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お知らせ

2025年4月22日 統率者戦ブラケット(ベータ版)更新

2025年4月22日
やあ、みんな!「統率者戦フォーマット委員会(CFP)」代表のガヴィン・ヴァーヘイ/Gavin Verheyだ。CFPを知らないという方は、こちらの記事を読んでみてくれ。
2か月前のお知らせで、私たちはブラケット・システムのベータ版とゲームチェンジャー・リストを公開した。そのときに、次は4月の下旬にお話ししようと言ったね。本日は、ブラケットの現状からゲームチェンジャー・リストの更新まで、まとめてお知らせするつもりだ。
また、禁止解除されるカードもあるぞ。禁止解除について詳しく知りたい方は、こちらの「禁止制限告知」(後日翻訳版を掲載予定)確認してくれ。
今日もお伝えすることがたくさんあるから、早速はじめよう!
ブラケット・システムの再検討
統率者戦ブラケット(ベータ版)は、まったく新しいシステムだった。これを公開した私たちは、「MagicCon: Chicago」での初期テストを経て寄せられるみんなからのフィードバックを心待ちにしていた。
私たちは膨大な時間を費やしてフィードバックを精査した。さまざまな動画や記事を拝見し、ソーシャルメディアを追い、意見交換を重ねてきた。私もすべてのメッセージに返信はできなかったけれど、全部目を通して実に多くのことを学んだ。みんなフィードバックを送ってくれてありがとう。本当に助かったよ。
全体的に見て、寄せられたフィードバックは好意的なものがずっと多かったことを言っておきたい。この統率者戦の新たなマッチメイキング方法は、みんなに楽しく試してもらえているようだ。一番大きいのは、それぞれが遊びたいゲーム体験を表現する用語が加えられ、ゲームを始める前の会話の大切さが再認識されたことだ。「MagicCon: Chicago」でのテストは素晴らしいものだった。参加したプレイヤーが何人も私のところへやってきて、ブラケットのおかげでこれまでより平等なマッチメイクができるようになったと伝えてくれたよ。
でもこれはあくまで、私個人のエピソードだ。実際のデータを見てみよう。
「MagicCon: Chicago」閉幕後の公式アンケートでは、ブラケット・システムを試した人の87%がマッチメイクに役立ったと回答した。素晴らしい!
もうひとつ私たちが注目したのは、オンライン・プレイヤーの動向だ。私はDaybreak GamesのMagic Onlineチームと話をし、MTGOにおける統率者戦のゲームのうちおよそ半分がブラケット・システムを用いていることを確認した。また、チームはこのシステムを可能な限りプログラムへ組み込むため積極的に取り組んでいると教えてくれた。
それから非公式ではあるものの、多くの大型Discordサーバーで統率者戦のマッチメイキングに利用されている「SpellBot」の運営者Amy氏とも話をしたところ、「SpellBot」を導入しているサーバーにおける統率者戦のゲームのうちおよそ54%がブラケット・システムを用いていることを確認した。わずか2か月でこれだけ普及しているのは、素晴らしいことだ。
それでも、この滑り出しの良さをブラケット・システムが完璧である証明だと捉えることはできない。早期の成功を受けてさらなる改善を止めても大丈夫だと考えてしまうことこそ、長期的な失敗につながるのだ。私たちはブラケット・システムについてのフィードバックを大量に受け取った。好意的な声が多かったのは事実だが、わかりやすさや拡張性、細かい部分の調整など、改善の余地はまだある。
ブラケットの数はいくつにすべきか? 「エキシビション」ブラケットは必要か? 「アップグレード」ブラケットの範囲が広すぎないか? 「土地全体拒否」に含まれる具体的なカードリストは? 「サーチカードは少しだけに留める」とはどういう意味か? ブラケット3.5や2.5など、既存のブラケットの間に置くブラケットは必要か?
私たちはそういった議題を取り挙げて、用語の言い回しや目標などさまざまな変更点について話し合った。しかしながら、私たちは議論を深めていく中で、この早期段階でシステムの細かい部分を変更するのは望ましくないという結論に至った。一部の熱心なマジック・プレイヤーならすでにこのシステムを飲み込んでいるかもしれないけれど、コミュニティに広く浸透し適応してもらうには時間がかかるのだ。
数多くのコンテンツ・クリエイターがブラケット・システムを解説するコンテンツを作っており、みんながこのシステムについて学び始めている。全体で見れば大いに成功しているシステムのピースをわずか2か月で並べ替えてしまえば、システムを学び正しく理解する機会を損ねることになるだろう。新しい情報を飲み込み、それに応じてデッキを更新するのにも、時間がかかるのだ。
その好例となるのが「エキシビション(ブラケット1)」だ。私たちがブラケット・システムを発表した当時、ブラケット1のデッキを持つプレイヤーはほとんどいなかった。最初の1か月間においても、ブラケット1が用いられるゲームの数は私たちの基準から見れば極めて少なかった。では、このブラケットを設定したのは間違いだったのか?
みんながブラケット1について理解を深め、デッキを構築する時間を置いた今、このブラケットに注目した配信やエキシビション用のデッキを紹介するプレイヤーの姿などが見受けられるようになっており、確かな成長を感じている。広く親しまれているとは言えないかもしれないけれど、成長の機会を得る前に木の枝を切る必要はないのだ。
だからここは現状を維持し、みんなにブラケットやデッキの調整を体験してもらい、各ブラケットの様子を見ていきたいと思う。微調整を加える部分はあるけれど、他の部分はみんながこのシステムをもっと試して議論を深めていく中で自然な形に収まるかもしれない。
私たちは、今年を通して統率者戦ブラケット(ベータ版)のテストを続けるつもりだ。システムレベルの変更は、後日改めてお知らせすることにしよう。今のところは「MagicCon: Atlanta」の頃に発表できればと考えているが、この場での明言は避けておく。
はっきり言っておくと、今回は統率者戦ブラケットそのものへの変更は行わない。このシステムの枠組みはまだベータテストの段階なのだ。
とはいえ、どの部分にも一切の変更がないわけではない。
このシステムを発表した当時、私たちはゲームチェンジャー・リストに入るカードを少なくしようと努めた。プレイヤーのみんなが心に留めておかなければならないカードの枚数が多くなってしまうことが気がかりだったし、「Archidekt」や「Moxfield」、「Scryfall」といった素晴らしいコミュニティ・ツールが素早く対応できるようにしたかったんだ。予防策を取るのは悪いことではないけれど、ちょっと抑えすぎていたかもしれない。みんなの反応で圧倒的だったのは(フィードバックで最も多く指摘されていたのは)、ゲームチェンジャーをもっと増やしてほしいという声だった。ゲームチェンジャー・リストと共通の用語が登場し、ゲーム前の会話がやりやすくなった。さらにゲームチェンジャーを増やすことで、いくつかのデッキが上位に押し上げられ、ブラケットの区別がやりやすくなるだろう。
そういうわけで、今回はゲームチェンジャー・リストに多くのカードを追加する予定だ。君が学んだシステムはそのままに、ゲームチェンジャー・リストが具体的で参照しやすいものになるだろう。
それから、特に混乱を呼んでいる点についても触れておきたい。統率者戦ブラケットの意図についてだ。
プレイする意図
私たちが初めてブラケット・システムを発表したときは、ブラケットを選択する際には使用するデッキの意図を決めることが大切だということをしっかり伝え切れていなかった。ゲームチェンジャー・リストとブラケットのガイドラインに注目を集め、その意図については脇に置いていた。しかし重要性で言えば、むしろそちらの方が大切だ。
意図を明確にすることが、ブラケット・システムで特に重要な部分なのだ。
各ブラケットのガイドラインでもデッキ構築の際に気をつけること(エキシビションやコアではゲームチェンジャーが使えない、アップグレードまでは土地全体拒否が使えないなど)はあったけれど、ブラケット・システム自体は「デッキを計算機に入れればそのデッキのランクが算出され、そこでプレイできる」というものではないのだ。「Moxfield」や「Archidekt」のようなサイトが総合的な評価からブラケットを推定するツールを提供していることや、デッキの意図が大切であることを繰り返し伝えてくれていることには、深く感謝している。でも推定はあくまで推定であることだけは強調しておきたい。君が知っていることを活かしてデッキに正しいラベルを貼るのは、君の責任なんだ。
コア(ブラケット2)の条件をすべて満たした上でオプティマイズド(ブラケット4)・レベルのデッキを組むのは簡単だ。君たちの多くもそういうデッキを構築できると私は確信している。さまざまなツールはデッキの方針を定めるのに役立つだろう。それでも最終的には、君自身がデッキの意図を把握していることが何よりも大切なんだ。
「迷ったら上」という意識を常に持っていると良いかもしれない。君のデッキがコア(ブラケット2)の条件を満たしていても、アップグレード(ブラケット3)のように動くならブラケット3に分類するのだ。ゲームチェンジャーを1枚も使わずにフルパワーの「ゴブリン」デッキを作ったなら、それはおそらくデッキ構築上のルールを守っているとしてもコア・レベルのデッキとは言えないだろう。だからこそ、最初の発表記事で伝えたブラケットの説明が大切だ。チェックリストを見て構築ルールに違反していないか確認するよりも大事なことなんだ。
プレイヤーがデッキを自分で評価する必要がある以上、不完全だって? まったくもってその通りだ。正しく分類されないことは常にあるだろう。それでも、ブラケットの説明を参考にすれば君のデッキがどこに入るのかを導き出せるはずだ。
発表から時間が経ち、この考え方がコンテンツ・クリエイターやソーシャルメディアの間に浸透してきたため、多くのプレイヤーが理解し始めていると思う。でも改めて強調させてほしい。君のデッキを正しく評価するのは君の責任だ。どうか気後れせずブラケットを上げてほしいし、少なくともゲームを始める前に君のデッキが何を目指しているのかを伝えてほしい。採用カードのガイドラインを厳密に守っていても、他のプレイヤーがやっていることよりずっと強く、彼らを蹴散らせるデッキなら、君がそのゲームの悪役になるだろう。
よし、それじゃあゲームチェンジャー・リストの話に移ろう。
ゲームチェンジャー・リストから除外
ゲームチェンジャー・リストを評価し、みんなのフィードバックを精査する中で、私たちはカードを追加するだけでなく初期のリストが機能しているか確かめたいと考えた。
コミュニティからのフィードバックを見るに、みんながこのリストにふさわしくないと考えるカードが2枚ある。その2枚は、本日をもってリストから外れることになる。
1枚目は《つるむ面倒》だ。このカードは1年ほど前に登場して以来、着実に頭角を現してきた。とはいえ多くのカードを引けるものの、リストにないカードとも肩を並べるレベルではある。ゲームチェンジャー・リスト入りの基準よりはわずかに下、というのが一般的な感覚であり、このカードについては少しラインを飛び越えてリストに入れたかもしれない。将来的にリストが進化を続け、より多くのフィードバックが集まれば、再び追加される可能性は十分にある。
2枚目は《三なる宝球》だ。確かにこれは、相手をしていて最高に楽しいカードではない。それは否定しないよ。しかしながら、このカードが最も活躍するのはオプティマイズド(ブラケット4)やcEDH(ブラケット5)のような最高レベルの舞台だ。《抵抗の宝球》や《法の定め》、《Nether Void》など、ゲームチェンジャー・リストに入っていない「スタックス」のパーツはたくさんあり、一般的に「スタックス」のスタイルで他のプレイヤーをロックしようとする場合はそのプレイ・パターンがブラケット2の意図に合うことはなく、ブラケットを上げることになるのだ。《三なる宝球》を単体で使いたいだけなら、フラストレーションはあるかもしれないが完全に適正だろう。
ゲームチェンジャー・リストへ追加
寄せられたフィードバックの中でも圧倒的に多かったのが、「ゲームチェンジャーを追加してくれ」という声だった。そこで私たちは受け取ったフィードバックすべてに目を通し、議論を重ね、統率者セットのデザイン・チームにアドバイスも求めた。そして本日付けで、いくつかのカードをゲームチェンジャー・リストに追加する。
追加される18枚は以下の通りだ。
- 《テフェリーの防御》
- 《謙虚》
- 《覆いを割く者、ナーセット》
- 《直観》
- 《聖別されたスフィンクス》
- 《ネクロポーテンス》
- 《オークの弓使い》
- 《偏向はたき》
- 《ギャンブル》
- 《俗世の教示者》
- 《種子生まれの詩神》
- 《輪作》
- 《自然の秩序》
- 《食物連鎖》
- 《オーラの破片》
- 《概念泥棒》
- 《死者の原野》
- 《Mishra's Workshop》
(訳注:加えて、同日に禁止解除となった《けちな贈り物》《星の揺らぎ》《陰謀団の先手ブレイズ》《合同勝利》《一望の鏡》もゲームチェンジャーに指定されています。)
各カードについて、リスト入りの基準を満たした理由を語っていこう。
《テフェリーの防御》
究極に防御的な呪文ではあるけれど、「ゲームを変える」カードといえばこれも挙げられるだろう。《テフェリーの防御》は、君を完璧に守ってくれる。《サイクロンの裂け目》と同じく、これがあればなんのリスクも負わずに大胆なプレイや攻撃ができるだろう。まさに「ゲームチェンジャー」なのだ。
《謙虚》
このカードはゲームを這うような速度に下げ、あらゆるクリーチャーを機能不全にし、デッキの中核たるカード・タイプを遮断してしまう。《三なる宝球》と比較しても、軽量カードの支払うマナが増える《三なる宝球》に対して、《謙虚》が戦場に出るゲームはより大きなフラストレーションが溜まるものになりやすいだろう。
《覆いを割く者、ナーセット》、《オークの弓使い》、《概念泥棒》
追加のドローを咎める手段は統率者戦のゲームにおいて適正なものではあるけれど、やられたときのいら立ちは格別だ。特に《Wheel of Fortune》系の効果と組み合わせたときの邪悪さは、相手をしていてフラストレーションの溜まるものになるだろう。
《直観》
《直観》はカードを1枚手に入れながら墓地にも2枚置ける非常に強力なサーチ手段だ。特定の欲しいカードが常に手に入るわけではないけれど、似たようなカードを重ねれば強力な1枚が手に入り、その過程で墓地も肥やせるのだ。
《聖別されたスフィンクス》
かつてのような圧倒的な強さはないかもしれないけれど、このカードはほとんどの統率者戦のテーブルにおいて除去必須の脅威であり続けている。《聖別されたスフィンクス》を維持してアンタップを迎えればそれまでに6枚以上のカードが手に入り、一気に優位に立てるのだ。加えて他のプレイヤーが《聖別されたスフィンクス》をコピーし、互いに好きなだけカードを引けるという状況は最高のゲーム体験とは言えないだろう。ゲームチェンジャーにふさわしい1枚だ。
《ネクロポーテンス》
というコストが要求されるものの、ひとたび戦場に出れば40点のライフを好きなだけカードに替えられる能力は極めて強力だ。このカードをゲームチェンジャー・リストに入れてほしいという声は、最も多く寄せられた意見の1つだった。喜んでリストに加えよう。
《偏向はたき》
コストのかからない強力な打ち消し呪文は他にもリストに入っているが、このカードの仕事ぶりはコストのかからない打ち消し呪文というだけに留まらない。リスト入りに値する1枚だろう。
《ギャンブル》、《輪作》、《俗世の教示者》
低ブラケットにはすでに、「サーチカードは少しだけに留める」という制限がある。それでもサーチ範囲の広い1マナのサーチカードは極めて効率的であり、《伝国の玉璽》や《神秘の教示者》などと肩を並べるレベルだ。将来的にサーチカードに関する注意事項を見直す可能性はあるけれど、当分の間はこれらの強力な3枚をゲームチェンジャー・リストに入れておきたい。
《種子生まれの詩神》
このカードは、適切に構築すると実質的に追加ターンを3つ得るのに匹敵する効果を発揮する。また、1人のプレイヤーがゲームの時間を多く占有することにもなり得る。
ここで言っておかなければならないのは、『タルキール:龍嵐録』統率者デッキ「アブザンの守り」に《種子生まれの詩神》が収録されたばかりであることだろう。まず、《種子生まれの詩神》の収録が決まったのは統率者戦ブラケットが登場するよりずっと前のことだった。それから、この機会に改めて伝えておきたいのは、コア(ブラケット2)のレベルは「現代の平均的な構築済みデッキ」と設定されているものの、それはパワーレベルのばらつきが一切許されないという意味ではないということだ。この文言が混乱を呼んでいることは私たちも把握しているため、将来的にブラケットの判定基準から「構築済みデッキ」の文言は取り除くことを検討しているよ。はっきりさせておきたいのは、『タルキール:龍嵐録』における食い違いを私たちも把握していることと、それにより私たちの発信するメッセージが混線するのを避けたいということなのだ。
《自然の秩序》
このカードは、大型クリーチャーのコストを無視して早い段階で繰り出せる強力な手段の1つだ。《自然の秩序》はコストの踏み倒しと効率的なサーチ手段が1つになったカードなのだ。
《食物連鎖》
《食物連鎖》は、フェアに使われない傾向がある。無限コンボの燃料として使われることが多いためブラケット1と2では除外されているけれど、ブラケット3でもゲームチェンジャーとして制限をかけるに値するカードであると感じている。
《オーラの破片》
統率者戦のゲームにおいてアーティファクトやエンチャントに睨みをきかせる存在は大切だが、中にはやり過ぎてしまうものもある。《オーラの破片》は除去手段となるパーマネントであり、デッキの軸となるカードやマナを生み出すアーティファクト、それからアーティファクトやエンチャントであるクリーチャーも継続的に破壊できる。《オーラの破片》には、多くの人気アーキタイプが手を焼いている。色の組み合わせがクリーチャーを戦場に出すことに長けているのもポイントだ。《汚損破》のように大量に破壊する手段自体はまったく問題ないのだが、ゲームを通して継続的に使える効果は抑えておきたいのだ。
《死者の原野》
土地カードは、ほんの少しサポートするだけで強力になる。無色マナしか生み出せずタップ状態で戦場に出る《死者の原野》だが、その能力を発揮させるのは実に簡単だ。そしてひとたび動き出せば、フェッチランドや追加で土地をプレイできる効果などで1ターン中に3体以上のゾンビを繰り出すこともできるのだ。それだけ聞くと地味に見えるかもしれないけれど、もう一度言うが土地がそれをするんだ。生み出されたゾンビは君のライフを守り、ゲームを終わらせる手段にもなるだろう。ゲームチェンジャー・リストに入るだけの力があると私たちは考えているよ。
《Mishra's Workshop》
入手難度の高さから使用率は高くないものの、アーティファクトを唱えるために使えるマナを3点も生み出す土地は、マナ加速の制限の観点からゲームチェンジャー・リスト入りの基準を満たしている。
変更なしのカード
ここで、リストに入らなかったものやリストから除外されなかったものについても話しておこう。コミュニティからのフィードバックを見ていると、実に多くのカードが言及されていた。ここでいくつか取り挙げたいと思う。
はじめに、伝説のクリーチャーについて話しておきたい。当初は、ゲームチェンジャー・リストに入る伝説のクリーチャーの候補はいくつかあった。しかしながら強力な統率者というのは数多くあり、統率者はゲームが始まる前に全員に公開されるものだ。《フェイに呪われた王、コルヴォルド》や《エドガー・マルコフ》、《始祖ドラゴン》、《統べるもの、ジョダー》、《偉大なる統一者、アトラクサ》をリストに入れるのは簡単だが、それを始めると、気づけば人気の統率者が大量にリスト入りしているということになるだろう。現時点でどこのリストにも載っていない統率者をゲームチェンジャー・リストに加える前に、私たちはゲームチェンジャーとなる統率者はどういうものかという理念をさらに突き詰めて考えたい。
現時点で私の中にあるアイデアを伝えておくと、楽しくないプレイ・パターンや強力なゲーム上の制約を生み出す統率者や、それから他の99枚との組み合わせでゲームチェンジャー足る統率者は、ゲームチェンジャーに該当すると思っている。単に強力な統率者というだけでは、ゲームチェンジャー・リストには入らないだろう。その理念に照らし合わせるなら、《恐怖の神、ターグリッド》や《アウグスティン四世大判事》はそれらが引き起こすプレイ体験を理由にリストに残ることになる。一方で《虎の影、百合子》や《最高工匠卿、ウルザ》のようなカードはそのカードパワーが理由であるため、リストから除外される可能性があるだろう。
この点については、ぜひみんなのフィードバックを聞きたい。現時点では、統率者に関しては行動を起こさないことに決めた。次回の更新では、ゲームチェンジャー・リストに変更があるかもしれないね。
さて、それじゃあ続けて、個別のカードを取り挙げてみよう。
《告別》
これは極めて強力な全体除去だ。こういう風にゲームをリセットされるのは、フラストレーションを感じるかもしれないね。しかしながら、この6マナのリセット・ボタンは同時に、手に負えない相手を抑える助けにもなる。私たちも注目してはいるけれど、現時点ではゲームチェンジャーとして見ていない。
《托鉢する者》
このカードについて言及した人はいないかもしれないが、リスト入りしたカードに関連するためここで取り挙げておきたい。《概念泥棒》や《覆いを割く者、ナーセット》、《オークの弓使い》と一緒にこのカードもリスト入りさせる選択を取らなかったのは、このカードが咎めるのは2枚以上引くことだけであり、追加のドロー自体には反応せず、また1枚は保証されるためだ。その上、このカードの色もこういう効果と相性の良いものではない。
《マナ吸収》
これが強力な打ち消し呪文であることは間違いない! このカードが真価を発揮するのは、呪文を打ち消しながらマナ加速も活かせるゲーム中盤~終盤のタイミングだ。打ち消しもマナ加速も強力ではあるけれど、ゲーム終盤に一度だけマナを加速するなら楽しく、ゲームを歪めることもないだろう。
《神秘的負荷》
このカードについては、私たちもよく話し合っていた。結論として、このカードはハイパワーの卓で最も強く、低ブラケットでは弱くなるというのが私たちの感覚だ。目を離してはいないものの、今回は追加しないことにした。
《意志の力》
このカードはリストから除外することを検討中だが、今回は見送ることにした。カードを1枚消費するものの、タップアウトの状態でも自分のターンの動きを守ったり対戦相手の統率者や大型クリーチャーを弾いたりできる点は、極めて強力だ。今回はリストに残しておく。
《Timetwister》と《Wheel of Fortune》
これらは費用対効果が非常に強力であり、その点はリスト入りの判断に影響する。《悪魔の教示者》がリストに入っていて《魔性の教示者》が入っていないのは、その好例だ。しかしながら、これらは《概念泥棒》や《覆いを割く者、ナーセット》と組み合わせず単体で使う分には、楽しいことが多い。最も強力な使い方を取り除いたことで、これらの楽しくない部分が抑えられるのではないかと私たちは期待している。
《墓穴までの契約》と《エレボスの指図》
少し使われるくらいなら楽しいものだが、これに追い詰められる体験にはフラストレーションを感じることだろう。だがこれらの効果を最大限に発揮するには準備が必要で、対戦相手がトークンやその他生け贄に捧げやすいものを持っていないことも条件になる。今回は手を入れないことにしたけれど、これらのエンチャントはゲームチェンジャー・リストに入るべきだと考えている人はぜひ考えを聞かせてくれ。
《ネクロドミナンス》
《ネクロポーテンス》がリストに入ることを受けて、私たちはこのカードについても議論を行った。《ネクロポーテンス》と同じラインには達しないというのが私たちの出した結論だが、将来的に使用率が上がっていけば、リストに名前が載る姿を想像することはできるね。
《孔蹄のビヒモス》
このカードがゲームの決定打となるのは間違いない。しかしながら、8マナの緑のクリーチャーがこれをやるのは容認できる。《自然の秩序》のようなカードを通して早い段階で出てくるのは問題だけれど、ゲームが長引いたすえの《孔蹄のビヒモス》なら受け入れられると私たちは信じている。
《グレートヘンジ》
このカードには賛否両論が寄せられていた。確かに、これが残ればカード・アドバンテージ差は雪だるま式に増え、間違いなくゲームを圧倒するだろう。一方でこれは干渉可能なカードであり、唱えたりうまく使ったりするのにある程度の準備が必要で、そしてさまざまな面で緑という色を体現する1枚だ。戦場に出れば強力であることに疑いはない。それでも統率者戦ならではの楽しさをたくさん伝えてくれるカードなのだ。今回は触れないでおくけれど、これに関するフィードバックは大歓迎だ。
《緑の太陽の頂点》、《召喚の調べ》、《破滅の終焉》
《自然の秩序》をチャレンジャー・リストに入れたのは、4マナで何でも探し出して戦場に繰り出せるためだ。《緑の太陽の頂点》や《召喚の調べ》、《破滅の終焉》も同じサーチカードではあるけれど《自然の秩序》ほど効率は良くなく、また低ブラケットでは「サーチカードは少しだけに留める」という制限があるため、こういうカードをデッキに詰め込むことはないだろう。
《歯と爪》
このカードもゲームを終わらせる手段となり、コストの面でも《孔蹄のビヒモス》に似ている。「双呪」で唱えるのに要する9マナは、ゲームを終わらせるのも納得のコストだ。それからブラケット2には無限コンボがないことも心に留めておきたい。
《中心部の防衛》
「対戦相手1人が3体以上のクリーチャーをコントロールしている」という条件は、要求されるものが《歯と爪》よりもずっと少ない。しかしながらその条件を満たすには時間がかかり、対策を取る時間を十分に確保できるだろう。このカードを早い段階で最大限に活かすのは困難だと思われる。
《太陽の指輪》
《太陽の指輪》をゲームチェンジャーにするか否かという議論は、すべてのデッキにゲームチェンジャーの使用を1枚認めるべきか否かという議論とともに行われているのが見受けられる。今回はもともとシステムレベルの変更を行っていないけれど、ここで改めて、前回の記事でお伝えしたことを強調しておきたい。《太陽の指輪》は統率者戦の顔であり、現時点ではシェルドン・メネリー/Sheldon Meneryから受け継いだ作法に則って、このカードの立ち位置を変更したり制限をかけたりする計画はない。
「すべてのデッキがゲームチェンジャーを1枚使える」という議論については、ゲームチェンジャー・リストの重要な役割の1つに「安全地帯を作る」というものがある。《リスティックの研究》や《息詰まる徴税》、《サイクロンの裂け目》と対峙しなければならないのが嫌なら、それらがいないブラケットで遊ぶこともできるのだ。誰もがゲームチェンジャーを使えるというのは、その理念に反している。
次なる一歩へ
私たちは、現在のブラケット・システムと更新されたゲームチェンジャー・リストが浸透し、状況が落ち着くまで時間を取りたいと思っている。今後もゲームチェンジャー・リストに手を加えることになるだろうと予期しているけれど、今回のように大量のカードをリストに追加するのは基本的に私たちが望むところではない。今回の更新の目標は、大量のフィードバックを受けて前回の目標を拡張することだった。ここからしばらくはそっとしておきたいところだ。6月20~22日開催の「MagicCon: Las Vegas」後までは何も起こらないはずだ。
今年の残りは、統率者戦ブラケットの磨き上げやゲームチェンジャーの理念の策定に集中しようと私たちは考えている。コミュニティの声に耳を傾けながらブラケット・システムを細部まで調整してから、またこれまで通りの定期的なコミュニケーションをしていこうと思う。本日の禁止制限告知でもお知らせしている通り、今年中の禁止や禁止解除の発表はもうしない予定だ。
それからみんなとの接点を定期的に持つために、かつて「統率者ルール委員会」が行っていた四半期ごとの報告を再びやっていこうと思う。短い報告で終わる場合もあれば、少し長くなることもあるだろう。それでも、私たちの取り組みをみんなに伝える機会を設けるのは素晴らしいことだと私は考えている。
そういうわけで、次回の更新は6月の後半か7月の前半になるだろう。そこではゲームチェンジャー・リストの微調整や統率者戦ブラケットの状況、その他の更新をお伝えできればと思う。
まとめ
今回は長くなり詳しい話もたくさんあったけれど、深く読み込まなくてもしっかり情報を得られるように、まとめを用意しよう。
- 統率者戦ブラケットの初期の反応やデータは非常に心強いものだった!
- 今回は統率者戦ブラケットの構造部分には手を入れない。ブラケット・システムはまだベータ版であり、構造レベルの変更は引き続きブラケットが用いられる中でよりよいアイデアがしっかり固まってからだ。
- ゲームチェンジャー・リストから2枚のカードを除外し、18枚のカードを追加する。これを求める多くの声に応えたもので、ブラケットを改めて学び直す必要はない。
- 詳細は禁止制限告知を確認してほしいが、《陰謀団の先手ブレイズ》、《合同勝利》、《けちな贈り物》、《一望の鏡》、《星の揺らぎ》の5枚を禁止解除する。それと同時に、これらはゲームチェンジャーに指定される。今後は《有翼の叡智、ナドゥ》のように何か新しいものが現れ早急な対処が必要にならない限り、今年中に禁止措置が取られることはないだろう。詳細はこちらの記事(後日翻訳版を掲載予定)を読んでほしい。
- 今後は四半期ごとの定期報告を行いたいと思っている。次回は6月の後半か7月の前半になるだろう。
本日の時点で、ゲームチェンジャー・リストの一覧は以下の通りだ。
《ドラニスの判事》 《悟りの教示者》 《謙虚》 《セラの聖域》 《息詰まる徴税》 《テフェリーの防御》 -固有色: ![]() 《聖別されたスフィンクス》 《サイクロンの裂け目》 《召し上げ》 《激情の後見》 《意志の力》 《けちな贈り物》 《直観》 《核の占い師、ジン=ギタクシアス》 《覆いを割く者、ナーセット》 《神秘の教示者》 《リスティックの研究》 《星の揺らぎ》 《タッサの神託者》 《最高工匠卿、ウルザ》 -固有色: ![]() |
《むかつき》 《ボーラスの城塞》 《陰謀団の先手ブレイズ》 《悪魔の教示者》 《伝国の玉璽》 《ネクロポーテンス》 《敵対工作員》 《オークの弓使い》 《恐怖の神、ターグリッド》 《吸血の教示者》 -固有色: ![]() 《偏向はたき》 《ギャンブル》 《ジェスカの意志》 《死の国からの脱出》 -固有色: ![]() 《輪作》 《食物連鎖》 《ガイアの揺籃の地》 《自然の秩序》 《種子生まれの詩神》 《適者生存》 《飢餓の声、ヴォリンクレックス》 《俗世の教示者》 -固有色: ![]() |
《オーラの破片》 《合同勝利》 《アウグスティン四世大判事》 《眷者の神童、キナン》 《概念泥棒》 《軍団のまとめ役、ウィノータ》 《虎の影、百合子》 -多色(7)- 《古えの墳墓》 《金属モックス》 《死者の原野》 《Glacial Chasm》 《厳かなモノリス》 《ライオンの瞳のダイアモンド》 《魔力の櫃》 《Mishra's Workshop》 《モックス・ダイアモンド》 《一望の鏡》 《一つの指輪》 《The Tabernacle at Pendrell Vale》 -無色(12)- |
さらなる前進を統率せよ
本日の記事は情報満載だったね。委員会のさまざまな考えや積み重ねた議論の結果を示せたと思う。洞察に満ちた議論と深い考察を見て、今回のさまざまな決断の根拠を感じ取ってくれたなら幸いだ。
この場をお借りして、統率者戦フォーマット委員会の尽力に心から感謝を伝えたい。みなが多くの時間をかけて意見を交わし、議論を重ね、今回の結論に向かって進んできた。この記事に書かれていることすべてに全員が賛同しているわけではないけれど、メンバー各人の考えが小さなかけらとなって散りばめられている。
記事内でも何度か言及したけれど、私たちにはみんなからのフィードバックが欠かせない。今回の変更の多くは、フィードバックをもとに行われたものだ。ソーシャルメディアでメッセージを送ってくれてもいいし、直接伝えてくれてもいいし、マジック:ザ・ギャザリング公式Discordチャンネル(リンク)で考えを共有してくれてもいい。マジックのコミュニティ・マネージャーがフィードバックを拾い上げて、私たちのもとへ送り届けてくれるはずだ。
それから「WeeklyMTG」配信にもぜひ参加してくれ。配信でも質問に答えるし、上記の公式Discordチャンネルでも質問に答えるよ。
この記事を最後まで読んでくれてありがとう。そして統率者戦コミュニティの一員として統率者戦をプレイしてくれてありがとう。統率者戦フォーマット委員会一同、心から感謝をお伝えする。
統率者戦フォーマット委員会を代表して――ガヴィン・ヴァーヘイ
Attack on Cardboard
Bandit
Ben Wheeler
Charlotte Sable
DeQuan Watson
Deco
Greg Sablan
Ittetu/いってつ
Josh Lee Kwai
Kristen Gregory
Lua Stardust
Olivia Gobert-Hicks
Rachel Weeks
Rebell Lily
Scott Larabee
Tim Willoughby
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『マジック:ザ・ギャザリング——FINAL FANTASY』のメカニズム|翻訳記事その他
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- 津村健志の「先取り!」スタンダード・アナライズ
- 浅原晃の「プレミアイベント三大チェックポイント!」
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