地に留まることを必要とされているためだと信じられている。
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アート:Gaboleps |
動物も屍術師によって蘇生され、人と同様に丁重に扱われる。自衛のために幾つかの例外が設けられており、屍術師は身を守るために知性のない生物を即席で蘇生させることが許可されている。
スゥルタイの不死者はシブシグと呼ばれ、氏族内で名誉ある地位を持つ。蘇生されたシブシグは自身の意識と生前の記憶を保持しているが、完全に同一人物であるかどうかは今なお疑問が残っている。ほとんどのシブシグは依然として自分自身を生前と同一であるとみなし、同じ役割を続け、多くの場合は生前よりも高い地位を得る。とはいえ蘇生した個人が生前とは異なる性格を持っている、あるいは自分のものではないと思われる記憶を持っている例もある。蘇生後にスゥルタイ内で生前とは全く異なる役割を追求する者もいる。
葬儀と埋葬の慣習
葬儀は豪華かつ盛大に行われる。悲しみを乗り越えて故人の本質を土に還すためには、生きた生涯を祝うことが必要なのだ。一般的に葬儀で行われるものとして故人の好物を用いた饗宴や、故人の世俗的な遺品を遺志に従って配る「贈与」などがある。
スゥルタイにおいては、適切な埋葬が非常に重要とされる。埋葬は死者の身体とエネルギーが大地へと還り、生と死の循環が迅速かつ効率的に完了するための儀式なのだ。シブシグのように蘇生されない遺体については最低限の処置だけを行う――布で包まれ、浅い沼地に必要最小限の副葬物とともに埋葬される。遺体は速やかに分解され、その水はスゥルタイの豊かな農地を潤す。専門の司祭がこれらの墓所を監視し、死体が正しく分解するように屍術魔法を行使する。
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アート:Marie Magny |
友人や家族は収穫期の間、故人の持ち物を身につけることがしばしばある。故人を思い出し、そのエネルギーが大地の循環に戻るのを助けるためだ。
季節の祝祭
一年を通して穏やかな気候に恵まれ、高度に組織化された農業システムを持つスゥルタイでは、収穫と種まきの季節が春と秋の二度存在する。収穫と種まきを合わせた行事は氏族のどこでも大いに待ち望まれる敬虔な祭りだ。これには様々な上演を伴う大規模な祝宴や、良い生育期を確保するための司祭による儀式がしばしば含まれる。
スゥルタイの魔法
スゥルタイの魔法は主として生命の本質を操る。使用者は望むままに生命力を弱めも強めもし、治癒と攻撃の両方に用いる。魔法の使い手たちは死者の精髄と話し、遺体とやり取りをすることで占術にも長けている。ほとんどの魔道士は各村で最も熟練した屍術師のもとで正式な訓練を受ける。特に有望な魔道士はケルゥの都に赴き、ナーガなどスゥルタイでも最も力ある師のもとで訓練を受けることもある。
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アート:Monztre |
スゥルタイと龍との、および龍の嵐との関係
龍狩り
スゥルタイは間諜と斥候の広範な情報網を維持しており、次に発生する龍の嵐の時期と場所の予測に役立てて氏族を助けている。多くの斥候は嵐の接近を示す微妙な天候の変化を観察するように訓練されており、また他氏族の活動をスパイしてその動向を予測もする。野生の龍を捕らえる際、スゥルタイはしばしば他氏族よりも大幅に少ない人数で到着し、龍が制圧されるのを待ってから待ち伏せ攻撃を仕掛け、弱体化した軍勢を狙い撃ちにして龍を奪い取る。
氏族の龍
ほとんどの龍の世話は任命された戦士と魔道士が行う。龍の多くは宗教的な祝祭に参加し、ナーガと共に村の守護者として働く。スゥルタイは細身で順応性のある体格の龍を選ぶ傾向にある。彼らが生活をすることになる密林では長時間の飛行は困難なことが多いためだ。スゥルタイの龍は優れた待ち伏せ狩人になりやすい。純粋に美しさと優雅さから龍を選ぶこともあるが、だからといってその龍たちが危険ではないという意味にはならない。スゥルタイの龍は毒のブレスを攻撃手段として用いる。それは敵を包み込み、しばしば毒で死ぬよりも先に窒息させる。
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アート:Randy Vargas |
龍の嵐
龍の嵐によってスゥルタイ領土全体の水位が上昇した。彼らはこれを有効に活用し、何も無駄にしないよう浸水した廃墟の上に高床式の都市を建設した。同時にスゥルタイの魔道士たちは密林を嵐に適応させ、植物を操って雨を導き、作物に水を与え、家々を守っている。
重要地点
スゥルタイの領土の大部分は大陸の南部に広がる巨大な三角州に位置しており、マルドゥ、アブザン、ジェスカイの領土と接している。気候は主に熱帯性で湿度が高く、ほぼ一年を通して温暖だが、冬には大きな嵐が発生する。
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アート:Bruce Brenneise |
- ケルゥの都……スゥルタイの中心都市。かつてのケルゥ神殿群の周囲に建設されたもので、三角州の水路内に座している。美しい都市であり、大きな石造りの建物や賑やかな市場、戦士の練習場、魔法の訓練のための学校がある。
- カルシ宮殿……ケルゥの都にあるこの宮殿はシルムガルの統治時代から存在したが、今はスゥルタイ政府の中心として再利用されている。宮殿内の植物園は名高く、丹精を込めて栽培された独特な植物が豊富に展示されている。
- キシュラの高床式水上村……沼地の小さな漁村であり、高床式の家々が水路の上に建てられている。水位の上昇により昔からの建物の多くが浸水し、活気ある町のあちこちに廃墟が点在している。
- グドゥル諸島……広大な三角州に点在する一連の島々。危険な生物の宝庫であり、多くの野生の龍がこの地の一部を占拠している。
- グルマグ沼……スゥルタイ領土の上部を取り囲む危険な沼沢地。
- マラング川……スゥルタイ領土を流れる最大の川のひとつ。雪解け水を水源とする。
- サグの森……領土の端にあるこの森は、スゥルタイによって正式には支配されていない。広大で緑豊かなこの密林はナーガの祖先の故郷と考えられているものの、今なおほとんど未知のままである。ここには理解を超えた巨大な獣が数多く生息している。
- 咲蔦森……スゥルタイ領土で最も広大な、かつ切れ目のない密林。高くそびえる木々と多種多様な動物が生息し、マラング川が流れ、木々の中には多くの村が座している。咲蔦森はスゥルタイの豊かな農業生産の多くを担っている。
マルドゥ:継続という挑戦
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アート:Tuan Duong Chu |
マルドゥは放浪の戦士たちだ。彼らは機敏な戦術と優れた技術、そして敵の弱点の特定と利用を組み合わせて広大な領土を守るとともに拡大している。また彼らは稲妻を操る戦士や射手、氏族への厳格で激しい忠誠心、熟練した獣乗り、そして比類のない鍛冶の技で知られている。マルドゥはタルキールの中央ステップと草原を領土としており、巨大な移動都市を組み立てながらその地を行き来している。
マルドゥの領土は大陸の中央に位置しているため、彼らは他氏族と条約を定めて龍や他氏族から交易隊商を保護し、交易品の一部を支払いとして受け取っている。放浪生活を送るマルドゥは次元全体へと情報を迅速に広め、迫り来る脅威について同盟相手に警告を送り、また敵の動きに先んじることができる。彼らは国境を固く守っており、協定を結んでいない者は侵入者とみなして躊躇なく追い払う。
マルドゥの再興
コラガンの統治下では移動と戦争が絶え間なく、人々は伝統と団結を保つのに苦労していた。群れの人型生物たちの間で抵抗と反乱の囁きが広まっていったが、彼らは孤立したまま年月が過ぎていった。だがファイレクシアの侵略戦争においてコラガンの群れは前線の戦士の多くを占め、結果として龍王の群れの中でも人と龍の両方で最大の損失を被った。彼らは最終的にファイレクシアの侵略者を追い払ったものの、この戦争は混乱への最後の一押しとなった。幾人かの反乱軍指導者がマルドゥの旗を掲げ、コラガンとの公然とした戦争を開始した――コラガンにも彼ら自身にも、侵略からの回復の時間を与えることなく。
散り散りで数も少ないマルドゥは、生き延びるためにはひとつの氏族として再建し団結する必要があると知っていた。コラガンの群れと他の群れ、反乱軍は次元中から仲間を集め、時とともに恐るべき軍隊へと成長していった。そしてついにマルドゥは他の龍王と同様にコラガンも倒した。
マルドゥのダルコヴァン
マルドゥは高度に組織化された軍事的構造に従っているため、氏族内で軍人と民間人の生活の境界は明確ではない。マルドゥの氏族員は自分たちをひとつの全体の一部とみなしており、氏族の成功に対する個人の貢献の重要性を認識している。階級に関係なく、戦士は氏族を支えるために日々の雑務や家事を行う。ある鍛えられた戦士は一方で獣の訓練や裁縫、料理の達人でもあるかもしれない。完全な民間人であっても、全体的な仲間意識と軍への所属意識を持っている。例としてマルドゥの戦士を志す若者は皆、雷の試練に参加する。
マルドゥはカンが率いており、それを支えるのは任命を受けた将軍の評議会であるダルコヴァン議会だ。各将軍はダルコヴァンと呼ばれるマルドゥの独自の小集団を率いている。任命された将軍のほとんどは、コラガンに対する反乱の元指導者、ファイレクシアの侵略を戦い抜いた尊敬される戦士、秩序の再構築とコラガンの統治下で失われたマルドゥ芸術の復活に重要な役割を果たした民間人の長老などで構成されている。
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アート:Steve Prescott |
マルドゥは恒久的な居住地を持っていない。代わりに彼らはダルコヴァン単位でこの次元を絶えず移動し、大規模で組織化された野営都市を一日もかからずに築く。マルドゥにはカンが率いる大旅団がひとつと、将軍たちが指揮する小規模な集団とが存在する。小集団は定期的に大旅団と合流し、物資や情報を交換し合う。彼らの旅は龍の嵐、天候、他氏族の動向、あるいは指導者の気分によって方向付けられる。マルドゥの構成員は全員、氏族の移動と居住に貢献することが期待されている。
マルドゥの氏族内には多様な生物がおり、彼らはほぼあらゆる種類の動物を訓練することができる。氏族の人々と同様に、乗騎はしばしば軍事面だけでなく生活面での機能も果たす。氏族の移動時に装備を運ぶ動物は、その後鎧を着せられて戦闘に赴くかもしれない。いずれにせよマルドゥの乗騎は敬意をもって大切に扱われ、氏族にとって不可欠なものとみなされている。
マルドゥの民間人と軍人
民間人
マルドゥでは軍人と民間人の境界線は曖昧なことが多い。とはいえ職人、狩人、及び治癒師は戦闘には参加せず、もっぱら氏族のために力を尽くす。マルドゥの最年長者たちは高く尊敬されており、その多くは議会で将軍を務め、氏族の文化と伝統を守る知恵の宝庫とみなされている。
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アート:Ioannis Fiore |
鍛冶師は武器の製造だけでなく、見出した技術を分析、複製、改良する比類なき能力でも非常に尊敬されている。加えて鍛冶師たちは嵐唱者のための、あるいは儀式や祝賀のための道具を作ることで、マルドゥの文化的慣習において重要な役割を果たしている。またマルドゥの鍛冶師は、この次元に漂う龍の嵐の潜在的エネルギーに繋がる鎧や武器を作る技でも名高い。
軍事的役割
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アート:Diego Gisbert |
マルドゥ軍には主な役割が三つ存在する。
- 歩兵……マルドゥ軍の比較的小規模な一部分。特定の状況、地形、あるいは戦闘目的のために訓練された集団で構成される。
- 騎兵……マルドゥ軍の大半を構成し、軍の中でも尊敬される役割。軽騎兵と重騎兵の両方で構成され、状況に応じて用いられる。戦士それぞれが熟練した乗り手であり、調教師でもある。通常は軽騎兵が最初に攻撃し、その後に重騎兵が追いかけて敵にとどめを刺す。
- 攻城兵……マルドゥ軍の最小の集団であり、複数の特殊な能力が必要とされる。攻城兵は兵器の使用に熟達しているだけでなく、大規模な構造物を制御および操作できなければならない。
日々の生活
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アート:Ralph Horsley |
- 狩猟と交易……何よりもまず放浪の民であるマルドゥは、肉や毛皮や革といった狩猟の戦利品を主食の農産物と交換する。マルドゥの技術は他氏族の間でも非常に高く評価されており、彼らは鍛冶師の最高の作品を厳重に守っている。とはいえ自分たちで入手できない材料を手に入れるために技術的知識や技能を提供することも厭わない。
- 歌唱……マルドゥの人々は新たな歌を教え合ったり共に作ったりする。マルドゥには死者を送り出す伝統的な歌、結婚式のための歌、戦士の旅立ちや病人のために幸運を祈る歌が沢山存在する。敵を威嚇し、軍隊に活力を与える鬨の声や戦の歌もマルドゥは用いる。
- 絵画と彫刻……マルドゥは実用と美的な目的の両方のために、大規模な壁画や金属彫刻を制作する。建造物は宿営地を飾り、その美しさを高める。また広大な草原で道標として用いられ、あるいはその場所が精神的に重要な地域であると示す。
- スポーツ……競争心、適応力、素早い思考力を必要とするため、スポーツは戦闘訓練に欠かせない手段であるとマルドゥは考えている。無論、多くの氏族員は楽しみと活力をくれる便利なものとしてスポーツを受け入れている。マルドゥの主なスポーツには次の三つがある。
- 獣乗り……乗り手が獣の背中で一連の規定の技を披露する技能コンテスト。通常はその宿営地の長が審査を行う。
- 射撃……通常は炎や電気を帯びた矢を用いて他の射手と競い合う。難易度は段階的に上がる。
- レスリング……力、敏捷性、協調性を試す競技。観客を楽しませるためにチームで行われることが多い。
雷の教令
高度に組織化された共同体であるマルドゥは、氏族内で何が許され何が許されないかを定める厳格な文化的規則に従う。かつてのイラグラの布告は時とともに失われたが、コラガンが打倒されて議会が新たなカンへと忠誠を誓った後、新たな法が制定された。雷の教令は三つの主たる信条で構成されており、これらは他のすべての法の基礎を成している。
- 忠誠は手に入れるもの……マルドゥにおいては、行動こそが最も雄弁である。指導者は兵士たちの敬意を獲得しなければならず、兵士は仲間に対する献身を示さねばならない。
- 共同体こそが強さ……マルドゥの構成員は皆、より大きな全体の中で自分の立場を持っている。そして氏族の強さは最も弱い者で決まる。そのため彼らを守り、気遣わねばならない。
- 勝利とは生き残ること……征服の達成は一瞬の出来事。氏族としては、次に何が起こるかを考えなければならない。最大の勝利とは、氏族を将来にわたって存続させることである。
この三つの信条を元として更に多くの法と、それらを破った際の罰則が成文化された。これらの法はダルコヴァンの間でわずかに異なる場合があるものの、それに従うことはマルドゥの氏族員である重要な証とされている。そしてこれらの法の中には交戦と戦争行為に関する規則が存在し、マルドゥにおける外交の役割もここに含まれる。マルドゥは最初に外交官を派遣せずに他氏族の領土を侵略することはない。降伏した者は丁重に扱われ、氏族内での役割が提供される。
空と炎の激突
マルドゥの氏族員は燠火心と空息吹を信仰している。これらは大地と空を象徴するふたつの自然の力であり、絶え間ない争いの中に存在する。この力の衝突は火花散る稲妻や荒れ狂う嵐、暴風、地質的激変として現れる。マルドゥにとってこれらは制御できない力であるがむしろ敬うべきものであり、彼らの放浪生活はこの容赦ない自然の衝突の中で生き延びられるように設計されている。マルドゥの中で最も強力な魔道士と嵐唱者はこれらの力を引き出し、また短時間ではあるものの操ることができる。
概してマルドゥは開かれた信教構造を持ち、そこには他の氏族の伝統や信仰が混ざり合っている。空と炎の激突への信仰は他の文化からもたらされた慣習と並行して存在するとともに、しばしばそれを補完している。
命名
マルドゥの氏族員は三つの名前を持ちうる――家族名、自ら選んだ名、そして贈り名だ。マルドゥでは成人するまでは家族名を用いるのが伝統であり、成人すると雷の試練を終えて自らの名を選ぶ。贈り名とは氏族のために偉業を成し遂げた戦士へとカンだけが与える特別な三番目の名前であり、その偉業にちなんで名づけられる。
天下大集会
これはカンの命により毎年開催される祝祭にして競技である。マルドゥの氏族全員が集合して盛大な宴を開き、互いに贈り物を贈り合い、歌を披露し、マルドゥの三大スポーツ競技に参加したり観戦したりする。氏族員は好敵手たちへと友好的な勝負を挑む。またここではマルドゥ氏族に最近加わった者たちが特に歓迎され、マルドゥの伝統を教えられる。
雷の試練
この儀式では成人を迎えたマルドゥの戦士志望者全員がとある山頂へと旅立ち、嵐の中で稲妻を捕える。そして彼らは氏族の任務を完遂する才覚と能力の証明としてそれを持ち帰る。雷の試練が真に求めるものはダルコヴァンによって異なる――若き氏族員たちが結束して挑むことを重視するものもあれば、より競争的で勝者ひとりが高い地位を得るものもある。持ち帰った稲妻はかがり火を起こすために用いられ、マルドゥは夜通し食事をして祝う。参加者はそれ以降、自身が新たに選んだ名で呼ばれる。
マルドゥの魔法
マルドゥの魔法は主として雷を操り、また身体能力と武器を強化することに重きを置く。強さと敏捷性に対する彼らのこだわりによるものだ。魔道士は鍛冶師が制作した特別な装備を用いることが多いものの、最も力ある者は直接それらのエネルギーを操る。彼らは炎を起こし、あるいは他のエネルギーの形態を振るうこともできる。そしてしばしば他氏族との戦いでその技術を活用する。
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アート:Olivier Bernard |
マルドゥの嵐唱者は氏族の精神的指導者たちであり、些事から重大事まであらゆる事柄についてしばしば相談を受ける。嵐唱者は神聖な護符を用いて大地と空のエネルギーを自分自身や他者へと与え、戦闘においては兵士や武器や互いを力づけることで支援する。嵐唱者はまた、鬨の声に魔法の力を吹き込む。戦闘以外では宿営地の防衛、民間人からの相談、儀式の主導が彼らの義務である。
マルドゥと龍との、および龍の嵐との関係
龍狩り
予測不可能で素早い性質、そしてコラガンの群れに遅れを取るまいと奮闘してきた歴史からマルドゥは頼もしい龍狩人となっている。大陸中央を領土とする彼らはステップ全体へと常に警戒を怠らず、龍を発見したなら躊躇なく攻撃する。また彼ら独自の伝達網により、潜在的な脅威を素早く警告し合うことができる。
氏族の龍
マルドゥの龍は氏族の中の一部として扱われ、他の戦士と同じように戦場の内外で貢献することが期待されている。献身的な訓練士と、時に嵐唱者が氏族の龍の世話をする。マルドゥの龍は速度と機敏さを特徴とする――小型の龍は熟達した空乗りの乗騎となることが多く、大型の龍は兵士やダルコヴァンの輸送を補助することもある。特に強く素早い龍を見つけたならマルドゥは容赦なく捕獲を試み、時に何か月もの時間をかける。マルドゥの龍は雷のブレス攻撃を持ち、その破壊力で敵を驚かせる。
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アート:Jason A. Engle |
龍の嵐
放浪生活を営むマルドゥは龍の嵐の先を行くことができる。彼らは野生の龍を捕まえるため、また草食獣の群れを養う雨を求めてしばしば龍の嵐を追いかける。彼らの鍛冶師はまた、龍の嵐のエネルギーを一枚のうねる壁へと伝える革新的な雷の障壁を開発し、その内部の宿営地を比較的安全に保っている。
重要地点
マルドゥの領土の大部分はタルキール中央のステップ地帯にあり、他の全氏族と境界を接している。気候は概して乾燥しており、短い雨季がある。ステップ地帯は山脈に取り囲まれ、岩だらけの台地や沼地や峡谷が点在している。
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アート:Marina Ortega Lorente |
- ダルコヴァンの都……わずか数時間で解体も建設も可能な放浪の民の都。ダルコヴァンはそれを統べる将軍の名前で区別されることが多い。常に移動しているため、多くのマルドゥ氏族員は自分たちのダルコヴァンを単に「家」と呼んでいる。
- 雷の競技場……最大のダルコヴァン都市に設置された中央天幕。市場での取引、遊戯、食事、その他日常的な活動のために氏族民が集う。また、天下大集会の饗宴が開催される場所でもある。
- 龍歌の岩……とある長い環状の岩石の俗称。上空から見るとわずかに龍に似ており、経由地として利用されている。この岩には多くの絵が描かれており、外交のための平和的な集合場所とみなされている。岩が声を反響させるため、マルドゥの氏族員はここで歌うことを好む。
- 砂草原の門……かつてはアブザンの都だったが、後にマルドゥによって占領された。そのためアブザンの建造物の残骸がマルドゥの旗や天幕の間に見られる。この地域はマルドゥの草原から、更に乾燥したアブザンの領土への遷移を示している。
- 絶叫郷……アブザン、マルドゥ、スゥルタイの領土が交わる付近に位置する小さな沼沢地。この名は木のうろに棲んで金切り声を上げる鴉に由来する。
- 金色の死地……絶叫郷と砂草原を結ぶ低地のステップ。起伏のある草原で、マルドゥの領土の大半を占めている。この地域には大型の生物が徘徊し、龍を引き寄せ、突然の嵐が頻繁に発生することが知られている。ステップには道標や嵐からの避難所として氏族員が建てた恒久的な標識が点在している。同時にこれらは大きな戦の場を示す祠であり、マルドゥや敵の死者が埋葬されている場所でもある。
- 摩滅の地……マルドゥの土地を通り、ティムールの領土にあるカル・シスマ山脈にまで達する深い裂け目。細かな黒い砂が絶え間ない風によって打ち付けられ、浸食されている。危険ではあるものの採掘や待ち伏せには絶好の場所となっており、地域紛争の頻発地点でもある。
ティムール:この大地が我らを導く
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アート:Irina Nordsol |
ティムールは北部の山岳地帯で力強く生きる民だ。彼らは半遊牧生活を営みながら環境と調和して暮らしている。ティムールの生活は凍りつくような長い冬に適応している。彼らは狩猟や採集や牧畜の達人であり、共に働く動物の相棒たちと密接な絆を築いている。尊敬を受けるティムールの囁く者は大地の精霊を呼び起こして未来を占い、氏族に導きと助力を与える。ティムールは基本的に孤立主義であり、他の氏族の侵入から自分たちの土地と生活を守ることを重要視している。
ティムールは領土である北方地域を断固として守り、常に戦士や狩人や龍が巡回を行っている。他氏族のよそ者が訪れたなら、ティムールはそれを自然の秩序に対する危険であると、自分たちの希少で貴重な資源が略奪される危機であるとみなす。ティムールにとって、土地の保護と管理は生活に不可欠なものだ。彼らは大地の精霊との良好な関係を維持し、将来の世代のために天然資源を保護することに重きをおいている。ティムールの中には、タルキール全土の土地を守ることが自分たちの責任であると考える者もおり、氏族がティムールの領土外で今よりも積極的な役割を果たすべきだと主張している。
ティムールの再興
アタルカの統治下においては、資源は減少を続けていた。群れの民の間に飢餓と病は絶えず、多くの人々が龍王の圧政から逃れる方法を模索し、時とともに反乱軍の小集団が現れた。当初、反乱は小規模に留まっていた――群れの龍たちが獲物として彼らを狩るようになったため、生き延びることが第一だったのである。だが龍たちの多くは何世代にもわたって狩りをしておらず、鈍ってしまっていた。また反乱軍は地形を熟知しており、アタルカ自身から巧みに逃れることができた。反乱軍は飽くことのないアタルカの貪欲さに憤慨し、大地から生命力を奪うその支配は残酷かつ貪欲であるとみなしていた。
小規模な反乱の噂が広まると、隠れて生き延びていた囁く者の多くが姿を現した。彼らはティムールについて、過去の伝統について、そして自分たちが再度ひとつとなって繁栄する未来について語り、反乱を活気づけた。恐れ知らずの狩人たちに率いられた反乱軍は、エレメンタルの魔法と熟練のサバイバル技術を活用して戦った。囁く者たちもその力となった。彼らは書かれざる今についての知識を提供して次の行動に指針を与え、アタルカの群れに先んじた。力を合わせた奮闘により、他の龍王たちと同様にアタルカも倒された。
ティムールの社会
ティムールは半遊牧生活を営んでおり、一年を通じて村と宿営地の間を移動している。冬、春、秋は大体を村で過ごすが、夏は一年で最も移動の機会が多くなる。単一地域での過剰な狩猟や放牧を避けるために、彼らはより小規模な宿営地を頻繁に移動する。
氏族を率いるのは「龍爪」と、囁く者の長である「二度囁く者」である。龍爪は尊敬される戦士であり、ティムールの氏族員によって選ばれる。一方、二度囁く者はティムールの囁く者全員の中から精霊によって選ばれる。両者が共同で氏族全体を統治する決定を下しており、龍爪は主に現実的な事柄を、二度囁く者は精神的及び抽象的な事柄を担当する。
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アート:Tran Nguyen |
氏族全体を統括する指導者がいる一方、ティムールは小規模かつ緩やかな繋がりを持つ家族単位の集団で構成されている。小人数の集団が個別に活動するというこの性質は、他氏族から身を守り、資源の乏しい気候で生き延びる上で有効的である。家族集団においても指導者ふたりの構成を踏襲しており、世俗的指導者と霊的指導者が協力して集団のために決定を下す。
ティムールの多くが自衛と狩猟に長けているが、氏族の中には高度な訓練を受けて戦闘に特化した戦士もいる。彼らの多くは乗騎や動物の相棒と共に行動して広大で困難な地形を素早く移動し、敵を出し抜く。また彼らは厳しい気候を乗り切る達人であり、敵に対して環境を利用することで直接対決を避ける。
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アート:Brain Valeza |
ティムールは動物の相棒たちを家族の一員とみなしており、敬意をもって大切に接する。動物の相棒は特定の個人と結びつき、共に生活し共に働く。両者は人同士と同等に互いを理解することができ、ティムールのほとんどは一度に一体の相棒しか持たない。様々な動物が相棒となるが、一般的には人型生物のパートナーという役割に適したものが選ばれる。中には乗騎としても働く動物もいる。
日々の生活
民間人はティムールの中で多くの役割を担っている。氏族の幸福と生活様式を直接支える狩人や採集民、家畜飼いは最も一般的であり、食料と住居の確保に重点を置いている。彼らは土地の資源のバランスを崩さないよう必要なものだけを取り、狩猟または採集したものは余さず利用する。狩人と採集民の多くは斥候としても働き、地域の変化や他氏族の活動を観察する。芸術家や職人は氏族内で高く尊敬されている。
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アート:Aaron J. Riley |
- レスリング……運動競技はティムールで人気の娯楽だ。戦士や狩人は閑散期にレスリングの試合に参加することで繁忙期に備える。レスリングの優勝者は高く尊敬され、ティムール内でしばしば指導者の地位に就く。
- 狩猟、栽培、畜産……北部の気候は農業にあまり適していない。そのためティムールは畜産を営んでおり、移動の際には家畜を連れて行く。半恒久的な居住地の近くでは農業も行っており、将来の収穫を考えて既に成長しているものの採集と栽培に重点を置いている。加えてティムールは熟練の漁師たちでもあり、最も寒い季節には追加の食料源として凍った湖で魚を釣る。
- 物語り……ティムールの主要な娯楽であり、しばしば長い狩猟の後に共同体で集まり、祝ったり長い冬の夜を過ごしたりする。踊りや歌を通して表現されることが多く、最近の戦いや狩り、伝統的な物語がしばしば演じられる。これらの催しは競争的になることもあり、語り手たちは誰が最も面白いかを競い合う。
- 彫刻と手工芸品……半遊牧的な生活を営んでいるため、ティムールの芸術品のほとんどは小型で持ち運びやすいものだ。彼らは刺繍と精巧な金属細工を専門としており、飾りやすく持ち運びやすい絶妙な装飾品を製作している。とはいえもっと大規模な作品を好む芸術家もおり、氷やその他の自然素材から印象的かつ時とともに消える彫刻を制作している。
久遠の歌
ティムールは「久遠の歌」を信仰している――大地に満ち、過去、現在、未来のあらゆる存在を結びつけるエネルギーだ。この核となる信念は、精霊たちは大地に住まい、物質世界と共存しているというものである。精霊は定命の生物のように、時間と空間に縛られることはない。それらは過去と未来の両方に存在するかもしれず、あるいは起こらなかった過去や起こらないかもしれない未来にさえ存在する可能性もある。久遠の歌を、ティムールは慣習や義務ではなく生き方とみなしている――精霊は信じるべきものではない。ただ存在するのだ。
呼集の宴
時に、囁く者は精霊を呼び出す儀式を主導する。囁く者だけが参加する内密の儀式もあれば、多くの氏族員が参加する大規模な行事もある。この宴には幾つかの共通要素がある――ハープのような弦楽器で演奏される律動的な音楽と組み合わせた祈りの歌、囁く者だけが知る特別な振り付けの舞踏、そして囁く者が必要に応じて精霊のエネルギーを導き、形を与えるための魔法が込められた炎だ。
季節の祝祭
ティムールの儀式の多くは季節に応じて行われる。秋から冬への移行と冬から春への移行は一年の歩調を定めるもので、特別な儀式が催される。
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アート:Ben Wootten |
- 霜駆け……夏から秋への移行を祝う厳粛な行事。ティムールの家族は共同体の仲間たちに食物やその他の物資を贈り、来たる冬を全員が乗り切るための準備をする。
- 雪解け……冬から春への移行を祝う喜びの祝祭。ティムールの「新年」とみなされており、家々や共用空間の清掃、古いものの片付け、新しいものの導入を伴うことがしばしばある。
- 永夜……一年で最も夜が長い日であり、物語を語りながらの饗宴で祝う。地平線に太陽が初めて昇って永夜が終わるまで、ティムールの人々は昼夜を通して起き続ける。
- 天頂の日……一年で最も昼が長い日であり、昼夜を通して踊りや集会で祝う。様々な競技や賑やかな活動が含まれることが多く、太陽が地平線に沈む様を見るために人々が集まる時にだけ中断される。
ティムールの魔法
ティムールの魔法は氏族に力を与えて守るためのものであり、主として魔道士たちがエレメンタルのエネルギーを用いて展開する。ティムールの魔道士は大地や自然物を直接動かし、エレメンタルのエネルギーを吹き込み、具体的な用途のために有形の姿を作り出す。ティムールの魔法はしばしば、術者が大切にするあるいは馴染みある動物の形をとる。
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アート:Marina Ortega Lorente |
囁く者は精霊によって土地の代言者として選ばれ、久遠の歌と直接繋がっている。そのため囁く者は高く尊敬され、重要な氏族員とみなされている。彼らのほとんどは青年期に選ばれ、先輩の囁く者と共に厳しい訓練を受け、魔法の技を磨き、能力を習得する。囁く者たちは共同体に深く溶け込んでいる――狩りや戦闘には参加しないものの、癒しや守りや予言を提供して仲間たちの力となる。ティムールの人々は定期的に囁く者へと指導と助力を求め、彼らとの交流は日常生活でも頻繁に行われる。
ティムールと龍との、および龍の嵐との関係
龍狩り
ティムールの囁く者は、来たる龍の嵐の時期と場所を予測することに長けている。これによりティムールは他のほとんどの氏族よりも早く嵐に到着し、新たに生まれた野生の龍をより多く仲間に加えることができる。
氏族の龍
ティムールと龍とは強い絆を成す――龍は氏族の戦士や狩人とともに訓練し、他の氏族員と同様にそれらの活動を手伝う。ティムールの龍は、家族にも似た小さな集団を成す傾向がある。各氏族の龍の中でもティムールの龍は最も力強く、最も恐れられている。彼らはティムールの領土の境界を防衛し、氏族員を熱烈に守る。北方地域に繁栄する彼らは概してずんぐりとした頑丈な体形であり、炎のブレス攻撃を用いて敵を焼き尽くす。
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アート:Joe Slucher |
龍の嵐
ティムールの囁く者は、この次元におけるほとんどの龍の嵐の時期と場所を予測することができる。この知識と半遊牧的な生活様式のおかげで、ティムールは嵐から素早く避難したり隠れたりすることができる。またエレメンタル魔術の専門家は氏族を守るために嵐を操り、雪や雨の障壁を作り出して最悪の天候を防ぐこともできる。
重要地点
ティムールの領土のほとんどは、雪と岩だらけのカル・シスマ山脈とその麓にある。ティムールの土地はマルドゥ及びジェスカイと接している。気候は亜寒帯性で気温はとても低く、大部分の土地は一年を通じて雪に覆われる。夏は短く、豊かな緑が芽生える。
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アート:Constantin Marin |
- カラキク氷河の居住地……氷河の谷間に位置する村であり、氏族員が主に冬季に利用するふたつの恒久的居住地のうちのひとつ。幾つもの氷の洞窟が快適さと断熱性を提供しており、その入り口は加工した革と龍の骨で作られている。
- 夏の地……丘陵地帯を覆う高山林、その中に広がる空隙地。正式名称をアヤゴール(龍の鉢)という。ティムールによって整地され、毎年の天頂の日の祝典に使用されている。ここでティムールは氏族として生き延びたことを祝い、アタルカの残虐によって亡くなった人々を追悼する。
- 湧霧の村……とある地熱蒸気孔を取り囲んで建てられた半恒久的な集落であり、季節の変わり目にはそれを用いて家々が暖められる。蒸気孔は春と秋に最も活発になり、その時期にはティムールの多くの家族が村に流れ込む。
- 永久氷……神聖な山頂であり、堅固で安定した雪原が広がる。囁く者たちだけが通ることができ、重要な儀式のための特別な場所がある。
- 炎の縁、カダット……ジェスカイとティムールの領土の間に位置し、活発な火山活動で知られている。以前はジェスカイに属していたが後にアタルカによって征服された。現在では暫定的協定が結ばれ、両氏族ともこの地域で狩猟や採集を行うことができるが居住地を建設することはできない。
- 龍の喉……曲がりくねった深い谷であり、絶え間ない悲鳴が自然の音響効果により響き渡る。神聖な場所であり、囁く者だけが訪れる。
- 閃輝湖……冬には凍るものの、一年を通して魚が豊富に採れる高山湖。冬には分厚い氷が張るため、ティムールはその上に宿営地を築く。
- 雨とばりの森……低山地帯の大部分を覆う緑豊かな森。動植物が最も豊富な夏にティムールが頻繁に訪れる。
これで氏族を把握しましたね。さあ、3月3日に始まる全7回の壮大な物語に備えましょう。DailyMTGで読む、あるいはThe Magic Story Podcastでも聞くことができます。
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