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開発秘話

Play Design -プレイ・デザイン-

最良のサンドボックスを構築する

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最良のサンドボックスを構築する

Michael Majors / Tr. Takuya Masuyama / TSV YONEMURA "Pao" Kaoru

2017年8月11日


 やあ! 私の名前はマイケル・メジャース/Michael Majors、プレイ・デザイン・チームに入った元プロ・マジック・プレイヤーだ。もしかしたら以前私が手がけていたStarCityGames.comや、ジェリー・トンプソン/Gerry Thompson(と一時期アンドリュー・ブラウン/Andrew Brown)と一緒にやっていたGAM Podcastのコンテンツで私のことを知っているかもしれないね。

 こんなことを宣伝しているのにはある理由がある。ここ数年高レベルの競技プレイヤーだったにも関わらず、私のマジックへの本当の愛の多くはその創造性の面から発生していて、それの持つ試みが私の探求を可能にしたんだ。戦略について話すことはそのひとつで、今の立場である開発部の歯車はその次のステップを表している。紙に何か言葉を書くのがいいと思ったので、うまくいけば私はメリッサの代わりに時々この記事に現れることになるだろう!

 今日はトーナメント・マジックとフューチャー・フューチャー・リーグ(FFL)とのデッキ構築の過程の比較と、動機について話そうと思う。コンテンツ・クリエイターとしての活動を通して、私は気づかない間に多くのデッキのデッキ・ビルダーとして知られるようになった。私はその過程を科学よりも芸術に近いものだと見ている。それには厳密なルールがいくつかあって、そして私の主な動機は常に学ぶことへの愛と結びついた探求へのスリルだった。

プロツアー・チームのプレイヤーであること

 さまざまなプロツアー・チームでの私の「仕事」は、基本的に新しいカード・プールから可能な全てのデッキの原型を構築することだった。これはつまり、新しいカードと既存のカードで可能な新しい相互作用を徹底的に調べ、古いデッキを新しいカードでアップデートし、デッキの軸になる最新のカードのパワー・レベルの負荷テストをするということだ。

 私は、自分の成功はある程度の楽観視をしてきたおかげだったと考えている。多くのプレイヤーは何かが「十分良い」かどうかを全くゲームをプレイすることなく決めつける傾向にあるんだ! 私はいつもただ真実を学ぶことを求めていた。

 この学ぶことへの貪欲さは、プレイ・デザインの中での私の主な動機でもある。違いが出てくるのは過程の途中からだ。

 そのトーナメントの構造はどんなものだ? 基本的なことのように聞こえるが、1つのトーナメントは1つの週末とそのメタゲームをスイスドローX回戦とトップ8で切り取ったものだ。君たちは賞金とプロ・ポイント、そしてトロフィーのために競い合うことがある。得られる結果は1つだけだ。

 結果として、その準備は細かい部分を急速に洗練していく。昔は新しく発売される全カードのリストを手に入れてチームで見てから、大きな大会でのドラフト・ポッドの番号を知るまでの期間はわずか2週間だった。

 これはどういう意味か? 調整は必ず早く終わらせなければならないということだ。可能な限り全てを試すことは必須だが、パワー・レベルに関して客観的であることが最優先だ。このデッキはこのフォーマットの既存のデッキと競うことができるだろうか? 答えが「いいえ」であればそれは使えない。

 余談になるが、新しいカードの潜在的な強さを理解することは、たとえそのデッキの原型が弱くて調整不足なものであっても、調査過程の大きな部分を占めている。 そのデッキが回らない? よし、次に行こう。カードをX枚引くことはゲームに影響を与える面でうまくいった? じゃあもっと多くのデッキにそれを入れてみよう。

 それは我々をどこに向かわせる? 極めて速やかにサイドボードの期間へと向かうことになる。トーナメントとは本質的にわずかなパーセンテージに熟達することだ。効果的な技術を考え出し、サイドボード・プランに磨きをかけることで、より難しい状況でも引けば勝利をもたらす「サービスブレーク」を可能とする。

 トーナメントの準備とは、ほとんどの場合ある程度のリスクを避けようとすることだ。メタゲームの状態を予想し、その分野を攻めるデッキを構築する。うまくいくかどうかは、しばしばそのメタゲームの理解度とそれに対応するための選択肢による。


敏捷な妨害術師》 アート:Shreya Shetty

フューチャー・フューチャー・リーグとプレイ・デザイン

 さて、トーナメントについて長々と語ってきたわけだが、FFLとその中でのプレイ・デザインの役割についてはどうだろうか?

 炎上してしまう恐れがあるが、私にとってのFFLとは、私の探求的学習過程への愛とその楽しさを最大限にすることを組み合わせることだ。その成功するための動機の構造は、私やチームメイトにとってひとつの週末のトーナメントの結果よりもはるかに大きな影響を持っている。

 考え方を変えると、トーナメント用のデッキを構築することとは、ひとつの週末のサンドボックスから得られる自分のチームの利益を最大限にすることだ。FFLのデッキを構築することとは、全てのマジックのプレイヤーの今後数年間のサンドボックスの質を最大にすることだ。

 これは少し気圧されてしまう仕事だが、素晴らしいものだ。

 他にある重要な違いは、トーナメントの準備とFFLのプレイに対する姿勢と働きかける方法だ。プレイヤーとしての私の考え方は「このプレイパターンは本当に気に食わないが、それは存在しているしこれを悪用しなければいけない」となることもある。

 プレイ・デザインの一員として、今は「このプレイ・パターンは本当に楽しくないし反撃手段が少ない。XをYに変更するように提案するべきだ」という風に考えられるようになった。

 この例で言うプレイ・パターンとは何だろうか?

 簡単に言うと、戦場の状態や繰り返される相互作用で、カードを促進するものだ。ゲームが1枚の特定のカードによってあまりにも早く歪められていたり、1つの効果がFFL環境内であまりに多く見かけられると感じた場合、それは私が声に出すべき責任だ。

 これは我々の主な機能の1つだ。我々は内部メタゲームの作成という観点でのデータがとても少ない。結果として、我々のゲームは高い勝率を追求することではなく、学習することとカードの相互作用を発見することに極めて大きく焦点を置いている。

 我々は自分たちの仕事をただの「防衛線」と思い込んでしまう。我々の目的は単純にカードが強すぎになる可能性を最小限にすることで、そしてその思い込みはある程度真実だ。

 私はプレイヤーとして、超楽しい作品を作れたけれども、トーナメントで優勝しようと思うと実際に登録ほどには充分強いとはいえない、という状況があった。だがしかし。今の私はこれらの素晴らしい相互作用を妥当なパワー・レベルにすることを主張できるようになったんだ!

 もちろん、楽しいと思うものは人それぞれだ。チームの一員であるということは、マジックを楽しめるものにするという我々の理念を保証することにおいてとても重要で、多くの異なるタイプの人たちが触れることができるかどうかは、我々の能力の上限に支えられている。お互いに地に足をつけ、我々の目標の一貫性を保つことは全員の責任だ!

 この記事が、私自身とプレイ・デザインの探求とデッキ構築の手法について解説できていたなら幸いだ。私は自分のここでの過程を研ぎ澄ますために、私のプロ・プレイヤー的洞察を役立てようとする追求し続ける。結局のところ我々は皆、より良いマジックの経験のために自分の強みを活用してるんだ。

今週のプレイ・デザイン・チーム

 プレイ・デザインが立ち上げられたとき、我々が持っていた目標の1つは、よりレベルの高いイベントに出張しようというものだった。プレイヤーに会って交流することができれば、プレイヤーがフォーマットの状態をどのように感じているかや、彼らが楽しいと思っていることが分かる。またこれはチームのメンバーをもっとカバレージに送り出すということも含まれる。これはプロツアー『破滅の刻』でのポール・チェオン/Paul Cheonのプロツアー中継デビューから始まり、先週はグランプリ・ミネアポリス2017にメリッサ・デトラを生放送解説者に送り出した。

 そのグランプリの2日目、メリッサはマリア・バーソルディ/Maria Bartholdiとペアでブースに入りマジックの歴史を作った。女性2人が一緒にカバレージのコメンテーター枠に座ったのは今回が初で、マリアは実況を、そしてメリッサは解説を担当した。彼女たちは素晴らしい仕事を成し遂げ、我々はもっと多くのイベントにメリッサを送り込むことを楽しみにしている!

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メリッサ・デトラ(左)とマリア・バーソルディ(右)はグランプリ・ミネアポリス2017でマジックの歴史を作った!
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