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Play Design -プレイ・デザイン-
コントロールの理念
コントロールの理念
Melissa DeTora / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru
2017年10月6日
こんにちは、そして「Play Design -プレイ・デザイン-」へようこそ。今回は開発部のスタンダードのコントロール・デッキにおける理念についてお話ししようと思います。わたしの計画では、スタンダードの大まかなアーキタイプ全てのわたしたちの理念に関して書く予定です(こちらで「コンボの理念」が読めます)。では始めましょう!
コントロールって何?
コントロール・デッキとは、打ち消し呪文や除去呪文で対戦相手よりも長く生き延び、相手よりも強力な何かをすることでゲームに勝とうとするデッキです。コントロール・デッキは序盤自分の身を守り、対戦相手のリソースが枯渇したあとで、強力な遅いゲームの勝ち手段をプレイして、そのゲームを迅速に終わらせます。
わたしが説明したこのデッキはランプ・デッキによく似ていますが、これら2つのアーキタイプには鍵となる違いが存在します。どちらのデッキも序盤を生き延びて強力な重いものをプレイしようとしますが、ランプ・デッキは大きな脅威を戦場に出すためにリソース(主に《不屈の自然》や《爆発的植生》のようなカード)を投資します。コントロール・デッキは主に毎ターン土地をプレイしながら自分の呪文で対戦相手の呪文を対処して、時が来たら遅いゲーム用の勝ち手段を唱えます。
ではコントロールとミッドレンジはどう違うのでしょうか? ミッドレンジはコントロール・デッキと似たようなゲーム展開をすることもしばしばありますが、その違いはミッドレンジ・デッキはしばしば相手のプレイするものに対応せず、効果的な脅威や呪文を毎ターンプレイするところです。ミッドレンジは状況に応じてアグレッシブ的な役割もコントロール的な役割もすることができ、一方コントロール・デッキは(ほとんど)常にプレイされたものに対応していきます。
そのフォーマットが速いか遅いかに関わらず、速い対戦相手を止めることができる対応し防御するカードは常に存在するので、コントロール・デッキは常にメタゲームに存在しようとします。もしメタゲームにコントロールが不在の場合、わたしたちはそのメタゲームが不健全だと考えます。コントロールはその環境のほとんどのデッキに対して行える戦略であるべきです。
打ち消し呪文コントロール・デッキ 対 その他のコントロール・デッキ
わたしたちは、打ち消し呪文が相手の鍵となるカードや、そのデッキでは対処しにくいものに対して防御するときに最も健全だと考えています。例えば青黒コントロールは基本的にアーティファクトやエンチャントを除去するのが難しいので、それらのパーマネントを撃退するための打ち消し呪文と、クリーチャーやプレインズウォーカーから身を守るための除去呪文を持っていることが、この種のデッキにとって理想的です。
わたしたちは打ち消し呪文の類がマナ・カーブを構成することは不健全だと考えています。マナ・カーブを構成している打ち消し呪文とは毎ターンプレイできる打ち消し呪文です。対戦相手が何をしてくるかは関係なく、相手は彼らの動きのためにマナを使い、あなたはそれを打ち消すためにマナを使います。事実上、このプレイ・パターンは打ち消し呪文を万能の除去呪文にしてしまいます。これが頻繁に起こりすぎると、それらの呪文は想定された役割を果たせなくなります。
わたしたちは打ち消し呪文が好きで、除去呪文のように打ち消し呪文がそのフォーマットの異なる脅威に対抗するような環境を作っています。あなたはメタゲームに基いて、どの除去と打ち消しをプレイするかを選ぶことになります。
《ショック》、《焙り焼き》、《紅蓮地獄》はすべて強力な赤の除去呪文ですが、全て異なる役割を持っています。同じように、《否認》、《軽蔑的な一撃》、《本質の散乱》はすべて強力な打ち消し呪文ですが、それぞれ長所と短所があります。これらのカードの中に何でも対処できるものはありません。これはわたしたちが万能の対策を好まないということではありません。もし何でも対処できる打ち消し呪文をプレイしたいなら、もう1マナ足して《解消》や《不許可》を使うことができます。同じように、《致命的な一押し》や《板歩きの刑》は軽いマナ・コストですが制約があります。より万能な除去呪文を求める場合プレイヤーには、マナを足して《ヴラスカの侮辱》を使う選択肢があります。
《剣を鍬に》のような除去呪文は軽すぎます。これはどんなサイズのクリーチャーもわずか1マナで追放できます。《新緑の魔力》のような高いマナ・コストのものをリソースを費やして加速して出したのを1マナで殺されるのは嫌な気分です(ええ、わたしも若いころに何度もやられました)。わたしたちは《剣を鍬に》をスタンダードで使えるセットで再録することは二度とありません。
過去のスタンダード・フォーマットでは、《鑽火の輝き》や《絹包み》のようないくつかのタイプのクリーチャーを対処(それぞれ攻撃しているクリーチャーと点数で見たマナ・コストが低いクリーチャー)するための軽い呪文や、《払拭の光》や《排斥》のような、よりマナを必要とし何でも対処できる呪文がありました。マナ・カーブと土地の枚数を考慮しつつどの除去を唱えるか、どのデッキに対峙するかの考えに基いて、どの除去をデッキに入れるかについての決断をしなければならない形でカードが並んでいるとき、そのゲームプレイはダイナミックで楽しいものになります。打ち消し呪文についても同様です。
八十岡翔太は下記のデッキでプロツアー『カラデシュ』を優勝しました。彼は3枚の確定打ち消しと何枚かの限定的なものをプレイしていました。
5 《島》 2 《沼》 2 《山》 4 《尖塔断の運河》 3 《燻る湿地》 4 《窪み渓谷》 2 《さまよう噴気孔》 4 《進化する未開地》 -土地(26)- 4 《氷の中の存在》 2 《奔流の機械巨人》 -クリーチャー(6)- |
4 《流電砲撃》 1 《儀礼的拒否》 3 《予期》 3 《蓄霊稲妻》 2 《否認》 1 《精神背信》 3 《苦い真理》 3 《虚空の粉砕》 2 《光輝の炎》 2 《無許可の分解》 1 《本質の摘出》 2 《天才の片鱗》 1 《秘密の解明者、ジェイス》 -呪文(28)- |
3 《稲妻織り》 2 《儀礼的拒否》 1 《否認》 1 《精神背信》 2 《餌食》 1 《光輝の炎》 2 《即時却下》 2 《慮外な押収》 1 《秘密の解明者、ジェイス》 -サイドボード(15)- |
ノンクリーチャー 対 クリーチャー・コントロール
いくつかのデッキは勝つためにクリーチャーを使わず、そしてそれはありです。事実、現在のスタンダードで成功しているコントロール・デッキの1つである白青《副陽の接近》はクリーチャーを全くプレイしません。時にはノンクリーチャー・コントロールは特にその勝ち手段が対処しにくいものである場合、不健全になることがあります。白青《副陽の接近》は7マナのソーサリーを2回プレイすることでゲームに勝利します。《副陽の接近》は干渉するのが困難ですが、それを唱えるようになるにはかなり進む必要があり、このカードを複数枚デッキに入れるにはデッキ構築上の犠牲が伴います。わたしたちはこれを現在のメタゲームでは健全なデッキだと考えています。
除去とカード・ドローが効率的すぎる場合、コントロール・デッキは1対1交換をしてから大きなドロー呪文で前進するものになります。これが起こるとゲームが長引けば長引くほど得られるアドバンテージが増え、勝ち手段は何でもよくなります。
そうしたデッキの一例がイヴァン・フロック/Ivan Flochの《不死の霊薬》コントロールです。唯一の勝ち手段は1枚の《不死の霊薬》で、このデッキは相手のデッキがなくなるまで自分の呪文を延々と循環させているだけです。これが起こるとそのゲームは結果が出るずっと前に終わっていて、対戦相手はただそこに座って勝ち目のないゲームを続けるだけです。これは白青《副陽の接近》よりもずっと不健全です。
6 《平地》 6 《島》 4 《神聖なる泉》 4 《啓蒙の神殿》 2 《アゾリウスのギルド門》 1 《凱旋の神殿》 1 《天啓の神殿》 2 《変わり谷》 -土地(26)- -クリーチャー(0)- |
4 《急かし》 1 《不死の霊薬》 4 《アゾリウスの魔除け》 2 《今わの際》 4 《解消》 3 《予言》 4 《至高の評決》 3 《次元の浄化》 2 《中略》 4 《スフィンクスの啓示》 3 《思考を築く者、ジェイス》 -呪文(34)- |
4 《ニクス毛の雄羊》 2 《テューンの大天使》 2 《払拭》 2 《反論》 2 《今わの際》 1 《神討ち》 1 《記憶の熟達者、ジェイス》 1 《太陽の勇者、エルズペス》 -サイドボード(15)- |
わたしたちは確かにこのデッキの動きが好きですが、これの勝ち手段は好きではありません。この手のプレイパターン(除去と打ち消し呪文を全部ライブラリーに戻して《スフィンクスの啓示》で引きなおす)は対戦相手にとっては楽しくなく、時にはデッキの使い手にとってさえも楽しくないこともあります。ゲームが実質的に終わっているとき、あなたは理想的にはゲームを早く終わらせる助けになるカードをプレイし、クリーチャーはそのための手段の1つです。
わたしたちは《真珠湖の古きもの》や《終止符のスフィンクス》、《奔流の機械巨人》のような、いくつかのクリーチャーをコントロールのフィニッシャーに位置づけています。これらのカードは一部のデッキにとって除去するのが難しく、フロックのコントロールのようなデッキにとっては完璧な勝ち手段ですが、《不死の霊薬》はその当時使えたクリーチャーよりも強力でした。
プレインズウォーカーはコントロール・デッキにとってもう1つの効果的な勝ち手段です。それらは除去が難しいことがあり、コントロール・デッキは自然とそれらを守るのに長けています。
以下のリストはクリーチャーを使って勝つコントロール・デッキの一例です。
7 《島》 3 《山》 4 《尖塔断の運河》 4 《水没した地下墓地》 4 《泥濘の峡谷》 4 《霊気拠点》 -土地(26)- 3 《スカラベの神》 3 《奔流の機械巨人》 -クリーチャー(6)- |
4 《選択》 3 《マグマのしぶき》 4 《検閲》 4 《蓄霊稲妻》 2 《本質の散乱》 1 《削剥》 4 《不許可》 2 《焼けつく双陽》 4 《天才の片鱗》 -呪文(28)- |
4 《つむじ風の巨匠》 2 《強迫》 1 《マグマのしぶき》 3 《否認》 1 《削剥》 2 《大災厄》 2 《橋上の戦い》 -サイドボード(15)- |
まとめ
コントロール・デッキは対戦相手よりも長く生き延びることが目的です。飛んでくるすべての呪文を打ち消すことが目的ではありません。とはいえ、打ち消し呪文はスタンダードにとって良いものです。多くのデッキが先に仕掛けるようになり、そしてコントロール・デッキはそれらのデッキを倒すようにに自らを調整することができます。その後、先に仕掛けるデッキはこれらのコントロール・デッキを倒すように進化できます――これが時間とともにメタゲームが進化する方法です。
メタゲームの進化はマジックの新鮮さを保ち、プレイヤーにデッキの構築と選択のときに解くべきパズルを与えます。先に仕掛けるデッキは常にフォーマットに存在するので、コントロール・デッキは常に健全なメタゲームの一部になるでしょう。
お読みいただきありがとうございました。来週はMファイル『イクサラン』編をお送りします!
メリッサ・デトラ (@MelissaDeTora)
今週のプレイ・デザイン・チーム
アンドリュー・ブラウン/Andrew Brown著
これらはすべて、プレイ・デザインの話とマナーの回顧
トーナメント・マジックのプレイヤーとして、我々は対戦相手とかなりの量の興味深いやり取りをしてきた。我々には皆それぞれ、マジックをプレイする自分なりのマナーと好きな方法がある。現実世界でマジックをプレイするとき、私は無表情でマジック以外の話をほとんどしないことにしていた。私が勝った場合、それを可能な限り早く対戦相手に伝えた。わたしが負けた時は常に手を差し出し、勝った時にはそれを相手に強いることはしなかった。多くの週末に旅をして、何百というトーナメントをプレイし、私はこれが自分自身を導く実行可能な方法だということに気づいた。
先週の木曜に起こった、私がこれまでに出くわした中でも最大のマナーの悲劇に、これは何の役にも立たなかった。我々は現在デベロップ中のセットでドラフトのプレイテストをしていて、イアン・デューク/Ian Dukeとメリッサ・デトラの試合が終わるのを残りの面子が待っていた。試合は接戦のようで、お互い厳しい戦いのように見えた。決着のついたターンでイアンは全てのクリーチャーで攻撃し、メリッサのライフを2残し、一瞬考えてから静かにターンを返した。メリッサはアンタップしてドローをしたが、その後イアンが彼女を制止した。彼はそれから「アップキープに本体火力を打つよ」といった。プレイテストでそんなことを考えるなんて! 前代未聞だ! しかしイアンはその後その爆弾を落とし「他の本体火力もあるよ」と言った。
イアンが正確なプレイをしたという議論があるが、プレイテストの義務は守られなければならない。確かに、これは木曜日の5時45分のことだ。確かに、デューク兄弟は最も愉快なマジック・プレイヤーとして知られている。確かに、私は過剰に反応しているかもしれない。確かに、私は支離滅裂かもしれない。しかし、私には分かっていることが1つある。イアンはこれらを全部持っているということだ。
――アンドリュー・ブラウン (@murk_lurker)
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