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蝗の神

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蝗の神

Ken Nagle / Tr. YONEMURA "Pao" Kaoru

2017年6月20日


 いよいよ王神ニコル・ボーラス様の帰還です! 私たち全員が蓋世の英雄として生け贄に捧げられますように。

 私は『破滅の刻』のデザイン・チームとデベロップ・チームの両方に所属していました。「持ち越し」チーム・メンバーとして、私にはショーン・メイン/Shawn Main率いるデザイン・チームの示した展望をイアン・デューク/Ian Duke率いるデベロップ・チームにも明白であるようにするという追加の責任がありました。両チームに所属している間、他の誰よりも(現時点で!)多くの『破滅の刻』のリミテッド経験を得ていたので、私の思考は経験に深く深く根ざしたものでした(私のプレビュー・カードも含む)。

生あるものは死ぬものである

 私たちは『破滅の刻』とニコル・ボーラスの壮大なる登場を、碑とルクサで黄金に輝く『アモンケット』からの暗転にしたいと考えました。その転回の1つが、暗黒の神々です。

 マーク・ローズウォーター/Mark Rosewaterは《熱烈の神ハゾレト》のプレビューの中で、「神々の線」の幾何学について書いていました。まとめると、その話の起点はマジックにマジック流のギリシャ神話を作るというところにありました。神話は本質的に、人類が世界について持つ大きな疑問を表すものでした。その疑問とは、例えば我々はいかにしてここにいるのか、なぜものごとが起こるのか、といったものです。神々、あるいは神話体系そのものが、これらの疑問に答えるために必要だったので、食べ物や病気平癒など信者の声に応えるための神々が存在するのです。したがって、マジック史上最初めて神というクリーチャー・タイプを持ったカード群が作られました。『テーロス』の、神話レアの単色サイクルです。

 エジプト神話にも神々がいました。礼拝や祈りに応えるというよりも、住人に価値を示すように仕向ける神々です。私たちは『アモンケット』の5柱の単色の神々を作るに際し、メカニズム的に『テーロス』と近いものに保ちました。

 『テーロス』の神々に続き、2色の「小神」を10柱、『神々の軍勢』と『ニクスへの旅』で登場させました。

 そして次はストーリーです。「神」というクリーチャー・タイプが強烈な登場を見せ、クールな人物やクールなカードが壮大なストーリーを語ります。ゼウスの要素が《嵐の神、ケラノス》に、アテナの要素が《都市国家の神、エファラ》に、といったように要素が含まれています。

 しかし、15柱の神々はあまりにも多いと感じられました。破壊不能を持つクリーチャーで方向性を持ったカードなのです。基本的に戦場を離れることがない「全体として楽しい」カードをこれだけの量で作り、かつそれぞれが神話レアらしいインパクトを与えるようにすることは難しいということがわかったのです。

 私たちは、『アモンケット』の単色の神々の続きを作るにあたって、この頭痛の種を減らし、線からいくらか離れることにしました。また、『破滅の刻』は唯一の続きとなるセットなので、使える枚数も『神々の軍勢』と『ニクスへの旅』を合わせたものより半分しかありません。

 10柱の神々を作るのではなく、3柱だけ、すなわちグリクシス色の「破滅の神々」(青黒、黒赤、青赤)だけに落ち着きました。私たちはこれがニコル・ボーラスによるこの次元の完全な制圧をさらに強調していると感じました。これらの神々はボーラスのアモンケット次元に関する究極の計画においてそれぞれが破滅の「刻」を担っているのです。今日はその中の1柱を紹介します。

死すべき衣を脱ぎ捨てよ

 アモンケットに存在する輝ける碑、活気ある報奨、豊かな成長はすべてがヘクマという障壁に守られていました。

 ヘクマの外には、ゾンビなどの汚れた存在に支配された空虚な焦熱の砂漠が広がっていたのです。

 ヘクマだけがゾンビや砂嵐を食い止めていました。破滅の「刻」の1つ、約束の刻とは、青赤の神がヘクマの障壁を破壊し、砂や太陽、アンデッドが文明になだれ込んでくるようになる刻なのです。《蝗の神》をご紹介しましょう

 《蝗の神》は『破滅の刻』で登場する新しい神々3柱のうち1柱に過ぎません(王神ニコル・ボーラスは3柱に含みません)。この3柱の新しい神々と、『アモンケット』の単色の神々の間には多くの違いがあります。表でお見せしましょう。

『アモンケット』の単色の神々『破滅の刻』のグリクシスの神々3柱
破壊不能死んだら手札へ
攻撃もブロックもできないという制限制限なし
制限を回避するための起動型能力自身の誘発型能力を誘発できる起動型能力
3~4マナ5~6マナ

 これらの違いを作った理由について、いくらか説明します。

 同じものを何度も作りたくはありませんでした。将来、さらに神々を作る計画がありますが、同じ直線上にあまりにも多くの点を置くと先入観が生まれることになり、満足できる形でその線を動かすことができなくなるでしょう。私たちはここで意図的に神の線を少し動かしたのです。

 神々は不滅だと思われていますが、破壊不能をいつも相手にするのは楽しいものではありません。唱えるのにかなりのリソースを必要する厄介な脅威(《石蹄獣の酋長》)や、利益を得るのに時間がかかるカード(《ダークスティールの反応炉》)を作るのは素晴らしいことです。比較的軽いコストの《不屈の神ロナス》や《周到の神ケフネト》に破壊不能を組み合わせ、早い時期に(しかもしばしば)戦場に出て残るようにすると、私たちは破壊不能の有効性を落とすような除去呪文に変更することになり、そもそも破壊不能を与えた目的が台無しになってしまいます。

 グリクシスの神々には、市民の崇拝も、蓋世の英雄を目指す審判も、大望も、より良い価値も関係ありません。ボーラスの大きな目的のために、この次元を絶滅させることだけが全てです。この神々は制約なく攻撃したりブロックしたりできます。そのために、私たちはこの神々をいくらか重くし、これらだけでマジックのゲームを掌握してしまうだけのインパクトがあるようにしました。

 また、単色の神々のように簡単に唱えられるものでは「死んだら手札へ」は執行猶予にすら感じられなくなります。私たちは、破壊不能で得られる以上の駆け引きのあるゲームプレイを求めたのです。

 さらに具体的に言うと、《蝗の神》は蝗の群れを呼び出しますが、これはストーリーに沿ったものです。そのトークンが飛行と速攻を持つのは、青赤だからです。カードを引くことで誘発するのは、当時《スフィンクスの後見》がスタンダードで人気があり、《火想者ニヴ=ミゼット》は統率者戦で常に人気だからです。青も赤もルーター能力を持っていますから、起動型能力はルーター能力になりました(昆虫を生成できるのもそう内緒というわけではありません!)。最後に、《蝗の神》そのものが飛行を持つのは、これが蝗だからです。マナ・コストが{4}{U}{R}、4/4になったのは、それ以上の数字と比べてもリミテッドで優秀だったからです。これはいかにも神話レアらしい、神の効果をゲームにもたらすことでしょう!

 スタンダードに関して言えば、数多いコンボの中に、サイクリングするだけで昆虫が生成されるというものがあります。

 統率者戦デッキを新しく組むなら、昆虫に《頭蓋骨絞め》するたびに2体の昆虫を得られるということを指摘しておきましょう。

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 そして最後に、賢いプレイヤーの皆さんはすでにお気づきかもしれませんが、《蝗の神》はルール上、ストーリーのようには戦場にある《ヘクマの防御》を破りはしません。実際、《ヘクマの防御》は《蝗の神》や昆虫からのダメージを完全に防ぐのに非常に有効です! いくつかの発想はありましたが、青や赤でできる限界は「土地でないパーマネントをオーナーの手札に戻す」か、(文章欄に入らないほどの)冗長な《混沌のねじれ》系のものでした。最終的にこの、フレイバーに反するけれども魅力的だと思ってもらえる、蝗を作るバージョンで落ち着いたのです。

平安のうちに魂を送る

 今日はここまでです。今や防御障壁は破れました。7月8~9日にお近くのプレリリースに行くときは、日焼けとゾンビを防ぐためにSPF30の日焼け止めを塗り、保護布をまといましょう。プレリリースの場所は店舗・イベント検索でお探しください。

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