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殺しのメアリーと殺人ボット
殺しのメアリーと殺人ボット
Quinn Murphy / Tr. Tetsuya Yabuki
2017年11月15日
「卑怯な破滅軍団/League of Dastardly Doom」とは、お行儀の良い人物が所属しているとは到底思えない響きですよね。「卑怯」で、(さらに恐ろしいことに)「破滅的」な連中ばかりいる軍団が本当にあるとしたら、飛行船の脱出口にまずマナーやエチケットについて書かなければいけなくなります。
いや、そうでもなさそうですね。
〈殺しのメアリー/Mary O'Kill〉を初めて見たとき、私は新ファイレクシア版のメリー・ポピンズかな、という印象を持ちました。メリー・ポピンズが可愛らしい子どもたちに囲まれているのに対し、〈殺しのメアリー/Mary O'Kill〉は金属刃の付いた球形ロボットの群れに囲まれています。
〈殺しのメアリー/Mary O'Kill〉が近くにいれば、彼女が奏でる殺戮の調べで丘は賑やかになるでしょう。
殺戮するからといって、礼儀作法がなっていないわけじゃありません。私が見るに、〈殺しのメアリー/Mary O'Kill〉は敵を徹底的に破壊しますが、お茶の作法も身につけていると思います――絶対そう見えますよね? 真の悪役は、見た目か中身をどちらか選んだりしません。どちらも悪役に相応しいものを備えているものです。
だから彼女の姿を見た方は、はじめは文字通り「『ボール』ガウン(夜会用のドレス)」を表現した淑女だと思うでしょう――彼女の胸元で輝くブローチが、周りを囲むロボットに付いているものと同じであることに気づくまでは。それに気づくと、さらに彼女が差している傘もただのおしゃれではなく、ロボットの上部パーツであることに気づくはずです。彼女がボールガウンへ身を沈め、傘を引いて上に被せれば、Killbotの軍勢に混じり礼儀正しく(あるいは礼儀も何もなく)敵に忍び寄り、沈黙させることでしょう。
ちょっと待った......「殺人ボット/Killbot」?
これらと接するときはマナーを忘れてください――ほとんど話すことはできませんから。たしかに好奇心は学ぶ上で貴重なものですが......彼らの好奇心を掻き立てているものが何なのかは問わないでおきましょう。警報音やモーター音、その刃で刺すものなどが含まれていると思います。
この暗殺ロボットの群れの中に自身を隠すスチームパンクな暗殺者は、「卑怯な破滅軍団」の一員として必要なことのリストをひとつひとつ確実に遂行していきます。『Unstable』ドラフトへ影響するのはもちろん、将来のマジックのカードへの期待が高まるこのカードを詳しく見ていきましょう。まずは、このカードのメカニズム的な部分を説明します。
〈殺しのメアリー〉の挙動
カジュアル向けのデザインとは、平凡なデザインを指すわけではありません。
〈殺しのメアリー/Mary O'Kill〉とロボットの群れは、これまでにない挙動を見せます。マジックのデザイン空間の広さを表現し、未来を垣間見せてくれるカードです。このカードの挙動を理解するため、いくつかのことを確認しておきましょう。
〈殺しのメアリー/Mary O'Kill〉の能力は、このカードがあなたの手札にあるときに起動できます。自身を手札に戻すことも手札から繰り出すこともできます。
交換された殺人ボット/Killbotや〈殺しのメアリー/Mary O'Kill〉は、「戦場に出る」わけではありません。状態が交換され、別の状態に移行することはありません。
この能力の魅力は、マジックの領域間を状態の移行なしに動くことができる点です。この即時的な効果は、彼女の持つフレーバーと実力を完璧に表現したものと言えるでしょう。彼女が何をするのかは、彼女の姿を見ればひと目でわかります。そしてこのカードは、その通りの挙動を見せるのです。
〈殺しのメアリー/Mary O'Kill〉 アート:Simon Dominic |
卑怯なドラフト
『Unstable』ドラフトでの〈殺しのメアリー/Mary O'Kill〉は、殺人ボット/Killbotを十分に確保できれば対処の難しい脅威となります。見た目は6マナ5/5ですが、このカードが手札にあり能力を起動できる状況なら、6マナも支払う必要はありません。2ターン目に〈詮索好きの殺人ボット/Curious Killbot〉を展開すれば、3ターン目にインスタント・タイミングで5/5と交換できます。ロボット軍団を戦場に作り上げれば、〈殺しのメアリー/Mary O'Kill〉は究極のコンバット・トリックになるのです。通常、アタッカーやブロッカーを入れ替える場合はそのクリーチャーの状態はリセットされますが、〈殺しのメアリー/Mary O'Kill〉の能力ではそうなりません。
このカードは、多くの場面であなたに決め台詞をもたらすでしょう。
「ああ、『こいつ』をブロックしたいのかと思ったよ」
「いいコンバット・トリックだね......ここは一時撤退して、君には殺人ボットを壊してもらおうかな」
ひとたび機能すれば止めるのは難しい〈殺しのメアリー/Mary O'Kill〉ですが、彼女の力にも限度はあります。交換しても対象に取られている状態をリセットできないため、除去呪文に対応して能力を使っても除去をかわすことはできないのです。
また、能力のコストは軽いもののゼロではありません。1ターンに起動できる回数は限られており、この能力のためにマナを残そうとすればプレイが制限されてしまいます。
交換術
〈殺しのメアリー/Mary O'Kill〉がドラフトで魅力的なのはもちろんですが、私としては「将来のマジックのセットでこのカードの能力をもとにしたメカニズムが登場するのではないか」と期待できそうなところが大好きです。最高のデザイン空間というものは、しばしば難解な手段ではなくエレガントな方法でルールを破るところから生まれます。
そして〈殺しのメアリー/Mary O'Kill〉と殺人ボット/Killbotの交換は、マジックの領域移動という「ルール」を破っているのです。
通常、マジックのカードは効果を発揮する際に領域の移動が伴います。手札から移動し呪文となり、そこからまた墓地や追放領域、戦場へと移動するのです。
領域の移動によって、また別の効果が誘発することもあります。領域の移動とそれに対応する能力によって、どれだけの種類のプレイが生まれるのか、考えてみてください。
〈殺しのメアリー/Mary O'Kill〉とKillbotの交換は、対戦相手に対応する隙をほとんど与えず盤面の状況を一変させる「忍術」の完成形と言えるでしょう。抜け目ない開発部はこの効果を起動型能力にしたためスタックには置かれますが、きっとそう遠くない未来に面白いデザイン空間へたどり着くことでしょう。
例えば:
- スタックにあるインスタントを交換できるとしたら?
- (アーティファクトとエンチャントなど)種類が異なるパーマネントを交換できるとしたら?
- 部分的に交換できるとしたら?(交換しても、アンタップ状態や対象に取られている状態、攻撃中といった要素のうちどれかが引き継がれないとしたら?)
しばらくは、このデザイン空間が使われているカードを他に見る機会はないでしょう。ですがこうして開発部の頭の中を覗いて彼らが考えていることを想像するのが、私は大好きです。
好奇心は殺す
『Unstable』ドラフトも楽しいですが、私は〈殺しのメアリー/Mary O'Kill〉のデザインについて考えている時間の方がわくわくします。彼女の能力が一体どのような環境を生み出すのか、好奇心が抑えられません。(こっち来るなよ、殺人ボット!)
必ず彼女を引き当てると、彼女に誓います!
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