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プレインズウォーカーのための新たなるファイレクシア案内 その1

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プレインズウォーカーのための新たなるファイレクシア案内 その1

Magic Creative Team / Translated by Mayuko Wakatsuki

2011年4月6日


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 全ての世界は変わる。旅行者である我々にとってそれは自明の理だ。時代を問わず、ただ一つの国家のみからなる次元は発見されていない。だが稀に、その名を失うほどの激しい変質を被る世界がある。稀に、紛争の時代に突入した結果、そこで生まれた者達にとってさえ見分けがつかなくなってしまう世界がある。

 より稀なことに、その世界は一度ならず自身を作り直した。かつてアージェンタムと呼ばれた世界、そしてミラディンとして知られるようになった世界。だが過激な変化が再び訪れ、今やこの世界は三番目の名前を持つに至った。

 そのような根源的変質により、以前から知られていた伝承や知識はよくても疑わしいものとなってしまった。次元の知恵を司っていた中心的存在はもろくも崩れ去り、時代遅れの憶説として力を失った。最適の解決策は、新たな目で世界を調査し直すことであり、新たな勤勉さをもって本を書き直すことであり、既に受け入れられている知識を、今もまだ真実であると証明されるまで誤りとみなすことである。

 そのために我々は「プレインズウォーカーのための新たなるファイレクシア案内」をお届けする。君達がこの変容した世界への知識を新たにして、安全な滞留の参考となれば幸いである。

ファイレクシアの5つの派閥

 ファイレクシアの新たな故郷となった世界。その全ての知識によると、ファイレクシアで最高権威を有しているのは各派閥組織である。拡大と適合というその使命のもとに、ファイレクシアの性質は絶えず進化している。次元の核で強いマナに長年さらされた結果、ファイレクシアは加速的成長をこうむった。それはまたファイレクシアを細分化し、5つのマナに関係した派閥へと分裂させた。ファイレクシアの5つの派閥はそれぞれの信条、クリーチャー、他の派閥の者達とは明白に異なる指導者を擁している。

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 新たなるファイレクシアを探求したいなら、それら各色のマナに列する派閥間の相違点を知り、理解することである。もし君達が以前他の世界でファイレクシアと遭遇したことがあったなら、その多様性に驚くかもしれない。新たなるファイレクシアのやり方を知らない旅人の末路は、不運にも彼等の一部にされてしまうというものだ。

 この項目の残りのページでは、ファイレクシアのそういった派閥の最初の一つについて記す。

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 白のマナに列するファイレクシアの派閥は「機械正典」として知られる大いなる信仰の下、階級制度によって組織されている。大修道士エリシュ・ノーン、教団の最高位に位置する法務官がこの派閥を統率し、『銀白の刻文』が司る原則のもとに輝ける未来を約束している。機械正典の教えを受けるファイレクシア人達が目指すところは全て、ミラディンを新たなファイレクシアの理想的な故郷へと作り変えること、ミラディンという次元そのものをファイレクシア化することである。彼らはミラディン人達を不運な失敗作か強情な罪人、どちらにしても再利用と変質を受けるべき存在とみなしている。


大修道士、エリシュ・ノーン イラストレーション:Igor Kieryluk
魂というものについての誤解

 ファイレクシアは肉体と金属の物理的品質に基礎づけられた文明である。ファイレクシア人達に何か魂的なものがあるとしても、彼らの大多数は他の知的生命の心や魂、精神について理解しているとは思われない。知能を持つファイレクシア人達は確実に理論的思考が可能だが、超自然的なものへの認識とは大部分はかけ離れていると思われる。しかしながら、ファイレクシア人達はその物理的指向性にもかかわらず、熱烈に支持され、よく統一された宗教体系を持つ。その奇妙な矛盾の結果が、異様で明らかな宗教のまがいもの、設計された宗教、物理を信条とする「機械正典」である。


イラストレーション:Raymond Swanland

機械正典の宗派

 ファイレクシアの機械正典内にはいくつかの宗派が存在し、彼らの理想の世界を実現すべく競ってさえいる。最も大きな三つの宗派をここに記す。

肉体的単一派:全てのあまねく統一

 教団のこの宗派は、利己的自我の廃絶とあらゆる存在の総合的統一という理想に基礎をなす。彼らのよじれた、ほとんど純粋な概念は個人を隔てる全ての障壁を排除し完全な共同体を目指すというものだ。それは物事を文字通りに理解するというファイレクシア人の傾向によって、ぎょっとするような極端さとなった。この宗派のファイレクシア人達は文字通りに全ての存在を一つに結合し、ただ単一の巨大な有機と金属の生命体、最終的状態、彼らが呼ぶところの肉体的単一性へと至る道を探し求めている(「肉体」という表現はここでは有機的、非有機的物質の両方を指す。ほとんどのファイレクシア人のように、彼らは生命の形をなす材料として生者と死者を区別しない)。縫合された皮膚、固定された金属、織られた毛皮、どんなものでも。全ての生命が文字通り他の生命と結びついた時にのみ、完全なる統合が達成されるであろう。

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個々の非存在

 次元の核内に潜む巨大なファイレクシア法官庁の法官イザテルは、全ての生命をただ単一の階層的有機体、それぞれの部位が全てにとって重要な役割を果たすものとみなしている。それぞれの部位の存在意義はただ一つ、単一の有機体のために。従って、個々というものは無用どころか最悪のものであり、単一性にとっての脅威でしかない。個々、特にそれら集合体から積極的に独立を固辞しようとする者達は狩り立てられ、強制的に単一存在の一部位とならねばならない。この宗派に属する多くのファイレクシア人に、個人的ふるまいについての奇妙な盲点がある。彼らは非ファイレクシア生命体の個人というものの性質、それどころか個人というものの存在さえも理解していないように思われる。このことを観察したミラディン人の反逆者達の中には、彼らのふるまいを可能な限り特有のものに保ち、徹底的に独立した行動をとることによって少しのファイレクシア人を困惑させ欺くことに成功した者もいた。これら突飛な戦略は今やミラディン人の指揮官達に反対されてしまった。しかしながら、彼らは罪深く大いに常軌を逸していると単一派のファイレクシア人が今や認めているように、致命的なまでに注意を引きうるかもしれない。

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 最後の一人まで、非単一者は探し出されるであろう、我々の目が彼奴らの醜さにたじろごうとも。彼奴らの身体は吸収され欠陥は清め落とされるであろう。機械正典は非単一どもを貪り、彼奴らの不十分な独立は統一のもとに抹消されるであろう。その時円環の最後の傷は癒されるであろう。その時世界は完璧となるであろう。

―法官、イザテル


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皮膚恐怖症

 肉体的単一派のファイレクシア人達は並はずれて皮膚を憎み、恐れているように思われる。彼らにとって、皮膚(もしくはクリーチャーの外側を覆うもの)は究極の境界であり、個と外の世界を、個と個を隔てる壁である。機械正典のファイレクシア人達の手にかかった者達の多くが冷酷に、ほとんど儀式的に皮を剥がれた。ファイレクシア人が犠牲者を「完璧とする」際に、犠牲者の皮膚を残しておくのは稀である。彼らはしばしばクリーチャーのかつての外皮を光沢のある、白磁に似た鎧か何か他の素材へとほぼ完全に取り替える。それは独立した個々をより象徴していない素材である。

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磁器軍:理想の姿

 多くのファイレクシア生まれの者の肉体、とりわけ磁器軍宗派のそれは、しばしば白磁のような見た目をした硬く、白い、骨に似た金属で覆われている。この物質は柔軟性に欠けて硬質であり、磁器軍のファイレクシア人達の視覚的印象は繊細な白磁で作られた軍隊というような姿だ。防護的な白磁の下には骨や金属の外骨格構造、柔らかな腱、そして時折、目や耳といった知覚器官が隠されている。

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 この白磁金属は、核生まれのファイレクシア人にのみ有機的に発達している。完璧となったファイレクシア人(元ミラディン人)が持つ白磁物質は、特別な槽で育てられ犠牲者の身体に移植されたものだ。白磁金属は死にかけの身体や死んだ直後の身体に埋め込まれた時に最もよく育つ傾向にあり、金属製の地衣類のように組織となって肥沃に広がる。戦争の犠牲者から得られた特別に上質の組織は、白磁が槽でより硬く白く成長するための助けとしてしばしば使われる。

破壊的理想化

 肉体的単一派が力を増していくにもかかわらず、機械正典に属するファイレクシア人のほとんどは実質的に個々であり、それぞれの意思で動き幾分独立して活動している。とはいえ磁器軍派のような他の宗派は、その目指すところを頭上へと大々的に掲げている。磁器軍が目指すものは物質的姿形の理想化、そしてファイレクシア人の言う「理想化」という考えは無慈悲なものだ。これらファイレクシア人達にとって、ある存在の理想的姿はファイレクシアの階級制度を完璧に支えるものだ。もしその共同社会が有機体のものであれば、全ての部位はその有機体が生存するために設計され、作り出されておのおのの役割を果たさなければならない。しかしファイレクシアの多くの力と未加工の素材は、征服した種族やクリーチャーからもたらされている。従って、新参者が理想的な姿へと完成を遂げる前に、まずは古い姿を取り除かなければならない。


イラストレーション:Min Yum
変質の工程

 捕らえられたレオニンの戦士を例にとってみよう。そのレオニンは自身を構成している部品へと白磁人形のように砕かれ、その器官は伸ばされ広げられて金属の腱は再配列される。筋肉はぴんと張り直され、消化器官の経路は変更され、心は洗浄されて新たな目的を付加され、新たな目的のために改造される。いくつかの部位は新たなファイレクシアの目的にとって用無しとされるかもしれないが、そのほとんどはどこかで再利用される。いくつかの付加物はその機能を高めるために使用されるかもしれない。また時折他の「新参者」から取られた追加の腕、より多くの歯、そしてもちろん硬質で白く骨に似た金属、「白磁」の板金鎧を植え付けられる。そして新たな存在への工程の最後の仕上げとして、ファイレクシアの油が身体へと導入される。油は魔法的に有機体中へと拡散して目に見えないレベルで変化をもたらし、ファイレクシアへの転化と理想の姿への旅を完成させる。

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「君が見てきた恐怖など知らん。君がどれほど長く旅をしてきたかなど知らん。悪いことはいつも目の前にある。そういうものだ。私は恐れている、今日の最悪は明日の最良だということを」

―抵抗軍のミラディン人、ファルン


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カーンの使徒:創造主の神意

 機械正典のもう一つの宗派は「カーンの使徒」であり、彼らはファイレクシアの中心的指導者を復活させることに関心を持っている。ミラディンで育ったファイレクシア人の文明はヨーグモスに導かれたそれとは異なっているとはいえ、彼らは中心となる指導者の欠落を本能のレベルで感じている。この宗派は、ファイレクシアは今のところ頭のない身体、王のない王国のようなものだと信じている。そして強大な銀のゴーレム、カーンを彼らの選ばれし指導者とするという目的を持っている。現在カーンは突飛で不安定な精神状態にあり、ファイレクシアの真の統率は不可能だが、使徒達は最善を尽くしている。カーンが玉座へと上るその時に備えて。

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壊れた心の囁き

 カーンはプレインズウォーカーの灯をドミナリアのために捧げたと同時にミラディンへ、かつて彼自身がアージェンタムという名で創造した金属世界へと飛び込んだ。しかし彼はミラディンでザンチャのファイレクシア人格マトリックスとともに立ち往生し、その心は引き剥がされ、ファイレクシアの影響が彼の内に疼きながら成長していった。ミラディンの核の奥深くで、銀のゴーレムの中にあったぎらつく油の痕跡はファイレクシア文明再生の種となり、カーン自身をその広がりゆく網の中に捕らえこんでしまった。今や、カーンの使徒達と他のファイレクシア人達は心を病んだゴーレムを気遣い管理し、彼を特別に設えられたファイレクシアの玉座に接続し、その狂乱の囁きを聖典として収集している。時折カーンは完全にファイレクシアの指導者として覚醒し、ミラディンの生命を最後の一片まで破壊し尽くせと命令を発する。それらの間、使徒達は彼の言葉を熱烈な興奮とともに記録し福音とする。そうでない時、カーンがファイレクシアの堕落に抵抗できるほど明晰な時には、使徒達は看守として働き、彼の脱走を妨げ再び服従するよう精神的外傷を与えている。

ファイレクシアの宗派への大使

 カーンの使徒達は、カーンはファイレクシアを導く準備ができているということを知っており、ファイレクシアは彼を指導者として迎える備えをしなければならないとしている。彼らはファイレクシアを裂いた観念形態の分離を嘆き悲しみ、他の宗派へと一致団結を呼びかける大使を送っている。

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「究極の真実があまねく知られた時、大いなるそして恐るべき平和が世界へと降りかかるであろう。頭上の太陽と足元の大地は輝ける塔となり、機械の始祖はその尖塔より世界を統べるであろう。法務官の言葉を最後の断片まで賛美せよ。油で満たされた機械正典の真実、そして始祖の逃れられぬ運命を」

―総主教代理尋問官、クタット=ラール


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機械正典の役割と存在

 ファイレクシアにおいて、役割と姿形はとても強く結びついている。もし君がファイレクシアの一部であるなら、君は必要を満たすために作られ、君の肉体的姿形は君が作られた目的を満たす仕事のために設計され揃えられたものだ。姿形と機能は一つに縫い合わされ、継ぎ目のない単一のものとなっている。

修道士:機械の司祭

 ファイレクシアは司祭と法官の数えきれない順列で満ちている。修道士達は非ファイレクシア生命体の宗教裁判を担当している。核内に残る者は捕虜の運命を決定している。戦場で見かけられる者たちの持つギザギザの刃は、直接異端者達へと教義を押し付けるべく用意されたものだ。修道士達の身体はより多くの金属で構築される傾向にある。また時折、ファイレクシアの油が筋を成して流れる彼らの「白磁」金属には宗教的な図解が直接彫り込まれている。


縫合の僧侶 イラストレーション:Igor Kieryluk
縫合の僧侶:肉体を縫い合わせる者

 縫合の僧侶は、個々を束ね単一の集合とする神聖なる行いを専門とする修道士である。これは儀式化されて熟練した、だがそれでも極めて文字通りの、長い針と黒い金属質の糸を必要とする工程である。通常は肉体的単一派に属している縫合の僧侶達は、時折ファイレクシア人クリーチャーに呼ばれることもある。彼らの肉体構成成分を作り変えるために。

深き信義:見えざる従者達

 多くのファイレクシア人達は直接戦闘と尋問のために作られているが、決して次元の核を離れないファイレクシア人も少数であるが存在する。深き信義と呼ばれるファイレクシア人の分派は機械正典の組織基盤を維持するために精力的に働いている。捕虜を完成させるため運び、肢や肉体の小片を転換のために交換し、白磁槽の世話をする。彼らはほっそりとした蜘蛛のようなクリーチャーの姿をとっており、どんなものの表面をも重力を無視したように走り回り、その鋏と目で彼らの卑しい仕事を果たしている。


イラストレーション:Min Yum
砕かれた天使:ファイレクシアの熾天使

 天使達はただの階級でありファイレクシアの機械を整理するための存在でしかないが、多くのミラディン人にとって、ファイレクシアに堕ちた天使を目にするほどに冒涜的なものはない。虚ろで無感情な、ゆるんだ無関心の壊れた人形。無の熾天使と呼ばれるそれは何の理想も体現していない。彼らの良心と戦いへの熱意は削除され、言語に絶する行いをする翼を持つ社会病質者となった。ミラディン人の中には無の熾天使を倒すことは特に有徳なことであり、決して赦されることのない暴虐の魂から天使達の身体を解放することであると考える者もいる。


Richard Whittersによるコンセプト・アート
白磁の人形:下位の新参者

 磁器軍は常に新たなメンバーを探している。彼らが好むのは剃刀ヶ原の戦争捕虜で、レオニン、ロクソドン、あるいはオーリオックといった者達だ。ミラディン人を再構成した「砕かれた人形」と時折呼ばれるそれらは、文字通りに壊されて組み立て直され、かつて彼らが対抗していたまさにその軍隊の忠実な下僕や戦士となる。磁器軍は新入りの身体のほとんどを白磁に似た硬質の金属で覆うが、顔の造形はしばしば身体と比較してそっくりそのまま残されている、戦闘において彼らのかつての戦友がそれとわかるように。これら「人形」達はまれに、機械正典内で宗教的地位を獲得することがあるが、その身体の部位は幅広く再利用される。かつてミラディン人のものであった部位が、法務官エリシュ・ノーンのために使用される事すらある。

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「誕生では足りぬ。成熟では足りぬ。この世界の偽りの金属生命でも足りぬ。完成とは金属の課業によってのみ成される。ただの誕生では辿りつくことなどできぬ、そして惨めさの中で我々の改良を求め奴らは叫ぶのだ」

―槽の番人、ザルドロー


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秘本の従僕:頼りない聖職者助手

 背の低い彫像の姿をした秘本の従僕達は、ファイレクシアの秘術や聖なる文書のための動き回る書台として組み立てられた者達である。彼らは非常に不器用で、集中力も落ち着きもなく、絶えずそわそわと身悶えして辺りを夢中で走り回っている。彼らが運ぶ秘本を聖職者達が読もうとする間にもうるさくお喋りを続け、しばしば説教や訓戒を混乱させる。


Richard Whittersによるコンセプト・アート
大修道士、エリシュ・ノーン

 ファイレクシアの機械正典はエリシュ・ノーンと呼ばれる法務官によって導かれている。統一の法務官、大修道士という肩書をより好み、彼女に従う何千ものファイレクシア人の戦争や活動を指揮している。エリシュ・ノーンは機械正典のどの宗派にも属していないが、それらの長として、もしくは少なくとも全ての信仰において尊敬されている人物である。企てと賢明さをもって、エリシュ・ノーンはファイレクシアたる気品と地位を常に維持しているが、彼女は密かに『銀白の刻文』の解釈を自身の最終目的へと沿わせるべくファイレクシアの教義を操作している。


イラストレーション:James Paick

別館:機械正典の足がかり

 ファイレクシアの機械正典が広まるにつれ、その活動はただ生態を変質させるだけではなくなった。ファイレクシアはファイレクシアの教義を広めるための建造物、別館を設立した。それはミラディン人達をファイレクシアの構造へと組み入れる前哨基地である。別館は、通常は知能を持つ粗末な人間型ファイレクシア人の司祭達、中でも機械正典内において高い地位を獲得した司法官と呼ばれる者達が管理している。これら多くの別館は放射状の建築物の集合であり、中央には司法官の地位を象徴する高座、もしくは時折カーンの記念碑が鎮座している。いくつかの別館はミラディンの核内に潜み、悪魔的建築様式の大聖堂が深い信念を体現している。

銀白の刻文:ファイレクシアの聖書

 ファイレクシアはミラディンを侵略してはいない。ミラディンにおけるファイレクシアの文明はカーン、ファイレクシアの心臓たる銀のゴーレムの内に潜んでいた汚れから発展した。とはいえファイレクシアは、他の世界でのその姿のかすかな「記憶」を保持しているかもしれない。ミラディンでのファイレクシアの生命は大部分はそれら自身の構造と制度を持ちながら成長し適合していった。そういった制度の一つが『銀白の刻文』として知られる宗教的法と教典の書の収集である。刻文は異様な形をした心臓の形状に仕立てられた巨大な銀の彫刻として記される。それはもしかしたらカーンのファイレクシアの心臓か、もしくは法務官エリシュ・ノーンの一部を元にしているのかもしれない。刻まれた文言は金言と法を内包し、宗教的指導者達と法務官達によって彼らの最終目的のために解釈されている。

銀白の刻文より、金言の一例

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「皮膚とは異端者達にとっては祝福の牢獄であり要塞である」

―銀白の刻文


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 機械正典、特に肉体的統一派は、皮膚というものは個々を隔てる障壁の象徴であるとしている。それは総合的統一を妨げ、存在を分かつ防塞である。ゆえに皮膚は潜在的ファイレクシア人の新入りが解き放たれるべき牢獄であり、そして不道徳な者達が根付く前に引き裂き破壊しなければならない最終防衛線である。


イラストレーション:Brad Rigney
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「到来とは所属である」

―銀白の刻文


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 ファイレクシアにおいては、特に磁器軍においては変質と帰属は切り離せないほどに関係である。ミラディン人の「新入り」が檻へと歓迎される前に、個人の古い人格は清め落とされ、忘れ去られ、破壊されねばならない。ファイレクシア生まれの者でさえ、時折過激な肉体的変形を耐えねばならない。それは彼らの社会により適合するための啓示的体験にも感じられる。

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「穴は球が球たることを妨げる」

―銀白の刻文


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 いくつかのファイレクシアの宗派は指導者の不在を悲嘆している。カーンの使徒達はファイレクシアを完全ではない球体、もしくは指導者が存在しない穴のある組織とみなしている。彼らはカーンを新たな機械の始祖の座に据えるべく働いている。それによってファイレクシアそのものは完璧となるであろう。

純粋な直解

 ファイレクシアの信念は極度に文字通りである。多くの低位の聖職者、法官、そして心からの支持者達はファイレクシアの規則や、金言、文書といったものをありのまま信奉している。彼らのうちではしばしばシンボルと指示物の区別は失われ、ぞっとするが宗教法に動機づけられたようなふるまいとなって現れる。もし聖書に「我々は統一を成し遂げるために自己を消去しなければならない」とあれば、彼らは人々を縫い合わせることから始める。もし一人の法務官が「ミラディンの魂を収穫」する時だと告げたなら、ファイレクシア人達は身体を収穫する。付加されているであろう意識内で熟慮はせず、物理的にのみ理解しながら。それは驚くほどに筋の通った信条のシステムである。しかし同時に、適用されたなら、冷酷な大量虐殺の命令となる。

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 ファイレクシアの核、焼炉層の奥深くに意外にも反乱軍の前哨基地が隠れている。ミラディン人抵抗軍の小集団だ。その戦士達は水際でファイレクシア人達に抵抗し続け、地上略奪者達は地表から生存者をキャンプへと密かに連れて来ている。奇妙に寛容なファイレクシア人達が何人か、これら避難者達の前哨基地を発見したが見て見ぬふりをしている。そのことは歓迎されたが、今の所はこれらキャンプが存在を許されているだけにすぎない。

 剃刀ヶ原は速やかにファイレクシアの手に落ち、レオニンの群れを引き裂きロクソドン達を孤立させた。剃刀ヶ原最後の大きな要塞、オーリオックの共同体である刃砦は未だファイレクシアの完全化に屈していない。かつては調和者隊として知られた流浪の民兵団は今や刃砦の軍隊を支え、ファイレクシア人の攻撃と命の限り戦い続けている。


イラストレーション:James Ryman
剃刀ヶ原環状通路

 刃砦への避難者達は、焼炉層の抵抗軍要塞へと続く有用だが危険な隠し通路を知っている。ロクソドンの工匠である造物師ガルマは強力な呪文を使用して「剃刀の環」、剃刀草を魔法的に刻んで作った環状の紋様を、ミラディンの地殻を貫いて焼炉層へと至るトンネルとした。その通路は白の太陽が天頂にかかる時にのみ作動し、難民の前哨地へと向かうことができる。入口は常にファイレクシア人に発見される危険にあり、通路はマイコシンスの触手がそれを塞いでしまわないよう絶えずメンテナンスを必要としている。だが刃砦と剃刀ヶ原を横断する多くの者達にとって、それは生き残るためのただ一つのチャンスである。

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