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ポイントについてアーロンとスコットに聞いてみた
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ポイントについてアーロンとスコットに聞いてみた
by Brian David-Marshall / Translated by YONEMURA "Pao" Kaoru
今週、マイク・チュリアン/Mike Turianからアナウンスされたとおり、マジックの歴史が始まって以来今まで長年にわたって使われてきたEloレーティング・システムは、プレインズウォーカー・ポイント(以下PWポイント)と呼ばれる新しいシステムに変更された。これはレーティングに関して、またプロツアーへの招待に関して大きな変更をもたらし、また、遠い昔2000年に導入されたフライデーナイト・マジックに新たな意義を持たせることになる。
このプログラムに関する詳しい情報を得るため、マジック組織化プレイ・プログラム・マネージャーのスコット・ララビー/Scott Larabeeと、マジック開発部ディレクターのアーロン・フォーサイス/Aaron Forsytheに話を聞いた。
BDM: PWポイントはEloレーティング・システムに代わるものです。これほど長い間マジックの一部だったものを、どうして変更しようと思ったのですか?
スコット: Eloには、場合によってプレイヤーがプレイしたくないようにさせるという弱点がありました。そういう話はよく耳にしていたでしょう。ようやく1800点を超えて、四ヶ月後に地元で開催されるグランプリでの1バイを手に入れたプレイヤーは、それでプレイをやめてしまいます。フライデーナイト・マジックでも、それ以外のところでもです。万が一にも負けてレーティングを失うようなことをしたくないのです。新しいPWポイント・システムでは、点数は加算されます。マッチをプレイすることによって点数を失うことはありません。勝てば3ポイント、引き分ければ1ポイント、負ければ0ポイントを得ます。負けてもEloのような不利益はありません。一言で言えば、「プレイすることは良いことだ。勝つことはもっと良いことだ」と言えるでしょう。
アーロン: Eloはマジックが未成熟だった時代に、マジックのことを知的スポーツだと示すためには有用でした。これによって、どのプレイヤーが強いのかを見ることが出来たからです。勝っていれば、ポイントは高かったわけです。誰があなたの街で一番強いのか、誰が世界で一番強いのかを知ることが出来ました。私たちは、ここ数年にわたって、ゲームをしている人たちが何をしているのかを注視してきて、MMO、ソーシャルゲームなどを見ると、人々が興味を持つようにするためには、何かが加算されていくようにすることが必要だとわかりました。そして、Eloはそういう目的には向いていないのです。
スコット: Eloはあるレベルのプレイヤー同士を対戦させたりするには非常に有用で、様々なビデオゲームのオートマッチング機能の裏側で使われているようです。ですが、上位のプレイヤーを招待するというような、私たちがランキングを必要とする目的にはそれほど向いていません。
アーロン: 私たちは対戦組み合わせの作成にはEloを使わず、イベントの開始時に無作為に組み合わせを作り、それからその日の成績に基づいて対戦させています。ですから、Eloを使う必要はありません。また、マジックが技術的なゲームだということを今更証明する必要もなくなりました。15年の実績がそれを示しています。強いプレイヤーの勝率がより高くなるということを示す数式も必要ないでしょう。今言うべきことは、「負けてもいい、その分の経験は積めているのだ」ということです。戻ってきて欲しいのです。イベントに招待されるための最善の方法は、イベントに出ないことだ、なんて言われたくはありません。これは馬鹿げたことで、システム全体の目的を台無しにしています。
BDM: 「プレイすることは良いことだ」という意味を説明してもらえますか?
スコット: このシステムには、参加ポイントというものが定義されています。フライデーナイト・マジックに参加して0-5の成績だったとしても、参加したことによる参加ポイントを手に入れることが出来ます。イベントの種類による差をつけるため、イベント倍率が導入されています。より有名なイベントであればあるほど、イベント倍率は高くなります。これらによって、Eloが持っていた問題は解決され、ビデオゲームでもよくあるようなレーティング・システムとなるでしょう。
アーロン: 新規のプレイヤーにとって、「ようこそ。君の負けだ。お金も払ってくれたが、家に戻ってネットで成績を見て見るといい。君は最悪だ。一度もプレイしたことのないプレイヤーより格下だ」というような経験はよくあることでした。
BDM: 「勝つことはもっと良いことだ」というのは?
スコット: これを立ち上げる時に最初に、このポイントの合計には4種類あるようにしました。まず1つめが生涯PWポイント合計。これは全てを計算に入れるものです。カジュアル・イベントも、競技イベントも含みます。生涯PWポイントを使うのは、あなたのレベルを決定するためだけです。次に、競技PWポイント合計。これはカジュアル・イベント以外の全てを計算に入れます。それから、フライデーナイト・マジックPWポイント合計、これはフライデーナイト・マジックだけを計算します。最後に、プロフェッショナルPWポイント合計。これは、グランプリとプロツアーの点数だけを計算します。イベントの中には、これらの分類の複数に属するものもあります。たとえば、フライデーナイト・マジックで得たPWポイントは、生涯PWポイント合計、競技PWポイント合計、フライデーナイト・マジックPWポイント合計に加算されます。
これらの各PWポイント合計は、それぞれ違う目的で用いられます。生涯PWポイント合計はレベル決定にのみ使われます。これは各プレイヤーがそれまでにどれぐらいプレイしてきたかということを計るもので、積み上げていくものです。競技PWポイント合計はプロツアー参加資格、国別選手権参加資格、グランプリのバイに用いられます。
ここで、いくつかの用語を再定義したいと思います。人々は歴史的に、イベントを認定されているものと、認定されていないものの2種類に分けて考えていました。これについては改めます。全てが認定されます。これまで「casual non-rated」と呼ばれていたものは「カジュアル(Casual)」になります。これによって生涯PWポイントは得ることができますから、「non-rated」ではないのです。そして、今まで認定イベントと呼ばれていたものは、今後「競技(Competitive)」になります。
カジュアルPWポイントと競技PWポイントはそれぞれ働きが異なります。カジュアル・イベントでは、参加するたびに1ポイントを得ます。マッチは記録されません。カジュアル・イベントでマッチがプレイされていても関係なく、参加したことによるポイントを得ます。
競技PWポイントには、マッチが関係します。フライデーナイト・マジックPWポイントは、2012年に開催予定のフライデーナイト・マジック選手権のために用いられます。
BDM: 聞いている限りだと、プロツアー予選でトップ8に入るのも優勝するのもそれほど変わらないように思いますが、どうでしょう。
アーロン: その通りです。このシステムは、プレイする人に報いるようになっています。トップ8に何度も入っているなら、あるいはそれに近いところにいるなら、加算されることになるでしょう。この加算がなかったころは、勝ちか負けかだけでした。しかし、そういうプレイヤーにこそ報いたいのです。ただ自分の近くにプロツアーが来るまで、高いレーティングのままでイベントにも出ずに三年間待ち続けるようなプレイヤーに報いたいとは思いません。実際にそうしているプレイヤーがいることは知っていますが、そういうプレイヤーには「ご苦労様、プロツアーに来てくれませんか?」とは言いたくありません。
スコット: 各シーズンごとに開始日と終了日があります。終了日が過ぎて近いうちに、私たちは招待する上位X人を決めます。プロツアー「闇の隆盛」ホノルル大会に関しては、シーズンは年末までになり、その時点でのヨーロッパの上位10人、北米の上位10人、中南米からの上位5人、アジア太平洋からの上位5人、日本からの上位5人に参加資格が与えられます。その後、世界中の(まだ資格を得ていない)上位65人に参加資格が与えられます。彼らには、そのための航空券も与えられます。
BDM: プロツアー予選の勝者に加えて、レーティングによる招待にも航空券が出るということですか?
スコット: これは大きな変更です。レーティングによる招待にも航空券が出ます。
BDM: 確認ですが、サンフランシスコで開催される世界選手権はEloレーティングですね?
スコット: サンフランシスコで行なわれる世界選手権の参加資格の決定にはEloシステムを使います。これがおそらくこのシステムを使う最後のイベントになるでしょう。その後は、もう一度最初からスタートとなります。翌年、参加資格を得るのは、過去2年間にわたって高いレーティングにあぐらをかき、プロツアーに招待されることが出来る点数になるまでレーティングを稼いでから6ヶ月間プレイを止めるような人ではありません。
BDM: この変更によって、今までプレイを中断していた人たちもまたプレイしてくれるようになるように思います。このことに関して、去年、インターネットの各地で話題になっていました。
アーロン: 高いレーティングにあぐらをかいている人たちの話、全体の目的を壊してしまっているということについては目にしました。Eloが技術を計るための公平な指標であれば意味はあるのでしょうが、実際にはそのレーティングによって招待やバイが決まっていましたので、レーティングがゲームの目標になってしまっていました。これは本末転倒です。レーティングはどの程度優秀かの目安であって、他の目的のために操作するべきものではありません。Alex WestやBrian Kiblerはこれに関して意見を書いており(それぞれリンク先は英語)、それを見るたびに私は「分かってるよ! 今やってるところだ! 期待して待ってろ!」と叫ぶのをこらえなければなりませんでした。
少しばかり遅くなってしまいましたが、これについては15年間の技術的問題を踏まえて、過去何年も取り組んできた課題です。
BDM: レーティングにおいて振り出しに戻ったわけですか? 過去のマッチはどうなるんですか? 今はもうプレイする時間がとれない、とか。
アーロン: すべてなかったことにする、というのでは、認められなかったでしょう。マジックをすばらしいものにしているものの一つに、15年前のことが今でも有効だということがあります。カードもそうですし、当時イベントに出ていたと言うことも計算に入れる必要がありました。今は、全てがEloの上下でとりまとめられていましたが、長年にわたってプレイしてきていたならばPWポイントがそれを示してくれます。2年前に始めたばかりの人より、10年間やっている人の方がずっと高いレベルを持つことになるでしょう。
BDM: それぞれ別のレーティングというのは何に使うんですか? 生涯レベルが41あるんですが、これでプロツアーに行けますか?
スコット: 生涯レーティングは招待やバイには使いません。そのレーティングを見れば、自分の来歴が分かるようになっています。生涯PWポイントはなくなることはありませんし、0に初期化されることもありません。常に足されていきます。他のレーティングは、それぞれ別のタイミングで全て初期化されます。競技PWポイントは各年3つのシーズンに区分され、シーズンが始まるたびに0になります。次のシーズンが始まると、また0になります。各シーズンの終わりの時点で、次のシーズンのプロツアーの参加資格を得る人、バイを得る人、また国別選手権がある時期ならそれに招待される人を選定するために用います。
FNMのシーズンはも同様に0から始まり、最後に、FNM選手権への参加資格を決めます。プロフェッショナルPWポイントでは世界選手権への参加資格を決めます。そしてその後、再び次の1年間に向けて0点から始まることになります。
BDM: 火曜日のアナウンスを受けて最大の衝撃は、プロツアーへの招待がグランプリから得られなくなったことだと思います。これについて説明をいただけますか?
スコット: グランプリでトップ16に入っても、自動的に次のプロツアーへの参加権利を得ることはなくなりました。ですが、グランプリは誰でも参加できるイベントの中でもっとも多くのPWポイントを得ることができるイベントです。誰でも参加できる非常に大きなイベントなので参加ポイントも高くなりますし、イベント倍率は8もあります。プロツアーや世界選手権ほどではありませんが、1勝も出来なかったとしても参加ポイントの8倍はかなりの数字になります。直接招待を得られなくはなりましたが、新しいレーティング・システムによって別の方法で招待されていると考えることが出来ます。
この変更を残念に思うプレイヤーもいるでしょうが、この変更がなければ、年に3回行なわれるプロツアーの参加者が膨大な数になり、面白みがなくなってしまうでしょう。グランプリの数を増やす上で障害になっていたのは、プロツアーが800人規模の4日間のイベントになってしまうことでした。誰にとってもおもしろいことにはなりません。そこで、グランプリの数を増やして多くの人々にグランプリを楽しんでもらうために、プロツアーの参加資格と切り離し、レーティングによる招待と関連づけることにしました。多くの人々にとって、家の近くで開催されるグランプリでプレイする機会が増えることになるでしょう。
BDM: グランプリでのバイはどうなりますか? どうやって決定されますか?
スコット: バイは招待と同じように処理されます。シーズンの終わりに、次のシーズンの間のグランプリでずっと有効なバイを手にします。上位300人に3バイ、上位2000人に2バイ、上位15000人に1バイが与えられます。
BDM: マジックの技術の目安として受け入れられていたEloシステムからの脱却に憤慨している人々になにかありますか?
アーロン: 私は逆側にいて、Eloを自分のアドバンテージとして使ってきました。山の頂上にいて、レーティングによる招待を受けていたのです。ですから、それが好きな人々がいることもわかります。ですが、このゲームも成熟してきて、組織化プレイをよりユーザー・フレンドリーなものに、そしてよりポジティブなものにしたいと考えました。人々の成長の記録と、これまでの軌跡、そして将来帰ってこれるようにです。
強いプレイヤーは、弱いプレイヤーに負けそうになると防衛本能が働きます。強いプレイヤーのレーティングにとって一番の被害になるのは、《赤の防御円》をメインデッキに入れているような弱いプレイヤーに当たって負けてしまうようなことでした。レーティングをごっそりと削ったその人物に殴りかかりたくなるものです。この新しい変更によって、それをいくらか和らげることが出来るでしょう。Eloレーティングをマジックオンラインで公開するのを止めたのは、レーティングを見て対戦相手を選ぶ人々がいたからです。
BDM: フェンスの向こう側で、プロツアー予選に参加したり、ときどきは国別選手権やプロツアーにも参加するというレベルのプレイヤーをしていたとしたら、あなたはこの変化をどう感じたと思いますか?
アーロン: 気に入ったでしょう。私は必要以上に厚遇されていたグループの一人で、変更があるべきだと思っていました。プロツアー常連になったころの私も、おそらくこれがみんなのために有用だということを理解したに違いありません。もちろん、行動は変わることになるでしょうが、いつでもプレイできるようになるのはうれしいことです。この変更によってプロツアー予選やプロツアーのプレイヤーが一番うれしいことは、プレイするたびに自分がプロとしての資格を賭けているなんて考えなくてもよくなることでしょう。
新しいデッキを試すこともできます。もう何も妨害はありません。白単感染デッキを思いついたとしても、現在のシステムの元ではその試作品を試すことは出来ませんでした。負けに負けを重ねることになり、プロツアーに舞い戻るには50勝とかが必要になるでしょう。これからは、どんなことも試すことが出来ます。今までプレイしたことがない相手と対戦して、負けても何も失うものはありません、ただ経験になるだけなのです。
BDM: この変更については長い間待ち望んでいたように言われますが、どれぐらいかかりましたか?
アーロン: 私が関与するよりずっと昔からの話です。私は、ただその計算式を変えるだけのことだと思っていましたが、組織化プレイのソフトの中を見ると、この変更に関係なく更新しなければならないことがたくさんあることがわかりました。それに取り組み始めると、今度はその全体を直さなければなりませんでした。ポイントの計算法を変えることが簡単だなんていうのは楽観的すぎましたが、実際はマイク・チュリアン/Mike Turianがこの全体をすばらしく導いてくれました。
BDM: このプログラムを1年間見て、どうなったら成功だと思いますか? トラブルなくスムーズに行けば成功ですか?
スコット: 何かが実際に動作し始めた時には、問題が発生するものです。プレイヤーがどう受け取ってどう振る舞うかは分かりませんが、レーティングを考慮してフライデーナイト・マジックに参加していなかったプレイヤーがフライデーナイト・マジックに参加するようになったら、成功だと言えるんじゃないでしょうか。
アーロン: それは第一段階です。私にとっては、再挑戦しようという人たちの数が重要です。1年間に1回だけ組織化プレイのイベントに参加し、それきり戻らない人がいます。なぜ戻ってこないのかをはっきりと特定することは出来ませんが、参加したことによるプラスの実績が存在しないことがその大部分だと思います。この変更によって、2回目にイベントに参加する人数が大きく増えることを期待しています。そして、そうなれば、マジック・コミュニティで人々が出会うことも増えるでしょう。
BDM: 最後に何か一言あればお願いします。
スコット: このウェブサイトはすばらしいですよ。来歴全てが見れるのはたいしたものです。
アーロン: これまで加算減算されていた生涯の記録を、すべて加算するように変更しました。技術を評価すると同時に、マジックをずっと続けていることなども評価するようにしたのです。究極的に、このシステムは、Eloが行なってきた全てのことを行なうと同時に、これまでよりも多くの人にとって、よりよく働くことになるでしょう。
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